実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 レイルと約束を交わし、ウェルと馬車に乗り帰宅中、僕は頰杖をつきながら窓から外を眺めていた。

 

お茶会は思っていた以上に時間が経っていたらしく、帰り道は夕陽が薄暗くなった建物や道を照らしている。

 

 時折馬車で進む道でタイヤが地面の段差を通るたびにガタッと馬車が揺れるたびに体が微妙に揺れる。

 

 なんとなくそのビクッと来るタイミングは予想がつかないため、ボーッと外を眺めながら予測不能な展開を楽しんでいたりする。

 

 そしてふと、オレンジ色に染まる空を見上げる。

 空はオレンジ一色、夕日の光に照らされ雲が少し色に染まる。

 ああ……その美しい光景は血生臭い未来を連想させる。

 

 ……いや、最後の表現はおかしいな。うん。僕は相当疲労が溜まっているようだ。

 

 そこでふと向かいに座り僕を見つめるウェルと目があった。

 その視線は少し鋭かった。

 僕はそんなウェルに微笑みながら話かけた。

 

「……今日ほど充実した日はないね」

「ええ、問題が山積みですね。どうするんです?後先考えず問題ばかり起こして」

 

 ウェルはいつもそうだ。

 何も考えたくないのに、鋭い指摘で僕を現実世界に引き戻す。

 

「ありがとうウェル……君はいつも僕を現実に引き戻してくれるね」

 

 僕は現実逃避をやめた。

 もしかしたら今日の展開は夢だったのかもしれない。

 目が覚めたらお茶会前日かもしれないとどこか期待をしてしまっていた。

 

「とりあえず父上に報告するよ。良いお土産話もできたからね」

 

 中立派のパトラス侯爵家と関係が持てた。

 

 ウォーウルフ子爵家とガイアス辺境伯家の有力な家と関係を持てた。

 

「それ以上に面倒なお土産をお持ち帰りしていることは旦那様にどう伝えるんですか?」

 

 多数の家と仲違いをした、アドリアンのパーティの参加可否について。

 一瞬忘れそうだったことの指摘、本当にウェルには助けられっぱなしだ。

 

 人間面倒なことは後回しにしたい生き物だと思う。

 

「ウェル、どうすればいいかな?」

「自分で考えやが……いえ、考えた方がよろしいかと」

「素直な意見をありがとう」

 

 うん、自分が発端なんだから考えるべきだよなぁ。

 でも、自己判断で行動できないから困っているわけで。

 

 ガスパルの一件は完全に僕の独断だ。早く相談しなければいかない。

 それに、アドリアン主催のパーティ参加の保留していることも。

 

 

 だか、今日が全てダメな方向に進んだわけではない。

 社交界での横の繋がりができた。

 何もない状況から伝手ができた。

 

 何より信頼をおける存在ができる可能性がある。

 レイルたちのことは信用したいと強く思う。まだ、一日だけの付き合いだが、今後有効的な関係を結びたいものだ。

 

 それは時間が解決する。

 

 得られた財産は大切にすべきだ。

 僕は強く思う。

 

「詳しいことは父上を通して決めて行こうと思う、これはユベール家の将来を左右することだからね。これは僕の一存では決められない、少し慎重に進めるよ」

 

 僕はウェルにそう言った。

 元から方針は変わらない。

 

「最終的に人任せですか、自分で蒔いた種は自分で回収しては?」

「……ごもっともです」

 

 ウェルはいつも的確な指摘をしてくれるなと思った。

 

 展開が読めないこの状況、なるべく自分で対処をしたいと思う。

 そう思いつつ、どう父上に話そうか、話したらどんな反応をするか考えながら帰宅した

 

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