実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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この状況はかなりやばい。

 

 この修羅場をどうするべきかを考えるも、どっちを選ぶかを取るだけ。

 今フローラのシナリオ通りに伝えて、アレイシアに後で話に向かう。

 それを選ぶとアレイシアとの信頼に多少なりとも溝が生まれるかもしれない。

 

 逆をすると、アレイシアの信頼は勝ち取れるだろうが、レイルの計画に支障がでる。

 レイルからは別に気にしなくて良いと言われたけど、かなりの痛手だろう。

 

 だが、考えている暇はないのは確かだ。

 間を開けすぎると怪しまれる。フローラはこの世界をゲームの世界だとまだ思っている。

 シナリオはとんとん拍子に進まなきゃいけない。

 

 レイルの計画失敗することは内乱を意味する。

 ……仕方ない。

 アレイシアには後で土下座しよう。

 

 そう結論づけ、僕は踵を回しアレイシアに向く。アレイシアの名を呼びまずは少し拒絶を意識しつつ、なるべく傷つけないように言葉を選び発しようとする。

 

 ……だがーー。

 

「……アレーー」

 

 アレイシアの顔を見て言葉が詰まる。

 表情が少し曇っていたからだ。……おそらくシナリオ通りの言葉をかければアレイシアの表情はさらに曇ることになる。

 ……僕はやはりアレイシアが大切なんだ。不安にさせたくない、悲しんでる顔なんて見たくない、僅かでもアレイシアを不安にさせる、悲しませることをしたくない。

 

 ……仮に嘘でも彼女に伝えるなんてできるはずがないんだ。

 

 それにフローラたちが言った言葉を間に受けてる可能性もある。

 そもそもいつから聞いていたか、わからない。

 周りの声がうるさくて全く聞き取れなかった。

 ……なんと声をかければ良いのだろう?

 

 まっすぐ僕を射抜くようなアレイシアの瞳から目を離すことができない。

 

「……」

 

 この沈黙の間に耐えかね視線を下ろしてしまう。

 かける言葉が思いつかなかった。

 

「大丈夫だよ。しっかり言葉にして伝えなくちゃ」

 

 次なるフローラのセリフ。

 これは最後に攻略したアレンに告げる言葉だ。

 次に僕が発する言葉を告げることで後はお助けプレイするに連れていけば逆ハーエンドは達成したことになる。

 

 どうしよう、どうしたらうまくこの場を収められる?

 悩み続け、焦りが見える。

 視線がどんどん下がり俯いてしまう。

 ……そんな時だった。

 ……これは?

 

 視線を落としてアレイシアの胸元あたりに小さなネックレスチェーンにぶら下がっている白金のねじれのある指輪に目が入る。

 いつもは服の中に入っているのに珍しい。

 

 ……そうだ、こうすればよかったんだ。

 

 僕はとある方法を思いつく。

 

 この場で僕とアレイシアにしかわからないであろうやり取り。

 白黒の王子様のワンシーン。

 

 僕は左手の薬指につけていた指輪を外し……それをアレイシアに押し付けるように渡す。

 もちろん、アレイシアの瞳を真っ直ぐ見つめながら。

 

「……え?」

 

 戸惑うアレイシアだったが、僕はアレイシアの右手に無理やり持たせるように渡す。

 アレイシアは視線を落とし、手の中を見るとキョトンとした顔をする。

 

 僕はアレイシアの表情を確認してから言葉を紡ぐ。

 

「……僕はあなたを愛していたことなんて……一時もありません」

 

 このセリフはアレイシアを拒絶する最初の言葉。

 

 ……通じて欲しい。

 物語の世界だと、指輪を返して嘘を伝える。それは本心とは真逆の言葉。

 「白黒の王子様」の主人公は王子様を本気で愛していた。

 

 だから、今から言うことは全て嘘であり、その言葉の真の意味は全く別にある。

 僕はアレイシアから目を離すことなく言葉を続ける。

 

「あなたと過ごした日々はとても幸せとはいえません。僕はあなたと婚約したことは……不運だったと思います」 

『ドッドッドッド』

 

 ア…アレイシア大丈夫かな?

 ここまで鼓動早いの初めてなんだけど。 

 

 まさか、僕の言葉の意味通じていない?

 ……や、やらかしたか?

 

「アレイシア様、これがアレンくんの意思です。アレンくんはもう、あなたの知るアレンくんじゃない!」

 

 確定の言葉。

 フローラは僕の背後からいつのまにか真横にいた。

 僕とアレイシアの間に割って入るように立つ。

 

「……バカ」

 

 アレイシアは掠れる声で一言残して踵を返して走り去った。

 ……これはシナリオ通りの行動である。アレイシアは僕の言葉を聞くと無表情のまま立ち去るらしい。

 

 僕は呼び止めようとするが、リタの鋭い視線が目に入り言葉紡いだのだった。

 

 僕は焦りすぎていた。

 そのせいで彼女を傷つけてしまった。

 

「よく言ったな。お前なりによくやったんじゃないか?」

「あのソブール公爵令嬢に言い切ったことであなたは一皮剝けたと思いますよ」

「もう!二人とも、アレンくんは頑張ったんだよ。その言い方はないよ!」

 

 アドリアン、オーラス、フローラがなんだか騒いでいるが、そんなことどうでもよかった。

 

 あの反応からするともしかしたら通じてなかったのかもしれない

 焦りすぎた。でも、あれ以外方法はなかった。

 後で土下座しよう。

 

 ……あれ?この声アレイシアとリタ?

 

『アレイシア様お待ちください!きっと何か事情が……アレイシア様?』

『リタ!アレン様が私をいつも愛していると。わたくしと過ごして……婚約できて幸せと』

『え……何を言って……』

『もうわからないの?!これ、アレン様が送ってくださった指輪、この意味を!』

『お、落ち着いてください。……ええと、その指輪になんの意味が……』

『リタも読んだでしょ!白黒の王子様』

『ええ……勝手に』

『つまり!あの時言った言葉はアレン様の嘘!真逆の意味ってことなのよ!』

『……はぁ。それで、今後どうするんです?面倒事が起きているのは間違いありませんが』

『もちろんアレン様にご助力するわ!だってわたくしの……そ…その……アレン様はわたくしの…い、愛しの……こ、こここ婚約者……ですもの』

『顔真っ赤にして……恥ずかしいなら言わなきゃいいですのに』

 

 あ……意味通じてたわ。

 ……よかった。後かわいい。

 

 どうなるかと思ったけど行き当たりばったりであったが事なきを得た。

 その後、フローラたちは立ち去り「おすすめのカフェをみんなで行こう」と誘われた。

 了承するとニヤけていたフローラにーー。

 

『……これであと……もう少し』

 

 そう呟いた。

 おそらく聞こえたのは僕だけだろう。そのは普段のフローラの明るい声と違い何トーンか低い、声音であった。

 僕はその言葉に冷や汗をかいたのだった。

 

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