「お前ってさ、もしかして、アメリカから来たの?」
MAKOTOはぎょっとした顔をした。
迷子になっていたMAKOTOだったが、方向音痴なだけで、記憶力はよかった。SHOTAにはMAKOTOの話だけでどこに住んでるかが、すぐにわかった。この辺じゃ珍しい、最近できたばかりのマンションだ。親が金持ちか、いい会社に勤めてるのだろう。
持ち物や服装、醸し出す雰囲気、どれを取っても、日本人ぽくない。妙に無口な割に肝が座ってるのも、口を開くとボロが出るからではないかと感じられた。親が転勤でアメリカあたりの外国からやって来たんじゃないか?そう思ってカマをかけた。
アメリカはSHOTAが憧れている国だ。自由で様々な音楽やダンスが溢れている。もし、住んでたなら友達になって、色々聞いてみたい。MAKOTOは警戒してるのか、黙ったままなので、心を開かせる作戦を考えた。
「銭湯って行ったことある?」
MAKOTOのマンションは全室ユニットバスが付いてるが、この辺のアパートはまだ風呂が無いところも多い。銭湯はこの町の社交場だった。SHOTAの家は古いので、家に風呂はあったが、好きでたまに銭湯へ行っていた。案の定MAKOTOは銭湯を知らないらしい。
「銭湯?」
「大勢で一緒に入る風呂の事だよ!」
「プールとかジャグジーみたいな?」
「似てるけど、風呂だから裸だけどな」
「へー!面白そう!」
ワクワクした顔をするMAKOTOに、やっぱりこいつはちょっと変わり者だけど面白い奴だなと思った。
明日、連れて行く約束をして別れ、家に帰る途中でSHUNに会った。
「SHOTA!探してた奴見つかった?」
「あぁ!明日一緒に銭湯へ行く約束をした!」
「銭湯?何でまた…それより、今日も隣町でクレイジードッグズのイベントがあったらしい!こっちから出かけていく奴も増えてるみたいだ」
「あー、会ったよ。クレイジードッグズの狂犬RICKYと仲間のLEONに」
「え?!何で?よくケンカになんなかったな」
「そのイベントのせいで急いでたんだろ」
「Jには会わなかったの?」横から突然声がした。
「うわ!!RYUSUKE!いつの間に…驚かすなよ。Jはいなかったぜ」
「イベント会場に先に行ってたんだな。クレイジードッグズのイベントはRICKYがDJ、ボイパ、ラップ担当でJがボーカル。このJって奴がすごく女の子に人気がある。ファンクラブみたいなのもあって、複数の子と交際してるとかで揉め事も多いらしい。LEONが会場でグッズとか食品とか売って儲けてるみたいなんだけど、最近サプリみたいなのを売り出して流行ってるとか。詳しい事が秘密らしくて胡散臭い。」
RYUSUKEがどこで調べてきたのか、メモ帳を見ながら調べた結果をペラペラと報告した。チェキで撮った写真まである。確かに、Jはすごくスタイルが良くて足が長い。顔も女みたいに綺麗でモテそうだってわかる。
SHOTAはLEONが売ってるというサプリが気になった。怪しいものなら止めさせないとならない。そんな悪人には見えなかったが、人は見かけによらない。
「そのサプリって会場だけで売ってるもんなのか?」
「うん。その上、女じゃないと買えないらしい」
「何だそれ?ますます怪しいな…」
「RYUSUKEが女装して潜入すりゃいいんじゃね?」
SHUNがニヤニヤしながら言った。RYUSUKEには中性的な色気があるのだ。
「は?ケンカ売ってる?」
「仲間割れすんなって!俺達、下町レンジャーの力の見せ所だろ!」
「おいSHOTA、そのダセー名前なんとかなんねーの?」
SHUNが文句を言った。元々、仕方なくSHOTAに付き合ってるだけなのに、カッコ悪いチーム名をつけられたらたまったもんじゃない。
「ドラゴンガーディアンズがいい」
RYUSUKEがボソッと呟いた。
「は?」「お!カッコイイじゃん!」
「ガーディアンは守護者って意味だから、ぴったりだろ?」
「なんでドラゴンなんだよ!RYUSUKEだけだろ竜は!?」
「なんとなく、カッコ良かったから…」
結局、他にいい名前が思いつかず、SHOTAが折れた。クレイジードッグズに対抗できるカッコいいチーム名なら、何でもよかったのだ。
渋るRYUSUKEを説得して、女と偽って会場に入り、例のサプリを入手して証拠を押さえる作戦を立てた。
(明日、MAKOTOもチームに誘ってみよう)
SHOTAは何故かワクワクしてくるのを抑えられなかった。
END