実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 変な言葉を聞き戸惑ってしまう。いや、誰だよ。

 少なくとも女の声。

 僕はその場で声のした入口を振り向く。

 

『あ、やべアレンきゅんがこっち向いた……やべ』

 

 そこにはボブカットの黒髪、パッチリとした黒目の少女が体を隠し顔だけを覗かせている少女がいた。

 呼吸が少し荒く、不穏な空気を漂わせていた。

 どこか座敷童を連想させるような人物。

 

「……アレン様、今はわたくしと話しているのですよ?……話している時は相手の目を見る……そんなこともわからないのですの?」

「いや……そうじゃなくて」

「誤魔化すのではなく理由を述べてください」

 

 ……これ、照れ隠しじゃなくてかなり怒ってるわ。

 座敷童のせいで気後れしてしまった。

 

 どうするべきか……今はアレイシアと話すべきか。

 

「ごめんよ。入学で浮かれていたんだ」

「そうですか。なら気を引き留めてください。まだ初日ですのよ」

「うん」

 

 今回は僕が悪い。確かに入学で浮かれていたのは事実だし、いつもと違う行動をしたのは否定できない。

 それにアレイシアの前で他の女のことを考えるのは良くない。

 

「……あれ?」

 

 一先ずはアレイシアの謝罪を済ませ、次の対処、座敷童少女の対処をしようと思い入り口に視線を向けたのだが……少女の姿が消えていた。

 どこいった?

 

 まさかあの時は幻聴?

 そう思いつつ、目線を周囲に配ら過ぎないように耳を澄ませる音を探る。

 

 僕はこの5年間で聞き分ける能力が向上してる。

 足音や声の方向がわかりどのくらいの距離感があるのかなんとなくわかるようになった。

 

 だから、普段目よりも耳を頼ることが多いのだ。

 

 ……誰かこっちに向かっている?

 小さく軽い足取りだが、僕とアレイシアのところに向かっている足音がある。

 

『はぁ…はぁ…はぁ』

 

 呼吸が荒いし、先ほどの座敷童……先ほどのカプとかいってたあたりこいつ転生者か?!

 まさか僕に接近しようと。

 

 呼吸がどこか生暖かいし……何か仕掛けようとしている?

 頭に入ってくる情報量が多すぎてその結論に至るまでに時間がかかった。

 故に反応が遅れた。

 

「アレンきゅん!アリスって言います!」

『ドク…ドク…ドク』

 

 ……気づいた教室内にはその張り詰めた声が響いていた。

 アリスと名乗った少女は僕の右側……アレイシアと僕の席の間に立っていた。

 僕の右手を両手で掴み自己紹介をしてきた。

 

 僕は頭が真っ白になる。

 

『アレンきゅん?』

『きゅんってなんだ?』

 

 いや、気にすることそこかよ。

 もっと気にすることあるじゃん!

 

 アリスの予想外の行動に戸惑うが、持ち直し最初にすべきことをする。

 

「えっと……君はいったい」

「ずっと鑑賞したかったです!」

「……え?」

 

 ……え、鑑賞?どういうこと?なんだよこの状況。

 このアリスの発言で教室内はざわめきが増している。

 

 やばい。そう思い勢いよくアレイシアに視線を向けると。

 

「あ……アレイシア?」

 

 振り向いた先には俯き、生気がなり死んだ魚の目をしているアレイシアがいた。

 ……なんだよその表情

 

『はぁ…はぁ…はぁ……すぅーはぁ』

 

 そして、目の前には荒げた呼吸を整えるアリス。

 

「生で見ると可愛さーー」

「ちょっと来い!」

 

 僕は次に爆弾を投下しようとするアリスと死んだ魚の目をしているアレイシアの腕を少し強引に引っ張り教室を出た。

 

「きみ!どこへ?!」

「緊急事態です!」

「……は?」

 

 教室を出る際、黒スーツを着ている若い女性に声をかけられるが端的に伝えると急いで教室を離れる。

 

 これ以上居続けたらまずい気がしたからだ。

 こうして、アリスが次どんなことを言うつもりだったのかよくわからないがこの場から離脱した。

 

 

 

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