いってこい実力至上主義の教室へ   作:嘴広鴻

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2-10 坂柳から電話? ・・・留守と言っておけ、松雄

 

 

 

『片原の爺さまへの挨拶も昨日したし、他に挨拶をしておくところはないよな?』

『乃木出版への挨拶はいいのか?』

『自伝を高校卒業後に出版しないかと誘われているだけだしなぁ』

『ああ、それとホワイトルーム関係にはむしろ挨拶に行くなよ』

『え、何? もしかして嫌われてるのか、オレ?』

『教官を何人再起不能にしたと思っているんだ、おまえは? 直接大怪我を負わせた月城はともかく、そう簡単に大人の心を折るんじゃない

 政財界の伝手で招いた教官もいたんだぞ。俺が紹介者からどれだけイヤミを言われたと思っている?』

『親父はそういう意味ではタフだよな』

『フン、俺が若い頃からいったいどれくらいの苦汁を嘗めてきたと思っている』

『その根性については尊敬するわ』

 

 

 

――― 櫛田桔梗 ―――

 

 

 

「臨戦態勢の清隆くんの清隆くんはこのぐらいのサイズです」

 

 え? どうして……500mlのペットボトルを持った状態でそんなこと言うのかな?

 

「わぁお。Tレックス」

「ほ、星之宮先生、言い方!」

「…………えっ? 小学生の頃、一緒にお風呂入ったときの兄さんの兄さんは……」

「いや、小学生の頃のサイズと比べるのは堀北会長が可哀そうでしょ。しかも会長は臨戦態勢じゃなかったろうし」

「それより何でアンタがその……臨戦態勢の綾小路の綾小路のサイズを知ってんのさ?」

「中学のときに清隆くんの家に行ったところ、アポ無しだったせいか清隆くんはトレーニングを終えて昼寝をしていたところだったんですよ。Tシャツ短パンでお腹に毛布を掛けてる仰向け状態で。

 そうしたら、その……清隆くんの清隆くんが臨戦態勢になってて非常に目立っていまして……」

「ど、どんな夢を見てたんだろ……?」

「あー、顔を赤くしてる佐倉さんや。保健医として言っておくけど、そういうのはレム睡眠時に起こる生理現象だからね。変な夢を見てるとかじゃなくて、身体の試運転やメンテナンスみたいなものらしいよ。

 っていうか、女でも起こるし」

「う゛え゛っ!?」

「へー、そうなんですか」

「というわけで、ソッチの意味でも私では清隆くんの相手は無理だと思うので、魁した人がいたら是非感想を聞かせてください」

 

 こ、この女! 私たちを綾小路くんと付き合わせようなんて変だと思っていたけど、もしかして不安だから私たちを特攻役として利用する気だったの!?

 

 ……いや、あのサイズだと無理ないかぁ。

 

 

 

――― 真嶋智也 ―――

 

 

 

「へっくし」

「……綾小路。おまえ、くしゃみするときでも無表情なんだな」

「(くしゃみするときは反射的に目を閉じるんではなかったか……?)」

 

 結局、理事長は綾小路の要望を理事会にかけることにしたらしい。流石の理事長でも、いくら学校の過失があるとはいえ50億プライベートポイントの発行は独断ではしたくないそうだ。無理ないな。

 まぁ、50億全額を渡すかどうかは理事会次第だが、少なくともこれ以上の騒ぎを起こされたくないし口止めも必要なので、綾小路の要望を受け入れる方向で進むようだった。

 

 とはいえ、コレは仕方がないことだろう。

 今回の一連の件では、特にストーカーの一件で学校側に大きく過失があるし、綾小路のSシステムや卒業後の進路についての推測を生徒に話されたとしたら、今後のクラス対抗に多大な影響があるはずだ。

 多額のプライベートポイントを渡すのは不安だが、学校の教育方針に反対するどころか今後は生徒の立場から援護してくれるようなので、むしろ学校の運営を考えるのなら助かるだろう。

 綾小路が信頼できればの話だが。

 ……いや、能力的に申し分ないし、この状況でわざわざ学校を裏切ったりしないとは思うが、どこかそこはかとなく不安だ。

 

 そういうわけで話し合いは終わったのだが、理事長が綾小路から学校の感想を聞きたいとのことでまだ理事長室での話は続いている。

 俺と堀北も綾小路の考えには興味があったので同席を続けさせてもらっている。

 

「失礼。話の続きですが、オレが入学後にSシステムについて知ってから頭に思い浮かんだことは“パチンコ屋”なんですよ」

「……パチンコ、かい?」

「ええ、特別試験や学力テスト(パチンコ)をしてプライベートポイント(パチンコ玉)を稼いで、ケヤキモール(善意の第三者)とかで物品に換える。似てません? 税金かからないところとかも。

 本当はパチンコも勝ったら税金かかりますけど」

「詳しいんだな、綾小路」

「いや、政治家になったらパチンコ問題も取り扱おうと思って調べたんですけど、親父に微妙な顔されてるんですよね。

 それはともかくとして、そこからですね。ケヤキモール(古物商)の運営にプライベートポイント(パチンコ玉)を使っていないだろ、と考えついたのは」

 

 なるほどな。

 建前はともかくとして、パチンコの景品交換所はパチンコ玉を取り扱ってはいるだろうが、パチンコ玉それ自体を運営に使っているとは言えないだろうな。

 運営に、つまり景品を仕入れるときや従業員の給料を支払うときに使うのは、パチンコ玉ではなく日本円だ。

 

「特にプライベートポイントに税金がかからないって聞いたときに確信しましたね。

 ぶっちゃけこのシステムって国がこの学校の後ろ盾やってなきゃ、税務署か警察が来るのでは?」

「それはないよ。まぁ、生徒ではなく不特定多数の顧客を相手にしていたらそうなるかもしれないけど、このシステムはあくまで生徒の生活費という名目だから。

 いや、国が後ろ盾をしてくれていなければ、ここまで大規模なことができなかったのは確かだけど……」

「政権交代みたいな政変起こったら気をつけてくださいね」

「生徒がそう生臭いこと言うのやめよう」

 

 ……綾小路の話はありえないと言い切れないことばかりなのが困る。

 確かにこの学校には多額の予算が使われているので、もし政権交代で現野党が実績作りのために予算削減を考えるとすると、この学校が槍玉に挙げられる可能性は否定できない。

 現総理である鬼島総理がこの学校の後援者みたいなところがあるらしいからなぁ。

 

「次に思ったのは、クラス対抗の形態ですかね。

 堀北先輩はクラス対抗の形態についてどう思いました?」

「クラス対抗の形態? スマン。言っている意味がよくわからん」

「え? ……あー、クラス対抗って1学年の4クラスが競い合う形になっているじゃないですか。

 あえて例えるなら、バスケとかのリーグ戦みたいな感じに」

「ああ、そういう意味か。

 それは確かにリーグ戦と言えるかもしれないな。しかし、それがどうした?」

「最初はオレもそう思ったんですけど、学校やSシステムなんかについて調べていくうちに違うように思えてきたんですよ。

 例えるなら……自動車会社のシェア争いですかね? ト〇タとホ〇ダとニ〇サンと…………ヒ〇の」

「〇ノか?」

「ヒ〇です」

 

 そこはマ〇ダとかではないのか?

 

「いや、Dクラスは特殊枠みたいですし、〇ノは最近不祥事を起こしましたから……」

「危険なネタはやめようか」

 

 あー、でも確かにそうかもしれないな。

 ヒ〇は主にトラックとかバスのような商用車を製造する会社だから、乗用車を製造している例えの他3社とは若干毛色が違う。Dクラスも他のクラスとは毛色が違うところがあるので似ているといえば似ているのかもしれない。

 そしてほとんどの年は入学時にAクラスだったクラスがAクラスで卒業する。つまりトヨ〇だな。対して今年のDクラスは4月中にクラスポイントをゼロにするような前代未聞なことをして、〇ノはエンジンの……いや、やめておこう。

 

「生徒会は日本自動車工業会……いえ、経団連に相当。

 そして学校は行政と司法と立法を司っているので政府に裁判所に国会。更にはプライベートポイントの発行もしているので大日本銀行にも相当しますね」

「フム、経団連か。言い得て妙だな。

 生徒会は今回の審議のように裁判のようなことをする場合もあるが、その生徒会の判断を受け入れるかどうかは最終的には学校次第だ。例えるなら不祥事を起こした企業に対し、その企業の所属する団体がペナルティを与えるようなものだろうか。しかし、強力な権限を持っていそうに生徒からは見えるかもしれないが、三権など握っているはずもない」

「ええ、生徒会は学校に意見は言えるでしょうが、結局はその意見を取り入れるかは学校の判断次第です」

 

 むしろ経団連よりも生徒会の方が力は弱いだろう。

 生徒会の権力は学校の力ありきのものだが、経団連は経済活動で国の一部として食い込んでいる。その経済活動は他国が絡むことも多いので、国が経団連に何でも強権的に命令して終わりというわけにはいかない。それに1年、もしくは最長でも2年程で人員が入れ替わる生徒会に比べると、ずっと経済活動を続けている経団連の方がその分だけ国への影響力は根深いものとなるだろう。

 

「それに加えて学校は特別試験を課してきたりしますので、貿易に関して文句を言ってくるアメリカの政府や自動車団体なんかにも相当すると思います」

「貿易でアメリカ、つまり敵かい?」

「敵みたいなものでしょう。少なくとも完全な味方と見る生徒はいないと思います。つまりクラス対抗はそれぞれ敵対するクラスだけを見るだけではなく、ルールを作っている学校も注意しなければなりません。

 それはそれとして、オレはやはり大日本銀行の役割に注目しましたね。それでプライベートポイントには税金がかからないこと、ケヤキモールの構成店舗、店の形態、従業員の数、来客数などを調べたら、さっきの結論に達したわけです。

 5月1日のSシステムについてのネタバレがあった日は学校を休んで釣りをしたんですけど、そのときについでに授業時間中のケヤキモールとかも覗いたんですが、客がいなくて従業員が暇そうにしてたケヤキモールは寂しかったですよ」

「そんなことをしてたのか」

「まぁ、それもどれだけ人件費を無駄に使っているのかって話に繋がるんですけどね。

 国の監査とか入られても大丈夫なんですか?」

「だから生徒がそう生臭いこと言うのやめよう」

 

 マズい。よりにもよって政治家の息子にそんなことを言われると不安になってくる。

 もしかして綾小路は卒業後、税金の無駄遣いをなくすという手柄を求めて、この学校の監査に乗り出すつもりなのでは? だから今のうちに取り繕えるものは取り繕っておけと警告しているのではなかろうな?

 

 でも、確かにこの学校は金を多く遣っているというか、もし自分がこの学校に勤めておらず一市民としての立場のままだったら、学校の経費の使い方を知ってしまうと憤慨するかもしれん。

 

「(英先生は本当に何でここにいるのかなー?)」

「清隆くん?」

「失礼。別のことを考えてました。

 で、色々と調べて推測してこの学校とどう立ち向かっていこうかと考えたんですが、結論として学校からプライベートポイントを巻き上げる方向で行くことにしました」

「どうして???」

「自分たちは色々とやっている癖に学校に隙があり過ぎたというか、条件が揃い過ぎてしまいまして。

 龍園たちが吹っ掛けてきた冤罪を防げなかったこと。その吹っ掛けてきた冤罪に対する教師の判断。そして野放しのストーカー。3つもアウトが揃ってたらゲームセットでしょう」

「いや、まだ1年の1学期なんだから、1回裏ワンアウトの場面ってところだよね? 見切りが早くないかい?」

「学校の生徒管理体制、教師の職業倫理、学校の職員管理体制の3つがアウト。ゲームセットという言い方が嫌なら没収試合です。

 生徒が卑怯な手をしてはいけないとは思いませんけど、学校が監視カメラを設置しないでおくとかの隙をワザと作るのは駄目でしょう。難易度を低くするんじゃなくて学校として最善を尽くして対処したうえで、生徒がその対処をすら飛び越えるというのならむしろ喜ばしいとは思いますけどね。

 具体的に言うと、“窓から出入りしてはいけない”とかの校則がないことを利用するとか」

「そんな校則は普通作らないよ」

「あ、Cクラスからの賠償を放棄する代価に、今回の件でオレ……いや、Dクラス生徒がした問題と思われる行動の無罪放免も足しといてください」

 

 なるほど。綾小路が問題視していたのは学校がワザと隙を作り、生徒の違法行為を誘発したことか。これがもし特別棟にも監視カメラが設置してあって、龍園たちがその監視カメラを壊した上で冤罪を吹っ掛けるようなことをしていたら、綾小路は学校の責任とは思わないというわけだな。

 理屈としては理解できなくもない、というより至極まともなことを言っているし、単純に悪いことをしてはいけない、という甘い考えをしているわけではない。むしろ悪事をするにしても全力を尽くせ、みたいなことを言っている気がするので厳しい方だろう。

 坂上先生が龍園たちを叱らなかったことについて怒っているのも、教師としての建前を崩すなということだろうな。

 

 でも、ストーカーはなぁ。

 もちろんあのようなストーカーと知らずに学校の敷地内で働かせていた責任はあるんだが……。

 

「生徒に偉そうなことを言うのなら、ちゃんと義務を果たしてくださいってことです」

「ム」

 

 それを言われると返す言葉がない。ミスをしたのは学校だ。

 たとえストーカーに気づいた綾小路が俺たち教師に伝えずにストーカーを泳がしておいて、効果的なタイミングでストーカーを取り押さえたのだとしても学校に責任がある。

 でも、流石にカッターとはいえ刃物を渡すのはどうかと思う。

 

「やだなぁ。偶然ですよ」

 

 人の苦労も知らないでこの野郎。傷害と殺人未遂の罪がどれだけ違うと思っていやがる。

 しかし、これで綾小路との示談が成立すれば、警察の介入は避けられるのは幸いだ。

 もちろんストーカーは最終的に警察に引き渡すことにはなるだろうが、警察が学校内に乗り込んで生徒に事情聴取をするような生徒を不安にさせるようなことは起こらず、秘密裏にこの件は終わらせることができるだろう。

 

 その対価が50億プライベートポイントというのは高いかどうかは知らん。

 理事会の判断に任せる。

 

 ……っていうか、綾小路はさっきから人の心を読んでないか?

 

「まぁ、学校の姿勢次第ではこんなことをしなかったのは、誓って本当ですよ」

「……フム、そこは信じておこう」

「貴重な意見をありがとう。今後に活かさせてもらうよ」

「というより、学校の姿勢がこうじゃなかったら、オレも手の出しようがなかったんですけどね。

 “人を呪わば穴二つ”、“深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ”と言ったところですか」

「そういう清隆くんも、今後は“怪物と戦う時は自らも怪物にならぬよう、心せよ”だね」

「もう既に怪物なのでは?」

「今後の綾小路の対処の際には、学校としてやり方を考えなくてはいけませんね」

「堀北先輩も真嶋先生も酷くないですか???」

 

 綾小路の考え方はわかった。

 要するに学校は大人として、社会の構成員として、そして生徒の面倒を見る保護者代わりとしての最低限の責務を果たせ、ということだな。

 生徒の実力を育むためとはいえ、犯罪行為を誘発させるようなことは許さない。許さないというか、そうするのなら自分たちもやっていいと判断して好き勝手にやるし、どうせ誘発させるのならせめて難易度を高くしろ、ということだ。

 そういうことならば、今後の綾小路の対処は多少やりやすくなるだろう。

 

 明るい未来への展望が見えたと安心したとき、理事長室のドアがノックされた音が聞こえた。

 

「オレが行きますか?」

「いや、俺が行こう。

 理事長室に生徒が訪ねて来たとは思えない。学校職員が理事長を訪ねて来たのならば、生徒には言えない要件の可能性がある」

 

 綾小路が来客を出迎えることを申し出てきたが、前から思っていたけど綾小路はこういうことに対するフットワークが軽いよな。

 綾小路の出自や実績にしては傲り高ぶっていないというか、動くことを苦にしていないのはいいことだ。

 

 理事長室のドアを開けると、そこには俺の予想通りに学校の事務職員がいた。

 

「真嶋先生、病院の英先生から綾小路くんの診断書が送られてきました。こちらをどうぞ」

「ああ、ありがとう」

 

 その事務職員が差し出したのは、診断書在中と書かれている大判の封筒。

 そうか。昨日のストーカーから切りつけられた怪我……怪我?の診断書か。一応は昨日のあの後、綾小路を病院に行かせて治療を受けさせたのだが、診断書も作ってもらうように言っておいたんだった。

 流石に昨日は夜が遅かったので、診断書の作成が今になったというわけか。

 

「綾小路、診断書が届い…………何故、窓際に移動している? しかも窓を開けて窓枠に足をかけているとか、いったい何をする気だったんだ?」

「いや、英先生の名前が聞こえたんで用心のために……」

「一瞬で移動したね」

「(鈴音の話だと大型犬扱いされているようだが、前にネットで見た驚いたライオンみたいな挙動だったな……)」

 

 窓から逃げ出す気だったのか、コイツ!?

 英はじめという、説明もせずに生徒に献体同意書を書かせる医者のことは一昨日に聞いたが、綾小路がそこまで警戒するというのか?

 この一件が終わったら献体同意書について英先生から直で事情を聞く予定だったが、綾小路のあの警戒度合いが嫌な予感を感じさせてくるぞ。俺の身の安全は大丈夫なのか?

 

 それはそうと“プライベートポイントを使ったクラス移動の権利行使は一生徒につき一度のみ”という校則を追加することになりそうですが、“窓から出入りしてはいけない”という校則も追加しましょう、理事長。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「それでは失礼します」

 

 話し合いが終わった。後は理事会でどうなるかなので、俺の仕事は終わったと思っていいだろう。

 正確には坂上先生の容体がどうなるかで仕事が増えるし、士気が滅茶苦茶になってるCクラスがクラス対抗をこれからもやっていけるかを考えると頭が痛くなるが、それでも無事に解決する筋道が立ったことは喜べる。

 といっても、全て綾小路の策略通りというのが気にかかるがな。

 

 せめてストーカーの件がなければ、ここまで酷いことにならなかっただろうに……。

 

「綾小路先生には日頃からお世話になっております。坂柳成守です。

 ええ、はい。先生のご子息、清隆くんのことでお話ししなければならないことが…………え、留守? 松雄さん、ついさっき綾小路先生に代わりましょうかって言いませんでした?

 ……は? 清隆くんの教育は高度育成高等学校を信じて全て任せている? わざわざ綾小路先生に了解を取る必要はない?

 いえ、お恥ずかしい話ですが、私どもの力が足りずに保護者の綾小路先生にお伝えしなければならない事態が…………いえ、被害者です。清隆くんは被害者の方です。加害者ではない……です。はい」

 

 綾小路の保護者に連絡を取り始めた理事長を尻目に、堀北と綾小路のように俺も理事長室から脱出する。ごゆるりと。

 少し小走りになって、先に進んでいた綾小路と堀北に追いつく。

 どうやら2人は歩きながら話をしていたみたいだ。

 

「綾小路、今回のおまえのしたこと全てを肯定できるわけではないが、それでもおまえがやったことは学校が敷いたルールに則っていたことは認めよう。今回のことは俺にとっても勉強になった。

 他におまえから見たこの学校の改善点があったら知りたい。俺も賛成できるような意見だったら生徒会として学校に提言するとしよう」

「改善点というより、この学校は昨今のITの急激な発展に追いついていない気がしますね。

 この学校は開校してから10年以上経っていますけど、開校当時は最新だったのかもしれませんが昨今はAI技術の発達とかも凄いですし……」

 

 うーん、基本的には真面目なんだよな、綾小路は。思考回路がぶっ飛んでいるから、やることなすことが滅茶苦茶になるだけで。

 そのおかげでなのか、真面目一辺倒である生徒会長の堀北との相性は悪いわけではないようだ。

 

 担当している学年が違うので生徒会長である堀北のことについてあまり詳しくは知らないが、今まで聞いた話をまとめると彼は学校の伝統とルールを守ろうとするタイプだという。

 そんな堀北なので滅茶苦茶なことを仕出かした綾小路に思うところは若干あるようだが、それでも学校のルールを守って学校が望んだはずの実力で事を為したので、大まかには綾小路のことを認めているようだな。

 

 しかし堀北の言うように、今回の件は学校としても手痛い勉強になってしまったな。

 生徒を実力で測る、と言っておきながら、生徒側から学校を測られるとは思っていなかった。ましてや生徒同士をクラス対抗という形で争わせていながら、学校自体は争いを監督する立場であって争いに巻き込まれるはずがないと油断してしまっていた。

 まさに先ほどの綾小路が言っていた“人を呪わば穴二つ”、“深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ”という言葉が相応しいな。

 その油断を綾小路に突かれてしまったのだが、綾小路の行動は確かに学校が敷いたルールに則っていた。だから綾小路を非難することはできず、今まで散々に情け容赦なく退学者をだしていた学校なのだから、学校自体も情け容赦なくペナルティを受け入れるべきなのだろう。

 

 ……ということにしておかなければ、綾小路が次に何をするのかわからん。

 まったく。今年の1年のクラス対抗はいったいどうなることやら……。

 

 

「面白そうな話をしてますね。俺も交ぜてくれませんか?」

 

 

 今後のクラス対抗の進展がどうなるか考えていたら、俺たちの進行を遮るかのように生徒会副会長である南雲雅が立ち塞がった。

 流石に2学年を牛耳っている南雲でも、綾小路のことは気になるか。

 

「南雲か……」

「ああ、理事長室を見張っていた2人はカモ(南雲)先輩の差し金ですか。理事長室のドアが開けられた瞬間に走っていったみたいですけど」

「……よくわかったな、綾小路。しかも人数まで」

「理事長室付近は静かですからね。立ち去っていく足音が響いていましたよ」

「チッ、化け物め……っていうか、俺のことナニ先輩って言った?」

カモ(南雲)先輩?」

「口の動きと実際の音声があってないぞ、コラ」

 

 綾小路の後ろにいる俺からは見えないが、どうやら小ネタで南雲をからかっているようだ。

 綾小路と南雲はサッカー部で何度も勝負をしていたと聞いているが、南雲の様子を見る限りあまり綾小路のことは好いてはいないようだな。

 

 いや、本当のところ南雲も気が気ではないだろう。

 南雲は入学当初はBクラスに配属されたが、自らの実力と人心を掌握する力を持ってAクラスへと下剋上を果たした生徒だ。しかも、現在の2-Aと2-Bでは逆転できるかわからないぐらいの差がついてしまっている。このまま順当に行くと、来年度の勝者は南雲が率いる2-Aとなる……はずだった。

 今回の綾小路のしたことで2年生のクラス対抗へ影響が及ぶことが考えられるので、こうして綾小路の様子を偵察しに来たようだな。

 

 何しろ南雲はかなり強引な策を使うようで、例年に比べると2年生の退学者の数が多くなっている。なので退学者が多い2-Dはもちろん、Aクラスの座を奪われた現2-Bにも南雲のことを恨んでいる生徒も多いだろう。

 南雲は同じクラスの生徒だけではなく、同学年他クラスの生徒からもプライベートポイントを徴収するぐらいに影響力があり、2000万プライベートポイントを使用してのクラス移動の権利をエサにして人心を操っているとも聞く。

 しかし、もし50億プライベートポイントが綾小路の手元に渡ってしまったら、2年生間の力関係はいったいどのように変化するのやら。

 

 ……綾小路が不用意に2000万プライベートポイントを他生徒に渡さない、と言っていなければ、こうして3人のやり取りをのんびりと眺めている暇なんてなかったんだろうなぁ。

 

「相変わらずおまえというヤツは……。

 それで? 理事長との話し合いはどうだったんですか、堀北先輩?」

「何故、俺に聞く?」

「こういう場合で綾小路に聞いて、マトモな返答が返ってくると思ってるんですか?」

「それもそうだな」

「2人とも酷くないです?」

「色々と話をしたが、結局理事会の審議待ちということになった。流石に理事長でも50億プライベートポイントなんて大金は独断では発行できないようだな」

「え、マジッスか?

 いくら坂上先生がヘマしたからと言っても、そんなクラス対抗に影響がありそうな金額の賠償なんてしないと予想してたんですけど……」

 

 南雲の予想が的外れなわけではない。ストーカーによる綾小路殺害未遂事件がなかったら、多くて1000万ぐらいのポイントを支払うのと坂上先生に責任を取ってもらうことでこの一件は幕引きとなっていただろう。

 しかし流石の南雲でも、電気屋閉店10分前に発生した事件については情報を集められなかったようだな。

 

 ここは事件の隠蔽が上手くいきそうなことを喜ぶべきなのだろうか……。

 

「いや、50億全額が支払われるかはまだわからない。

 その代わりと言ってはなんだが、1年Cクラスに要求されている10億の賠償金は放棄してもらうことになったのは決まっているし、他にも色々と綾小路が要望を出していたな」

「ハハッ、流石の学校でも丸々一クラスが退学になるのはマズいみたいッスね。

 他の色々ってのは聞いても大丈夫ッスか?」

「問題ないヤツならな。

 例としては、現在は校則で学外と連絡を取ることは禁止されているから、家族の誕生日プレゼントなどは送ることはできなかった。

 しかし、カタログギフトと定型文のメッセージカードのみという条件なら、今後は学外に物を送ることができるようになるかもしれん。まぁ、この場合だと“送る”という言葉が適切かはわからんがな」

「へー、悪くないッスね。

 使ったことないからあまり知りませんけど、カタログギフトってことは送る荷物が生徒の手元に一度も来ないってことですよね。それなら荷物に手紙を仕込むなんてのは不可能なわけだ」

「ああ。冠婚葬祭の贈答品や、お中元やお歳暮で使われることが多いので、俺たちのような学生ではカタログギフトは縁遠いだろうな。

 まず受取人にギフト品が掲載されたカタログが届き、受取人がそのカタログから欲しい品物を選んで、受取の手続きも受取人がするという形式だ。懸念があるとすればメッセージカードだろうが、それも既存の定型文にすれば問題ないだろう」

「情緒もへったくれもないですが需要はありそうッスね」

「冠婚葬祭の贈答品といえば、新郎新婦の顔写真がプリントされた食器が引出物になるって話、本当なんですかねぇ?」

「だからどうしておまえは会話をいきなり明後日の方向に進ませるんだ、綾小路?」

 

 昔はよくあったらしいぞ、綾小路。

 その場合、結婚式場の帰り道にあるリサイクルショップが千客万来になったらしいがな。

 

「他にはシルバーマンジムにボルダリング設備を増設、釣り船を使っての沖釣り、動物カフェの新規出店なんかの要望を出していたな。まぁ、ボルダリング施設に関しては学校としても元々用意するつもりだったらしいが。

 それと“プライベートポイントを使ったクラス移動の権利行使は一生徒につき一度のみ”という校則が追加されることになるだろう。これも綾小路からの提案だ」

「……そんな校則が追加されるってことは、マジでデカいポイントが動くみたいですね」

 

 ニヤついていた南雲の表情が一瞬にして真面目なものとなる。

 

「そういうわけですので、反南雲先輩の人に2-Aにクラス移動してもらって、内部から2-Aを潰してもらってもう一度クラス移動をしてもらう、なんて方法は使えないので安心してください。

 オレが上級生に2000万渡すことがあるとするなら、2000万に相応しい対価を用意してもらったときだけですよ」

「ハッ、そこら辺のことは心配してないさ。おまえが自他ともに厳しい人間だってのはよく知っている。そうじゃなきゃ今回みたいなことをやらかしたりしないだろうよ。

 しかし、俺がこの学校を変えるのに付き合えと誘ったときは断ったくせに、よくもまぁこれだけの騒ぎを引き起こしたもんだ」

「……綾小路を誘っていたのか、南雲?」

「ええ、見所のある後輩を誘うのは先輩の義務でしょう。

 それに前にコイツが言っていたようですが、俺が学校に革命を起こしたとしても、それを引き継ぐ後輩がいなかったら元の学校に戻ってしまうってのは確かですからね。だから綾小路が俺と同じ考え方をするのなら、俺の卒業した後を任せるのも一つの手だと思ったんですが、残念ながら振られちゃいまして」

「だって南雲先輩のやり方は趣味じゃないんですもん」

「いや、おまえのやったことはむしろ俺の考え方より酷いだろ」

「南雲先輩は弱い者虐めをして自分が強いってことを認識したいタイプなんでしょうけど、オレは強者と闘うことこそが誉れと思うタイプなんですよね」

「弱い者虐め好きとは言ってくれるじゃないか」

「生徒と学校を比較すると、明らかに生徒の方が弱いと思うんですけど?」

「……チッ、それを言われたら返す言葉がないな」

 

 相変わらず厄介な性格をしているな、綾小路。

 もちろん弱い者虐めを趣味とされるよりは万倍いいのだが、ターゲットとなった学校からするといい迷惑だぞ。

 

「フン、まぁいいさ。それで綾小路、今後はどう動くつもりなんだ?」

「別にそんなに警戒しなくてもいいですよ。チョッカイをかけられない限り、2年のクラス対抗に関与するつもりはないですから」

「綾小路、話が早いのは美点なのかもしれないが、話を端折りすぎるのは欠点と言うべきだぞ」

「えっ、端折りすぎてます?

 ……Dクラスの一員としてクラス対抗を頑張っていくのは当然ですけど、やはり一番の目的は人間観察ですね。オレに足りていないのは対人関係の経験値ですから。

 政治家になるだろうオレの場合、南雲先輩と違って実力のない生徒のことこそを知っておかなければいけませんので」

「前から言っているのと変わらないな。まぁ、おまえの過去と希望進路を考えるとそれも仕方がないか。

 それにしても“尋常な勝負なら尋常に、何でもアリなら遠慮ナシ”だったか? 最初は何を甘っちょろいことを言っているんだと思っていたが、世間体がある政治家の考え方にしてはある意味で乱暴な部類だな、と思い直していたところで今回の一件だ。

 身体能力は別として、綾小路清隆という人間そのものを甘く見てたのは撤回する。これでようやくおまえのことがわかった気がするぜ」

「へぇ、オレのことをどう見ます?」

「意外と単純だな。しかし、単純だからこそ強い」

「“単純”……ですか。そこは意思が一貫している、とかの表現にして欲しかったですね」

「おいおい、褒めてるんだぜ。賞賛は素直に受け取れよ」

 

 単純だからこそ強い。

 意思が一貫している。

 

 なるほど。綾小路を形容するのに適している表現だな。

 綾小路はいつも泰然としているというか、高校生の若さながらも自分の芯を持っている。今回の一件でも色々と裏で動いていたようだが、それでも綾小路の動機は一貫としている。

 

 尋常な勝負なら尋常に、何でもアリなら遠慮ナシ。

 相手が好き勝手やるなら、綾小路も好き勝手やる。

 

 綾小路は坂上先生が龍園たちを叱っていたら、そして学校がストーカーを見逃していなかったらここまで大事にしなかったと言っていた。

 おそらく理事長もだろうが、綾小路は本当のことを言っていたのだろうと俺は思う。そういう意味では綾小路という男は信頼できる人間だろう。

 単純な理論に基づいた一貫とした意志で行動するからこそ、綾小路への信頼感が増すのかもしれない。

 

「だからこそ面白い。堀北先輩以外にはこの学校に俺の相手になるヤツなんていないと思っていたが、喜べよ、綾小路。おまえを俺の敵と見なしてやる。

 機会があれば勝負をしないか?」

「へぇ?」

「「((あっ……))」」

 

 ……綾小路の予想通り、やってしまったな、南雲。

 

「勝負方法は?

 サッカーですか? それとも学力テスト?」

「そこで勝負方法を確認してくるところが堀北先輩とは違うな。

 勝負方法はまだ決めていない。そもそも勝負する機会が巡ってくるかわからないからな」

「南雲、2学期に行われる体育祭がいいのではないか?」

「……意地が悪いッスね、堀北先輩。

 流石の俺でも、身体能力で綾小路に勝てるとは思ってないッスよ」

「なるほど。つまり自分が有利な勝負で挑みたいということか。あながち綾小路が言った弱い者虐め好き、というのを否定できないんじゃないか?」

「グッ……」

「体育祭以外で全学年が参加する特別試験はないんですか?」

「そういう特別試験もあるにはあるが、今年度にそれが行われるかはまだわからんな。今年度に行われなかったら来年度にはあるのだろうが……。

 他には特別試験というわけではないが……生徒会長を選ぶ選挙があるな」

「ああ、それはいいッスね!

 一見すると綾小路が不利そうですが、1年生でも勝利した前例があります。何しろ目の前にいる堀北先輩こそが、1年の頃から生徒会長を務めていらっしゃるんですからね。

 それに綾小路の親父さんの職業を考えると、むしろ綾小路の方こそが経験的に有利じゃないッスか。それで条件はイーブンってことで」

「うむ、綾小路は来年の生徒会選挙には参加しないということだからちょうどいいだろう」

「へっ? ……そうなのか、綾小路?」

「いや、オレが3年になる年はオリンピックがありますから、来年で生徒会長になったとしてもオリンピックの準備で任期のうち少なくとも数ヶ月間は生徒会長の仕事はできませんよ」

「あ、それもそうか。それなら3年のときに生徒会長やれなくてもしゃあないな」

 

 ウム。学校としても綾小路にはオリンピックを是非とも優先してもらいたい。

 そのために、今年の時点で再来年のスケジュールをどうするかを考え始めているのだからな。

 

「ただし、綾小路はAクラスへの移動を対価に票を買うのはナシだ。今回の一件で学校から賠償されるポイント額がどうなるかはまだわからんがな。

 そして南雲、おまえも綾小路に投票しそうな生徒を退学にして、綾小路の得票数を減らそうとするようなことはするな」

「ああ、堀北先輩がこの話に加わるなんて違和感がありましたけど、それが狙いですか。

 いいッスよ。確かに俺でも50億プライベートポイントなんて資金を活用されたなら勝ち目はないでしょうからね。ここは正々堂々と生徒の信頼を勝ち取って、清き一票を集めるとしましょうか」

「オレもいいですよ」

 

 いいですよ、じゃないだろうが、綾小路も堀北も。

 いや、さっき理事長室で綾小路が話していた展開通りになってしまったから、教師である俺が口を挟むことではないんだがな。

 

『とりあえず今回の一件で、南雲先輩がオレにチョッカイかけてくるようになると思います』

『堀北先輩が言っていたように、南雲先輩は関係のない生徒も巻き込むやり方をしてくるでしょうから、オレも関係のない生徒を巻き込むやり方で対処しようと思います』

『具体的には今度の生徒会選挙で勝負しますので、選挙の際に行う演説に間に合うように校則を追加する準備をしておいて欲しいんです』

『追加して欲しい校則は

 

“今年度のクラス移動権利を購入するのに必要なプライベートポイント額を2000万から2億に変更する”

“来年度のクラス移動権利を購入するのに必要なプライベートポイント額を2000万から2億に変更する”

“再来年度のクラス移動権利を購入するのに必要なプライベートポイント額を2000万に固定する”

“以上、3つの追加校則は、綾小路清隆が生徒会選挙に落選した場合に有効となる”

 

 の4つです。校則追加の費用はそれぞれ2000万プライベートポイントでいいですかね?』

『生徒会長に立候補したら演説する機会があるでしょうから、その時に堂々とこの契約のことを明かします』

『ああ、もちろんこの4つの校則は、オレが生徒会長に当選した場合は有効になりません』

『このことは生徒会選挙の投票日まで秘密にしておいてくださいね』

 

 死んだな、南雲。これなら票を買っていないから有効だ。

 南雲はクラス移動の権利をエサに他クラスの生徒をも支配下に置いているが、こんな校則が追加されたら南雲の支配体制は一気に崩れ落ちることになるだろう。

 関係ない生徒を巻き込むやり方と言っても、2000万プライベートポイントに縁遠い生徒には元々関係ないだろうし、南雲からプライベートポイントを貰ってAクラスに移動しようとしている生徒は元々関係ある生徒だから、南雲の味方をする以外の生徒には全く影響がないな。

 

 南雲の行動が予想しやすいのか、それとも綾小路の先読み能力が凄いのか。

 どちらが原因なのかはわからないが、これでは2学期も大変なことになりそうだ。

 

 

 

――― 堀北鈴音 ―――

 

 

 

「あ、Tレックスだ」

「? なんのこってすかい、星之宮先生?」

 

 星之宮先生、言い方。

 

 もうすぐ日が落ちる頃になってから、ようやく綾小路くんがお茶会に顔をだした。

 彼がいつもの通りの無表情さということは、どうやら理事長との話し合いは無事に終わったようね。

 

「おかえりなさい、清隆くん。首尾の方はどうでしたか?」

「とりあえず理事会の判断待ちだが、理事長はオレの要望を受け入れてくれそうだ」

「へぇ、お父さまが…………もしかして、私に話してないことあります? 坂上先生のミスとストーカーの件があったとはいえ、流石に50億なんて要望は通さないと思っていたのですが?」

 

 ストーカーの殺人未遂事件については流石に秘密にすることになっている。

 星之宮先生も調子に乗ったように色々と話してはいたけど、あの事件については一言も話していないことから学校としても秘密にしておきたいのでしょう。

 

「あるぞ」

「それは清隆くんの右手の怪我と関係が?」

「スマンがそれは口外しない約束でな。鈴音たちも言わないでくれよ」

「わかり……ました」

 

 う、カモフラージュのためとわかっていても、綾小路くんに“鈴音”と名前で呼ばれると気恥ずかしく感じてしまう。兄さんから名前で呼ばれるのは何とも思わないのに、呼ぶ人が違うだけでこうも感じが異なるなんて……。

 櫛田さんもどうやら私と同じらしく、“桔梗”と呼ばれる度に照れて挙動不審になってしまっているので、私だけが変ではないということに安心してしまう。

 それに対して長谷部さんと佐倉さんと軽井沢さんは名前で呼ばれても平然としている。佐倉さん辺りは私と櫛田さんみたく照れてしまうんじゃないかと思っていたけど、どうやら私の思っていた以上に気弱な性格を改善する試みの効果があったようね。綾小路くんの太ももを木製バットで延々と叩くことができるぐらいになったみたいだし。

 

 それに綾小路くんを見ると、さっき坂柳さんから教えられた綾小路くんの綾小路くんのことがどうも頭にチラついてしまう。

 駄目ね。少し身体を動かして考えを紛らわすことにしましょう。

 

 綾小路くんが空いていた席に座ると同時に声をかける。

 

「コーヒーと紅茶、どちらにしますか?」

「コーヒーは理事長室で飲んできたから、紅茶を頼む」

「はい」

 

 私たちが喫茶店で注文していたのは本格的な英国式アフタヌーンティーなので紅茶はもちろんのことだけど、お願いすればコーヒーもポットごと提供される。昨今では英国のコーヒー消費量が増えているってニュースを見た覚えがあるけど、もしかしたらこの喫茶店にもコーヒー普及の波には逆らえないのかもしれない。

 ちなみにサンドイッチやスコーン、ケーキのような食べ物のお代わりは有料だけど、紅茶やコーヒーのような飲み物のお代わりは無料だ。

 紅茶は先ほどお代わりしたばかりなので、綾小路くんにまだ温かい紅茶を出すことができる。

 

「どうぞ」

「ありがとう、鈴音。

 ……小腹が空いたが、今から注文して食べるとなると夕食に差し支えるな」

「あー、ゴメン。サンドイッチとか少しは残しておけばよかったね」

「いや、構わないさ、波留加。どうせ1時間ちょっとで夕食だ。

 夕食はどうする? 皆でどこか食べに行くか?」

「ホントゴメン、きよぽん。カロリーオーバーだから今日は夕食抜きにします」

「わ、私もちょっと食べ過ぎちゃったかな」

「え? このティースタンドの大きさなら2つでも9人で食べるなら量が少ないぐらい……おかわりしたのか?」

「話が弾んじゃって……2回ほど」

「わ、私の食べた分は私が払おうか?」

「いや、オレにそんなケチなことさせないでくれよ、一之瀬。ポイントの余裕ができる見通しが立ったからこのぐらいはいいさ。

 それに平田から聞いたが、一之瀬は情報集めでDクラスの手伝いをしてくれたんだろう。それのお礼ということでここは奢らせてくれ」

「私だけじゃなくて、Bクラスの皆で手伝ったんだけどね。それに私たちBクラスとしての思惑もあったし。

 でもそういうことなら遠慮なくご馳走になるね」

「ゴチになりまーす」

「…………」

「アレ? 反応が薄いゾ?」

 

 星之宮先生……。

 あなた、教師でしょう。

 

「……それで綾小路くん、ちょっと聞いてもいいかな?」

「どうした、一之瀬?」

「その、今後のクラス対抗のことなんだけど……」

「ああ、理事長とも話したが、クラス対抗はこれまで通りに続くぞ。ただし、“プライベートポイントを使ったクラス移動の権利行使は一生徒につき一度のみ”という校則が追加されることになるだろうがな。

 それとオレはクラス移動するつもりはないし、クラスメイトがクラス移動したいと言ってきても2000万を渡すつもりはない」

「え? それでいいの?」

「この学校での生活と大学入学のことだけを考えるなら、学年全員をAクラスに移動させた方がいいんだろうけど、そんなことをすると怠ける馬鹿を量産するだけになりかねないからな。

 Dクラスの生徒に限らず、クラス対抗を通してこれから成長して欲しいと思っている」

「うわ、厳しい。でも……綾小路くんらしいね。うん、その考え方は厳しいけどいいと思うよ」

「せっかく好きな大学に入れるんだからっていって、難しい大学に入ったはいいけど大学の勉強についていけずに中退、ということになってしまうと、棚からぼた餅を落としたオレも非難されかねないからなぁ。

 オレとしては生徒の学習意欲を削ぐつもりがないことだけは覚えておいてくれ」

 

 これは最初から言われていたことなので特に思うところはなかった。

 Aクラスに上がりたいと思っている私でも、こんな綾小路くんにおんぶに抱っこされたような方法でAクラスに上がっても兄さんに認められるわけはないとわかっているので、このままDクラスのメンバーでAクラスを上がるのを諦めないということなら反対する理由はない。私がAクラスに上がりたいと思っているのは、あくまで兄さんに認められるための手段であって目的ではない。

 これは私だけの考えというわけではなく、今朝になってDクラスの生徒たちにもこの綾小路くんの考えを伝えられたけど、Aクラスに上がることを私と同じくらいに切望していた幸村くんでさえも『……うん。まぁ、まだいいんじゃないか?』で終わらせてしまい、他の生徒からも特に反対されることはなかった。

 あれだけ切望していたAクラス移動の権利がアッサリと手に入ってしまったことで気が抜けてしまったこともあるのでしょうけど、やはり綾小路くんが日頃から言っている『大学への入学はゴールではなく新たなスタート』という言葉が皆の頭に残っているのだと思う。もしくは『今後もずっと責任を持つというなら話は別だけど、そうじゃないならその人の今後も考えて接するべきだ』という言葉だろうか。

 クラスの皆も4月の自分たちの所業を思い出してしまうと、今は厳しい環境に自分の身を置いておいた方が将来のためになると考えているのだろう。

 なお、山内くんと池くんは何か言おうとしていたけど、櫛田さんが彼らをさん付けで呼んだら口を閉じた。

 

 多少のプライベートポイントはクラスメイトへ配布することになるかもしれないけど、それも結局は綾小路くんの匙加減次第だ。それに今のクラスの皆ならワガママを言ってプライベートポイントを恵んでもらおうとするのではなく、クラスのために何かを為して報酬を貰う形でプライベートポイントを貰うことを考えるだろう。

 今回の一件といい、綾小路くんがいるならDクラスの皆でAクラスに上がることも不可能ではないと思えてしまう。4月のあの有様からは信じられないけどね。

 

「でもオレと競い合いたいから別クラスに移動したい、って望むクラスメイトがいたら2000万渡してもいいかもな」

「そんなこと望む人はいないと思うよ」

 

 高円寺くんでさえもそんな選択は選ばないでしょう。

 それに高円寺くんだけでなく、他のクラスメイトも理解しているのだと思う。もし、今の時点でAクラスに上がることを綾小路くんに強く迫ったとしても、それが受け入れられることはない。それどころか下手をしたら天邪鬼なところがある綾小路くんなら、その強く迫った人だけをDクラスに残して他の皆でAクラスに移動したりするかもしれない。

 これなら誰も今の時点でAクラスに上がることを綾小路くんに強く迫ったりしないでしょう。

 

 ……それに“プライベートポイントを使ったクラス移動の権利行使は一生徒につき一度のみ”という校則が追加されたら……ねぇ。要するに綾小路くんの敵になるわけだし、さっさとクラス移動の権利を行使してしまうのは早計過ぎるでしょう。

 (ウェイ)(シェン)ではないけど、クラス移動をするにしても3年次の2月ね。

 

「ああ、そうだ。貰えるプライベートポイントの額にもよるが、それ次第でちょっと取り引きをしないか、有栖、一之瀬?」

「取り引き?」

「内容は?」

「もし50億もプライベートポイントを貰えたとしてもポイントの一元管理は危険過ぎるから、鈴音や桔梗たちにもポイントを預かってもらおうと思っているんだ。1人4億ぐらい」

「「「「「えっ?」」」」」

 

 何それ、聞いてないわよ。櫛田さんたちも驚いているじゃない。

 確かに何かあって綾小路くんのプライベートポイントを没収される事態は想定しておくべきだろうけど、いきなりそんな大金預けられても困るわよ。

 

「とはいえ、危機管理の観点からするとクラスメイトだけに預けるというのは望ましくない」

「そこで違うクラスの私と一之瀬さんですか」

「ええぇぇ~~。言っていることはわかるけど、そう簡単に他のクラスの私たちに預けようとする?」

「そこは2人を信頼して、だ。もし50億を貰えた場合だったら“4億預ける代わりに、オレからの要望があり次第に即座に4億を返却する。手数料は2000万”って感じの契約だな」

「随分と破格の手数料ですね」

「それは……もし私のクラスの誰かが退学になりそうになったとき、その2000万を使ってもいいのかな?」

「好きにするといい。報酬として渡すものなんだから、使い道は一之瀬次第だ」

「……その、ありがとう。綾小路くん」

 

 一之瀬さんは熱い目で綾小路くんを見ているけど、それって綾小路くんがAクラスとBクラスに退学者を出させた時用の救済金の前払いじゃないわよね?

 これで手加減しなくてよくなった、とか思っていないわよね? もしかして学校から50憶なんてプライベートポイントを巻き上げようとしたのはこのためじゃないわよね?

 

「でもいいんですか、一之瀬さん?

 清隆くんからプライベートポイントを預かるのは他に私と堀北さんたち。つまり清隆くんから名前で呼ばれているような親しい女子だけです。ポイントを預かる一之瀬さんもそういうことだと思われてしまうのでは?」

「はにゃっっ!?!?

 あ、綾小路くんなら別に…………じゃなくて、退学者が出てしまった場合のことを考えると、たとえ周りの人からそう思われたとしてもポイントは確保しておきたい、かな~……なんて」

「あー、じゃあ平田にもポイント預かってもらうか」

「平田くんとも付き合っちゃうの!?」

「違ぇよ。意外と妄想逞しいな、一之瀬」

 

 本当の一之瀬さんってこんな人だったのかしら?

 Bクラスの人たちから信頼を集めてリーダーとして推戴された文武両道かつ品行方正な人と聞いていたけど、根っこは意外と愉快な人のようね。

 

「受け入れるかはクラスの皆とも話し合って決めてくれ。そもそも50億を支払われるかはまだわからないからな。

 まぁ、こんな騒ぎを起こしたオレが言うことじゃないが、これからはルールとマナーを可能な限り守って競い合うことにしよう。オレたちの将来の糧となるような競い合いをな」

「う、うん……」

「それには賛成ですが、本当に清隆くんが言うことじゃないですね。

 ちなみにCクラスはどうするのですか?」

「1回のオイタでCクラスの全員まとめて退学させるような大人げないことはしないさ。10億の請求は放棄してこれからもクラス対抗を頑張ってもらうことになったよ。

 そしてまた同じようなことをしたなら、また同じようなことをするさ」

「死刑宣告かな?」

「執行猶予付きですので、まだマシではないでしょうか?」

 

 一之瀬さんと坂柳さんにはああ言っているが、Cクラスを生き残らせる本当の理由は“AB連合対Dクラス”という形になるのを防ぐためと聞いている。

 もしCクラスがまとめて退学になったとしたら、人の良い一之瀬さんのBクラスはもちろんのことだけど、坂柳さんのAクラスだって葛城くんを始めとした生徒が綾小路くんを最大限に警戒するようになるだろう。それでは下手をしなくとも“AB連合対Dクラス”になりかねない。

 坂柳さんはむしろ喜んでいるようだけど、流石に今回の綾小路くんがしたことは大きすぎる。それに坂柳さんは綾小路くんに挑戦するのが好きだから、坂柳さん自身が綾小路くんと戦うために嬉々としてAB連合を作りかねない。

 今の話ではなく将来的にはいずれそうなるかもしれないけど、クラスの皆の実力を考えると“AB連合対Dクラス”になるのは今の時点では避けたい、というのが綾小路くんの考えだ。これはクラスの皆も同意している。

 

「さて、6時も回ったし、私はそろそろお暇しようかな。

 今日聞いたことはクラスの皆に話してもいいんだよね、綾小路くん?」

「いや、途中参加のオレはどこまで話していたのか知らんのだが」

「あ、そっか。えーと、まずはCクラスとの諍いの件の裏話と、佐倉さんのストーカーの件についてだね」

「それなら構わない。むしろストーカーのことは他にもいないとは限らないんだから、この学校が箱庭だからってクラスの女子に平和ボケしないように言っておいた方がいい」

「後はさっき綾小路くんから聞いた理事長との交渉のことと、綾小路くんの綾小…………綾小路くんのクラス移動やクラス対抗への考え方についてだね」

「? 何か変じゃなかったか? いや、話すのはいいけどさ」

「う、うん! それじゃあご馳走さまでした。また明日ね!」

「じゃあ、私も帰るねー。ご馳走さまー」

「それでは私たちも失礼しましょうか」

「はいはい。それじゃご馳走さま」

「お、おう。

 ……有栖たち、何か変じゃなかったか? 星之宮先生もニヤニヤ笑ってたし?」

「別に」

「変じゃないと思うよ」

「そうそう」

「こ、これから用事があるんじゃないんですか!?」

「クラスメイトに今回の件の説明をするのではないでしょうか」

「そうなのか……?」

 

 いけない、怪しまれている。

 でも綾小路くんの綾小路くんについて私たちが話していたなんてのは流石に知られたくない。話を逸らさなくては……。

 

「それで綾小路くん。理事長との話し合いも無事に終わったことですし、Cクラスの見張りをしている男子たちに見張り終了の指示をだしますか? Cクラスの生徒も大人しくしていたようですし……」

「うん? ああ、そうだな。話し合いが終わったことを知ったらもう暴発することもないだろうから、クラスの皆に警戒を怠らないように改めて注意しておけば今日は終わりということでいいだろう。

 それとCクラスの生徒にも理事会の判断待ちになったと伝えておいてくれ。そうすれば、この件はもうオレたちの手から離れたと理解するだろうからな」

「はい。メールでCクラスに伝えますね」

「それじゃあ私はクラスチャットでDクラスの皆に伝えるね」

「お願い、櫛田さん」

 

 綾小路くんの携帯を使って、聞き出しておいたCクラス生徒のメールアドレスへメールを一斉送信する。もちろん私が代理でメールを打っていることを書き添えてだ。

 これなら綾小路くんが直接言わなくてもCクラスの生徒は言うことは聞いてくれるでしょう。そのぐらいに綾小路くんはCクラスの心臓を握り締めてしまっている。

 

 だからこそCクラスを残す。

 そうすればAB連合に対抗してCD連合を作ることができるように見せることができる。そしてそのCD連合というのは実質的に綾小路くんがCクラスを支配するような形で主導権を握ることになるだろうから、最終的にお互いが敵となることが決まっているAB連合と違って意思が統一された連合となるので、下手をしたらAB連合でも喰われかねない。

 それならCD連合結成の理由となりうる、AB連合を作るようなことはしないだろう。

 

 それにCクラスが生き残っていたら、Cクラスの所業を理由としてABD連合を結成することもできるかもしれない。

 フェアプレーをしようとするABD連合と、ラフプレーをしようとするCクラスの対立、という形に持っていくことができれば、綾小路くんと面と向かって対立するのを避けたいだろうAクラスとBクラスは乗ってくるはずだ。

 一之瀬さんの性格からするとBクラスは問題なく乗ってくるだろうし、坂柳さんも少なくとも未だ情報が不足している1年生の間は乗ってくるだろう、というのが綾小路くんの予想だ。

 私としてもこの予想を否定できるものではない。Dクラスの地力をつけるためにも時間が必要ということもあって、Dクラスとしては基本的にこの方針でしばらく物事を進めることになる。

 

 孤立するCクラスは大変なことになるだろうけど。

 

 ……それにしても計画を聞かされたときからわかってはいたけど、こんな1年生の1学期みたいな早い時点で随分とクラス対抗の盤面に動きがあったわね。

 まさかしようと思えばAクラスに移動できるようになるなんて思いもしなかったわ。そしてAクラスに移動する機会を得たというのにこうまで落ち着けていられるなんて、この学校に入学した頃の私だったら考えられないでしょうね。

 

 でも、こんなものも悪くないと思っている私がいる。

 今でも兄さんに認められるためにAクラスに上がりたいとは思っているけど、思い返せば中間テストまでの私は兄さんに認められなければならないという強迫観念に捉えられて周りが見えていなかった。

 だから山内くんたちに勉強を教えることに失敗してしまったし、その後のダイスビンゴでは…………うっ、頭が……。

 

 ……まぁ、私のトラウマはともかくとして、アレをキッカケに私も色々と変わることができたのだと思う。

 それこそ恥ずかしいのであまり口にだしたりはしないけど、櫛田さんや軽井沢さん、佐倉さんに長谷部さんといった友達と呼べるような人たちもできた。これもこの学校に入学した頃の私だったら無用のものと判断していただろう。

 だけど、今の私は友達付き合いというのも悪くないと思っている。

 

 …………たとえ友達付き合いの半分が綾小路くんへの愚痴の言い合いだったとしても。

 

「じゃあ、オレも帰るか。オレの夕食は……ああ、仕事をしてくれた須藤と三宅にお礼をまだしてない……というか、他のヤツらもCクラスの見張りとかで働いてもらったし、せっかくだからDクラスの男子全員にファミレスでも奢るか」

「そこでどーしてきよぽんはせっかくできた彼女を放っておくって選択肢を選ぶのかなぁ?」

「? 波留加たちは夕食抜きにするんじゃないのか?」

「そうだけどそうじゃないんだよ、綾小路くん」

「ハァ、これだから清隆は……」

「き、清隆くんらしいよね……」

「?????」

 

 確かに女子の気持ちがわからない綾小路くんらしい発言ね。

 私やクラスメイトはこんなにも変わったというのに、綾小路くんは入学したときから変わっていない。

 私たちからすると、この高校に入って環境が激変したから私たち自身も変わらざるを得なかった。だけど、綾小路くんにとってはこの高校ですら大したことのない場所なのでしょう。

 

 これからも綾小路くんのことを見てみよう。そうすれば私に足りないものが見えてくるはず。

 そして綾小路くんのようになれば、兄さんだって私のことを……。

 

『いいか、鈴音。綾小路が凄いのは確かだが、決してアイツの真似をしようとはするなよ』

 

 ……そういえば、兄さんからこんなことを注意されていたわね。

 うん。綾小路くんのことを見るのはともかくとして、必要以上の影響を受けないようにしましょうか。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

『しかし明日でおまえも入学か。気が楽になるな』

『そうか。親父も意外と……“気が楽になる”って言った?』

『おまえの活躍で私の力も増えたが、今まで場当たり的に進めてきたところもあるからな。おまえの高育入学はある意味でちょうどいい機会だ』

『今、“気が楽になる”って言ったよね?』

『政治事務所のスタッフの増員も進めているし、おまえが卒業するまでに組織としてキッチリ再編をしておこう』

『だから“気が楽になる”って言ったよね?』

『そういうわけだ、清隆。いってこい実力至上主義の教室へ。

 ……しばらく帰ってこなくていいぞ』

『どうして???』




 許さねえぞ……よくも関係のない生徒をここまで退学にしてくれたな。
 殺してやる……殺してやるぞ、南雲雅。


 というわけで、後は消化試合になってしまいますから、ひとまず“いってこい実力至上主義の教室へ”は物語としては完結となります。やはり「こんにちは、死ね!」が最適解の模様。
 でも無人島試験のネタはある程度考えていますので、蛇足として無人島試験の分は投稿しようと思います。
 ペーパーシャッフルは…………どうしよう。『あ、コレだと退学者が大量発生するな』って問題を思い付いてしまって逆に書けないんですよね。

 それと今までは週一ペースで投稿していましたが、これからは投稿ペースは落ちて不定期になると思います。
 あと本文前後のケンガンネタが尽きました。

 区切りとして挨拶させて頂きますが、どうも拙作を楽しんで頂きありがとうございました。
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