実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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 どうしよう。多分この声フローラかもしれない。

 主人公のCVは聞いたことがある。なんとなく予想と、独り言の内容からもしかしたらと思った。

 

 幸い教室にはアレイシアがいない。

 だが、このまま何もせずに無視した場合、フローラは突撃する可能性もある。

 アドリアンとオーラスを攻略している時点で普通の思考はしてない。

「ふぅ……」

 

 面倒だなとため息する。

 目を閉じ耳に意識を集中させる。

 ざわつく教室外からアドリアンとオーラスの声を探す。

 

 ……いないようだな。

 どこで何をしているかまでは知らないけど、この場にいないなら大丈夫そうだ。

 

 ここはフローラに接触すべきだ。

 もしアレイシアと過ごしている時に接近されたら最悪だし、レイルとの話もある。

 

 ……よし。

 

 決意を改め、教室外へ。

 昇降口へ向かうため、移動を開始する。

 フローラは僕が視界に映るなりすぐに行動を開始した。

 

「君、元気ないね?……どうしたの」

 

 ほら来た……。その声の方向を向くとピンク頭の女生徒がいた。

 話しかけてくんなよ、と一瞬口から出かけたが、あえて言わない。

 ……ゲームのアレンのフリをしよう。

 確かゲームのアレンは自分に自信を持てていない。

 

「いえ、別になんでもないです」

 

 こんな感じで良いだろうか?

 興味なさげに反応し、俯き気味で反応した。

 そして、なるべく話を長引かせる。

 なんのつもりで僕に接してきているのか、その意図を聞き出すために。

 

 

「君新入生だよね?私新入生ってどんな子たちがいるのか気になっていたのよね。私はフローラ=メーデンっていうの、よろしくね」

「あ、はい」

「今年もいっぱいいるのね。やっぱまだ、不慣れ?」

「……えっと」

「そうなんだぁ、でも安心して……私、元平民でね。色々あってここに入学したのよ。……何かわからないことあったら気軽に先輩に聞いてね」

「……」

 

 この子は僕と話す気があるのだろうか?

 会話も特に返答もしてないのに次々に話し出すし。

 なんか雰囲気ポアポアしてるんだよなぁ。人生ハッピーというか……。

 

「……あはは、そんなに気を遣わないでも大丈夫よ」

 

 いや、別に気を使ってないけど。

 僕の内心とは裏腹にフローラは真剣な表情になる。

 え、なんでそんな表情になるの?

 表情コロコロ変わるなぁ。

 

「何か悩み?……さっきから俯いてるよ。話す時は目を見ないと」

「す、すいません」

 

 急に正論を言われたせいで条件反射で謝罪してしまった。迷惑だからって目を合わせないのはいけないよな。

 すると、フローラは……何故か慈悲の笑みを浮かべてくる。しかも、悲しそうに。

 

「ご、ごめんね急に……馴れ馴れしすぎたね。君が悲しそうな顔してると放っておけなくて」

 

 放っておいてほしい。

 長く会話しすぎたせいで注目を集めてしまっているし。

 フローラは悪くも有名だ。

 その悪名は一年にも流れていている。

 そんな生徒に僕が一緒にいたらそりゃ注目集める。

 

「人に話すだけで楽になると思うな……私でよければいつでも聞くよ!……学園ではよく中庭にいるのよ。綺麗な庭園があってね……そこでお昼寝するのが好きなの。だから、いつでも来ていいからね。私はあなたの味方よ。なんでも相談して。じゃ、またね!」

 

 そう話し終えるとフローラは一人で走り去った。

 何がしたかったのだろう?

 勝手に一人語りして、納得して去っていったよ。

 

『あ、私ったら名前聞くの忘れちゃった』

 

 うん、おかしい。

 

 立ち去った後のことまで話しているし、多分それがシナリオの流れなのだろう。

 そう結論づけることは尚早かもしれないけど、嵐のように接近し、去っていった姿を見るにそう思えてならない。

 

 後でアリスに聞くとして……今後どうするべきだろう?

 例の庭園に行くべきか……いや、面倒だし無視するか?

 

 でも、レイルに相談だけしてみよう。

 

「アレンさん、何があったのですか?」

「いやぁ……なにがあったんだろうね?一方的に話して去っていったよ」

 

 今後の方針に悩んでいると様子を窺っていたであろうクルーガーに声をかけられる。

 

「例の……。知り合いだったんですか?」

「いや、初対面だったよ」

「その割には随分と楽しそうでしたね」

「一方通行だよ。会話成立しないし、有る事無い事言うし」

「言葉に棘がありますね、何か気に触ることでもありましたか?」

 

 心配してくれているんだな。クルーガーは優しいな。 

 眉がうちに寄っている。事前にレイルから情報を聞いているから警戒しているのだろう。

 ここで隠すこともないのであったままを話す。

 

「面倒なだけだよ。急に話しかけてきたと思ったら、元気がないけどどうしたの、よかったら相談に乗ってあげようかとか……ありがた迷惑なことがあっただけ」

「……妄想で会話をしていると……単なる妄想癖か……覚醒剤の類かもしれませんね」

「それはないんじゃないかな?流石に。

それなら例の二人もそうなるかもね」

「……そうですね」

 

 クルーガーはメガネを掛け直す。

 …冗談で言ってないんだよな。

 今の話を聞く限り、事情を知らない人からするとそう見解をする人の方が多いのかもな。

 

「とにかく場所を移そうか」

 

 クルーガーは黙って頷いた。

 ここは視線が多すぎる。特に入学早々やらかした僕にまたやってんのかこいつ、なんて愚痴が聞こえたし、この場から立ち去るのが賢明だろうな。

 その後、レイルたちと合流したのだった。

 

 

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