実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 父上とのやりとりから一週間が経過した。

 この一週間は少し忙しかった。

 まずはレイルとアレイシアに手紙を送ったこと。

 返事は3日ほどできた。

 レイルからは当日の詳しい流れについて。

 アレイシアからは粗相がないようにとか、礼儀はしっかりするようにだとか……遠回しの心配をしてくれた。

 

 当日は色々と楽しみである。

 アレイシアとは会うのは二週間ぶりになる。

 

 定期的なやり取りで僕の家でお茶会をすることになっていたが、アドリアン主催のパーティに参加することを伝えたら延期にすることになった。

 照れたのかな?

 

 また、今週で一番大変だったのはウェルと事業計画書を作成をしていた。

 サンプルも作るために前世を思い出しながら続ける。

 僕はお酒が飲めないため、ウェルに試飲を頼んだ。

 ウェルは少し抵抗感があったらしいが、お酒は成人になってから、職務濫用という立場を使い強制的に手伝わせた。

 

 少し悪い気もしたが、合法的に仕事をサボれると喜んでいやがった。

 ……なんだよ演技かよ。

 

 

 そう思いつつ、試作品を作り続けた。

 ちなみにうちで作れるワインは赤ワインと白ワインの二つ。

 ワインを元にしたカクテルは色々種類がある。

 試作品では前世でよく使っていた簡単なものを六つほど使った。

 コーラ、ジンジャエール、レモンなど。

 ジュースと混ぜたりした。

 

 一般的に普及しているジュースがあり、とてもありがたかった。だから、色々と試せた。

 覚えている限りのものを作り続けた。

 ウェルからも好評で「流石は神童」だなんて冗談を言われ、冗談やめろと笑って誤魔化していたら顔がマジだった。

 

 そういえばウェルと出会った時、爪を隠していただの言っていたのをすっかり忘れていた。

 

 また、製作途中でウイスキーをさらに蒸留することのできる、ブランデーという酒の製造方法も思い出した。

 ブランデーはワインを蒸留して造る。

 作り方はシンプルでワインが作れるなら時間があれば簡単に作れる。

 蒸留を終えたワインを樽に入れて熟成させれば完成。

 

 そうすればワイン以上のアルコール度数(40度くらい)、コクや香りが良くなる。

 

 新たな方法だが、カクテルを作っている最中に「ワインっていい匂いだけどもっと熟成させればもっと香よくなるかも。美味しくなるんじゃない?」とか「あ、度数をもっと上げてみようよ」

 

 と、ワインを沸騰させてみたりと蒸留といっても通じるかわからないのでいろいろやってみた。

 

 結果、沸騰させたワインを冷やして樽に入れて熟成させてみようということになった。

 

 これは試しだ。ブランデーを作るにはどのみち半年以上放置しなきゃいけないので、これは第一歩だと思う。

 

 いろいろ面倒ごとが落ち着いたら蒸留の方法を考えついたとか言って前世の作り方を再現していこうと思った。

 

 この一週間でだいぶ成果がでた。

 カクテル作ってたら新たなお酒の作り方を思いついたという偶然の産物を装うことも可能。

 

 どこの天才かと思われるかもしれないが、今更なので自重する気はない。

 こうして充実した一週間を過ごしたのだった。

 

 そして迎えたお茶会当日。

 お茶会は日中に行われる。

 

「さ、もうすぐで着きますよ」

「ありがとうウェル」

 

 屋敷を出発してまず最初に向かった先はソブール公爵家。

 ウェルが御者席から話しかけてきた。

 今、ソブール公爵邸の門から入り屋敷に向かっている

 

 アレイシアは他家のお茶会にいくつか参加したことがあるので、1人で行くのが心細かったので一緒に行こうと約束した。

 

「……巻き込まないでくださいね」

「僕が毎回やらかしているような言い方はーー」

「社交界孤立、名家との敵対、ユベール家衰退の予兆……何か他に挙げることありますか?」

「……いやぁそれは」

 

 御者席からなので表情が見えないが、懐疑の目で見ているかもしれない。

 

 的確な指摘に言い返すことができず、言葉が詰まる。

 

「……善処するよ」

「そこはハッキリと大丈夫だと宣言してほしいものですね」

「……はい」

 

 最近、ウェルがダメな弟を叱る兄に見えてきた。

 てか、ウェルは保護者の立場かもしれない。

 

 いや、善処するって言ったのも何かやらかす可能性が捨てきれずハッキリと言えないんだ。

 

 そう思いつつも、馬車の窓を覗くと……入り口でアレイシアが待機していた。

 遠目で見ただけだが、かなりめかし込んである。

 今回のドレスは髪色より少し色の濃い青色。

 ドレスがキラキラとしているので、宝石が散りばめられているのだろう。

 

 まぁ、綺麗でも緊張のしすぎで表情が強張っているのだが。

 

『リタ、アレン様がきましたよ』

『あの、わざわざ外で出迎える必要ないんですよ?』

『その考えは愚かですよリタ。ソブール公爵家に名を連ねる者として常に相手方に満足いただくために最善を尽くすものです』

『なるほど、1秒でも早く会いたいんですね。到着予定時刻から30分前から待機してましたからね』

『……』

『はぁ……私に敬語を使うなんて相当緊張されてますよね?』

『……そんなことございませんよ』

『アレイシア様、一緒に行けて嬉しいのはわかりますが、気負いすぎです』

『……はい』

 

 ……うん、可愛い。

 僕はこの二人の会話を聞いて思わずポケットに入っている指輪に触れる。

 それは以前購入して渡せなかったもの。

 

 ……たった一欠片の勇気……それが今の僕に必要なこと。

 前回のようにはヘタレない。

 

 そう決意をしたのだった。

 

 

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