実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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「今日は帰りましょうか」

「え?……」

 

 僕はアレイシアに一つの提案をした。

 正直このままお茶会に荷が重い。アレイシアをこのままアドリアンに再度会わせると何を言われるかわからない。

 

 そもそもこうなったのはアドリアンが原因だ。

 自分が王族だからってわがままを通してお茶会を開き、気に入らないと思った人に八つ当たりをする。

 

 今の派閥争いの構図になったのはあのクソみたいな性格が原因だろう。

 乙女ゲームの攻略対象としての性格ならウケがいいかもしれないが、現実ではあのような性格では先が思いやられる。

 

「このまま会場に戻るのも気まずいでしょう、僕も行きますので一緒に帰りましょうか」

「……」

 

 アレイシアは黙って頷いた。

 僕の手引きに身を任せてくれているのはある種の信用してくれているのだろう。

 

 そのことに嬉しく思いつつすべきことの順序を思考する。

 

 まずは会場から出てアレイシアを馬車に送る。

 その後レイルに断ってから帰るか。

 

 僕は会場を出て乗ってきた馬車へ。

 

「アレン様?」

「ウェル、説明は後でするから馬車の用意をしてくれ」

「……わかりました」

 

 馬車の近くに来るなりウェルに睨まれる。

 いや、悪かったって。

 

 後でしっかり説明しよう。

 今回ばかりは僕が原因じゃないし。 

 そう思いつつ、アレイシアを馬車の中に入ってもらう。

 

「アレイシア、すぐ戻るから少し待っていてください」

「……はい」

「僕はレイルに一言断ってくるから待っててくれるかい」

「わかりました」

  

 アレイシアとウェルに一言ずつ断りを入れて僕は会場へ戻る。   

 そういえば会場はどうなったのだろう?

 あの後レイルに任せきりにしてしまった。

 

 それにかなりお怒りのようだったし、乱闘とかなってなきゃいいけど。

 

 色々と心配しつつ、会場ホールへ向かう。

 すると歩いていると二人の足音がこっちに近づいてきている。

 

『あそこまで愚か者とは思ってなかった』

『ここは冷静に』

 

 ……あれ、この声はレイルの声か?

 ちょうどいいか。

 

 そう思いその声近付く。

 

「アレン、ここにいたのか」

「レイルと……クリスタ王女殿下」

 

 組み合わせに思わず戸惑う。

 クリスタはアレイシアに謝りに来たってところか。律儀なことで。

 アドリアンにクリスタの爪の垢を飲ませてあげたいわ。

 

 まぁ、今は要件を伝えてアレイシアの元にいち早く戻ることを優先する。

 

「レイル、すまないが今日は帰らせてもらえないか?アレイシア嬢は体調が優れないようだから。僕も彼女につきそいたいんだけど」

「……わかった。私の方から話しておこう。殿下に会うのは気まずいだろうからな」

 

 どうやらレイルは引き受けてくれるらしい。

 ならその厚意に甘えようと思う。

 

「あの……アレン様」

「どうかされましたか?」

 

 次にレイルの傍にいたクリスタが話しかけてくる。

 

「兄が大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」

「……いえ、僕は特に気にしておりませんので」

 

 反応が遅れるも、すぐに返答をした。

 

「申し訳ありませんが、アレイシア様にアレン様から言伝をお願いしてもよろしいですか?」

 

 クリスタは素直で優しい女の子だ。

 アレイシアと派閥は違えど、年齢も近い。

 

 もしかしたら良い関係を築けるのではないだろうか?

 思わずその考えに至ってしまう。

 だが、今は会わせるわけにはいかない。後日改めてもらおう。

 

「いえ、お断りさせていただきます。無礼を承知で言わせていただきますと、そう言ったことは直接アレイシア嬢に伝えた方がよろしいと思います」

 

 立場も近い。

 今、アレイシアには一人でも多くの理解者が必要かもしれない。

 

 異性には相談しづらいこともある。

 なら、交友関係の輪を広げるきっかけになればと思った。

 

「……そうですね。……また後日改めて私から伝えたいと思います」

 

 後はアレイシア次第だな。

 

「では、本日は先に失礼させていただきます。またご機会がありましたら、よろしくお願いします」

 

 僕は二人に一礼して馬車へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 馬車で揺られながら王宮からソブール公爵邸へ向かう。

 アレイシアと向かい合うように座る。

 少し気まずい雰囲気になるが、ガタ、ゴトという馬車が進む音。

 

 『ドッ…ドッ…ドッ』とアレイシアの早い鼓動だけがこの空間に流れる。

 

 アレイシアは一回り大きい指輪と僕を交互に見ている。

 そして、僕と偶然目が合うとすぐに逸らされてしまう。

 

「アレン様……これ……大切にしますね」

「……はい」

 

 この少し気まずい雰囲気の中、アレイシアが小声でモジモジしながら指輪を両掌に乗せ見せながらお礼を言ってくれた。

 

 ちなみにだが、僕とアレイシアが会って自分から話しかけてきてくれたのは今日が初めてである。

 

 僕は返事のみの返答になりそれ以降は会話はなくなってしまった。 

 最後にソブール公爵邸に到着して別れの挨拶を交わして別れた。

 アレイシアは無言で屋敷に入ってしまったのでリタとの会話が聞けずどう想っていたのかは聞けなかった。

 

 今日のことは後日レイルから聞いたのだが、お茶会はレイルとの言い合いで怒ったアドリアンが中止を宣言した。

 

 社交界で噂となった。

 アドリアンがアレイシアを傷つけたという悪い噂が広がった。

 自業自得でざまぁと思う反面僅かにアドリアンには感謝している自分がいる。

 

 アレイシアは僕に対する態度が少し変わった。緊張で鼓動が早いことは変わらないけど、口調は少し柔らかくなった。

 過程はどうあれ僕はアレイシアとの関係を進展させることができたことに嬉しく思う。

 

 これで目先の問題は解決できた。

 

 これからは物事を慎重に進めていこうと思う。

 

 まずアレイシアと親睦を深めていきたい。

 目標はリタと同じように接するくらい。 

 

 新しい事業のこともある。

 

 これから乙女ゲームが始まるまで時間がある。ゆっくりと時間をかけてじっくり進めていこう。

 

 

 

 

 

 第二部 完

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