実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 エルス学園のサロンの一室。

 白を基調に金銀色が織り交ぜられている麻の葉模様の壁紙。

 アンティークのサイドテーブルを中心に椅子三つずつ並べられている一室。

 天井に小さなシャンデリアに壁には部屋の雰囲気に合う絵画。

 

 この部屋に入った第一印象は眩しすぎるだ。

 テラスから照らされる陽の光が反射して煌びやかになったせいで尚更感じる。

 

 そんな一室に9人の男女

 

 僕、レイル、ギルメッシュ、クルーガーの男4人。

 アレイシアにアリスの女2人

 最後に端の方で固まって話している使用人のウェル、リタさん、セバスさんの3人。

 

 ウェルたちに西洋菓子や紅茶が用意されており、それぞれがティータイムを満喫していた。 

 

 席は僕とレイル、ギルメッシュとクルーガー、アリスとアレイシアと2人ずつ座っている。

 ウェルたちはサロンの端に待機してもらい雑談していた。

 

 エルス学園は全寮制。規定で一人まで従者を連れてきて良いことになっている。だが、義務ではないので同伴させていない人もいる。ギルメッシュやクルーガーがそうだ。

 

 普通は姿勢を正し、主人の要件に対処できるようにするのだが、僕たちだけなので楽にしてもらっている。

 

 皆周りに迷惑をかけぬよう気を遣って声量は小さくしているものの、密室で人も少ないため会話内容は聞こえてくる。

 

『旦那様になんと報告すれば。アレン様は行先々で問題を起こされる……あれは病気ですね』

『ウェルさん気にしすぎるだけ無駄ですよ。気持ちはわかりますが。私は何回もアレイシア様の惚気話聞かされますし」

『お二人とも大変ですな。私も同じようなものですがね。最近はレイル様に無茶振りされて老体を労わって欲しいものです』

 

 愚痴を言い合ってるだけだよね?

 いや、気苦労かけてるのは申し訳ないけど病気ってひどくないか?

  何を話しているとウェルに聞いたら互いに情報共有や意見交換をしているとか言ってたけど全く別物だよね?

 

 3人はこの5年で親睦を深めていた。

 苦労かかる主人がいる共通点でよく話すようになったのか。

 愚痴を吐きだし、ストレス発散や年齢が一回りも違うセバスにアドバイスしてもらったりしている。

 

 似たような境遇同士仲良くなったのだろうな。

 

 最近ではウェルとリタさんがいい感じなので将来楽しみだったりする。

 

『ダメですね。基礎すらまともにできておりませんわ』

『はぇぇ。お茶って飲むのにこんな作法あるんすねぇ。あ、このお菓子美味しい』

『……た…食べながら話すなど品がありませんわ。淑女らしくですね』

『あ、すいませんっす……でも、私高級菓子食べる機会なかったんで思わず……それに私みたいな芋女が淑女だなんて……なんか照れるっす……ふへへ』

『……』

 

 アレイシアとアリスの会話を聞く限り仲は良好だ。

 僕も楽しく会話したいと羨ましいと思いつつ、安堵している。

 

 アリスは天然なのか、前世での経験から不明だが、アレイシアのきつい小言を聞き流しつつ、馴れ馴れしく接している。

 口調もラフになっているので素で接しているのは確か。

 アレイシアも今までにない反応に戸惑っているが、楽しそうだ。

 

『マジかよ、アレンのやつそんなことしでかしたのか……てか、あのアリスって平民もキャラ濃いよな。なんだよアレンきゅんって……。あぁ、アレンとクラスメートになりたかったぜ』

『私は吹き出しそうになりましたよ』

『そんな珍事なかなかお目に掛からねえってのに』

 

 楽しそうに話すギルメッシュとクルーガーは……後で何か言われそうだな。

 僕も混ざりたいなぁ、揶揄われるだけだと思うけど。

 

 周りに耳を傾け、そんな日常会話パートを楽しむ中僕は……そうやって現実逃避まがいなことをしていた。

 

「アレン、聞いてるのか?問題がいち早く片付くことはいいことだ……だが、一体何をしたらそんな可笑しな状況になるんだか」

 

 見ながら楽しい会話をしている時、僕はレイルから説教まがいのことを受けていた。

 先はどのアリスの一件はすでに説明を終え、今後の方針についての話になったのだが、正面に座るレイルから呆れられたんだ。

 

「そんな顔しないでよレイル、わざとじゃないんだから」

「君のその言葉は最も信用できんな。少し慎重に物事を進めることを覚えたらどうなんだ?」

 

 ……ごもっとも。

 諌めることもできず、正論を言われ苦笑いした。

 

「はぁ……言って直るならこんなことになってないか……過程はどうあれ不安解消できたことを喜ぶべきか……」

「そうそう、前向きに捉えようよ」

「……それもそうだな……それにしても……冷めたな」

 

 レイルは諦めた表情をしていた。

 手元に置かれたぬるくなった紅茶のティーカップに視線を落とす。

 話はセバスさんに入れてもらった直後から続いていた。紅茶は人肌ほどの温度になっていた。

 事情説明した後、レイルから二人で話したいからと席を分け今の体制になった。

 

「さて、転校生の話はこれくらいにしよう」

 

 仕切り直しのようだ。

 レイルは冷めた紅茶を啜り、ソーサーに置いた。

 

「話中すまない。皆一度耳を傾けて欲しい」

「お、やっと説教終わったのか」

 

 レイルの言葉に話していた2組は会話を切り上げた。

 待ち侘びたと反応するギルメッシュは席を立ちこちらに来る。

 それに倣いアレイシアたちも向かう。

 

「少々長丁場になるかもしれない……そうだな……セバス、テーブルを移動させるのを手伝って欲しい」

「三つ巴の形でよろしいですか?」

「それで構わない」

 

 レイルの指示でセバスはウェルとリタさんに手伝ってもらいテーブルを移動

 机を中心に椅子を6つ並べ即席会議机を作った。

 各自が席に座ると開催者であるレイルが立ち上がり発言する。

 

「皆入学初日から集まってもらいすまない。色々想定外なことをしでかした人物のせいで開始が遅れてしまった」

 

 皆の視線が僕に集中し、くすくすと笑い声が聞こえた。

 ここで冗談はいらないよ。

 アレイシアは視線のみだが、表情は柔らかい。よほどアリスとの会話が楽しかったらしい。

 

「そんな堅苦しいものじゃない。気を楽にして構わない。だが、開始前に新たな友に自己紹介を願おうか」

「はい」

 

 話の硬い空気を断ち切り今度はアリスに視線が集中する。

 

「……し…紹介に預かりました。お初にお目にかかります。アリスっていいます」

「そんなに畏まらなくていい。アレイシア嬢と接していたようにしてくれて構わない。ここにいるものはそう言ったしきたりを気にしない人物だからね」

「……はい」

 

 アレイシアとは打ち解けていたが、レイルたちと接すると緊張気味になるアリス。

 レイルはそんな彼女を察してか言葉を使ってかけた。

 

「……特技は化粧!自分でするのは苦手ですが、人にするのが好きです!趣味は鑑しょ……人間観察です!」

「ほう…変わった能力を持っているようだ……もしかしたらその力を借りるかもしれないな」

「はい!なんでも言ってください!」

 

 ……今僕を見ながら鑑賞って言ったか?

 ま、素を出しているからいいとしよう。

 

 レイルの冗談を挟みつつ、アリスの自己紹介は終わった。

 

「本題に入ろうか」

 

 レイルの一言で始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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