実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 ソブール公爵邸でアレイシアを迎えに行きそのまま王宮へ。

 馬車内では僕とアレイシアは当たり障りのない会話を続けた。会話内容は基本僕が話題を提供し、アレイシアが答えるというもの。

 その会話の中でアレイシアが気になることがあれば質問して僕が答える。

 

 このサイクルを繰り返す。

 

 僕はこのやり取りだけで関係は進展したと思う。

 初めの頃は僕が一方的に話しかけて終わるだけだった。

 

 でも、今では。

 

「アレイシア嬢はこのようなお茶会は初めてですか?」

「いえ、お父様の付き添いで参加した経験がございます」

「経験があるのは羨ましいです」

 

 ……と、今までならばここで会話は途切れていた。

 だが、お茶会、デートと回数を重ねたアレイシアは。

 

「アレン様は……経験がないですか?」

  

 会話が途切れることなく聞き返してくれるようになった。

 少しぎこちないけど、これも進歩だ。

 僕もあえて全て発言せずに質問を待っている部分もある。 

 誘導必要ありの会話のキャッチボールをしている感じだ。

 でも、これも距離を縮めるための一歩だ。

 

 僕はそのまま続ける。

 

「大きな会場ですとお披露目会以来ですね」

「そうですか……やはりその……」

『ドクドクドクドク』

 

 どうしたのだろう?

 アレイシアは表情が変わらずに話をしている。

 鼓動も平常だが、どこか様子がおかしい。

 

 気のせいじゃなければ少しぎこちない会話でソワソワしている?

 

 まだ会って数回だけど、なんとなくアレイシアの様子が窺えるようになった。

 あくまでよく観察すればだけど。

 

 目線が微妙に右往左往していたり、何かを口にだそうとしているのか、唇が微妙に震えていたり。

 

 観察しすぎかもしれないけど、機微を見逃さないのが、女性の扱いで大切なんだ。

 

 母上の教えから学んだこと。

 

 こういう時は「どうしたんですか?」と聞くのではなく、アレイシアから話かけてくるのを待つべきだ。

 

「……き…緊張されてますか?」

「……」

 

 多分アレイシアは照れているのだろう。

 照れたアレイシアはどんな反応するのだろうと観察するべきなのだろうけど、嬉しさが込み上げてきてしまいそれどころではなかった。

 

 覚えていてくれたんだ。

 そのことが嬉しい。

 

「ええ。少し緊張してしまってますが、アレイシア嬢がいるため心強いです。……でも、一番はアレイシア嬢と行けることが嬉しいです」

「……」

 

 あくまで会話を続けなければいけないという義務感と早く返しをしなければいけないという焦燥感に駆られてしまい、このような発言をした。

 

 それがいけなかった。

 ……僕が失念していたのは二つ。

 

 嬉しすぎて舞い上がってしまったこと。

 もう一つはーー。

 

「………」

『ドッ…ドッ…ドッ』

 

 アレイシアは素直に言われるのが弱いらしい。

 僕を見ながらフリーズしてしまっている。

 

「……アレイシア嬢、大丈夫ですか?」

 

 やってしまったと後悔しつつ、アレイシアを起動させるために話しかける。

 

 ……すると、アレイシアは深呼吸をしたら話しかけてくる。

 

「アレン様は一度その言動を見直すべきかと、わたくしと一緒で嬉しいなど冗談でもーー」

「いや、本心からだけど……あ」

 

 これも今更かもしれないけど、アレイシアは僕の発言で多分照れだと思う。この発言は照れ隠しでの饒舌だろう。

 また、気が抜けていると僕は突拍子のないタイミングで本心を口にしてしまうことがあるらしい。

 

「「……」」

 

 そのせいでアレイシアは照れて俯いてしまい、僕はやってしまったと天井を見上げてしまう。

 

 気まずい空気が流れるのだった。

 

 僕は指輪を渡す最高の機会を失った。

 

 その後アレイシアは王宮に着く前に復活した。

 

 

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