この壊れかけた王に祝福を!   作:『?』

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Lesson4「初見殺しを喰らい、油断を戒めろ!」

 どうやら仕事帰りらしい衛兵によって、説教…幾許かの注意を受けることになったが、そう長い時間は取られずに切り上げられた。彼も酷く疲れた風であったし、きっと夜更けであったことも理由の一つだろう。

 間もなく、お互いに帰路へと付くこととなって、早々に宿代わりの馬小屋まで辿り着いたわけである。

 

 あれほど安価に寝泊まりが出来る場所だ。最初こそ、どんな汚濁に見えるのかと戦々恐々としていたが、結論から言えば、全く悪くなかった。

 馬と閨を共にすることにもならず、家畜の臭いも大した問題にはならない程度…ベッドの代替らしい藁山も、あまり汚れていない新鮮なものであったのだ。

 

 ただ通路から部屋の内装を見通せるという設計は、少々悩みどころかもしれない。

 通路側の壁。その大部分が木組みの柵であった上、パーティションの類も設置されていなかったのである。寝姿を隠せない…それは無防備を晒すということに他ならないことだ。

 まぁ、そうは言っても、値段が値段。雑魚寝でないだけ温情である中、これほど上質な部屋を頂けたことを思えば、それらも全く問題には思われなかった。

 

 アクセルは、貧しきにも優しい街である。

 


 

 さて、思ったよりも小綺麗だった馬小屋で一夜を明かした、その翌日である。

 まだ日も昇り切らない黎明の時分のうちに、少々速歩でギルドへと赴いた我は、掲示板から適当な依頼を剥がして、受注した。

 

 目的は、やはりエリスである。

 昨晩に報酬として受け取った分を、全てを使い切ってしまった我は、端的に言うと無一文。馬小屋を借りるために使ったエリスの余りでは、木の矢一本すら買うことが出来ない。

 そのような状態では、当然マトモな朝飯を食べることもできないために、アクセルを満喫するための金。その獲得は、急務であると言えたのだ。

 

 そうこうあって、現在我はアクセルの外にいる。

 幾許か小走りして、カエルの群れが巣食っていた草原…それよりやや離れたところにある、青々とした森林地帯まで訪れたところだ。

 

 移動による時間経過もあって、空はもう真青に染まっていたが、未だ早朝に違いはない。無論街を出たときよりかは明るくなっているが、それでもまだ周囲は蒼然としていた。

 その上、木々が空を覆い隠すことも相まって、森の中は一層暗くなっている。

 囁くような草木のざわめきや、生命力を感じさせる緑の匂いも、こう鬱蒼としていると不気味にすら思われた。

 ただ何よりも気になるのは…

 

「大分、見通しが悪いな…」

 

 この視界の悪さである。

 流石に『霧の森』ほどではないが、低木や草むらの酷く茂った具合は、十分に厄介だ。

 物陰から何が飛び出してきてもおかしくない状況で、それでも目を頼りに探索することは、間違いなく悪手。いつも以上に音や臭いに気を付ける必要があるだろう。

 今回の依頼。その討伐対象を考えれば、なおのこと。

 

 初心者殺し。…ここで我が倒すべき相手は、そのように呼ばれているらしい。

 話によると、塗り潰したような黒色の毛皮に身を包んだ、肉食の獣であるそうだ。

 報酬自体は高額であったが、しかし特筆するほど強いというわけではないとも聞いている。

 

 もっとも初心者殺しの厄介な部分とは、戦闘能力ではないそうだ。…曰く、その狡猾さにこそ、気を付けるべきであるという。

 探せど中々見つからないので、その日は帰ろうと思って引き返した瞬間、背後から襲われただとか。なんとか倒したと思って近付いたら、死んだふりをしていて襲われただとか…

 この手の話は、初心者殺しを狩りに行った冒険者によくあると聞いた。

 その微かな油断や、隙を付け狙う様。彼らの狩りを語るエピソードは、伊達に『初心者殺し』と言われている訳ではないのだと、そう知らしめるには十分なものだろう。

 

 ただ我は、その手の敵をよく知っている。

 狭間に点在していた遺跡…『地下墓』の探索で身に着けた、特別な知恵を持っているのだ。

 

 地下墓の探索は、とにかく疲弊する。

 理由は色々とあるけれど、中でも墓守のゴーレム。『牙鬼インプ』の存在は、相当に大きな要因であろう。

 彼らは我の知る中でも、最も厄介な手合いだ。

 物陰から飛び出してきたり、石像に擬態していたり、壁や天井に張り付いていたり…褪せ人を欺く手段については、とにかく枚挙に暇がない。

 これに気付くことができなければ、不意を突かれて切り裂かれることになるのだ。

……しかも結構な数潜んでいるため、不用意に進めば、寄って集って袋叩きにされることになる。きっと後には、勇者の肉塊ほども原型を残さない、褪せ人の無惨なひき肉が残るだけだろう。

 

 総じて言えることだが、狭間の遺跡は性格が悪い。

 たとえ厄介な敵どもを避けて探索しようとしても、それを咎めるように張り巡らされた罠や、あまりにも複雑な地形に翻弄されるのだ。

 時には侵入者と知恵比べをするために設計したとしか思えないような、いささか奇妙な造りのものすらあった。

 我は所詮、無礼な墓荒しに過ぎないため、自業自得と言ってしまえばそれまでだが…しかしあまりに変なトラップにハメられると、流石に考えてしまうものである。

 これは流石にふざけているだろう、と。

 

 そんな『地下墓』でも、探索によって得られたものは数多い。

 装備や道具もそうだが、なによりも小狡い手合いとの付き合い方。あるいは不意打ちに心を乱されない精神の持ちようである。

 これは確かに鍛えられたはずだ。

 

「此度の戦は、楽な仕事に……」

 

 我の胸部に凶爪が突き立てられたのは、そう漏らした直後のことであった。

 グルグルという獣の唸りが背後から聞こえ、咄嗟に振り返ると初心者殺し。…その鋭利な爪が突き立てられんとしていたのである。

 既に攻撃されていた!

 その姿を認識するなり、半ば反射的に回避しようと動くが、いかんせん気付くのが遅すぎた。後ろに跳ぶべく身を屈め、地面を蹴ったところで、あえなく押し倒されたのだ。

 

おそらく慢心。

 だからこそ、不意打ちが有効だ。

 

 鈍い痛みの中で、あるいは意識が明瞭でないせいか、くだらないメッセージを幻視した。

 溶ける世界、朦朧とする意識。

 どうやら剥き出していた石に、後頭部を強打したようだ。

 下手に回避行動を取っていたため、受け身を取ることすらできなかった。それどころか、飛び退く動作が裏目に出たらしい。

 我が初心者殺しの攻撃を回避するべく取った行動は、むしろその勢いに乗って、自ら地面へと突っ込む形となってしまったのだ。

 最終的に負ったダメージは、ただ押し倒されただけとは思えないほど、深刻なものとなった。

 

「…ッ」

 

 突き刺された爪が手前へと引っ張られ、少しずつ我を引き裂いてゆく。

 肉を抉られる強烈な痛みが、稲妻のように全身を貫いたが、しかし身体を押さえつけられているために、悶えることすらできなかった。

 

 初心者殺しは完全に捉えた獲物を前にして、しかしトドメを刺さないでいる。

 その行動に確たる理由などなかった。

 ただの暇潰し。手元で弄び、甚振ることを楽しんでいるだけに過ぎない。

 それは高い知能を持つ生物にままある行動であった。

……しかしその知能の高さこそが、彼の末路。その悲惨を決定付けたのだろう。

 

「ぅ、あっ、……ッ████…!」

 

 初心者殺しの勝利。その余韻に、突如として過った不穏。

 痛みによる喘ぎの中に混ぜられたのは、力ある言葉(スペル)であった。

 衝撃により判断能力を著しく欠いたレジーナが、まるで漏らすようにして祈祷を放ったのである。

 その瞬間、彼女の身体に煌めくオーラが収束してゆく。

 異常な気配があたりを包む。空気が一瞬凪いで、強烈に張り詰めた。

 

 その圧迫感を認識した初心者殺しは、一時、獲物を弄ぶのも忘れて硬直する。…が、直ぐ様圧されたバネのように、尋常ではない瞬発力でもって反応した。

 ナイフのように鋭い牙を剥き出しにして、脅威を排除すべく飛びかかったのだ。

 その致死の一撃が、レジーナの喉笛に突き刺さろうとした直前…

 

 収束した黄金が、炸裂する。

 

 黄金樹とは、狭間の地において遍く全ての中心だ。

 黄金樹以降、全ての生命は黄金樹の恵みに育まれ、やがて死すれば、黄金樹に還る円環の中にある。…故に、それは輪廻の軸であるだろう。

 エルデンリングの砕けとは、その根源たる黄金が爆発させた怒りとされた。

 もっとも、それはあくまで解釈だが、結果として狭間には、数多の悲惨と絶望がもたらされたのだ。

 

 『黄金の怒り』

 

 それはエルデンリングが砕けた際に見出された、いわば破砕戦争の起こりを象徴するような祈祷であった。

 かつて狭間の地を荒廃させた"黄金樹の怒り"の具現。放たれた衝撃波は、その破滅的な歴史を再現するように、辺り一帯に甚大な破壊を及ぼす。

 

 レジーナに覆いかぶさっていた初心者殺しは、哀れにもそれを全身に…しかも間近で喰らってしまった。

 激しく吹き飛ばされながら、全身を余すことなく粉砕された獣は、文字通り塵と消えたのだ。

 

 


 

 

 依頼達成に必要な討伐数は3匹。…しかし辛勝であった初戦と比べて、その後に遭遇した2匹は、取るに足らないものであった。

 彼らは最初の初心者殺しほど用心深くはなく、我の油断を見計らうような気配も感じられなかったのである。…むしろ、彼らのほうが油断していたといっても過言ではない。

 きっと治さずに放っておいた怪我のために、弱った獲物とでも見られていたのだろう。

 探すどころか向こうから襲ってきてくれたこともあり、探索にも苦戦することはなく、総じて随分と楽な仕事となった。

 

 まぁ…拍子抜けではあったが、それはむしろ良いことだろう。

 結果として我は、想定よりずっと早く仕事を終わらせることができたのだ。これは正しく僥倖と呼べる成果であった。

 

―――依頼達成の報酬と合わせて、締めて12万エリスになります」

 

 さて、何はともあれ報酬である。

 諸々の手続きを頼み、無事に報酬を受け取った我は、手渡された布袋の中を覗き込む。

 12万エリス…カエル20匹分の肉と比べれば、若干見劣りする値段だが、しかし十分な金額であろう。

 食事と宿のことだけを考えるなら、おそらく四日は保つはずだ。

 もっとも、アクセルにはまだ色々と見に行きたいところがあった。これもきっと、すぐに使い果たしてしまうだろうが、そのときはまた稼げばよいのだ。

 

「うむ、たしかに受け取った」

 

 感謝するとだけ伝えると、早速朝食を取ろうと受付より立ち去った。

 

 今朝は何を食そうかなどと考えながら、ギルドの中を歩く。

 やはり早い時間だと、冒険者たちは出払っているようだ。がらがらとまでは行かないが、行き交う人は程少なく、空いている席はとても多い。

 この中から適当な場所を見つけると、ゆっくりと腰を下ろした。

 手元には二、三枚で綴られた丈夫そうな紙切れがひとつ。…簡単な絵と共に料理名が記されたそれは、先日も十分に吟味したギルドの食堂。そのメニュー表であった。

 まだ不慣れなシステムの食事に、密かに心を踊らせながらも、小さな留め具で纏められたページを、一枚捲る。その直後、不意に声を掛けられた。

 

「おうレジーナ、朝飯か?…だったら俺にも奢ってくれよ」

 

 わざわざ見ずとも察することの出来る、声の主はダストだろう。ただでさえ交友の狭い中、そのような厚かましい台詞を吐く男など、一人しかいない。

 振り返りつつ、言葉を返す。

 

「そうだが…見ていたのか?」

「まさか!このダスト様が、そんなことするような奴に見えるかよ?」

「まぁ…見えるな」

 

 大方、ギルドをうろついている様子を見られて、目を付けられたのだろう。そうでもなければ、こうも良いタイミングでたかりに来るなどないはずだ。

 へらへらと笑う姿を胡乱げに見詰めれば、しかし彼は悪びれることなく「おいおい」と心外そうにうそぶいた。

 

「ひでぇやつだなぁ」

 

 そして言うなり、まるで当然のように我の対面に座り込んだ。その動きの淀みないことといったら、もはや感心すらしてしまうほどのものである。元より断るつもりなどなかった訳だが、その心情を見抜かれてしまったのだろうか。

 そう考えてダストの表情を見るが、そこにはどうにも打算というか、悪巧みの気配は無いように見えた。思いがけず得をしたといった喜色だ。具体的には、道端で3000ルーン拾ったといった程度の感情であろう。

 

 ダストよ⋯貴公、流石にそれは⋯

 

 呆れ混じりに奴を見つめていると、彼はこの視線の意図など全く気にしていない様子で「なんだ?」と疑問を口にした。

 分かってすっとぼけているのか、本気で分かっていないのか、いまいち判然としない様子である。まぁ、この手の図太さは、彼のようなものには欠かせぬ性分か。

 この何とも言えない情緒ごと捨て置くように、再度メニューへと目を向けた。

 あれも良いこれも良いとしばらく悩み、その後は少々遅くなってしまった朝食を注文するため、適当なウェイトレスを呼びつける。

 

「から揚げ…それと麦パンをひとつ頼む」

 

 ダストに目配せをする。

 

「俺もこいつと同じのを。あとシュワシュワ、ついでにキャベツの塩漬けもよろしく!」

 

 ウェイトレスは手元のメモに注文を書き込むと、諸々の確認を取り、去っていった。

 そんな彼女がある程度離れたと思った頃合い、その後姿…主に尻の部分を熱心に見つめるダストの方へと向き直る。

 

「貴公…躊躇いがないな、色々と」

「貰えるものは出来るだけ貰っとかなきゃ損だろ?」

 

 その言については、完全に同意するところであった。

 例えばこれが逆の立場であったとして、きっと我も自重することはなかったであろう。…しかし、こんなことを思ってしまった以上、もはや我には文句を付けることなどできない。

 キャベツの料理は、他より結構高いのだが…まぁ、許そう。

 彼は同志だ。狭間で揉まれた訳でもないのに、とても良い性格をしている。

 

「まったくだな」

 

 若干の愉悦を伴った返事をすると、何気無く水滴の滴るガラスのコップに手を伸ばした。

 我の指には少々手に余る幅であった故、両手で挟み込むようにして掴み上げ、そして満たされた水を一口飲む。

 

 あぁ…やはりアクセルは、モノが美味い。

 この世界に来てまだ1日しか経っていないが、我はそのことを強く確信している。そしてこれは、どうやら水すら例外ではないようだ。

 飲み下した液体は、まず山より湧き出たそれの如く純粋であった。しかも喉奥にしみるほどの冷気を含んでいる。

 

 ごく、ごく…

 

 喉を鳴らしつつ、どんどんと流し込む。

 これといった味や風味もないというのに、どうしてこれほど美味いのか。爽快な感覚が口を満たし、喉を駆け抜け、腹に落ちてゆく。

 気付くと、水は無くなっていた。

 何気無く手を付けただけで、そんなに焦るつもりもなかったのに、あっという間に飲み干してしまったようだ。

 

 ふうと短い溜息をひとつ漏らすと、コップを置いて、暫く待つことにした。

……しかし、おそらく客が少ないためだろう。注文した料理は昨晩のそれと比べ、ずっと早く完成したようで、ほとんど待まないうちにやってきたのである。

 

「お待たせしました、から揚げと麦パンお持ちしました!」

 

 食卓に並べられるのは、唐揚げの盛られた大皿と、微かに湯気の立ち上る茶色いパンが詰められたバスケット。

 我とダストは同じものを注文した訳だが、無論、先に食べるのは我である。

 共に置かれた食器を手に取ると、早速屠らんと飛びつくのであった。

 

 

 

 ややあって、我は空になった器の前で、美味の余韻に浸っていた。

 時折コップ。おそらく我が食べている間に注がれたのだろう、満たされたそれを手に取って、ゆっくりと飲み下す。

 まだ口内で燻る塩気や香りのせいか、あるいは満腹感がそうさせるのか。水は先程より味わい深く、そしてより美味であるように感じられた。

 

 そうして席に座ったまま、憩うことしばらく。コップの水も、半分程は飲んだだろうかといった頃合いである。

 我は、この後にすべき行動を考えながらも、向かい側に座るダストと、他愛無い雑談を交わしていた。

 

「手頃な店ねぇ…だったらウィズ魔道具店とかどうだ?」

「ほう、魔道具か…」

 

 魔道具とは、字面の通り魔法の力が込められた道具であるという。

 我の世界で言うところの『誘惑の枝』や『タリスマン』の類がこれに近いだろうが、しかし細かな由来。原理については完全に別物だ。

 そして何より大きな違いは、その用途。この世界の魔道具は、狭間で度々見かけたそれと比べて、便利なものが非常に多いという印象であった。

 

 持ち運びができて臭いを抑えることのできる便所や、どこでも純粋な流水を生み出せる道具など…代表的なものを聞いてみれば、出る品々は大抵が戦闘に関与しないものばかり。

 聞けば聞くほど、狭間において魔道具に分類できたであろう品々が、あまりにも殺伐としているように思えてくるラインナップである。

 これも世界の有り様を映す鏡と言えるだろうか?

 まぁ、いずれにせよ気になってはいた概念だ。それを専門とするならば、確かに非常に興味深い店である。

 覚えておこう。

 

「なんてったって、あそこの店主は…胸がデカい!」

 

 もっとも、我の興味とダストの興味は、いささか方向性の違うものであったらしい。

 自信満々のゲス顔と共に語られた話は、やはり非常に低俗であった。

 

「胸か…まぁ、確かに興味が惹かれないと言えば嘘になるが…」

 

 アクセルで遭遇した女性は、軒並み豊満な肉体をしていた。

 狭間の地で知り合った娘たちも、取り立てて言うほど細身であった訳では無いはずだ。…そのはずだが、どうしてかこの世界の娘と比べると、非常に幼い体付きであったように思えてしまう。…では、この世界で生きてきた変態。ダストが、こうも強調するほどに巨大な胸部装甲とは、いったいどれほどのものであろう。

 

「貴公がそう言うほどなのだ、きっと相当なのだろうな。いつか拝みに行くとしよう」

 

「お?思ったよりも食いつくな…もしかしてソッチ側か?」

 

 自分の性的嗜好など、考える機会はそう多くないものである。

 好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い。そうやって刹那的な思考だけをしてきたものだから、我が如何様な性別。あるいは種族を好むのかについては、我自身も知るところではない。

 ただ明確に言えることは⋯

 

「側など無いとも。我は美しいと思うものならば、それだけで良いと思うのだが、どうかね?」

「いや、ないな」

 

 即座に返された言葉は、しかし芳しいものではなかった。

 まぁ、察せてはいたことだ。さもありなん。

 


 

 さて、随分と話し込んでしまったが、そろそろ話のネタも尽きてきた頃合いだ。

 だらだらと酒を飲み、適当にキャベツをつつく傍ら、行き交う女子達を視姦するダスト。彼の間抜け面を眺めるのも、決して悪くはないが…流石に華がない。

 我はもう、いよいよもって手持ち無沙汰であった。

 

 この後は、装備でも見に行こうか。あるいは道具を買ってみようか。ダストに教えてもらった店…件のウィズ魔道具店にも行ってみたい。

 ただ問題なのは、魔道具の相場が分からないということだ。話を聞くに、きっと安いものではないだろう。…足りるだろうか?

 まだエリスは余っている。馬小屋暮らしもそれほど苦痛ではないとわかっているし、多少使い込んでしまう程度なら問題は無いはずだ。

……と、そうやって色々と思考を巡らせる中、特にこれと言った思惑もなく、何か無いだろうかと冒険者ギルドの中を見回してみた。

 

「あれは…」

 

 ふと、見覚えのある人影が見えた。

 あのゾッとするほどの美貌に、間の抜けた表情を張り付けた顔。そして煌めくようなライトブルーを称えた髪色。…彼女は、間違いなく女神アクアだ。

 我が慕うべき女神アクアの御姿が、どうしてかギルドの端に見える。…しかも大分困り果てた風体の、得体の知れない少年をそばにおいて。

 

 あれは一体…どういう状況なのだろうか。

 

 まさか攫われたという訳ではないだろう。

 あの少年には、神をどうこうできるような大それた能力があるようには、到底見えなかった。加えて女神アクアも、大して危機感を覚えていない様子。

 ここから察すると、むしろ少年が何かされた側ということなのか…?

 神人…聖樹のミケラは時折、人心を誑かすことがあったと語られる。女神アクアにもそのような性質があったのかもしれない。

 

「知り合いが見えた、少々席を外す」

 

 いずれにせよ、せっかく見えたのだ。

 挨拶程度はしておきたい。

 

「お〜ぅ」

 

 ダストの気の抜けるような生返事を聞くなり、早速我は立ち上がった。




・地下墓
狭間の地に点在する、とっても楽しいレジャー施設。
迷路にギロチン、火炎放射器に棘付きプレス機など、楽しいアトラクションが盛りだくさん!
みんなも遊びにきてね!
※ なお、お客様の生命は保証致しません。

・黄金の怒り
発生速度、攻撃範囲、火力…どれを取っても、ちゃんと強い子。
それなのに廉価版であるはずの『拒絶』と比べ、あまりにも知名度が低い。
貴公、もっと怒り狂えよ。

・エルデの王ちゃん
初見のダンジョンには無策で突っ込んで滅茶苦茶にされるタイプの褪せ人。
特別な知恵を存分に活かした結果、初心者殺しの追跡・不意打ちに気付くことができず、咄嗟の回避も致命的失敗(ファンブル)して、格下相手に蹂躙されたポンコツ王。
???「過信、軽率…あなたの弱点メリ…!」
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