実力者だけど陰の実力者はもういるので陰には潜みません   作:なゆさん

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5話

 事件から数日後。

僕は、ディアボロス教団についての調査を、独自に進めていた。

 

「【ディアボロス教団】【英雄の子孫】【伝説の真実】……こんなものが、歴史の闇に潜んでいたのか。」

 

まだまだ調査が足りず、ほんの少しの情報しか掴めていないが、ディアボロス教団は相当深く歴史に関わり、世界に根付いている。魔神ディアボロスの復活などという馬鹿な目標を掲げ、世界を裏も表も支配する闇の組織。情報は少ないが、調べれば調べるほど胸糞悪い集団だ。

 

『コンコン』

 

誰かが僕の部屋をノックした。

 

「はい、どなたですか?」

 

資料を片付けつつ尋ねる。

 

「アイリスです。先日の件でお話が――」

「アイリス様!?ち、ちょっと待って下さい!すぐに行きます!」

 

いきなり断りもなく王女様が一貴族の跡取り息子の寮に来るか!? ダメだろ色々と!! せめて呼び出しとか、急用じゃないなら会った時にでも言えばいいのに、来ちゃうの!?

――はぁ。愚痴を零してる暇はない。せめて待たせないようにすぐに行かなければ。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

会議室にて。

 

「アイリス様。次からは私を呼ぶ時は代わりの者をよこして頂ければすぐに参りますので、どうかそれでお願いします。突然来られてはこちらとしても対応に困りますし――」

 

「何故です?私と貴方の仲なのです。別に良いでしょう?」

 

「良くありませんよ。仲がどうこうではなく、王女たる貴方が恋仲というわけでも、婚約者というわけでもない私を自ら迎えに行くという行為は、色々と不味いのです。」

 

「そ、それはそうですが……。最近は貴方と会える時間も少ないし、もっと一緒に居たいというか(ゴニョゴニョ)。」

 

「別に私といても良いことなんてないのですし構わないでしょう? 私としても、アイリス様の評判に私のせいで影が落ちるのは避けたいのです。」

 

「むぅ……。」

 

不服そうなアイリス様。何をそこまでこだわっているのか。そんな所に変に意地を張る方ではないはずだけどなぁ。

そのまましばらく説得は続いたが、

 

『コンコン』

 

誰かが来たため残念ながら中断させられた。

 

「どうぞ。」

 

アイリス様は何食わぬ顔で来客を呼ぶ。心の内では逃げ切ったとガッツポーズでもしているのだろうか。

 

「し、失礼します。」

「失礼する。」

 

鈴の音のような少女の声と渋い老人の声。

部屋に来客二人が入室する。その二人を、僕は知っていた。

 

「シェリー!ルスランさん!」

 

ある研究で一緒になった事がある、シェリー・バーネットとその義父ルスラン・バーネットである。

 

「ジロ君!お久しぶりですね。」

 

シェリーが笑顔で僕に近づく。

 

「再開したばかりですみませんが! ――要件を説明させてもらっても構いませんか?」

 

駆け寄ってくるシェリーと僕の間に割り込み、シェリーにそう言うアイリス様。何故割り込む必要が…?

 

「あ、す、すみません! ちょっと嬉しくなっちゃって…。」

 

シェリーは大人しくそれに従ってソファーに腰を下ろした。

 

「それで、先日起きた王都同時襲撃事件ですが、我々は今その調査を全力で進めています。今日は、学術学園の知恵をお借りしたくて来訪しました。学術学園でもジロ君に続く秀才と名高いあなたがジロ君と共に調査すれば、なにかお分かりになるかと思いまして。」

 

既に僕が一度、現場から回収されたというアーティファクトを解析してみたのだが、30分程では何も分からなかった。時間をかければ解析は可能だが、時間短縮の為にもシェリーに手伝ってもらった方が良いと、僕の方から提案したのだ。

 

「恥ずかしい話だが、僕一人では情報を掴めなくてね。力を貸して欲しいんだ。」

 

「このアーティファクトですか……。解析には時間がかかるかもしれませんが、ジロ君となら多分出来ると思います!」

「ハハハ。古代語の分野なら僕より君のほうが得意だろう?」

 

実際、このアーティファクトの解析は僕よりも早く、正確に出来るだろう。

 

「そんなことは!私なんてまだまだで……。」

「シェリー、いい機会じゃないか。受けてみなさい。」

 

今まで口を挟まなかったルスランさんが言う。

 

「君はきっと将来立派な研究者になる。この依頼はその輝かしい未来に繋がる筈だよ。それに――」

 

ルスランさんがシェリーに僕達には聞こえない音量で耳打ちする。

 

「ジロ君とともにまた研究できるチャンスだ。次こそは関係の発展も見込めるんじゃないか?」

「そ、それは…!――受けます!!」

 

なにかやる気が上がるような事を言われたようだ。シェリーさんの目の奥が燃えていた。

 

「それはなによりです。護衛についてはジロ君で十分でしょうが、ジロ君が離れる際は、私の【紅の騎士団】が身の安全をお守りします。」

 

【紅の騎士団】、先の事件を受けてアイリス様が作った騎士団。僕もいつの間にか入団したことになってた。グレンさん、マルコさんなど団員も僕の知ってる人しかいない。

あと、アレクシアがごねて入団したとか。あいつも根は真面目だし、王女として国を守るため戦いたいと思っているのだろう。

 

「じゃあそういう事で。これからよろしくねシェリー。」

 

「は、はい!こちらこそよろしくお願いします、ジロ君。」

 

僕達は軽く握手を交わし、部屋を後にした。

……それにしても、なんで握手の時シェリーは僕の手を握ったままフリーズしたんだろう? 男とあまり接点ないのか?

 

ジロ・クロイが修羅場に遭遇するのは、そう遠くない未来かもしれない。

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