実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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プロローグ2

 突然だが一つ、質問したいことがある。

 

 気がついたら赤ん坊であった……という体験したことのある人はいるだろうか?

 

 いや、別にふざけているわけではない。

 至って真面目だ。

 

 なんせ今、目の前で起こっている。

 

 確か僕は会社のオフィスにいたはず。

 クソ上司に人材も予算も全く足りない無茶なプロジェクトを任され、連日会社に泊まり込んで仕事をしていたから机にうつ伏せになって寝ていたはずなのに、僕は女性に抱っ子されていた。

 

 僕の視力は裸眼で車を運転できるくらいの良いのに今は何故か視界がボヤけている。

 しかも手足が思い通りに動かせない。

 

 混乱しているのに、何故僕が赤ん坊になったとわかるのは耳がキーンとなるほど五月蠅い、聞いたことのない言語の会話が聞こえたからだ。

 

「ユリアン、よく頑張った!」

「ありがとう!」

「ああ……ついに生まれた」

「もう!キアンったら!泣くなんて大袈裟よ!」

 

 うるさい!てか、なんで僕は言葉を理解できるんだ。

 例えるなら耳元で大声で叫ばれているような感覚。

 文句を言おうとするけど。

 

「あう…あう」

 

 呂律が回らない。あう……しか言えないんだ。

 

「アレンが僕に話しかけてきたよ!」

「そうねぇ、アレンは賢いんでちゅねぇ?」

「あう?」

 

 だが、少し声を出しただけなのに喜ぶ男女の声。両親だろうか?

 話を聞く限りアレンというのが僕の名前だろう。

 それにしても五月蠅い。耳を塞げばマシになるか?

 

「あらかわいい」

 

 僕は動きずらい両手で耳を塞いだのだが、女性からそんな声がかかってきた。

 耳に手を当てたから少しはマシになったが、まだ五月蠅い。

 

「あ…あう」

 

 だが、混乱中なのに突然の眠気襲ってくる。

 多分前世の疲労が蓄積しているかもしれない。

 ……もう……限界。

 

 僕は眠気に逆らわず意識を手放そうとする。

 

「うふふ……おやすみなさい、アレン」

「生まれてきてくれてありがとう」

「……あう」

 

 ……本当になんで赤ん坊になってんだろう?

 ま、細かいことは起きてから考えよう。

 

 僕は社畜生活から一転、新たな人生が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転生してアレンという名をもらい、3ヶ月が経過した。

 3ヶ月もすれば経てば視界もクリアになりいくつかわかったことがある。

 喜ぶべきことは僕は大きくなればイケメンになるということだ。両親が美形なんだ。

 父のキアンは茶髪で黒目のイケメン。優しそうな笑みする優男。

 母は銀髪で緑の目。ふわふわとした腰まで伸びた髪が特徴の垂れ目の美女。

 

 将来は期待である。

 そんな期待に胸を膨らせながら僕は

 ベビィライフを満喫している。

 

 早起き出勤も、サービス残業もない。

 クソ上司から怒鳴られることも嫌味を言われることもない

 

 首が座っていないので不便なことがあるが、要件があれば泣けばすぐに誰か来てくれるし、寝たい時には寝れる、楽な生活。

 なんて素晴らしい生活なんだ。

 

 しばらく過ごすと色々とわかってくることがある。

 出自や家族構成など。

 僕は貴族の嫡男として生まれた。

 兄弟はなし。使用人が大勢いる。

 

 何故知っているか?理由は2つ。

 

 僕の寝るベビィベッドのある部屋に前世で見たような執事服やメイド服を着ている人が多く出入りしていたのと、会話内容を聞いたからだ。

 

 僕がいる目の前で聞いたのではない。廊下や別の階で話している内容が聞こえてきたからだ。

 

 実は僕……すごく耳がいい。

 

 転生して、耳がキーンとなったのも耳が人よりも良すぎる故だった。

 慣れてしまえば便利で、耳をすませれば色々な情報がわかる。

 

 まぁ、抱かれているときは五月蝿いので両手で耳を押さえているが。

 

 

 まだ慣れるまで時間がかかりそうだ。

 だが、それは時間が解決してくれるので一先ずベビィライフを満喫しよう。

 

 

 だが、そんな気楽なベビィライフを満喫していたある日のことだ。

 珍しく屋敷に来客が来ていた。

 どんな会話をしているのか気になった僕は耳をすませて聞いていた。

 

『キアン様、アレン坊ちゃんも無事産まれたようで、おめでとうございます。噂は予々聞いてますよ、将来有望とか?』

『いやそんなことは……あるんですよねぇ。全くうちのアレンは優秀になるかもしれないんですよぉ。だって夜泣きもしないし、話しかけたら反応してくれるんですよぉ?』

『全く親バカなのは相変わらずで、ユベール伯爵家は安泰ですね。まさか、惚気話するために呼んだわけではありませんよね?』

『いやいや、最近のグラディオン王国の物価が上がってきているからね。うちも少し値上げした方がいいんじゃないかって相談をね』

『なら、安心ですな』

 

 

 この会話で気になる言葉が聞こえた。

 「ユベール伯爵家」「グラディオン王国」この言葉を聞いて僕はあることを思い出した。

 

 

 それは前世で歳の離れた妹と一度プレイしたことのある乙女ゲームについて。

 登場した攻略対象の一人に伯爵家長男のアレン=ユベールというキャラクターがいる。

 

 

 プレイしたって言ってもゲームに不慣れの妹に頼まれた好感度やらステータスを上げるためのミニゲームだけ。

 妹はシナリオを進めることに専念していた。

 

 だから、覚えていると言ってもキャラの名前と大まかな設定だけ。

 

 グラディオンは国名であり、乙女ゲームの攻略対象の一人の苗字。

 

 まだ確定したわけではない。

 勘違いならいい。そう思い商人と父上の会話を聞いていた。

 

『では、そのようにお願いね』

『ええ……あ、そういえば、もう一つ耳寄りな情報が。実はですね、最近陛下と王妃様のお子様も無事出産されたとか』

『これはめでたい。……アレンと同級生になるのか』

『やはりエルス学園に入学されるのですか?』

『そうなるかな。僕と妻もそこで出会ったしーー』

 

 そう思っていた淡い期待は。商人と父上の会話を盗み聞きを続けた結果、確信へと変わったのだった。

 エルス学園は乙女ゲームの舞台となる学校だ。

 

 ああ、ここ乙女ゲームの世界だわ。

 

 しかもなんでアレンなんだよ。

 実はアレン=ユベールというキャラは少々癖あるキャラだった。

 




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