「地に昇り、天に堕ちる その1」の続きなのでそっちを確認しておくことをオヌヌメ
地獄を見た。
「俺は俺としてこの世に生まれ落ちた」
「故に欲する!故に奪う!全てを!」
「遮るものは神であろうと打ち砕く!」
「たとえ貴様でもだ────
地獄を見た。
「イヴ────すまない」
地獄を見た。
「許せない…!
「報復だ!復讐するのだ!」
地獄を見た。
「我らの
「これまで幾度も我らの世界を汚さんとした異教の邪神どもを退けたのは誰だ!?愚鈍な天使共か!?怠惰な悪魔共か!?はたまた天より見下すだけで何もせぬ
「断じて否!世界を守ってきたのは我らが父だ!神が捨てた世界を拾わんとしたのは他ならぬカインだ!」
「我らが父こそが真の英雄だ!何者にも否定させぬ!!」
地獄を見た。
「打ち壊せだと!?これは我々の救世主バアルの為に築いた神殿だぞ!」
「やめろ!やめてくれ!あの方は
「俺たちが崇めていた神の正体は───ぎゃ!?」
地獄を見た。
「───ミカエル!!ルシファー!!」
「
「それほどの力がありながら、何故───何故、
地獄を見た。
「───そうか、お前は見たのか」
地獄を見た。
「
「剪定を避ける道を我らに示し、世を導く上で欠かせぬもの」
「『
地獄を見た。
「それは敗者の理屈ではないかッ!!」
「茨の道へ旅立った
「
───ガコン
地獄を見た。
父なき世界に広がる、果てなき
何度も、何度も。
そして、その度に繰り返し思ったのだ。
───
そんな、答えのない自問を繰り返す日々の中。
「───お優しいのですね。天使様は」
「ああ、でもいけません天使様」
哀れな女だった。
「天使様のような方が私のような穢れた女に触れてしまうと、天使様も汚れてしまいます」
愚かな女だった。
「私のような、夫にも見捨てられるような罪深い女などに情けなどもったいのうございます故、どうか、どうか…」
「ええい口を開くな恥晒しめ! おお主の御使いよ、このような見苦しいものを視界に入れさせてしまい申し訳ございません!」
救いようもない男を夫にしてしまう、愚かで不遇な女だった。
「は?コレですか? あぁいや、人の所有物の分際でどこぞの馬の骨に純潔を奪われた売女でございます」
「全く…少々
愚かな女だった。
「申し訳ありません、申し訳ありません…男を惑わす悪女で申し訳ありません…穢れた女で申し訳ありません…」
「黙れ黙れ出来損ない! いいか、妻とは夫を立てるために存在する道具なのだ!夫に恥をかかせる女に妻としての価値などない…いや人としての価値すらない出来損ないなのだ!分かったか出来損ない!!」
決して揺らがぬ善性を持った、救いようのない愚か者だった。
目が回る。世界が歪む。
嗚咽が出そうなぐるぐるとした感覚の中、またあの問いが頭の中を反芻する。
───親父なら、どうした?
答えなどないのに、返すものなど居ないのに。
『本当に?』
振り返る。
一人のガキが俺を見ていた。
あの頃の、
今の俺とは正反対の、耐えられず逸らしたくなるような眩い太陽のような目で。
『悩むふりなんてやめろよ』
『本当は、分かってるんだろ?』
なに、を───
『父ちゃんならどうするかなんて』
『
気づけば、静かに拳を握っていた。
そして、一歩踏み出す。
同時に、あの日の父の言葉が過ぎる。
『胸を張れアザゼル』
「出来損ない!」
『たとえ誰に何を言われようと、
「出来損ないが!」
『
「出来そ「出来損ないなんかじゃねぇ!!」
その時。
何処にいるかも分からぬ父が、笑ってくれた気がした。
◆◆◆
荒野を、男が歩いていた。
傷だらけで眠る女をその手に抱えて、あてもなく、しかし力強い足取りで進み続ける。
名誉も、地位も、兄弟も、全てを捨てて。
ただ一つの想いを胸に、暗闇に閉ざされた未来を睨みながら。
頭の輪と同じように光を失った翼ではなく、己の足で。
ヒトのように、歩き続ける。
かつて、
今もなお、旅を続ける父のように。
傷だらけで、しかし勇ましい狼の如き顔で。
それはもう、優しかった
覚悟を決めた、一人の
短かったが、書いてて結構楽しかった回