岸辺露伴は動かない  ──曹柱石の女──   作:初心者なの

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なんか思いついたので投稿します。一話完結の方がいいかなとも思ったんですけど、まあドラマも実質三話構成みたいなとこあるし、多少はね?ちょっとだけオリ設定あるので後書きで説明してます。


蛇足
蛇足編 1ー1 ──坂湯村──


 

 春も終わり、夏の兆しがみえるようになってきた頃。

 インクの匂いが漂う、しんと静まりかえった部屋で男──岸辺露伴が、本を開いている。しかしそれは、実際に読んでいるという感じではなく、ぼんやりと眺めているといった感じだった。

 

「次の「テーマ」は何にするか……」

 

 ()()取材から約1年半。露伴はとあるアイドルとの出会いなどすっかり忘れて、次の連作短編に向けて頭を悩ませていた。

 

「前回のテーマは「教授」だったからな……次は、ちょっと方向性を変えてみるか……」

 

 しばらく考えた後、ポツリと呟く。

 

「……()()()()とかいいんじゃあないか?」

 

 何となく思いついた感じだったが、いざ口に出してみると()()しかないと思った。露伴がそんな事を考えていた時だった。

 バタンと大きな音を立てて、仕事場のドアが開けられる。思いのほか、考える事に集中していたらしい。

 また泉君か。

 そう考えながら振り向く。

 

「おい、週刊連載の原稿なら昨日渡しただろう! 今日は何のよ……」

 

 露伴はそこまで言いかけるが、後ろにいた人物を見て驚きに目を見開く。そこにいたのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きちゃった♡」

 

 ──例のアイドル、星野アイだった。

 

 

 

 

「いやー、ここがあの天才漫画家『岸辺露伴』の仕事場かー」

 

「オイオイオイオイ……オイオイオイオイオイオイオイオイ!! 何当然の如く、見学始めて……いやそんなことはどうだっていい。どうやってぼくの家知ったんだおい!」

 

 さっきまでの静けさが嘘のようだった。すっかり騒がしくなった仕事場で、露伴とアイはやり取りを続ける。

 

「そんなの、別にどうだって良くない? いちいちケチくさいなー」

 

「ケチくさい」!? 君、今ぼくのこと「ケチくさい」って言ったか!? 呆れたなァ〜〜ッ! ここはぼくの「家」だぞ! つまり君はぼくの「住所」をどこかから知ったってことだ! わかるか? 住所だよ住所。全く……「プライバシー」もクソもないなァ〜〜〜ッ!!」

 

取材の時も思ったけどこの人ほんとにめんどくさいな……

 

「おい聞こえてるぞ」

 

 そこでしばし話が止まる。

 露伴はあの時と変わらず、すっかり息が上がっていた。一方、アイは余裕の態度を見せながら楽しそうにしている。若干の嘘臭さは残るものの、以前と比べれば随分と()()()()した顔していた。

 少し考えるそぶりを見せた後、アイが話を切り出す。

 

「……あの時、なんか微妙な雰囲気で終わっちゃったけど……結構感謝してるの、あなたに。」

 

「……………………」

 

「あの後ね、社長とかB小町の他のメンバーとかとも話し合ってね……なんか初めて「本音」で話せたって感じだった。……まあまだ全部が全部本音ってわけじゃないけど、前よりはマシになったんだよ? これでも」

 

 だからね、と続ける。

 

「何か恩返しできたらなって。そう思ったの!」

 

「そうかい、それは良かったな。あの時のクソガキが、こんなに立派になってぼくも嬉しいよ。「感動で涙が止まらない」ってヤツだ」

 

 いい雰囲気になると思われた。が。

 

「よし! 話は終わったな。じゃあ帰れ」

 

 露伴は話を切り上げる。当然だ。そのような雰囲気を楽しむ男ではない。

 

「えええええーーーー!! なんで!? なんか今いい雰囲気になる感じじゃなかった!?」

 

「なるかァ! 君はぼくに「感謝」していて、「恩返し」がしたいと言った。ぼくはその「感謝」を受け取り、こんなに立派に成長してと「感動」をもらった。これでこの話は終わりだ!! とっとと出てけェ!!」

 

 そう言いながら、アイを仕事場から押し出そうとしていた時だった。

 

なんかママ楽しそうだね

そうかあ?

 

 そんなことを小声で話しながらこちらを伺う、金色の髪をした二人の幼児を発見する。

 露伴は()()を指差しながら、震えた声で質問する。

 

「ちょ……ちょっと待て……なんだその「ガキ」は……君、まさか他のヤツも()()()()()ってんじゃあないだろうなァ?」

 

……うーん……まあこの人なら大丈夫か!この子たちはねぇ……私の子供! 「ルビー」「アクアマリン」っていうの!」

 

「は?」

 

 露伴にしては珍しく、随分と間の抜けた声だった。しかし呆然とするのも一瞬で、すぐに正気を取り戻した露伴は、その明晰な頭脳を持ってして考え始める。

 

(いやちょっと待てよ……あの二人なんだか見覚えがあるぞ。……わかった! 「オタ芸」をしていた赤ん坊だッ!! そうか……自分の子供だからアイドルのライブ会場に子供が……。というか、そうなんだとしたらあの時の「本」に書かれていた内容は正しいってことになるな……いや待てよ。ということは──)

 

「ということは……もしかして君、「子持ち」でアイドルやってるってことか?」

 

「うん。……あ、やっぱりそういうのは良くないって言われる感じ?」

 

「いや、別にそういうのは()()()()()()んだ。そもそも「アイドル」に興味ないからな、ぼくは。ぼくが()()()()()のはなァ……君がまたぼくのところに「厄ネタ」持ち込んだんじゃあないかってことなんだよ! こんなとこ誰かに見られでもしてみろ……また君の「厄介ファン」に絡まれるじゃあないか!」

 

「でも一応世間の目は気にしてるよ? 二人も社長たちの子供ってことになってるし。ほら」

 

 そういうとアイは、ドアの方を指差す。そこには、双子以外の新たな人物──斎藤ミヤコが申し訳なさそうに立っていた。「すみません……」と消え入りそうな声で言いながら、彼女が頭を下げる。それを見た露伴はフンと鼻を鳴らし、話を続ける。

 

「まあ一応考えてはいる、ってわけだ……すぐバレそうなもんだが」

 

「露伴先生って一々、文句言わなきゃ話進められないの?」

 

 アイが煽るように言う。

 

「あのなァ。そもそも君が「子供」連れて、ぼくん家までやって来なけりゃあこんなことにはなってないんだよ! わかるか!? というかなァ……君がここにいるのがそもそもの問題なんだ、いい加減帰れェ!」

 

 そこまで一息に言った露伴が返答を待つ。

 

「──帰らないよ?」

 

「あ?」

 

 露伴が怪訝な声で返す。何だか嫌な予感がした。

 

「だって……「ホテル」取ってないし!」

 

「…………………」

 

 唖然とした表情をする露伴。その顔は、まるで信じられないものでも見るかのようだった。

 

「まあ、仕事もあるし明日には帰るから! 一晩だけでいいからさー。お願い!!」

 

「…………………………今日だけだぞ。後、仕事場からは出て行け」

 

 もう何を言っても無駄だと悟った露伴は、諦めたように言うのだった。

 

 

 

 

 ──アイがやってきたその夜。

 露伴とアイは、()()()()()()で話していた。

 

「結局、仕事場にも入ってきて……君、このままだとほんとに()()()()()()()きただけになってるぞ」

 

「いやー、それはほんとにごめんって。ルビーがどーしても見たい、っていうからさー……アクアも珍しくはしゃいじゃって」

 

「見たい、っていうか……あれは「荒らし」てただけのように見えたがね」

 

もー、何回も謝ってるんだから許してほしいんだけど……あ

 

 そう小さな声で呟くと、アイは思い出したように話を続ける。

 

「そうそれ! 恩を返すって話! 露伴先生っていっつも「ネタ」探してるんでしょ!? いいネタ入ってるよ〜〜!」

 

 ふざけたようにアイが言う。

 

「そんな寿()()()()みたいに言われてもなァ……どうせ大したネタでもないんだろうが……ま、一応「テーマ」だけ決まってるって状況だからな……いいよ、話くらいは聞いてやる。どんなだ」

 

 アイはこの人相変わらず偉そうだな、と思った後少し勿体ぶって話し始める。

 

「……露伴先生はさ、『坂湯村』って知ってる?」

 

「坂湯村ァ?」

 

「そ、坂湯村。今度私が出る「映画」「ロケ地」。そこの山奥の「病院」にね、出るらしいの……幽霊? みたいな?」

 

「肝心の最後が雑なんだよなァ。そこ、もうちょっと詳しく言って欲しかったんだが……まあ君に求めるだけ「無駄」ってヤツなんだろうなァ……」

 

 露伴は、少し間を置いて続ける。

 

「だが」

 

「だが?」

 

「ちょっと興味が湧いた。話してみろ」

 

 彼が自分の話に興味を持つなんて珍しいな、と思ったアイは少しポカンとする。

 

「おいなんだその顔は。ぼくだって、気になる話があればちゃんと聞くさ。相手が誰であろうとな。……まあいい、一応説明しといてやる。ぼくが気になったのは2()()だ」

 

 露伴は続ける。

 

「まず一つ目。それはなァ……「映画」って点だ」

 

「露伴先生、私の映画に興味ある!?」

 

 少し喜ばしげにアイが返す。

 

「そこじゃあない。今ちょうど描こうとしてた短編のテーマが「映画監督」なんだ、決して「君が出る映画」に興味があるんじゃあない」

 

 ちょっとくらい興味持ってくれてもいいじゃん、と呟くアイを見ながら露伴は続ける。

 

「二つ目は『坂』湯村という名前だ」

 

「知ってるの?」

 

「いや、坂湯村という「地名」自体は知らない。だが「坂」というのに引っかかる」

 

「坂?」

 

 そう聞き返すアイに対して、仕方がないといった感じで露伴が説明を始める。

 

「そう「坂」だ。坂というのは一説によると、台地と平地の『境』がなまったものだと言われている」

 

「境……」

 

 そう繰り返すアイに対して、露伴は紙を引っ張り出してくる。

 

「これを見ろ。この紙を半分に折った向こう側が『あっち』、そして手前側が『こっち』。そして、その真ん中にあるのが『境』だ。本来行ってはいけない「あっち」に、入らないようにするための境。それが坂だ……そしてそういう「境目」を作るために、よくないものが「こっち」に来ないように「坂」を地名につけるようになった」

 

「なるほど……」

 

「ほんとにわかってるのか君ィ〜〜?」

 

 眉をひそめながら露伴が言う。

 それに対して、「ほんとにわかってるよー」とおどけて返すアイ。

 

「で、どう? こんなに気になりそうなネタが盛り沢山! 私の撮影見にこない? 許可とってあげるよ?」

 

「調子に乗るなよ。この()()()()だぞ……ぼくの名前出せば、むしろ相手が喜んで「許可」出してくるさ。わざわざ君と一緒にいかなくたって問題ない」

 

「ええー、いいじゃんケチー」

 

「何がケチなんだ全く……まあ一応「情報」はもらったしな……一緒に行ってやるよ、その「撮影」

 

「ほんとに!?」

 

 アイが顔を明るくしてそう答える。

 

「ま、一日だけだがな」

 

 そんな露伴の言葉に対して、「予定調整しなきゃなー」とアイは言う。その後、二人は日程や場所の打ち合わせをしていく。

 あんな()()()()に巻き込まれるとも知らずに──。

 

To Be Continued……




オリ設定
映画の時期
葉っぱが緑だったし、スタッフの服装が長袖と半袖入り混じっていたので、大体6月くらいということにした。この回の時期は大体5月くらい。アクアが監督に電話してすぐに決まってたって考えると、ほんとはここも6月くらいが良さそうだけど、それだとアイの予定が調整できないので5月にした。まあ一ヶ月あったらなんとかできるでしょ、知らんけど。

坂湯村
アイが主役を喰った映画の舞台。架空の村らしいけど、この世界では実在するということでなんとか……。あと千葉県に湯坂って場所があるらしいので、原作者の方も位置的にはその辺を考えていると思っている。(東京からそこそこの距離で、子連れでも行きやすい)

推しの子二次でこんなとこの設定詰めてるやついないやろな、と思いつつ書きました。完全見切り発車だけど、クソガキ有馬ちゃん煽りながら続きを考えたいと思います。

あとこれってアンチ・ヘイトに入るんすかね。その辺も含めて入れた方がいいタグとかあったら教えてもらえるとありがたいです……

ちなみに原作知ってる?

  • どっちも知ってる
  • 推しの子だけ
  • 岸辺露伴だけ
  • どっちも知らない
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