実は僕……すごく耳がいいんです〜乙女ゲームで感情のない人形と嫌われていた悪役令嬢、実は重度のあがり症だった〜【改訂版】   作:花河相

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なろうの方では7話、8話で分けてましたが、文字数の関係でハーメルンでは1話にまとめてあります。


7〜8

 父上の書斎を出て、僕は母上の場所へ向かうことはなく、僕の専属執事候補の元へ向かっていた。

 

 父上の書斎は2階にあるため、階段を降りて1階の隅にある物置小屋へと向かった。

 僕の目的の人物は一ヶ月前、父上の仕事を初めて見学した日にサボりがバレて、僕の密告で罰を喰らった人物。

 使用人のウェルだ。

 

 僕がウェルを専属にしたいと思ったのは二つ。

 一つ目は真面目で責任感が高いから。

 

 サボりがバレてから、ウェルはシンからお叱りを受け、二週間ほど前に罰として物置小屋の掃除するよう言い渡された。

 

 ユベール家の屋敷物置は数えていないがわかっている範囲で5部屋以上はある。

 しかも、その一つの部屋の広さは部屋によって違うが、一番広いので縦横約10メートル、高さにして3メートルほどの部屋だ。

 

 そこに使わなくなった家具や骨董品、本などが置かれている。

 

 

 ウェルは罰を言い渡されたその日から文句を言いながらも黙々と続けていた。

 

 

 もう一つはウェルが使用人になった経緯にある。

 どこの領にも平民が通うための学校が存在する。

 13歳から15歳の子供が通う。

 基礎学力を身につけさせるための学校。

 

 優秀な成績を収めている生徒は領主に報告がいく。

 

 例えば優秀さを買われて商会で働く者、直接領主の屋敷の使用人に雇われるもの。

 優秀な成績を収めればそれ相応の未来があるのだ。

 

 ウェルもそのうちの一人で、学生時代の優秀さを買われ雇われている。

 シンからの評価も高い。

 

 だからこそ専属にしたいと思った。

 

 僕が素で接することのできる人が欲しい。

 あまり人を信用しすぎるのはいけないと思うが、話せる範囲で、僕自身が行動しやすいように立ち振る舞いができるよう、それを支えてくれる存在が必要だと思った。

 ぶっちゃけ幼い子供の演技を続けるのが我慢できない。

 

『はぁ………』

「お、いた」

 

 父上の書斎を出て移動すること五分、目的の人物のため息を発見。

 

「さて……引き受けてくれるかな?」

 

 僕は深呼吸し、部屋をノックした。

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……いつ終わるんだろう?」

 

 ウェルは一人呟きながらシンから罰で言い渡された物置の掃除をしていた。

 

 その部屋は壁一帯はクリーム色、出入り口正面から見てすぐ右の壁に窓が設置されてそこから光が差し込んでいるだけ。部屋の中は薄暗く、年代までは不明だが、骨董品が多く詰めて置かれている。

 定期的に掃除はされているとはいえ、叩けば埃が舞うほど。

 本来ならば、物置部屋を掃除する際は5、6人で掃除する。

 

 ウェルはそんな部屋を毎日サボらずに掃除を続けている。

 こうなってしまったのはサボったのが原因だ。

 自分のしたミスは行動で取り返すしかない。

 

 上司のシンから3部屋やるように言い渡された。すでに2部屋終わらせた。

 残り一部屋というのが1番広い部屋で終わりが見えないとため息をつきながらウェルは掃除していた。

 

トントン!

「……はい!」

 

 だが、ウェルが掃除中、扉からノック音が聞こえたため、カチャッと急いでドアを開けた。

 

「……あれ?」

 

 ドアを開けたものの、あたりを見渡すと誰もいない。

 悪戯か?それとも気のせいか?そう疑問を浮かべつつ、ウェルは掃除に戻ろうとすると。

 

「うぇる……どうも」

「……あえ!!」

 

 足元から声が聞こえて思わずウェルは驚く。

 そこには、仕えているこの屋敷の主人、キアン=ユベールの息子のアレンがいたのだ。

 

「あ、アレン様……どうかされたのですか?」

「うん。ウェルとはなしがしたくてきたの。はいるねー」

「ちょっ……チッ」

 

 ウェルはいきなりのことで困惑するも、舌打ちをした。

 もしも第三者にこの場を見られたらどう思われるかわからない。

 ウェルは焦りと苛立ちが増したが、アレンは気にせず勝手に入室した。

 

「……すごいね。もうこんなにきれいになってるよ」

「……ありがとうございます。……アレン様、ここは埃も舞っていて、せっかくのお召し物が汚れてしまいますよ」

 

 ウェルはアレンに早く出ていけよと遠回しに伝えようとするが、所詮は3歳児。理解ができるわけがない。

 何をやっているんだ俺は……そう思いつつ、どうすれば部屋を出て行ってもらえるかを考える。

 

 

 だが、その思考はすぐに焦りから困惑へ変わる。

 アレンの言葉を聞いてからだ。

 

「そんなに焦らなくてもいいよウェル。僕は君に提案しに来たんだ。……何、そんなに悪い話じゃない。もちろん受けるかどうかは君次第だよ」

「…………はい?」

 

 ウェルは今目の前の現状を理解できなかった。

 3歳児で物心すらついていないはずのアレンが発するような言葉ではなかったからだ。

 

 

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