艦これ2 〜影の反攻〜   作:蒼海 輪斗

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一型艦娘…一般市民から召集された少女たちが軍艦の魂を宿したことによる原型の艦娘。解体された場合は元の人間として”除隊”という形で軍をやめる。多少の深海棲艦を蹂躙する力があり、三大鎮守府のみに配属されている。
一型艦娘の性能をコピーした量産型二型、三型も存在している。こちらは各鎮守府や警備府、泊地に配属されている。


第九話 大演習 呉VS佐世保

 十六夜の半舷上陸から三日が経った。呉鎮守府のほとんどの艦娘が半舷上陸を終え、次なる作戦、”捷二号作戦”へ向け、準備を進めていた。

 

 

呉鎮守府 執務室

 

 「司令官…、絡まった…。助けて…」

 

 先日さらなる改装が行われた響がネクタイでぐるぐる巻きになった状態で提督に助けを求める。

 

 「どうやったらそうなるんだよ…」

 

 提督は呆れながら響に絡まったネクタイをほどいていく。大規模改装ではないが、改装を受けた響は対空、対潜能力が以前に比べ向上した。対艦ミサイルは17式対艦誘導弾、対空ミサイルは発展型シースパローESSM、アスロック対潜ロケットは07式垂直発射魚雷投射ロケット、18式魚雷へと兵装も強化された。

 

 それでなぜネクタイなのかというと、改装の過程で制服も変更されたからだ。無線効率を上げるためインカムが追加された。制服は海自士官服に似た紺色で六つのボタンがついた上着、水色のプリーツスカート、黒のニーハイソックスを着用しており、茶色のローファーを履いている。そして問題のネクタイは黒であり、先の方に海軍のシンボルマーク”桜に錨”が描かれている。

 絡まった理由は、響が自分でネクタイを締めようとしたが、悪戦苦闘し、気がついたらこうなっていたようだ。

 

 「すげぇ絡まり方してんな…。…よし、解けた。」

 

 絡まったネクタイがようやく解けた。

 

 「そういえばそろそろ軍令部総長が訪問する時間だな。みんな、準備しろ。」

 

 そうだ。今日は軍令部総長訪問の元、呉鎮守府と佐世保鎮守府間で演習が行われるのだ。

 

 三代鎮守府の演習はお互いの技量を高め合うために行われる。そのため海軍の上層部や元帥、軍令部総長、さらには日本国海軍大臣も出席する。

 

 つまり決して負けられない戦いなる。

 

 「今回の演習は佐世保鎮守府の第一艦隊となる。うちの艦隊からは第七艦隊を出させる。」

 

 提督が第七艦隊全員に伝える。

 

 「佐世保鎮守府!?ほんとに!?久しぶりの演習だぁ!!」

 

 提督の言葉に十六夜が食いつく。改三改装が行われてから十六夜はまだ戦闘をしていないため、戦うのが楽しみなのだろう。

 

 「佐世保鎮守府と演習ですか。西沢提督もなかなか優秀な提督ですからいい勝負になりそうですね。」

 

 栗林も話に加わる。

 

 「やるからには勝ちましょう。捷二号作戦もありますからね。」

 

 「そうだな。まもなく軍令部総長が来るから俺も準備するか。」

 

 

 第七艦隊の様子を見ながら、提督も準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、呉鎮守府に向けて黒塗りの政府要人専用車が走っていた。海軍旗が飾られているため軍令部総長が乗っているようだ。

 

 「あ〜、呉鎮守府に行くの久しぶりだな〜。ねぇ霞ちゃん?」

 

 軍令部総長は隣で座っている自身の秘書艦、霞に声をかける。

 

 「はぁ、全くいつまでたっても子供っぽいんだから…。今マリアナ海域で作戦中なの忘れて無いでしょうね!?」

 

 「っ!?…も、もちろん忘れてなんかないよ…」

 

 「絶対忘れてたわその顔は!!」

 

 現在マリアナ海域では呉鎮守府、佐世保鎮守府の合同大規模機動部隊が影の艦隊の機動部隊と交戦中との知らせが先程届いたのだ。つまり侵攻を強める影の艦隊の機動部隊をマリアナ海域で迎え撃つ作戦、”第二次あ号作戦”が行われている最中だ。

 

 軍令部総長は確実に忘れていたが。

 

 「こんなのが本当に軍令部総長とは考えられないわ…。」

 

 霞が呆れたように吐き捨てる。

 

 「な、なんかごめん…」

 

 軍令部総長がシュンと静かになった。運転していた田中は「めちゃくちゃ気まずい…」と思いながらも呉鎮守府へと車を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、呉鎮守府では。

 

 「輪斗〜!!久しぶり!!」

 

 佐世保鎮守府の提督であり提督の友人、”西沢 弘樹”が到着していた。

 

 「西沢!久しぶりだな。いつぶりだ?」

 

 「輪斗がブーゲンビルで消息不明になったのを聞いて焦ったよ。よかった生きてて。」

 

 西沢は安堵の声を漏らす。

 

 「庄内さん。久しぶりですね!」

 

 「十六夜ちゃん!久しぶりね。元気にしてた?」

 

 「はい!もちろんです!」

 

 呉鎮守府第七艦隊と佐世保鎮守府第二艦隊との間で楽しそうな会話が始まった。

 

 「相変わらず十六夜ちゃんは元気だね。」

 

 「そうか?これから演習なのにのんきだと思わないか。最近影の艦隊の勢力が強大になってきて俺たち人類に投降する深海棲艦も出始めたんだぞ。」

 

 提督は真剣な顔で西沢に話す。西沢も真面目な顔になり言葉を返す。

 

 「そうだな。こっちの空母機動部隊は減少しているのに、相手の機動部隊は増加する一方だ。大本営も頭を抱えてるらしいぜ。」

 

 確かに最近潜母700型よりも空母十一型を見ることのほうが多くなってきた。影の艦隊が大規模な機動部隊を構成していることは紛れもない事実だ。

 

 それに加え、呉鎮守府の戦力低下、各鎮守府の戦力不足により戦局は少しずつだが”悪化”を辿っていることは否定できない状況へと陥っていた。

 

 「「提督。」」

 

 ちょうど二人は栗林、庄内から声をかけられ我に返る。

 

 「おっ、どうした栗林。」

 

 「軍令部総長が到着したようです。お迎えにいきましょう。」

 

 「そうか。分かった。」

 

 提督と西沢は十六夜たちを連れて呉鎮守府の正門へと向かった。

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府 正門

 

 「もう少しシャキッとしなさいよ!だらしないったら!」

 

 「ご、ごめん…。」

 

 いまだに軍令部総長は霞に色々と注意を受けており、言動のみを聞くとどちらが上官か分からないレベルだ。

 

 「まぁ、霞。総長を注意するのはそのくらいにして演習場に行こう。」

 

 いつまでも終わらない説教に流石に見かねた元帥が仲裁に入る。演習の日程が狂うのは防ぎたい。

 

 「時間的に佐鎮の艦隊も到着して準備をしている頃だ。上官である我々が遅れるわけにはいかないからね。」

 

 「…。まぁ元帥がそう言うならしょうがないわね。ほら、早く行くわよ。」

 

 「う、うん…。」

 

 その様子を後ろで見ていた田中は、苦笑しながら三人についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習場

 

 軍令部総長が到着してからすぐに演習は始まった。艦隊編成はこれだ。

 

 

呉鎮守府  旗艦 戦艦出羽、空母大永、重巡馬見ヶ崎、駆逐艦曙、駆逐艦十六夜、駆逐艦立春

 

佐世保鎮守府 旗艦 戦艦庄内、戦艦酒田、軽巡矢矧、駆逐艦初霜、駆逐艦長波、伊58潜水艦

 

 このような編成だ。

 

 

 「おお、なかなか変わった編成だね。」

 

 元帥が演習中の二艦隊を眺めながらつぶやく。

 

 「そうですか?うちの第七艦隊はいつもこの編成ですが。」

 

 「うちも庄内を中心に艦隊を編成してるから、いつもこのままの状態が多いですね。」

 

 話を聞いた提督と西沢が答える。確かに変わった編成だ。どちらとも火力に全振りしているわけでもないし、雷撃に特化しているわけでもない。しかし、二つだけ共通点があった。

 

 「…対潜能力と対空能力が全体として多いね…。」

 

 渡された資料を除きながら元帥は言葉を漏らす。そこへ提督が答えた。

 

 「はい。潜母700型対策に対空能力と対潜能力を大幅に向上させた艦娘で艦隊を編成しています。」

 

 提督の返事に元帥は「なるほど」とつぶやく。

 

 影の艦隊の潜母700型は潜水艦でありながら、10機前後の特殊攻撃機を搭載できる潜水空母であり、さらに通常の潜水艦とは違い必ず一艦隊で行動する。対潜、対空の両方の艦娘が必要であるのは言うまでもない。

 

 「潜母700型に対抗するために対潜能力と対空能力が高い艦隊ができたわけか。」

 

 その時、演習場の海面に轟音とともに水柱が上がる。

 

 「伊58、轟沈判定!」

 

 栗林の声が響く。どうやら十六夜が投下した演習用五式爆雷が炸裂し、伊58を轟沈判定にしたのだ。

 

 「さすが十六夜型駆逐艦。驚異的な対潜能力だ…」

 

 元帥が驚きの表情を浮かべながら演習場に目を向ける。軍令部総長も同じだ。提督も目を向けると嬉しそうな十六夜の姿が見えた。

 

 「嬉しそうだな…。俺の妹みたいだ…。」

 

 「ん?蒼海って妹いたっけ?」

 

 提督の独り言に西沢が反応する。

 

 「ああ、正確には”いた”だけどな。」

 

 その言葉に西沢が「あっ」と察した。そのまま頭を下げて謝る。

 

 「…悪かった。」

 

 「気にすんな。お前も似たような境遇だっただろ。」

 

 提督の言うように西沢も父親以外の家族を失い、海軍に入った身だ。提督の同期はだいたいこんな境遇が多い。

 

 「おっ、そろそろ演習が終盤になってきたねぇ〜。」

 

 「見るのもいいけどちゃんとメモ取ったりしなさいよ!」

 

 軍令部総長は今だに霞から叱られている。演習では呉鎮は出羽、十六夜のみが生き残り、佐鎮は庄内だけが生き残っていた。

 

 「提督!夜戦やっていい!!」

 

 十六夜が提督に向けて夜戦の許可を求める。

 

 「いいぞ。最後まで頑張れよ。」

 

 「分かった!ありがと!!」

 

 意気揚々とした声で十六夜は返事をし、夜戦へと突入した。

 

 「元気な艦娘だね。」

 

 軍令部総長が提督の脇にきてそう言う。

 

 「ええ、自慢の艦娘ですよ。」

 

 提督は笑顔で答えた。

 

 

 

 

 その時。

 

 「元帥!!総長!!マリアナの第一機動艦隊から緊急電です!!」

 

 田中が通信機を持ってこちらへ走ってきた。

 

 「緊急電!?どういうことだ?」

 

 元帥が聞き返す。田中が通信機を手渡すと元帥は大急ぎで第一機動艦隊の旗艦大鳳へと連絡を入れる。

 

 「っ!?かからないぞ!!」

 

 「えっ、ちょっ!!どういう事!!?」

 

 元帥も軍令部総長もだいぶ焦っている。どうやら通信をかけても繋がらないようだ。

 

 「貸してください!」

 

 提督が通信機を手に取り、緊急コードを入力する。こうすれば限定的だが通信はできるはずだ。

 

 「こちら呉鎮守府!何があった!?」

 

 通信機に提督が声を入れる。すると返信があった。

 

 「第一機動艦隊、瑞鶴です!」

 

 旗艦の大鳳ではなく、同じ艦隊の瑞鶴が通信にでたのだ。

 

 「瑞鶴か!どうしたんだ!?」

 

 「提督さん!それが…」

 

 次の瞬間、瑞鶴の口からは恐ろしい言葉が放たれた。

 

 「旗艦大鳳、敵潜水艦の強襲で消息不明!…そして翔鶴姉も大破して…」

 

 これだけでも何が起きたのか提督たちは理解できた。間違いない。影の艦隊の大規模機動部隊と交戦した結果、

 

 

 

            第一機動艦隊は壊滅したのだ…

 

 

 

 

次回   絶望の作戦開始




艦娘のサルベージ…現在開発中の艦娘をサルベージする技術。実用化ができれば轟沈した艦娘を戦線復帰させることができるが、技術不足なため現在も開発が難航している。


第一機動艦隊が影の艦隊の大規模機動部隊に敗北…。第二次あ号作戦は失敗したのだ…。






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