実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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「……つかれました」

「お疲れ様、アレン」

 

 僕の買い物が終わった後、次は母上も買い物をした。どうやら僕が買ったからついでに欲しくなったようだ。

 

 だが、母上も新しい装飾品を選んだのだが、決めるのに時間がかかった。

 似合うかどうかと聞かれた時に、はいと返事を続けたのだが、聞かれる数が多すぎて途中から肯定するだけになっていた。

 

 「最終的にどっちが似合うと思う?」と僕が買ったネックレスで宝石が変わっただけの水色の宝石のネックレスと赤い宝石のネックレスどっちが似合うかを聞かれた。

 なので、今まで見せてきた数ある装飾品の中で淡い色のものが多かったので思わず水色の宝石のネックレスが似合うと答えたのだが。

 

「ダメね。乙女心を理解してないわね」

「いや、母上に乙女って無理ありません?」

「……何か?」

「申し訳ありません」

 

 どうやらいろいろと的外れな回答をしてしまったらしい。

 一度ギロリと睨まれたが、すぐに謝罪をした。

 すると母上は僕に質問をしてくる。

 

「参考までに何故こっちのネックレスがいいと思ったの?」

「……母上は派手な色の宝石は好まないと思ったのですが。こっちの赤いネックレスがお好みだったんですね」

「0点、違うわ」

「えぇ……選択肢二つとも違うって問題になってないですよ。何が正解なんですか?」

 

 提示した選択肢が二つとも違うって……そんなのわかるわけないじゃないか。

 僕がそう質問すると母上はその場から少し移動した先にあった純白の大粒真珠の一粒ネックレスを手に取る。

 

「答えはこれよ」

「いや、わかるわけありませんよ」

 

 なんだよ。ひっかけ問題にもなってませんよ。

 そもそも真珠のネックレスなんて一度も手に取ってもない。

 

「それ試着おろか、手にもとってないですよね」

「アレン、少し女性心を学びなさい。女の子というのは似合っているものを選んでほしいものなの。私は手には取ってないけど、ずっとこれ欲しいなとたまに視線を向けていたわ。しかも、お店に入った時に一番最初に眺めたのがこれなんです。私はこれを選んで欲しかったのよ」

『ドクン……ドクン……ドクン』

 

 いや、わかるわけねぇじゃん。

 母上、呟きすらないし。

 しかも鼓動一定だから嘘ついてないし。

 

「も……申し訳ありません」

「いいのよ。いいアレン。女性と買い物をするときは常に全神経を注ぎ込みなさい。視線の向き、動きをね。常に言葉だけを信じるのではなく、仕草から予測することも大切よ」

 

 母上……あなたは僕に何を求めているんですか?

 いや、確かに洞察力が大切なのはわかるけど高度すぎません?

 女性のエスコートはそこまで細かく見なければいけないとは。

 

「……精進したいと思います」

「頑張ってね」

「はい」

 

 ……なんか疲れた。

 母上は最後に手に取ったネックレスを購入した。そういえば母上の出身国のオーシャン帝国って真珠が有名だと聞いた。

 まさか、そういう好みも汲み取らなきゃいけないのでしょうか……いや、聞くまでもないか。

 

 結局、今日購入したのは僕と母上の買ったネックレス2本だけだった。

 女性という生き物は一つのものを買うのにそれほどまでに時間がかかるのだと改めて実感したのだった。

 

 ああ……やっと帰れる。

 そう思っていたのだが。

 

「どこに行く気?」

「え……もう帰るんですよね?」

「何言っているの?これから服を買いに行くのよ?」

「えぇ」

 

 マジですか。

 これ、帰るのいつになるんですか?

 

「あ、その前に少し疲れたし、喫茶店行きましょう!」

 

 いや、さらに行き先増やさんでください母上。

 

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