実力者だけど陰の実力者はもういるので陰には潜みません   作:なゆさん

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3話

 アレクシアのとんでもない一面を目撃して数日が経った。相変わらず仕事は忙しいし、学会に研究レポートの提出もしなければならない。学生なのに、過労死しそうである。

 

「大変ですジロ君!!」

 

急に僕の寮にアイリス様が入ってきた。

 

「アイリス様がこちらにいらっしゃるとは珍しいですね?」

「ごめんなさい。そんな悠長に話している場合じゃないのです。アレクシアが、誘拐されました。」

「え!?」

 

アレクシアが!?

 

「……犯人は?」

「まだ何も。一応最後にアレクシアと一緒にいたと思われるシド・カゲノー君に容疑がかかっていますが、彼の実力的に可能性は低いでしょう。」

「分かりました。血痕等はありましたか?」

「ありませんでした。現状、どこで誘拐されたかすら分かりません。」

 

アレクシアを誘拐出来る、更に血痕もなくとなれば、相手は相当の手練れだろう。今のアレクシアは僕の教えを受け、かなり成長している。勘も良いから、不意打ちにもよほど上手くなければ反応出来る。最低でも、武神祭決勝トーナメントでも通用するレベルを誘拐出来る実力者が敵側にいる。気を引き締めなければ。

――とりあえず、

 

「アーティファクトを使ってみます。」

 

特定の個人の魔力を感知するアーティファクトを起動し、アレクシアの魔力を感知させる。

 

「これは……。アレクシア様はとりあえず生きておられます。何処か遠く、もしくは地下に囚われている可能性が高いでしょう。すみません、これ以上の情報は」

「いえ。無事が知れただけでもありがたいです。ありがとうございます。」

「いえ、王家に使える貴族の次期当主として当然です。私も、アレクシア様の捜索、奪還にご協力いたします。」

 

僕はすぐに仕事を切り上げ、アレクシアの捜索に加わった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 それから2日後。

 

「状況は!?」

 

「ハイ!至る所で襲撃が起こっています!統一性がまるでありませんが、襲撃者は全員、黒い衣服を身に纏って居ると―」

「分かった!」

 

配下の騎士から状況を聞きながら、王都を走り回る。夜、いきなりの襲撃。何かアレクシアに関係があるのだろうか?何でもかんでも結びつけるのは危険だが、何となくそんな気がする。

 ただ、襲撃された地点はいずれも怪しげな取引があった地点だ。僕独自で調べていたから間違いない。

最近、そのような取引の背後には、ある組織があることが分かってきた。【ディアボロス教団】。お伽噺の魔神ディアボロスの復活を目論む頭のおかしい集団らしい。かなりデカい組織のようで、国の内部にもくい込んでいる。古い文献等を調べれば、もっと詳しく分かるだろう。

 考えるに、これはディアボロス教団とその敵対組織の抗争の可能性が高い。もしかしたらアレクシアの【王族の血】を……。

 

「ガウ!!」

「! クッ!!」

 

突然こちらに向けて放たれた一撃を受け止める。――重い!!

 

「誰だ!」

 

攻撃を仕掛けてきた眼の前の獣人の女の子に尋ねる。

 

「デルタはデルタなのです。お前、強いのです! お前を狩ってボスに褒めてもらうです!!」

 

デルタはそう言うやいなや、凄まじいスピードで僕に接近してきた。フェイントもない、真っ直ぐな一撃だ。

 正直、今の状況自体とっさのことで、部屋に置いているアーティファクト持って来てないし、剣も上物とはいえ普通に売られている剣だ。こんな強そうな人とやりたくはない。……が、そうも言ってられないか。

 爪の一撃を受け流し、返す剣で斬る。それを凄まじい反射神経で躱すデルタ。

 

「はあ!?」

 

技もクソもない動きだというのに、力技で技と渡り合ってくる。初めて会うタイプだ。

 

「ガアー!!」

 

めちゃくちゃな連撃。直線的で、躱す事は容易い。が、

 

「クソッ!! おかしいだろこの威力!!」

 

まともに受けたら剣が一発で壊れる。そして、僕の攻撃も躱される。ちゃんと攻撃の隙にカウンターしているのに、どういう反射神経してんだまったく!

 本気でやれば普通に勝てるが、【ボス】という存在がいる以上、魔力の消費は最小に抑えたい。今の魔力使用率は5%程。後数回、避けの動きを見ればこの子の動きは完全に見切れる。少し時間はかかるが、最低限の消費でこの子を倒す。

 

「やめなさい、デルタ。」

 

その時、声が響いた。

 

「ガウウ!!」

 

「デルタ?」

 

「! キュウン……。」

 

デルタが大人しくなった。そして、金髪のエルフが現れる。ここに来て新手か。

――手抜きしないで一気にかたをつければ良かったかも。

 

「私達は貴方と戦う気は無い。」

 

金髪のエルフはそう言い残し、闇の中に消えた。

 

「…え?」

 

普通に逃げられた? あのデルタって子の暴走だっただけってことか? それとも時間稼ぎが目的? クソッまだ情報が足りない。あの集団に対する情報も集めなければ……!!

 瞬間、アレクシアの魔力を感じた。

 

「やはり下か!!」

 

地下水道の入口は……あっちか!!

近くにはゼノンの魔力もあった。

……嫌な予感がする。間に合ってくれよ!!

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