いってこい実力至上主義の教室へ   作:嘴広鴻

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3-2 毒塗り短剣と毒入りケーキと警告文

 

 

 

――― 神崎隆二 ―――

 

 

 

「ではこれより本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

 無人島に上陸後、クラス毎に整列した俺たち生徒に向かって真嶋先生はそう言ったところ、AクラスやCクラスの生徒からは驚きと戸惑いの声が上がる。

 おかしいとは思っていた。

 綾小路に前もってアドバイスを貰っていたので気をつけていたが、船が島の周りをグルっと1周したときに俺たちが今日から泊まるはずのペンションが見当たらなかった時点で疑念が濃くなった。そして船から降りるとき、降りる生徒の両脇を先生たちが固めて荷物の検査を行ったことで疑念が確信へと変わった。

 なのでAクラスやCクラスの生徒とは違って、俺はこの試験の開始の宣言に驚くことはなかった。

 

 真嶋先生の説明は続く。

 この無人島で行われる試験はこれから1週間、8月7日の正午まで集団生活行い過ごすことが試験となる。何でも実在する企業の社員研修を参考にして計画された試験らしい。

 クラス毎にテントを2つ。懐中電灯を2つ。マッチを1箱ずつ支給され、歯ブラシは生徒1人ずつに1つ。日焼け止めと女子への生理用品は無制限で支給されるとのことだ。

 

 もちろん不満を抱いた生徒から文句が出るが、真嶋先生は取り合わない。

 ただ、文句を言っているのは主にCクラスの生徒で、Aクラスは困惑をしつつも事態の把握を優先しているように見えるし、Dクラスに至っては「「「知ってた」」」みたいなどこか諦めた顔をしている。

 かくいうBクラスも宿泊するペンションがなかったことは予想外だったが、サバイバルとまではいかずともキャンプになるかもしれないことをあらかじめ周知することができていたのでそこまで混乱はない。

 

「この特別試験のテーマは“自由”だ」

 

 続く真嶋先生の説明によると、まずクラス毎にこの特別試験専用のポイントが300支給される。

 このポイントを使って食料品や飲料水等の生活必需品だけでなく、海で遊ぶための娯楽品やバーベキューをするための器材なども購入し、それを使って1週間を無事に過ごすのが特別試験のキモのようだ。

 それだけならただの一風変わったキャンプを兼ねたバカンスとも思えるが、試験終了時に残ったポイントがクラスポイントに加算されるということで、にわかに生徒の試験への意気込みが変わっていくのが感じ取れた。

 

「それに“無人島に建てられたペンションでのバカンス”というのも嘘をついたわけではない。

 今配布したマニュアルの最後のページに記載しているが、300ポイント全てを使用することで近くの別の島にあるペンションへと移動することもできる。もちろん食料などの支給も支払いのうちなので、言った通りにバカンスを楽しむこともできるだろう。

 …………(チラッ)」

「真嶋先生、どうしてオレを見るんですか?」

「いや、何でもないぞ、綾小路」

 

 ……真嶋先生が言った最後のページだけ字のフォントが違ってないか?

 もしかしてこの最後のページだけ急遽付け足したとかじゃないよな?

 

「そしてAクラスの坂柳はこの試験には不参加となる。とはいえ、やむを得ない身体的事情による不参加なので、通常のリタイア者が出たときにマイナスされる30ポイントペナルティは適用されない。

 ただしAクラスには坂柳の分の歯ブラシは支給されないし、クラスの人数分セットの物資を購入する際も坂柳の分を除いた39人分の支給となる。

 まぁ、特別試験が部活動の大会の日程と被ってしまったときや、指定感染症で出席停止になったときと同じ扱いみたいなものだ。今頃は坂柳も船の中で説明を受けており、試験日程の間は別の学習課題が出されることになっている。

 …………(チラッ)」

「真嶋先生、だからどうしてオレを見るんですか?」

「いや、だから何でもないぞ、綾小路」

 

 さっきから真嶋先生が、Dクラスの先頭にいる綾小路のことをチラチラと見ている。

 前に綾小路のしたことが学校のトラウマになっているんじゃないだろうか?

 

 もし“無人島に建てられたペンションでのバカンス”というのが嘘だった場合、それは綾小路が学校を騙してもいいことになる口実になってしまう。

 それならペンションでのバカンスには300全てのポイントを使用しなければならないことにしておけば、残ったポイントがクラスポイントに加算されるのもあってペンションでのバカンスを選ぶクラスはないだろう。それでも学校が嘘をついたことにはならない。

 この島での試験に取り組むことへ誘導しているみたいなものだが、真嶋先生の言った通りに学校が嘘をついたわけではないので綾小路も何かしたりしないだろう。

 

 坂柳のことは……まぁ、試験が部活動の大会の日程と被ってしまったときや、指定感染症で出席停止になったときと同じ扱いになるというのなら別におかしいわけじゃないな。

 坂柳の身体事情で無理して試験に参加して体調を悪くでもされたら学校としても困ることになるだろうし、言い方は悪いが退学者が出て39人で試験に挑む状態と考えれば、Aクラスが有利になるわけでもないし不利になるわけでもない。これは俺たち生徒がどうこう言うことじゃないだろう。

 

「そしてこれもマニュアルにも記載しているが、健康維持と体育会系部活動をしている生徒のことを考えてビタミン・ミネラル剤とプロテインは無償で配布する。摂取量は各自で考えて注文するように。

 ただし、プロテインのフレーバーはプレーンだ」

「「「「「えええぇぇぇ~~~」」」」」

「配布形式としては注文があり次第に1杯ごと渡す形になるので、その都度にシェイカーも無料で貸す。フレーバー付きのプロテインが欲しいなら有償で購入するといい。それとプロテインを溶かす飲用水も注文するなら有償だ。

 …………(チラッ)」

「オレは普段からプレーン派です。フレーバー付きはタンパク質の含有量が少ないですからね」

「ほぅ。よく飲めるな、綾小路」

 

 主に体育会系の部活動をしている生徒から非難の声が上がる。柴田もか。

 プレーンのプロテインって……どんな味がするのだろうか? そういえば俺は飲んだことないな。あんなにブーイングされるということはそんなにマズいのだろうか?

 それにしても近くに別の島なんてあるのか? もしペンションでのバカンスを選んだとしたら、先生方はどんな反応をするんだろうか? ちょっと試してみたい気が……はっ!? 駄目だ、いつの間にか綾小路の考え方に汚染されていた。

 

 

 そして真嶋先生の説明が終わり、少し離れたところにいた星之宮先生のところにBクラスの皆で集まる。

 他のクラスもそれぞれ離れたところに集まっているので、お互いのクラスの会話が聞かれることはないだろう。

 

 綾小路を除いて。

 

「星之宮先生、もう少し距離を取りましょう。特にDクラスから」

「そうだね。でもその前に腕時計だけは全員してくれないかな。あとテントみたいな支給品も皆で持ち運んでね」

 

 綾小路の五感の鋭さによって痛い目を見た龍園たちCクラスはもちろん、一之瀬と同じようにあの審議の議事録を見たらしい葛城のAクラスも、俺たちと同じようにDクラスから距離を取るように急いで移動していくのが見える。考えることは皆一緒か。

 移動を開始しようとしたところ一之瀬がDクラスの方へ視線を向けたので、俺も同じように視線をDクラスに向けると綾小路もこちらを見ていて目が合った。綾小路が俺たちに向かってひらひらと手を振って見せてきたので、俺と一之瀬も同じように手を振って返す。

 

「この試験、綾小路くんがいるDクラスが有利すぎるんじゃないかなぁ……?」

 

 一之瀬が思わずそう呟くと、綾小路は俺たちに向かってひらひらと振っていた手を、自らの顔の前で手を左右に振るように動きを変えた。

 ……違う、って言いたいのか? というか、今の一之瀬の呟きが聞こえたのか……。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 この試験でクラスポイントを多く得ようとするなら、使うポイントを節約することだけが手段ではない。この島に設置されているスポットを占有することによってボーナスポイントを得ることもできる。

 ただし、ボーナスポイントは夏休み明けのクラスポイントに加算されるポイントであって、この試験での物資購入に使用することはできない。

 スポットを占有するためにはリーダーしか使用できないキーカードが必要となり、1度のスポット占有でスポットを8時間確保した上に1ボーナスポイントを得ることができる。そして8時間後以降に再びスポットを占有すれば、再びボーナスポイントを1点得ることができる。

 

 そしてポイントを稼ぐ手段がもう一つ。最終日の午前8時の最後の点呼の際に、他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。

 他クラスのリーダーを当てたら50ポイントを得ることができるが、逆にリーダー当てを外してしまったら50ポイントを失ってしまう。そして他クラスから自クラスのリーダーを当てられてしまったら50ポイントを失い、その場合は更にスポット占有で得ていたボーナスポイントも全て失ってしまう。

 だからスポットを占有をするということはボーナスポイントを得るだけでなく、リーダーが他クラスに露見してしまう可能性が高まってしまう諸刃の剣でもある。

 

 それと占有したスポットはそのクラスが独占して使うことができる。

 例えばBクラスが見つけたこのスポットの近くには井戸があったので、この井戸水が飲用可能なら水には困らなくてすむだろう。

 とはいえ、この井戸水が本当に飲用可能な水なのかはわからない。なので申し訳ないが希望者を募って井戸水を飲んでもらうことにする。それでしばらく、それこそ明日まで待っても問題なければクラスの皆で井戸水を利用することになるだろう。

 そうと決まればこのスポットを占有するために、早めにリーダーを決めなければならない。

 

 しかし、そのリーダー決めが難航することとなる。

 一之瀬ならリーダーに相応しいとは思うが、逆にそれは他クラスに予想されていることでもあるだろう。当てずっぽうでもリーダー当てに一之瀬の名前を書かれたら困ることになる。

 他に誰かいないか議論になったのだが、一之瀬と白波からの提案で綾小路と接点の多い生徒はリーダーはしないことになった。おそらくリーダーになることで普段の態度とは違う反応を取ってしまい、それを綾小路に気取られるだろうからだ。

 よって同じ生徒会役員の一之瀬、綾小路から軽くとはいえボクシングを教えられている白波、学校に入る前から顔見知りだった俺、そして柴田を始めとした部活動関係で付き合いのある生徒たちがこれでリーダー候補から外れた。

 

 結局、リーダーに選ばれたのは綾小路と接点のあまりない女子、姫野ユキだった。

 姫野はあまり綾小路に興味はないらしく、先日のABDクラスの女子連中で綾小路を着せ替え人形にして遊んだ時も不参加だったので、綾小路も普段の姫野との変化を気取ることはできないだろう。

 昨日のパーティーでも生徒160人全員を1人1人紹介するには時間がなかったので、複数人でまとめられて出席者へと紹介される生徒がいたのだが、姫野もその複数人で紹介されたうちの1人だ。綾小路は姫野の名前と顔は一致しているようだが、それでも他の生徒よりは接点がないのは間違いないだろう。

 

 リーダーも無事に決まってスポットも占有できたので、次にポイントを使って何を購入しようか決めようとしたが、柴田を筆頭にした男子数人から物資購入は一之瀬たちに任せて自分たちは他のスポットを探しに行くことを提案された。

 確かにボーナスを稼ぐためにもスポットは見つけておきたいし、ましてや物資購入に40人全員が参加する必要もないだろう。

 それにこのスポットに辿り着くまでに、島内に畑らしきものがあるのを確認している。もし野菜などが生えていたらポイントの節約にもなるので、島の探索は是非とも行うべきだろう。

 

 そうしてグループ毎に分かれてクラスメイトが行動を開始しようとしたとき、Aクラスの橋本とCクラスの金田が俺たちBクラスを訪ねてきてこう言った。

 

『このままではDクラスの1人勝ちになる』

 

 と。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「ようやく来たか。遅ぇぞ、一之瀬」

 

 上陸地点にほど近い森の中。

 一之瀬を1人で龍園のところに行かせるわけにはいかなかったので、俺と白波、浜口が一緒に行くことにした。他のクラスメイトは購入物資の選定と島の探索をやってくれているだろう。

 そして俺たちを待っていたのはCクラスの龍園、時任、椎名。そしてAクラスの葛城と神室と鬼頭だった。

 

「ごめんね、龍園くん。何しろ呼びだした人が呼びだした人だからね。おかげでクラスの皆に引き留められちゃって……」

「気持ちはわかるが、とりあえず話を聞いてくれ、一之瀬。

 龍園、おまえも波風立てるような言動をするんじゃない。時間がないと言ったのはおまえだろう」

「……チッ、もう遅いかもしれねぇがな」

 

 呼びだしたのが龍園だけだったら、このように向こうの誘いに乗ることはなかっただろう。

 誘いに乗ったのは“Dクラスの1人勝ち”というあの言葉が気にかかったのと、Aクラスの葛城も一緒にいると橋本から聞いたからだった。

 

「葛城の言った通り時間がねぇ。まずは俺からの提案を言わせてもらう。

 Cクラスが持っている300ポイント分で購入する物資と、Cクラスのリーダーの情報をAとBに売ってやる。値段は合わせて学校を卒業するまで月々160万プライベートポイント。要するに400クラスポイント換算分のプライベートポイントの支払いだな」

「えっ?」

 

 思わぬ龍園の提案に一之瀬が驚きの声をあげる。

 葛城の顔を見てみると特に驚いてはいない様子なので、俺たちが来る前に少し話をしていたのだろうか?

 

 それにしても物資とリーダー情報を売るだと?

 

「……どういうことなのかな、龍園くん?」

 

 一之瀬が龍園と葛城に対峙するように前に出る。白波も釣られて前に出そうになったが時任や鬼頭たちが後ろに下がったままなので、リーダー同士の話を邪魔しないように白波の前に腕を出して止める。

 おかげで白波に少し睨まれてしまったが、こういう状況なんだから勘弁してくれ。

 

「言ったそのままだ。

 Cクラスのポイントを使って物資を購入し、それをAとBに渡す。物資の配分はAとBがそれぞれ150ポイント分ずつでもいいし、100ポイントと200ポイントとかに分けてもいい。そこら辺の配分は葛城と話し合って決めろ。AB合わせて300クラスポイント換算分のプライベートポイントを毎月支払え。

 そしてリーダー情報も同じだ。キーカードに刻印されたリーダーの名前を見せてやるから、最終日のリーダー当てでそれを書いて50クラスポイントを取らせてやる。その代わり、その分だけのプライベートポイントを寄こせ。

 それとサービスとして支給されたテントと懐中電灯も1つずつ渡す。簡易トイレとマニュアルとマッチ箱は1つしか支給されてないから、ジャンケンでもしてどっちを取るか決めろ。あと歯ブラシも欲しかったら38個までならくれてやる」

「ちょっと待って! Cクラスはこの試験を降りるの!?」

「ああ、今のCクラスじゃ勝ち目がないからな」

 

 そう言って、自分の隣に立っている時任に視線をやる龍園だったが、その時任は悔しそうにしながら顔を背ける。

 先日の綾小路との一件以来、龍園のCクラス支配には翳りが出ていると聞く。だが、綾小路の仕出かしたことのスケールが大き過ぎたためか、どこか他人事のような話に現在の状況を受け止めている生徒もいるらしく、惰性的に龍園がまだリーダー役をしている羽目になっているという。

 これはある意味ではリーダーの地位を追われた方が龍園にとってはよかったのかもしれないな。身から出た錆とはいえ、どうしようもない敗戦処理をしているようなものだ。

 

「時任はそれでいいのか?」

「いいわけはない……が、今のCクラスに勝ち目がないということは否定できない。2~3日ぐらいなら生活できるかもしれないが、1週間もトラブル無しで過ごせるというのは希望的観測が過ぎるだろう。最悪の場合はリタイア者が続出することも考えられる。

 それなら龍園の提案通りに今回の試験はプライベートポイント稼ぎと割り切ってしまい、ある意味では勝てたと言い張れる結果を得ることで、Cクラスの皆に勝利体験を積ませることが今後のためになるだろう。

 ……そのぐらい今のCクラスにはまとまりがないんだ」

 

 俺も思わず口を挟んでしまったが、そう言われたら頷けなくもない。

 先ほど物資購入の見積もりを軽く立てたが、クラスメイト40人全員で過ごそうとするならおそらく100ポイント以上の消費は必要だろう。

 スポット占有はスポット1ヶ所につき1日3ポイントを得ることができる。明日からの丸5日間と、初日の今日と最終日を合わせれば、この試験の間でアクシデントなくスポット1ヶ所をフルで占有できればおそらく18ポイントを得ることができるだろう。

 つまりスポットをもし5ヶ所占有できたとしても、取得できるボーナスポイントは100ポイントに届かない。物資購入に使った100ポイントを差し引きすれば、この試験で得ることができるクラスポイントはどんなに希望的に考えても300ポイント未満になるだろう。

 だが、その300ポイントはリタイア者がいなかった場合の話だ。クラスがバラバラだというCクラスだと、こんなサバイバルをいきなりやれなんて言われたこの状況ならリタイア者が出る可能性は高いだろうな。

 

 しかし、龍園の提案に乗ると、AとBクラスから毎月400クラスポイント分のプライベートポイントがCクラスへ流れ込むことになる。確かにこの状況ならば、Cクラスもある意味では勝ったと言えるのかもしれない。

 まとまりがない今のCクラスでは、普通に試験に挑んだら失敗してしまう公算が高い。それならいっそのこと、この試験はプライベートポイント稼ぎと割り切るのもナシとまでは言えないだろう。

 士気がどん底にまで落ちたCクラスだからこその考えだな。

 

「うーん……あ、そういえば貰える歯ブラシが38個までってのはどうしてなの? いや、貰っても多分使わないと思うんだけどさ」

「俺ともう1人はこの島に残るからその分だ。1人ずつAとBに居候させろ。生活に必要な物資はおまえら持ちだ。サービスのテントの分の料金だと思え。残りのヤツらはリタイアさせる。

 言い忘れていたが、リーダーの名前を明かすのはAとBだけだ。おまえらがDクラスにリーダーの名前を伝えることも禁止させてもらう」

「ああ、龍園くん1人だけ島に残ったりしたら、Dクラスにもリーダーなんてバレバレだものね」

「そして更なる提案だ。おまえらにCクラスの分のリーダー当ての権利を売ってやる」

「え?」

「最終日の点呼の後のリーダー当てだが、おまえらに指示された通りの名前を書いてやる、って言ってんだよ。

 値段は月々10万プライベートポイント、つまり25クラスポイント分のプライベートポイントで、一之瀬の指示通りにAクラスリーダーの名前を書いてやるし、葛城の指示通りにBクラスリーダーの名前を書いてやる。

 そして月々6万プライベートポイント、つまり15クラスポイント分のプライベートポイントをAとBがそれぞれ支払うなら、Dクラスリーダーの名前も書いてやろうじゃねぇか。Dクラスのリーダーの名前はAとBで相談して決めるんだな」

 

 そういうことか。何てことを考えつくんだ、龍園は。

 元よりリーダー当てはリスクが高い。当てたらプラス50ポイントに加えて、当てたクラスのスポット占有のボーナスポイントを無効にできるが、外したらマイナス50ポイントだ。

 それではよっぽどの確信がなければリーダーを指名することはできないだろう。

 

 だが、300ポイントで物資を購入した上に、38人ものリタイア者を出すことになるCクラスのポイントは0になる。そして星之宮先生からこの試験ではポイントがマイナスにはならないと言われているので、ポイントが0になる龍園たちCクラスならリーダー指名を外した際のデメリットを無視することができる。

 俺たちとしても指名成功時に貰える50ポイントがなくなるのは惜しいが、それでも当てられる確率が元より低いのなら、いっそのこと外した際のデメリットの半額分の25ポイント分のプライベートポイントを月々支払って龍園に指名をさせれば、外したときのダメージを負わずともAとDクラスにダメージを与えることができるかもしれない。

 リーダー当てで重要なことは、成功すれば指定したクラスのスポット占有のボーナスポイントを無効にできることだ。

 おそらく運動能力に優れた綾小路がいるDクラスは、多くのスポットを占有してボーナスポイントを稼ぐことができるだろう。それを少ない代償で無効化できる確率を上げられるというのなら一概に切り捨てられる案ではない。

 

 そして龍園たちとしても、もし俺たちとAクラスが龍園の全ての提案を受け入れたとすると、月々480クラスポイント分のプライベートポイントを手に入れることができる。

 ここまでいけば、確かにCクラスの勝ちと言っても過言ではないだろうな。

 

 ……てっきり龍園は先日の冤罪事件で終わったと思っていたが、どうやらまだまだ警戒しなければならない相手のようだ。

 

「……聞いていいかな? 龍園くんはどうしてDクラスにはこの取り引きを申し込まなかったの?

 物資の購入分のポイントはともかく、リーダー当ての分のポイントは取り引きするクラスが多ければ多い程、龍園くんたちはプライベートポイントを稼げるんじゃないかな?」

「それも考えなかったわけじゃない……が、綾小路の動きを知ってしまったらそうはいかなくなった。

 オイ、葛城。最初に目撃したおまえから話せ」

「いいだろう。時系列順に話すとしよう。

 一之瀬。俺たちAクラスは浜辺でそれぞれのクラスに別れて解散した後、少し森の中に入り込んでひとまずの方針を決めるための話し合いを始めた。腕時計などの配布も合わせて、その話し合いにかかったのは確か20分程度だったと思う。

 そしてひとまずの方針を決めた後、スポット占有のために船が島の周りを1周したときに見えた洞窟へと少人数で先行した。その洞窟にスポットがあると考えたからだ。

 しかし、洞窟へ向かう最中に綾小路たちとすれ違ったよ。そして洞窟に辿り着いたときには、残念ながら俺の目的としていた洞窟のスポットは既にDクラスに占有されていたのだ」

 

 スポットを占有するために、リーダーを含めた何人かで先行する。

 ここまではおかしくはない内容だ。

 

「綾小路と一緒にいたのは4人。

 綾小路と須藤と三宅。そして…………わからない誰かだ」

「? 名前がわからなかったの?」

「違う。顔がわからなかったから名前もわからなかったんだ。何しろその誰かは綾小路がお姫様抱っこで運んでいて、更には頭をタオルで包んで隠していたのだからな」

 

 また綾小路か……。

 

「小柄だったからおそらく女子だとは思うが、Dクラスには沖谷という小柄な男子もいただろう。体型だけでは判断がつかなかった。

 ましてや足もタオルで包んでいたから靴も見えなかったし、バッグを抱くようにして胸も隠していたので男女の違いすらもわからなかった。髪の毛はタオルで隠れていたし軍手で手も隠していたので、あれでは見ても大まかな体型しかわからん」

「軍手? 綾小路はそんなものまで持ち込んでいたのか……」

「あ? ……まぁ、いい。次は俺だな。

 俺たちCクラスもクラス毎に別れた後に話し合いをして、物資とリーダー情報を売ることを決めた。

 そしてウチのクラスの連中を2人1組で島中に散らばらせて、他クラスの位置とスポットの捜索をさせた。他クラスかスポットを見つけたら、1人は監視のためにその場に残して1人は報告のためにここに戻る。

 物資やリーダー情報だけでなく、スポットの占有権すらもおまえらに売ることができると思ったんだが、スポットを探しに来た綾小路がしやがったことが問題だ。

 俺たちが監視していたスポットに来た綾小路は、監視の目も気にせずにスポットを占有しやがったんだよ」

「どうして? それだとDクラスのリーダーがわかっちゃうと思うけど?」

「マニュアルに書かれているルールをよく見返してみろ。

 “()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()”が、“()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()”んだぜ。ご丁寧に綾小路のヤロウ、一緒にいた4人全員でキーカードを同時に持ってスポットにかざして占有しやがった。

 しかもキーカードに刻印されているリーダー名は、綾小路が頬に貼っていた湿布らしきもので隠されていたんだ。あれじゃあリーダーが4人のうちの誰かなのかなんてわかんねぇよ」

「ええぇぇ……それはアリ、なのかな?」

「真嶋先生に確認してみた。ルール違反ではないそうだ」

「ちなみにキーカードをかざす際の掛け声は『『『バ〇ス』』』だったらしいぞ。顔を隠していたヤツを“X”と呼称するが、Xは声を出さなか「龍園さん! スポットを綾小路たちに取られました!」……またかよ」

 

 Cクラスの石崎が走り飛び込んできたと思ったら、どうやら新たに綾小路がスポットを占有した報告をしに来たみたいだ。

 その言葉を受けて龍園がマニュアルに付属していた簡単な島の地図を広げる。その地図には既に書き込みがされていて、石崎が指差したここから遠く離れたところに記されていた×マークが上から二重線を引かれる。

 

「……13個目か。もうここら辺ではスポットの当てがなくなったな。

 おい、石崎。時任と一緒にこの地図の空白部分、ここら辺を探してこい。そこに残りのスポットがあるはずだ」

「わかりました!」

「……いいだろう。椎名、金田、この場は頼む」

「はい」「わかりました」

 

 龍園のその言葉に地図をよく見てみると、×マークの上から二重線が引かれている個所が3つ、二重線のみが記されている個所が10個あった。

 マークが記されているのは綾小路が向かったという洞窟側に多くある。どうやら龍園は綾小路が向かった洞窟側の捜索を優先していたようだ。逆に先ほど石崎たちを向かわせた洞窟とは反対側の部分ではまだスポットが見つけられていない。

 しかし、もうここまで探索済みなのか。島の7割ほどは探索済みだな。

 前に失敗した龍園へ反感を抱いているCクラスの生徒が多いとは思っていたが、今回の龍園が考えた策はルール違反ではない上に莫大なプライベートポイントの見返りが期待できる。そのためなら多少の不満は飲み込んで、Cクラスの生徒も龍園の策に協力したのだろう。

 それに今日だけでも頑張れば、明日からは豪華客船での自堕落な日々が待っているんだ。Cクラスの生徒も頑張ろうと思うだろうな。

 

「×マークがおまえたちが見つけたスポットで、二重線が引かれているところは綾小路に取られたところ、ということでいいのか?」

「ああ、そうだ。見つけたはいいが既にDクラスに取られていたスポットは二重線のみだ。

 チッ、監視を配置していたスポットが見つけられるのが早い。綾小路のヤツ、おそらく監視しているヤツの気配を探ってスポットを探してやがるな。

 ……これならむしろ監視を置かない方がよかったか。失敗したな」

「まるでマンガの台詞みたいだけど、綾小路くんがしているんならホントだって思えるのが不思議……」

 

 龍園もいつの間にか綾小路に毒されているのか……。

 

 しかし、これは確かに由々しき事態だ。

 橋本と金田が言ったように、これではDクラスの1人勝ちになりかねない。

 

「葛城、龍園。おまえたちはスポットを確保しているのか?」

「俺たちはしてねぇ」

「Aクラスは何とか1つ確保済みだ。洞窟のスポットを確保できなかったので時間をロスしたのが痛い。今もスポットの探索はしているはずだが、それがどうなっているかはわからん。

 少なくとも石崎がさっきまでいたスポットに向かっていたはずだが、どうやらそれは綾小路に取られたようだな。

 Bクラスはどうなんだ?」

「確保できてるのは同じく1つだよ」

 

 柴田たちが見つけてくれているといいが……。

 幸いにも、この地図で見た島の未探索部分は俺たちがベースキャンプを設置したところに近い。運が良ければ見つけてくれているだろう。

 

 他にわかることといえば、葛城、神室、橋本、鬼頭の4人はリーダーではないということか。それも綾小路と同じ方法を取るならあまり意味がある情報ではないが。

 そして今のところ判明しているスポットは15ヶ所のようだが、この様子だと島内にあるスポットはおそらく20といったところか?

 

 それにしても綾小路の動きが早い。

 葛城の話からするとAクラスよりも早く、おそらく試験開始10分ほどで方針を決めて、それからは文字通り島中をずっと走り回っているのだろう。試験が始まってからまだ1時間ぐらいしか経っていないのに、もう既に試験の大勢が決まりかけてしまっている。

 

「それと残ったDクラスのヤツらだが、洞窟の方へと向かっているのを確認している。おそらく雨風を避けるために、洞窟内にベースキャンプを置くんだろうよ。

 言っておくが、残りのDクラスのヤツらを見てもXが誰なのかはわからなかった。

 移動中のDクラスは集団の内側に女子を配置して、その外側を男子が囲むようにしていたが、男子どもがジャージの上着で中央の女子たちの顔を隠すような壁を作って移動していたらしい。それで集団の中に女子の誰がいなかったのはわからなかった。

 ただ、全ての女子が顔を見せていなかったわけじゃない。綾小路の女ども。つまり櫛田、堀北、軽井沢、長谷部、佐倉の顔は集団の外で確認できたから、アイツらがXの可能性はないな。それと平田は集団の先頭に立っていたのと、高円寺が別行動を取っているのを確認している」

「……まぁ、あの小柄な体型なら元より平田や高円寺はありえないがな。堀北たちも違うだろう」

「となると、Dクラスの小柄な子っていえば王さんや井の頭さん辺りかな……?」

 

 すまん、一之瀬。

 俺はDクラスの女子にはあまり詳しくない。

 

「そこで一之瀬、Aクラスからの提案だ。

 リーダー当ての際は、ABCクラスでそれぞれ綾小路、三宅、須藤の名前を書かないか? もしどのクラスがリーダーを当てたとしても恨みっこなしでだ」

「……言いたいことはわかるよ。

 このままじゃDクラスはスポット占有のボーナスポイントだけで少なくと200ポイント以上。それに配布された300ポイントの使い方次第では得られるクラスポイントは400以上、下手をしたら500クラスポイント近くにまでなるかもしれない。流石にそれを黙って見ているわけにはいかないからね。

 ただ念のために聞いておくね。Xがリーダーだとは思わないのかな?」

「確かにその可能性は否定できないが、それでも成功率は5割はあると思っている。

 小柄な女子がこれから7日間の8時間ごとに島中を動き回るのは、いくら綾小路が運んでいるとはいえツラいものがあるだろう。下手をしたら体調を崩してリタイアになることもありえる。

 そのことからXが顔を隠している目的はリーダー候補を特定されないためだけではなく、別人を運んで走り回ってもバレないことを利用するためではないかと俺は考えている」

「ああ、1回のスポット巡りごとに中の人を入れ替えているわけだね。綾小路くんらしいやり方といえばそうかも……」

 

 ありえない話じゃない。もし顔を隠している生徒Xを指名するとなると、まず俺たちはXが誰なのかを暴く必要がある。

 しかし、労力を費やしてXの正体を暴いたとしても、そもそもXがリーダーであるとは限らない。むしろ綾小路ならそれを見越してXを囮にしていることは考えられる。

 綾小路が葛城の言った作戦を取っているなら、確かにリーダーは綾小路か三宅か須藤の誰かだろう。それならいっそのことXの正体暴きに労力を費やさず、顔と名前が判明している3人を3クラスで指名すればいいということか。

 成功すればDクラスの得られるであろう200以上のボーナスポイントを無効化できるので、葛城の提案に賭ける価値はあるだろうな。

 

「理屈はわかるな。それなら分の悪い賭けとまでは俺も言わねぇ。

 といっても、その提案を受け入れるなら物資とCクラスのリーダー情報は買ってもらうし、Dクラスリーダー指名分のプライベートポイントもちゃんと払ってもらうぞ」

「駄目だ。物資とCクラスのリーダー情報は買ってもいいが、Dクラスのリーダー指名は無料で協力しろ。その代わりに3人のうち誰を選ぶかの選択権ぐらいはくれてやる」

「そんなもん貰っても、この試験を降りる俺たちには意味がねぇんだよ。

 そもそもの話、もし自分でBとCクラスのリーダーを指名して外したらマイナス100ポイントなんだぞ。だが俺にプライベートポイントを支払って指名させたら、指名を外しても40クラスポイント分のプライベートポイントしか払わなくてすむんだ。どっちが得かなんてわかりきってるだろうが」

「だが、Dクラスへの対応に関しては立場は同じだろう。Dクラスがもし400近くのポイントを手に入れたら、2学期からはCとDでクラスの入れ替えが起きるぞ」

「それがどうした。テメェらから払ってもらうプライベートポイントを込みで考えたら、それこそ収入は一気に1000クラスポイント近くになる。この額は将来的に大きなアドバンテージになるぜ」

 

 現在のそれぞれのクラスポイントは

 

   Aクラス:1054(+74)

   Bクラス:695(+55)

   Cクラス:508(+18)

   Dクラス:125(+125)

()内は5月1日からの増加分

 

 となっている。

 5月1日時点でのクラスポイントとの比較で考えると、Dクラスのクラスポイントが+125ポイントと大きく伸びている。このDクラスの伸びは中間テストで平均点が90点を超える成績を叩きだしたことと、例のCとDの諍いでCクラスから30クラスポイントを賠償として支払われた結果だ。

 あの審議で綾小路は50億という高額のプライベートポイントを得たが、それはあくまで坂上先生との契約の問題だ。他生徒に冤罪をかけようとしたことのペナルティは、綾小路のものとは別の話として処理されることになった。

 あんな大事になった割にはクラスポイントの賠償額が低い気もするが、50億プライベートポイントが原因だろうなぁ。

 

 Aクラスの+74ポイント、というのは特に事件もなく順調に学校生活を過ごしていたことで、大きなマイナスがなかったためだろう。

 そして俺たちBクラスの伸びは+55ポイントとAとDに比べると小さいが、おそらく以前にCクラスからイチャモンを付けられて騒ぎになってしまったことが原因だと思う。ロクなことしないな、龍園は。

 

 このようなクラスポイントの状況なので、もしDクラスがこの試験で384ポイント以上を取り、Cクラスが龍園の作戦通りに0ポイントで終わったら、確かに葛城の言う通りにCクラスとDクラスでクラスの入れ替えが行われるな。

 そして龍園の言う通り、もしCクラスがAとBとの取り引きで480クラスポイント……いや、龍園は最初の計画だとDクラスとも取引しようとしていたはず。Dクラスにまでリーダー情報を売っていたとしたら、手に入れられるプライベートポイントは500クラスポイント分以上になるだろう。

 それだけのプライベートポイントを得ることができたら、この試験で得られるクラスポイントを考えてもプライベートポイントの収入だけは俺たちBクラスを凌駕するかもしれない。

 なるほど。Cクラスの生徒が龍園の策に乗るわけだ。

 

「それで? Bクラスはどうすんだ?」

「……一度ベースキャンプに戻って、クラスの皆と相談して来てもいいかな?

 私としては龍園くんの提案にも葛城くんの提案にも前向きに考えているけど、それでもクラスの皆の意見も聞かずには頷けないよ」

「いいだろう。ぶっちゃけスポットの取り合いはもう綾小路に勝ち目がねぇからな。今更だと誤差の範囲だ。

 それにさっき言った通り、俺らは今回の試験でのクラスポイント稼ぎは捨てているからスポットについてはどうでもいい。話し合いに時間をかけて、スポットを取られて損をするのはおまえたちなんだからな」

「仕方がないか。早めに戻ってきてくれ、一之瀬」

「わかった。一度クラスに戻るね。

 ……それとこれを機会に確認しておきたいんだけど、龍園くんは今回の試験はプライベートポイント稼ぎに割り切っているみたいだけど、最終的にAクラスへ上がることはまだ諦めていないのかな?」

「ハッ、まさか綾小路の持ってる50億に期待しろってか? 誰が綾小路のお情けになんか縋るかよ。アイツはいつか絶対潰す……とまではいかねぇが、アイツにはいつか絶対に勝つ。

 そもそもの話、綾小路は『何だかんだ言っても最後は助けてくれるだろ』みたいな人生舐めたようなことを考えるアホのことなんぞ、一顧だにせずに『知らん』の一言で終わらせるタイプだろ」

「だろうね」

 

 だろうな。俺もそう思うし、葛城と神室たちも頷いている。これに関してはA~Dクラスの全生徒の共通認識だろう。もちろん頑張っているだけでも駄目で、ある程度は結果を出さないと綾小路は話すら聞いてくれないだろう。

 それでもクラスの皆で試行錯誤をしながらも前に進んでいれば、きっと綾小路なら応援をしてくれるだろう、という想いもある。

 

 結局はできることを頑張るしかないんだな。

 

「そういう意味でもプライベートポイントだけ稼いで残りの高校生活を謳歌するのは危険、ってのはCクラス全体の共通認識だ。そして俺個人として綾小路に勝ちたいと思ってる。だからこれからもクラス対抗には挑んでいくぞ。

 安心しろよ。勝つといってもなりふり構わずの何でもアリじゃねぇ。綾小路が負けを認めるような勝ち方をする。それが俺の今の目標だ」

「へぇ、龍園くん、変わったね」

「フン、なりふり構わずだったら、何でもアリの綾小路に勝てねぇのは認めるさ。

 ……何しろあの審議のあった日の翌日、朝起きたら片手両足が結束バンドでベッドに固定されていて、枕元に買った覚えのないニッパーとフグの卵巣の糠漬け、そして『定期試験の日じゃなくてよかったな』なんて書かれた警告文が置かれていたんだからな。

 目ぇ覚めたときはわけがわからなかったぜ」

「なにそれこわい」

 

 暗殺者か忍者か、綾小路は?

 …………そういえばアメリカで付けられたニックネームがリアルニンジャだったか……。

 

「フグの卵巣の糠漬け?

 そういえば以前、生徒会室に入ってきた南雲先輩が綾小路にいきなり食って掛かったことがあったな。その時は南雲先輩が興奮していて何を言っていたかよくわからなかったが、思い返せばフグの卵巣の糠漬けのことを言ってなかったか、一之瀬?」

「もしかして南雲先輩も同じ目に……?」

 

 何をやっているんだ、綾小路は……。

 警告にしては物騒過ぎないか?

 

 しかし、これで龍園が手段を選ぶようになった理由がハッキリしたな。

 何でもアリなら綾小路が有利過ぎる。

 警告文の通り、もし定期試験の日に両手両足をベッドに固定でもされて試験を受けられなかったら、それだけで退学が確定だ。綾小路からすれば他の生徒を退学に追い込むことはそれぐらい簡単なことだと、今後は冤罪を被せるようなルール違反をしないように龍園へ警告したのだろう。

 

 それにしても綾小路がやったという証拠はないっぽいんだが、この場の全員が綾小路が下手人であることを前提に話をしているのは自然な流れだと受け止めていいのだろうか?

 でも他にそんなことできるヤツなんていないからなぁ……。

 

 

 さて、いつまでもこうしてはいられない。

 龍園の申し出は気になるところもあるが、少なくともテント1つと懐中電灯1つ分のポイントは確実に節約できる。綾小路のこともあるし、受け入れることを前提に考えていいだろう。

 なのでベースキャンプに戻って、クラスの皆に龍園と葛城の提案を受け入れるかの相談しに行くことを一之瀬に言おうとしたところ、

 

「すいません。ちょっと気になったことがあるので神崎くんに質問していいでしょうか?」

 

 今まで話に入ってこなかった椎名が、俺に向かって問いかけてきた。

 しかし俺にか?

 

 一之瀬を見ると頷いて返された。

 

「……答えられるものなら構わない」

「フン、さっきから俺とAから情報を貰うばかりの分際で偉そうに」

「綾小路の温情で首の皮一枚繋がって助かった分際で偉そうに、と言い返せばいいのか?」

「はい。それでは質問なのですが、神崎くんは先ほど妙なことを言っていませんでしたか?」

 

 龍園の悪態を気にせずに質問してくる椎名。マイペースなんだな。

 

「妙なこと、とは? 具体的に言ってくれないか?」

「確か話に軍手が出てきたときですが、その際に『そんなものまで持ち込んでいたのか』と言っていたと思います」

「……そんなことを言ったかな?」

「ああ、それだ。俺もそこに違和感を持ったんだ。ひよりの言う通り、確かに妙だな。

 オイ、神崎。どうして『持ち込んだ』なんだ? 綾小路たちがポイントを使って購入したのだと何故考えなかった?」

 

 ……しまった。口を滑らしていたか。

 

「あ、僕は一足先にベースキャンプに戻って皆に説明しておきますね」

 

 浜口!? 俺を置いてどこへ行くんだ、浜口!?

 

 いや、島に上陸してしまった以上はどうせ今更な話なのだし、そもそも綾小路からは俺たちの判断でAやCクラスに話をしてもいいという許可を事前に貰っている。口止めをされていたのは上陸前に学校へバラすことだけなので、今ここで話しても問題はない。

 先の冤罪事件で俺たちBクラスがDクラスの情報収集に協力した礼として貰った情報だが、同じようにAとCから今貰った情報の礼として話をしてもいいだろう。それに情報を渡すことによってDクラスへの龍園の警戒心を高めることができるのならば、葛城の提案にタダで乗ってくる可能性も上がるかもしれない。

 綾小路は怒るかも…………普通に怒らんだろうな。白黒がハッキリし過ぎている綾小路が許可をだしてるってことは、それは普通に話してもいいことなのだろう。

 ここは素直に話しておくとするか。

 

 

 ……しかし一之瀬がいる前だと話し難いから、一之瀬はBクラスのベースキャンプに戻ってもらってもいいだろうか?




きよぽん「Xは持ったな、行くぞォ!」
ドラゴンボーイ「物資とリーダー情報とリーダー指名権利、売るぞ!」

帆波ちゃん「どうして???」
康平くん「どうして???」


 毒入りケーキは危険なのでフグの卵巣の糠漬けで代用です。
 仕事で金沢駅に立ち寄ることがあるのですが、買ったことはないです。

 他にいませんよね? 複数人でスポットをバル〇ることを書いた方って。
 他の方の作品でリーダー以外がキーカードをかざしても無効だったという描写は読んだ覚えがあるのですが、キーカードを複数人が同時に持ってかざす、というのは私が読んだ範囲ではなかったと思います。

 まぁ、やってることは単純ですよね。
 顔を隠しているXがいなくても、スポット巡回を5~6人ぐらいでやれば、キーカードに記されているリーダー名さえ見られなければ確率的に他クラスは諦めるでしょう。そのリーダー名を隠すのも、ガムテープとかを買えばいいだけですし。
 もっと言うなら、決定したリーダーを先生に伝える生徒が受け取ったキーカードに記されていた名前をテープで隠し、その生徒以外はリーダーが誰なのかわからないようしておけば、キーカードを盗まれたりしなければ大丈夫でしょう。

 それと最新刊、2年生編10巻を読みましたが、退学になっても編入試験に合格すれば他校に編入できるのが某退学者から明言されましたね。
 転校じゃなくて編入かぁ。違いは単位の引継ぎ有無。
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