実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 ウォーウルフ子爵家に合同事業を提案した。

 そう上手くいくものではないだろうが、財源の根本的な解決をするにはこの方法しか思いつかなかった。

 

「商人は利益なしでは動かない、慈善団体ではないよ。……もちろんこの前の香水キャンドル……あれでは到底商人は動かない」

 

 父上の適切な指摘、だが考えなしで発言したわけではない。

 それはわかっている。

 

 僕がしようとしているならもっと別のこと。

 ユベール伯爵領の名産のワイン。

 実は年々ワインでの収支が少しずつ低下してきている。

 

 だが、今から僕が考えていることが成功すれば根本的な解決になる。

 

 

 この世界は乙女ゲームなので何故か娯楽はあった。トランプやらリバーシやら。

 元々乙女ゲームの世界なので、そう言った娯楽はあった。

 だが、お酒の分野は発達していなかった。

 

「違います。……僕が提案するのはウチのワインを使うことです」

 

 ワインは品質が大事、何年ものかが重要なんだ。

 

 十年もの、百年ものなど。

 

 この世界にはカクテルという文化がない。

 

 前世では当たり前にあったことだ。

 僕もバーによく通っていた。

 お酒が苦手な人でもカクテルなら飲めると言う人もいた。

 

 カクテルはお酒を飲みやすくするために出来上がったものだ。

 昔、アメリカで禁酒法が発令されたことがあり、隠れて密造酒が多く作られた。

 だが、不味くて飲めたものではない。そこでお酒をどうすればうまく飲めるか……そこで生まれたのがカクテルだ。

 

 前世では疲れを忘れるために酒を飲んだものだ。

 会社付近に美味なカクテルのバーがあった。

 

 通い詰めたおかげでなんとなくカクテルの作り方を再現できる。

 

 カクテルの分野を広めればお酒の需要は増える。

 

 

「ユベール家のワインはブランドがありますが、物価が上がったことで利益が年々下がっていると聞いてます」

「……否定はできない、だが著しく低下しているわけじゃないよ」

「ええ、存じてます。ですが、ユベール伯爵領はワイン以外の利益がないのは確か。そこでワインに果実ジュースやフルーツなど混ぜて新しいお酒……ここで仮名ですが「カクテル」と呼ばせてもらいますが、それを広めるのはどうでしょう?」

 

 広まれば儲け話になる。

 お酒に何かを混ぜるだけという単純な作り方だからすぐに類似商品は出るだろう。

 

 だが、カクテルの文化始まりの場所をユベール伯爵領ということも広めれば少なからずワインの収益も増える。

 

 提案を終えて父上の様子を窺ったのだが、驚いた表情をしていた。

 そして、真剣な顔で僕を見つめ続け言葉を発する。

 

「アレンの頭の中にある構想を一度事業案をまとめて僕に見せて欲しい。それ次第だけど、僕も協力しよう。商人は簡単には首を縦に振らない。根拠を用意する必要がある。……提案や交渉はアレンに任せるよ。でも、その前の事業案作成には手をかそう……アレンはまだその経験がない、これも良い経験だろうからね」

「……わかりました。……期間はいかがしますか?」

「そうだね……二週間にしようか」

「わかりました」

 

 ……え、それだけ?

 父上の言葉を聞いて思ったことだ。

 正直驚いている。

 10歳の子供の言い出した……言ってしまえば口先だけの提案、根掘り葉掘り聞かれると思っていた。

 

 まだイメージができないから案をまとめて来いということだ。

 それを父上は僕の事業案次第で協力してくれると言った。

 僕への期待なのか、将来のために経験を積ませるためなのかは不明だが、せっかくもらったチャンスだ。

 

 ……準備を始めようと思う。

 ウェルに協力してもらってサンプルも作ろうと思う。

 母上にも協力してもらおうか。

 そう方針を改め退出したのだった。

 

 すると退出してから10秒ほど経って父上とシンから会話が聞こえる。

 

 耳をすませて聞く。

 

 

 

 

 

『カクテル……だったね。僕は思いつきもしなかった』

『私もそうです。……完成されたものに新たに手を加える……斬新な発想で面白いと思いました。……ですが、上手くいくものですか?』

『わからないよ。……でも、興味が湧いたから計画書を書いてくるように言ったんだ』

『良い判断ですね。……キアン様がまさか狼狽えている状況からここまで冷静になるとは』

『……驚きすぎて逆に冷静になれただけだよ。問題を起こしてきたと思ったら、新しい事業の提案されたからね。あのアレンの落ち着きぶりを見ていたら見習うべきだと思ったんだ。……少しでも親の威厳を保ちたいものだからね』

 

 ……期待してくれたのか。

 嬉しいという思いと期待を裏切りたくないと思ってしまう自分がいる。

 

「……やるしかないか」

 

 精一杯の努力を。

 勘違いがあるにせよ、色々やらかしたのにチャンスを貰えたのだ。

 

 なら、期待に応えたいと思う。

 僕はその場で必ず納得させてみせると心に誓う。

 

 こうして一週間後にアドリアンのお茶会、二週間以内に企画書作成が決まったのだった。

 

 その後は忙ぎレイルとアレイシアに向けての手紙を執筆した。

 

 

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