実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 喫茶店に入ると母上がやっていた流れで店員さんに声をかける。

 予約していたことを伝えると席に案内してくれた。

 以前僕と母上が来た時に担当してくれた店員さんだった。

 そんなことを思いながらも僕はアレイシアの席を引いて座ってもらう。エスコートは母上から教わっているし、母上に直々に指導を受けた。

 その経験を活かして流れるようにエスコートできた。その後は僕とアレイシアは注文を済ませた。注文内容は前回と同じ。

 

「……随分と手慣れておりますね」

 

 だが、そんな流れるような動きにアレイシアにそう指摘された。

 さっき緊張してミスをしてしまうと言ったばかりだから、もしかしてそのことを言っているのかもしれない。

 別に隠すことでもないので、僕は本当のことを言う。

 

「ええ、練習しましたから」

「練習?……アレン様なら、そんなことせずとも大丈夫なのでは?」

 

 うーん。アレイシアが僕に過大評価しているようだ。 

 僕は少し微笑んで話し始める。

 

「男は見栄を張りたい生き物なのです。特に大切な方と過ごすとなれば尚更です」

「……」

 

 素直に気持ちを伝えたのだが……死にたい。

 なんとなく思いついたフレーズを話したのだが、言って後悔した。

 キザすぎる台詞、しまったと思いつつ、僕はアレイシアの様子を伺うと……フリーズしてしまった。

 すぐに立て直さないければと思い、アレイシアを呼んで起動させる。

 

「……アレイシア嬢?」

「……わたくしとアレン様は出会ってまだ一月も経っておりませんし、会うのも今日で4回目……軽薄ですね」

 

 アレイシアの名を呼ぶとすぐに持ち直し、話し始める。彼女の評価は相変わらずの厳しい。今のは僕もあからさま過ぎたので反省が必要だな。

 でも、本心からの言葉なので否定する気はない。

 今度はちゃんと言葉を慎重に選びつつ、話し始める。

 

「確かにアレイシア嬢は会って日は短いですが、僕が貴方を想っているのは本当ですよ。そういうのに時間は関係ないと思いますし」

「……」

 

 ……あれ?なんで反応してくれないんだ?

 今度は慎重に言葉を選んだ。当たり障りのない発言と思ったけど。

 アレイシアは黙って俯いてしまう。

 僕は少し焦ってしまった。

 この沈黙に耐えられる気がしない。早く何か話しかけなければ。

 

「……ほら、理想の関係ってお互いに曝け出せる仲だと思いますし。……あの、アレイシア嬢?」

「……」

 

 再び本音を言いつつ、アレイシアをフリーズから戻すために話しかけたのだが、みるみる顔が赤くなっていく。

 いや、どういう反応?怒ってしまったか?

 僕はさらに焦りが増す。

 

「……えと、早い話、将来僕とアレイシア嬢は夫婦の確約があるわけで……仲良くなりたい……なんて……あのぉ」

「……」

『ド…ド…ド』

 

 やり過ぎるはどんなことも逆効果になってしまう。

 

 僕はアレイシアの反応に戸惑い訳のわからないことを言ってしまう。

 これは初めて気がついたことなのだが,僕はどうやら焦ると思考能力が低下してしまい、思いついたことをすぐに口にしてしまうらしい。

 

 アレイシアはついに顔が真っ赤になり、鼓動が今までで最も速い。

 顔を完全に俯いてしまい、顔色を窺うことができない。

 相当怒らせてしまったのかもしれない。

 そんな中、店員さんが注文の品を届けてくれた。

 

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

 

 僕はすぐにお礼を言ったのだが……アレイシアは何も言葉をかけることがなかった。

 店員さんは少し戸惑っていたが、僕は大丈夫だと伝えると去っていった。

 

 どうすれば良いか迷っていると、アレイシアは目の前に置かれたいちごのパンケーキを黙々と食べ始める。

 しかもお手本なような綺麗な所作で。

 

 僕は何を話しかければ良いか分からず、アレイシアに倣い黙々とパンケーキを食べ始めた。

 

 食べ始めて終わるまで会話一つなく、僕とアレイシアの座る空間にはナイフでパンケーキを切る音と紅茶をソーサーにおく小さな音だけが響いた。

 

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