実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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第三部
1


気がつけば転生してから15年経っていた。

 この世界では15歳から成人となる。

 

 そして、後1月足らずでエルス学園に入学することになる。

 乙女ゲームじたいは主人公が入学してからなのですでに始まっているが。

 シナリオの内容はわからないけど大体の容姿はわかる。

 設定は主人公は平民から男爵貴族になった女の子。 

 隠し子で男爵の正妻との子供が出来なかったから引き取った形だったと思う。

 

 今更だが、シナリオ覚えておけば良かったなぁ、なんて思っていたりもする。

 

 

 アレンルートは乙女ゲームが始まってから1年経過してから始まる。

 それまでは学園編などでは主人公のステータスをあげておくのが必要。

 あくまでアレンは弟キャラ。頼りがいのある人物にならなければいけない。

 

 基本エルス学園は全寮制だ。一人だけ身の回りの世話をするのに従者を連れて行ける。

 

 学園で学ぶ内容は実は自分の家で学んだ内容がほとんどで僕自身あまり意味ないんじゃないかと思う。

 だが、エルス学園の目的は貴族の子弟に学園で高度な教育することで質を上げることだ。

 一カ所に集めて教育し、集団生活を行わせることで自力をつけさせること。

 コミュニティを広げること。

 学園は留学制度もあるらしいので、外国のコネクションを作ることもできる。

 

 将来の国を担う若者を育てるため、とされている。

 まぁ、実際のところは入ってみないとわからないけど。

 

 僕自身、学園は少し楽しみだったりする。だって3年間、学期間の休みは別として、アレイシアと距離を詰めるチャンスだからだ。

 今まではパーティやお茶会でしか会えず、手紙でのやり取りが基本。

 

 だが、日常生活を共にすることができる。

 これは大きく前進するチャンスなんだ。

 

 

「アレン様、最近弛んでるんじゃありませんか?もうすぐ由緒正しきエルス学園に入学となりますのに」

 

 今日は定期的なお茶会の日だ。

 アレイシアと誓いを交わしてからおよそ5年が経った。

 アレイシアの容姿は成長し綺麗になった。

 まだ幼さが残っているものの、美しいと言えるだろう。

 

 また、最近だと化粧も始めたのか、幼さが消え、大人の女性になりつつある。

 

 そんなアレイシアとはお茶会を繰り返し、信頼関係は構築できたと思う。

 

 

「どうしてもアレイシアの前だと気が緩んでしまってね」

「貴族たるもの常に優雅であれ、お忘れですか?」

「いや、わかっているけど……」

 

 今もお茶を飲んでいる時に、ティーカップをソーサーに置く時雑になってしまった。

 そのことを指摘されてしまっている。

 

 5年経っても話し方や指摘の口調に関しては変わらない部分がある。

 少し違いがあるとすれば幾らきつい口調になっても大丈夫と思ってもらえていること、少し表情が豊かになった。

 

「やはりダメですわね。わたくしの婚約者としての自覚が足りていないご様子……このままではわたくしの評価につながります。いいですか、公爵家は貴族階級では一番上の位、わたくしが名門たるソブール公爵家の顔に泥を塗るわけにはいきません」

 

 淡々と無表情で告げるアレイシアは知らぬものからしたらただの面倒な婚約者だろう。

 

「やはり、ここはわたくしが直々に指導して差し上げる必要がありますわね。ですが、1日だけでは足りぬかもしれません。またエルス学園では品位が疑われるかもしれません。……なのでその……よ、よろしければ」

『ドク…ドク…ドク』

 

 先程まで淡々と告げていたアレイシアだが、今度は少し俯いて声が小さくなっていく。

 

『アレン様のためであって……わ、わたくしが直々に』

 

 モゴモゴと僕の耳ではないと聞こえないくらいの小声。

 ……うん、かわいい。

 

「……ならお茶の入れ方のご教授をぜひお願いしていい?」

 

 ここで汲みとってやるのが僕の役目だ。

 これが現在の僕とアレイシアの関係だ。

 アレイシアは僕を思って提案をしてくれるんだけど、どうしても誘うまでが勇気が出ない。

 この声が小さくなってしまっているのは一種の照れ隠し。

 

「仕方ありませんね。……アレン様のためわたくしが一肌脱いで差し上げます」

「よろしくお願いします」

 

 ……僕の婚約者可愛すぎだろ。

 アレイシアはこの5年間で表情が豊かになった。

 何か誘いごとをする時や緊張している時は無表情になる。照れる時は俯いて声が小さくなる。

 嬉しい時は声音が少し高くなり、口角が僅かに上がる。

 

 まだ人前での表情の変化が乏しい我が愛しの婚約者、そこがかわいいところである。

 

 今日のお茶会は次の約束を決めて終了した。

 

「アレン様、今日はお招きいただきありがとうございました。次はわたくしがご招待いただきます。覚悟なさってください、基礎から丁寧に教えて差し上げますので」

「ありがとう、楽しみにしているよ」

「遊びではありませんのよ、そこはご理解なさってください」

「わかってるよ」

 

 最後に帰りの見送りにもこんなことを言うアレイシア。

 ……本当にアレイシアは変わった、もちろん良い意味で。

 

 遠回しにすぎるけど、積極的に僕も会う機会を増やそうとしてくれている。

 

「では、本日は失礼しますね」

「はい」

 

 そう言って、僕はアレイシアに手を貸して馬車に乗せる。

 そして、その後を追うようにリタが乗ることなく、僕のそばに寄る。

 

「アレン様、少し宜しいですか?」

「…何かな?」

 

 リタは申し訳なさそうに話しかけてくる。

 

「旦那様からのお手紙になります。このような形になってしまい申し訳ありません」

「あ、お気になさらず」

 

 リタは僕にラクシル様からの手紙を渡すとそのまま馬車に乗った。

 まぁ、いつものことなんだけどね。リタは律儀なんだな。

 多分この手紙は例の事業の件だ。

 

 僕はそのまま門に向かうアレイシアの馬車を見送る。

 

『リタ……今アレン様に何を渡したの?』

『旦那様からの手紙です』

『……わたくしお父様から何も言われてないけど』

『アレイシア様はアレン様とのことになると抜けが多いので、忘れないように私に頼んだとのことです』

『……お父様はわたくしを信用しなさすぎよね?』

『一度、渡しそびれたことあったのお忘れですか?』

『……そ…それは……アレン様を誘うのに必死で』

『それを危惧して旦那様は私に手紙を渡したんですよ』

『……なるほど』

 

 うん、いつも通りだ。

 なるほど。リタが最近手紙を僕に直接渡すようになったのはこんな経緯があったのか。

 ポンコツさが出始めたアレイシアに思わず笑ってしまう。

 

「アレン様、楽しそうですね」

「まぁ、最近ことがうまく進みすぎているからね」

 

 控えて立っていたウェルが話しかけてくる。

 やはり僕はわかりやすいようで、特に否定することなく答えた。

 

「ウェルもじゃない?リタさんと良い雰囲気だったけど?」

「……そんなことはありません……では、俺は片付けしてきますので」

 

 ウェルは少しばつが悪くなったのか、その場から去っていった。

 ウェルとリタはよく話す。

 最近雰囲気も良くなりつつある。

 

 将来が楽しみだと影で応援していたりする。

 そう思いつつ、リタから渡された手紙に視線を落とす。

 この手紙の内容は把握できている。

 

 ブランデーやカクテルについてだ。

 

 僕は5年前クルーガーにこの事業を持ちかけた。

 サンプルと事業計画を持ち込んだら、ウォーウルフ子爵家の当主が自ら話を聞いてくれた。

 

 僕のプレゼンテーションは色々と課題が多くあったが、新事業としては素晴らしく内容を詰めていけば成功する可能性が高いとのことで共同事業となった。

 

「……後で内容を読むとして……明日の準備をするか」

 

 明日はクルーガー、ギルメッシュ、レイルたちとお茶会をする。

 主催家は順番で行っていて、たまたま今回は僕が担当だ。

 

「そういえばレイルが知らせたいことがあると言っていたな」

 

 手紙のやり取りで事前に知らせたいことがあると告知があった。

 内容はよくわからないが、直接話すと言うことは派閥争いに関わることだろうな。

 

 とりあえず明日にならないとわからないので、準備だけは済ませよう。

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