父と子と聖霊のなんちゃら   作:NJ

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※この世界のバビロニアのOPは「The Rumbling」でご再生ください。



番外 進撃の豚

 

 

 

 これは、立香達がエルサレムで人類の始祖(エデン神拳伝承者)愛を取り戻せ(YOUはSHOCK!)みたいな感じの作画・原◯夫な世紀末救世主伝説を繰り広げていた頃の話。

 

 

 

 ───B.C.2655

 バビロニア

 

 今、地上(シュメル)は地獄と化していた。

 

 鮮血神殿より迫る魔獣の群れによって…ではない。

 

 いや、獣によって苦しめられている事は正しい。

 

 だが、当の女神の仔らも絶賛進行形で絶望を堪能させられていた。

 

 ある―――たった一頭の豚によって。

 

 どっかの(バカ)が「折角創るんなら、兎に角メチャメチャデッカくした方が神話って感じでカッケエよな?」という巫山戯たコンセプトで創造した原初の獣。

 

 聖書における終末の大厄災。

 かつての大戦で数百数千の堕天使の軍勢が放った、一発一発がミサイルクラスの宝具の雨でも足止めがやっとだった唯一神(ヤハウェ)の自慢の息子(けっさく)

 

 その一歩は大地を均す天の槌。

 その息吹は嵐。

 排泄は洪水。

 

 怒りの咆哮は―――終焉の喇叭。

 

 その獣の銘は…

 

 

 

 

「撃て撃て撃て撃てぇぇい!出し惜しみするなぁぁぁぁ!!」

 

 城壁の上で王の檄が空気を揺らし、同時に砲台(ディンギル)が炸裂して目標に向けて放たれる…

 

 

 

 ―――金ピカのニンジンが。

 

 

 

 標的は、眼前の厄災……ではなく。

 

「母上、また来ました!第二波です!」

「ぐ…っおのれ人間の王!!物量で『奴』を釣るつもりか!」

 

 …それを更に飛び越えた先の、鮮血神殿。

 

 彼女達は、過去最高に今焦っていた。

 まるで世界の終焉でも目撃しているかのような様子で。

 

 そしてそれは、ある意味で当たっていた。

 

 放たれた黄金の(ニンジン)の軌跡。

 万人を惑わす神秘の芳香。

 

 それに引き寄せられるモノこそ、かの厄災そのもの。

 

 ドドドド

 

 ド ド ド ド ド ド

 

 ド ド ド ド ド ド

 

 

「ブギー♪」

 

 

《うわぁあああ!また来たああああああ!?》

 

《退避!退避ぃぃぃぃ!!》

 

 轟くは大地の悲鳴。

 あと魔獣の悲鳴。

 

 現代の小型戦車ほどはある巨体の群れが、まるでやんちゃ盛りの幼児に踏み荒らされる気泡緩衝材(プチプチ)のように豪快に潰れていく様には、敵方ながらウルクの民も戦慄せざるをえなかった。

 

 実際、今のベヒモスは肉体的にも精神的にも幼児そのものなのだが…恐るべきは、このサイズですら『まだ子供(あかんぼう)』だという事実である。

 

「俺達、何やってるんだろう…」

 

「なんで前線まで来て野菜なんて運んでるんだ…?」

 

 そして同時に、砲弾ではなくニンジンやら果物を砲台に詰め込む作業を遠い目で延々と繰り返す、前線のウルク兵とギルガメッシュに召喚されたサーヴァント達。

 

「えっほ、えっほ……ふぅ、重いものを運んでいるとお腹が空きますね」

 

 ちょっとした神殿の柱ぐらいはある巨大ニンジンを、持ち前の怪力スキルで運ぶ巴御前。

 

「…………………このお野菜、ちょっとぐらい齧っても大丈夫でしょうか?」

 

 そして、神代の野菜の香りに少し邪な考えが過っていた。

 

「うおおおおおおおお! これがッ!スパルタだぁあああああああああ!!」

 

 それと自らを「脳みそまで筋肉でできている、つまり全身に脳を持つ叡智の化身」と言い張る筋肉モリモリマッチョの変態野郎レオニダス。

 彼も巴に負けず劣らず、他のウルク兵の数倍の量の野菜を運んでおり、その熱量には周りの神代の民も圧倒されていた。

 

「ええい離せ弁慶!さもなくば貴様から斬るぞ!」

 

「なりません義経様ァ!流石に今回ばかりはお転婆では済まされませぬぞぉ!!」

 

「問題ないと言っている!八艘飛びの要領でこうちょちょいと…」

 

「乗れる訳がないと言っておりましょう!下手をすれば足元の魔獣の仲間入りですぞぉ!」

 

「行・か・せ・ろぉぉぉ!」

「行・か・せ・ま・せ・ぬぅぅぅ!」

 

 楽園の唯一神の仔たる神獣にライダークラスの血が騒いだのか、目を輝かせて「騎乗したい!」と飛び出した鎌倉の暴走機関車こと牛若丸と、それを羽交い締めにして決死の覚悟で止める従者弁慶。

 

 それを尻目に遠い目で野菜を運ぶ天草四郎時貞。

 

「これも主の思し召しか…」

 

 ここではない、どこでもない(・・・・・・)どこか(・・・)で。

 

 その(かみ)が、無駄に良い顔で「ドンマイ」と言っていた気がした。

 

 

 

 

 所変わって、前線。

 

「ブ♪ブ♪」

 

 ピクニックに行く子供のような足取りで大地を踏み締め、ヘンゼルとグレーテルよろしく神殿まで続く形で地面に突き刺さった野菜をガツガツ貪りながら進撃する原初の豚。

 

『ぐ、くそぅ…あんにゃろう!足元の俺達を見てすらいねぇ!』

『俺達なんてアリ同然だってのか!ふざけやがって…畜生!』

 

 その足元で、惨めに蟻のように這い回り、豚の蹄から逃げ回る魔獣達。

 母なる女神の尖兵としてウルクを蹂躙する筈であった彼らが、今や逆に蹂躙される側になっている事実に苦渋の表情を浮かべる。無様だ。

 

『俺達はこのまま逃げ続けるしかできないのか…』

『このまま、何もできずに踏み潰されて終わりなのかよ…畜生』

 

 

『───馬鹿野郎っ、諦めるんじゃあない!』

 

 

 絶望に呑まれかけていた魔獣達。

 そんな彼らに待ったをかける勇士が一頭。

 

『あ、アンタは…!?』

『ギルタブリル隊長!』

 

 人間の上半身に蠍の下半身を持つ、シュメルの伝説に登場するティアマト神の子供であるギルタブリルだった。

 

『思い出せ!俺達の戦う理由を!俺達の悲願を!全ては忌まわしき人類を駆逐して母と我らの理想郷を築く為じゃなかったのか!』

 

『隊長…』

『そうだ、その通りだ!相手がどんな化け物だからって、その願いを忘れていい理由にはならねぇ!』

 

 ギルタブリルに同調し、士気を取り戻し始める魔獣達。

 

『さぁ行くぞ!俺達の戦いは────』

 

 圧倒的な絶望を前にして希望の火を絶やすまいと檄を飛ばし、一番槍を担うその姿はまさに英雄であり────

 

 

 

 

『これかズンッらばぁあああああああ!?』

 

『隊長ォォォォォォォォォ!?』

 

「ブ?」ナンカフンダ?

 

 ────飛んで火に入る夏の虫であった。

 

 

 

 

「ギルタブリルでさえも…っ、おのれ唯一神(ヤハウェ)!自分の子供にどういう教育をしておるのだ奴は!」

 

 一方、鮮血神殿…ティアマトを騙る怪物女神ゴルゴーンは尾に火がついたような焦燥に歯軋りしていた。

 ちなみに、当の唯一神(ほんにん)息子(ベヒモス)に一通り躾として行儀を仕込んではいる。

 

 単に、唯一神(ちちおや)と自身が認めた相手の言うことしか聞かないだけである。

 

「如何いたします、母上?」

「やむをえん…手札を出し渋って破滅しては笑い話にもならん!アレをやるぞ!」

「承知しました!」

 

 そして遂に、迫り来る脅威が彼女に必殺のカードを切ることを決意させた。

 

「ブ?」

 

 そしてその脅威ご本人が、真っ先に気付いた。

 彼のその食い意地を体現した食い物限定の超動体視力が、この世の如何なるスーパースピードカメラよりも正確に捉えた物体の正体、それは───。

 

 

 ───ほぉらベヒモス、取ってこーい!

 

 

 刹那、脳裏に蘇るは楽園での父との幸せなひと時。

 

 大好きな父と、何より大好きだった遊び。

 

 その時父が投げていたもの、ソレは────

 

 

ブゴーーー!(リンゴだーーー!)

 

 

 ギリシャ特産、ヘスペリデスの黄金の林檎である。

 

「オリュンポスからくすねた代物がこのような形で役に立つとはな…」

「流石です、母上(どうやって手に入れたんだ…)」

 

 ウサギ型に切ったリンゴをモシャモシャ食べながらしみじみと語り合うゴルゴーンとキングゥ。

 人生なにがあるか分からないものである。神だが。

 

「目標、進路を逆転! こちらに向かっています!」

「何ぃ!?」

 

 まさかのUターンにAUOも取り乱す。

 イシュタルが目撃したら大爆笑しそうな顔であった。

 

 まぁ、実際に野次馬根性で両陣営の愉快な綱引きを大爆笑しているのだが。

 

「おのれおのれおのれおのれおのれェ!!我の財力を舐めるな原初の獣ォ! こうなれば王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)、三倍だァーーーーー!!」

 

 遂にはどっかの地球育ちの野菜人みたいに叫び始める賢王。完全にヤケクソである。

 

 防壁より射出される野菜の量が更に増加する。

 それに比例して、神殿からも溜め込んだリンゴが魔獣達の手で惜しみなく投擲される。

 

 戦争は変わった。

 血と怒号が飛び交う戦いから、野菜と果物が飛び交う戦いへと。

 

(オレ)のそばに近寄るなぁぁぁぁーーー!!」

「あっちに行けぇぇぇーーーー!!」

 

 必死な形相で疫病神を押し付け合う両陣営の長。

 

「王よ…」

「母上…」

 

 死んだ目をするそれぞれの副官。

 

「ブー♪(食べ物いっぱいだー!)」

 

 そして、豚は幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルデアが到着するまで、あと数ヶ月。

 

 メソポタミアの動乱は、未だ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃…

 

「ククルーーーーン!!起きてぇぇぇーーー!寝てる場合じゃないんだってばぁーーーー!」

「う〜ん…うるさいデース…」

 

 密林の奥、冬木の美しき…ではなく南米のジャガーの戦士が外の様子を見て「やべぇよ…やべぇよ…」となり、慌てて現在のボスである中南米の太陽神を叩き起こそうとしていた。

 

 ジャガーの戦士は知る由もない。

 無論、他の陣営も。

 

 この後、目を覚ました彼女が古い知己と再会した結果、この混沌とした状況が悪い方向にフルスロットルで加速するなど。

 

 野次馬決め込んでメシウマしていた金星の女神と冥府の女王まで巻き込んだ大惨事に発展するなど。

 

 

 知る由も、無かったのである。

 





メソポタミアに、さよならバイバイ☆

グランド糞野郎「笑っちゃうよねー」たはー
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