実力者だけど陰の実力者はもういるので陰には潜みません   作:なゆさん

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4話

 アレクシアの魔力へ向かい、地下水道を真っ直ぐ進んでいく。どうやらゼノンが近くに居るようだ。しかし、ゼノンの魔力が戦闘準備をしているかのように、静かにだが上がっている。

やはりゼノンは【ディアボロス教団】と繋がっていたか! 途端、アレクシアの魔力も上昇し、戦闘になる。まだここからは遠い。アレクシアならゼノンと互角だが、あの人は本気を隠している感じだった。本気を出せば、それこそアイリス様とも渡り合えるレベル、いやもしかしたら上回るかもしれない。急がないと!

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「お見せしよう、次期ラウンズの剣を!」

 

ゼノンの声が聞こえた。瞬間、一点集中させた魔力で足、そしてそれに関わる箇所を強化し、一瞬でゼノンの前に飛び出す。

僕が開発した技、【縮地】だ。1〜100mまでを一瞬で移動出来る。そして、アレクシアとゼノンの間に割って入り、ゼノンの剣を弾いた。

 

「王女様に、しかも婚約者に剣を向けるとはどういうことですか、ゼノン殿?」

 

「な!? いつの間に!?」 

 

一瞬で距離をとるゼノン。

 

「いくら貴方でもコレは極刑を免れませんよ?」

 

剣を構えつつ告げる。

 

「フッ、フハハハハハ!――下らない! そんなもの、私が貴様を殺せば済む話だ!!」

 

「貴方が僕を殺せるとでも?」

 

「貴様お得意のアーティファクトは何一つ持ってきていないという情報は入って来ている! それでもまだ差はあるだろうが、次期ラウンズたる私の切り札を使えば――」

 

『カツン カツン』

 

誰かの足音が聞こえた。見ると、いつの間にかゼノンの背後に男が立っていた。

 

「…何者だ!?いつからそこに――」

 

ゼノンが叫ぶ。

 

「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者。」

 

シャドウ。多分こいつが、デルタという子が言っていた【ボス】だ。立ち振る舞いに隙はなく、感じる魔力は静かで、しかし膨大だ。間違いなく強い。僕でも勝てるかどうかというレベルだ。

 

「シャドウ…だと…? 近頃教団に噛みついてくる野良犬の名か…!!」

 

やはり、ゼノンは教団員! そしてシャドウ達は敵対組織か!

 

「小規模拠点を幾つか潰し良い気になっているようだが…今日此処に居るのは次期ラウンズ12席ゼノン・グリフィ。丁度いい、君の命も、ラウンズへの手柄とさせてもらう!!」

 

瞬間、ゼノンが凄まじい速さで斬撃を放った。しかし、シャドウは残像を残す程のスピードと無駄のない動きでゼノンの背後をとる。

 

「それで、教団の主力とやらは何処だ?」 

「ッ! ハア!!」

 

背後を取られた事に驚きつつも、咄嗟に剣を振るうゼノン。シャドウはその剣をやすやすと受け止める。

 

「クッ!」

 

ゼノンの連撃。凄まじい速さで放たれるそれを、ほぼ動かずに、魔力もほぼ使わずに、軽くいなしている。凄まじい技術だ。

受け流し、弾く 受け流し、弾く

容易くあしらわれるゼノン。

 

「鈍い剣だな、次期ラウンズ。」

「な…舐めるなアアア!!」

 

美しい剣だった。僕の剣とはまた一つ違う。少々感覚に頼っているところがある、所謂才能に頼っている僕の剣とは違い、この剣は愚直な積み重ねの果ての剣。凡人が積み重ね積み重ね、要らない物を削ぎ落とし、芯のみが残った剣。まるで影野君の……。

 

「がはっ!!」

 

壁に叩きつけられ、血を吐くゼノン。

 

「くっ、貴様……ッ!一体何者だ!?それだけの強さがありながらなぜ正体を隠す!!」

「我らはシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者。我らはただそれだけの為にある。」

 

そう口にするシャドウの瞳には、強い意志が見えた。炎のような熱意が見えた。

 

「本気で教団に楯突くつもりか…! 

――いいだろう!」

 

ゼノンはそう呟くと、フラッと立ち上がり、怪しげな錠剤の入った瓶を取り出す。

 

「ならば私もそれに答えようじゃないか…!!」

 

そして、その錠剤を飲み込む。

 

「常人が使えばただ力に押し負け自滅する覚醒の力! その圧倒的な力も自由に扱えるのが、ラウンズたる者の資格だ!!」

 

ゼノンの魔力が爆発的に上がる。血管が浮き出て、肌は黒っぽく変色した。

 

「覚醒者3rd」

 

変質を終えたゼノンが告げる。

 

「来い、最強の力を見せてやろう……!!」

 

……醜い。あんなものに縋り、変わり果てた姿となり、その力を使いこなせてさえいないのに最強を騙るとは。

この男は、本当にどうしようもない男だ。

 

「醜いな。」

 

シャドウが口を開く。

 

「何…?」

 

「その程度で最強を騙るな。それは最強への冒涜だ。」

 

シャドウの魔力が、辺りに漂い始める。洗練された、それでいて膨大で濃密な魔力。

 

「借り物の力で、最強へ至る道はない。」

 

シャドウが剣を掲げる。

 

「な…何だ…!?この形状の魔力は…!!」 

 

「…綺麗……。」

 

アレクシアが何かを呟くが、僕の耳には入ってこない。それどころじゃなかった。シャドウは、明らかに大技を使うつもりだ。尋常ではない魔力制御による技。僕ですらこんなの不可能である。

しかも、この魔力の感じ、周囲を巻き込むタイプだ。絶対にかなりの被害が出る。

このままじゃヤバい!――どうする? どうする? 考えろ! 考えろ!……

 

「ま、待て! 一体何を――」

 

「真の最強をその眼に刻め。」

 

クソッ。間に合わな――

 

「刮目せよ。奥義【アイ・アム・アトミック】!!!」

 

瞬間、光が全てを包んだ。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「は?」

 

僕は唖然とする。幸い、シャドウは僕達を巻き込む気は無かったらしく、緻密な魔力操作で僕達に被害が出ないようにしていた。……が、眼の前には、まるで核爆弾でも落ちたかのような破壊跡が残っていた。

アーティファクトを使っていた様子は無かった。己の力のみで、これ程の事をやってのけたのだ。

 

「僕も、鍛錬が必要だな……。」

 

努力してきた。その分実力もついた。それこそ、最強と言われるまでに。ただ、知らぬ内に、慢心してしまっていたのかもしれない。自分は強いと。

世界には、己の力だけで核に匹敵する男がいた。僕なんてまだまだだ。甘ったれるな。そう教えられた気がした。

 

「アレクシア!!」

 

アイリス様の声がした。見ると、息を切らせ、走ってくるアイリス様が見える。

 

「アレクシア様、アイリス様がいらっしゃいましたよ?」

 

「分かっているわ。――お姉様! 私はここです!」

 

アレクシアに気づき、抱きつくアイリス様。それに手を添えるアレクシア。

 

「アレクシア…! よかった! 本当によかった…!」

 

……まあ、とりあえず今はアレクシアの無事を喜ぶとするか。

僕は、星空の下抱き合う二人を、そっと見つめていた。

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