実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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『ドクドクドクドク』

 

 アレイシアの体は熱っていて呼吸が少し荒い。話し方はリタと二人きりの時と同じであるが、こうなった原因はアルコール。

 

「あ、アレイシア。大丈夫」

「アレン様は優しすぎよ……ヒク。なんでこんな面倒くさい私なんかに構って……」

 

 アレイシアは酔ったらこんな感じになるんだなとわかった思わぬアクシデントだが、僕の不注意だ。

 早く水を飲ませないと。

 

「急ぎでお冷を頼めるかい?」

「か…かしこまりました」

 

 水分を取らせることが最初。顔を真っ青に僕たちを見ていた店主に頼むと慌ててグラスに水を注ぐ。

 

「こ、こちらになります」

「ありがとう。アレイシア、まずはこれを飲んで」

 

 震える手で渡してくるグラスの入った水は今にもこぼれそうだった。

 僕は受け取ると手渡そうとする。だが、アレイシアは受け取ることなかった。

 

「……アレン様は何故こんなわたくしを選んでくださったの?……他にももっと良い方が居られるのに。わたくしいつか捨てられてしまうわ。……そしたらもう……わたくしはどうしたら」

「そんなことないから。とりあえずこれ飲んで……ね」

「今回もまた迷惑を」

 

 アレイシアは僕から視線を外すのでなく見つめそう告げる。宝石のような青い瞳には涙が漏れ出し、頬を通る。

 ……アレイシアめっちゃ気にしてるじゃん。

 えぇ、これ大丈夫?僕が聞いちゃまずいやつじゃない?

 顔が真っ赤で素直なアレイシアに混乱するのだが、この状況は非常にまずい。

 

 持っていたグラスをゆっくりとアレイシアの唇に近づかせ、飲ませる。

 

「さ……ゆっくり飲んで」

 

 ゴクリ、とアレイシアの喉に水が通る。

 またゆっくりとゴクリ、ゴクリと飲ませていく。

 

「アレン様ごめんなさい。ダメなわたくしを許して」

「そんなことないよ。僕はそんなアレイシアをひっくるめて好きなんだから」

「……アレン様」

 

 涙が収まったと思ったら再びウルウルとする瞳。泣き上戸に自虐。アレイシアとお酒を飲むのは控えた方がいいな。

 ……ふと、こんな考えが浮かぶ。

 このまま、話し続ければアレイシアの本音を聞けるのではと。

 愛していると直接言われたい。

 でも、こんなことで本心を聞けたとして嬉しくない。

 邪な考えが浮かんだことを悔いる、そのまま思考を切り替える。

 

「すまないけど、エルス学院に行ってリタさんを呼んできてもらえるかい?」

 

 あたふたしている店主さんに要件を伝えた。

 まずはリタさんを呼んで事情を説明。

 一先ず呼んで協力してもらった方が良いと判断した。

 僕は店主さんに追加で店番はやっておくと伝えるとアレイシアを抱き抱え、カウンター裏の室内に移動する。

 

「まずは……よいしょっと」

「……アレン様の顔がこんなに近くに……ウヘヘェ」

 

 アレイシアを抱き抱える。

 アレイシアってお酒に酔うとこんなになるんだ。人前で飲むと危なそうだし、これから細心の注意を払いたいと思う。

 アレイシアが僕とお酒飲まなかったのはこういうことだったのかと思うもまずはアレイシアを寝かせるためにカウンターの裏側に。入ると横長のソファにアレイシアを寝かせた。

 それから20分後にリタさんを連れた店主は店に戻った。

 リタさんに介抱してもらい話があると言われ店主さんと話をしていた。

 

「あの……アレン様この度はーー」

「今回のことは僕たちが悪いから気にしないで」

 

 こっちが100パーセント悪いのに本当に申し訳ないことしちゃったな。

 でも、ここまで責任を感じるってことはそれほどこの仕事に真剣にやってくれているってことで

 

「これからもこの店をお願いね」

「……はい。精一杯お勤めさせていただきます」

 

 僕がこの人に偉そうに言える立場ではない。

 そもそもカクテルは僕の立案でできだので実質運営は任せきりだった。

 だが、そのことを一言伝えようとした時だった。

 

「アレン様」

 

 カウンターから出てきたリタさんに話しかけられたことにより会話は途切れる。

 

「アレイシアはどう?」

 

 浮かない表情のリタさんの方を向き、様子を聞く。無事だと思うも確認のためだ。

 

「今は落ち着き就寝されてます。事情は窺っております。そう言ったことはほどほどにお願いしますね」

「……はい」

 

 厳重注意と言ったところか。リタさんに細目で見られて思わず苦笑い。

 耳元で囁いたことが原因だろうな。

 気をつけよう。目が覚めたら謝罪しようと思う。

 

「申し訳ありませんが、アレイシア様はあのご様子。本日はーー」

「そうだね。今日はここまでだね」

 

 皆まで言われないても察する。

 でも、せめてできることはしよう。

 

「せめて学園まで送らせてほしい。女性一人では危ないしね」

「お心遣い感謝致します」

 

 男としてこのままリタさん任せにするのはいかがなものかと。

 せめて送り届けるまでするのが婚約者としても役目だろう。

 リタさんの鋭い視線はふぅ、という小さいため息で柔らかい表情となる。

 どう思っているかわからないが少なくとも悪くは思われてないだろう。

 

「アレイシア様は幸せ者ですね。アレン様のような方がいて」

「そうなら嬉しいね」

 

 帰り、薄暗い道を僕がアレイシアを背負い隣に歩くリタとそう一言交わしたことで悪い印象は持たれていないと思った。

 人通りは少なく、聞こえるのはリタさんの鼓動と呼吸、アレイシアの規則正しい寝息。

 ゆっくりと緊張していないリズムよくゆるりとしている。リタさんから今回の一件でマイナスのイメージがついたと少し不安だったが、それがないとわかり安心したのだった。

 

 

 ……だが、今回の一件はどこから漏れたか不明だが、次の日学園の昼食時の時に。

 

「お前婚約者酔わせるとか最低だろ」

「君は僕をどう思っているんだい?そんなわけないじゃないか」

 

 ギルメッシュに、「うわぁ……」とドン引きしながら言われた。レイルもクルーガーも同じような顔だった。

 すぐに否定したんだが、信用されてきないようだった。

 理由、それはアレイシアが次の日体調不良で欠席したのが原因だった。

 

 ちなみに本当の理由をリタさんから聞いたのだが、昨日のことをなんとなく覚えているらしくて恥ずかしすぎて熱を出したとか。

 一先ずお見舞いに行こうと決めるとその前に誤解を解かなきゃいけないと思い、レイルたちと昼食時間すべてかけて弁解したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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