艦これ2 〜影の反攻〜   作:蒼海 輪斗

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影の艦隊 後期型…優秀な戦闘力をもつ一型艦娘を超えるために開発を続けた影の艦隊の最終型。一部は一型艦娘をも上回る戦闘力を持ち、戦局を悪化させている一因でもある。


第十二話 絶望のスリガオ海峡

 第一遊撃部隊、第三部隊は魚雷艇郡に発見され現在戦闘を開始していた。

 

 雷艇甲型改、乙型改が奇声を上げながら高速で突撃を開始する。それに対して第三部隊は迎撃体制を整える。

 

 「主砲、副砲、撃てぇ!」

 

 「邪魔だ…どけえぇぇぇぇぇぇっ!」

 

 扶桑が声を上げ、山城が怒声を上げて主砲を放つ。しかし高速の魚雷艇は軽々しく回避する。扶桑が放った砲弾も全弾回避されてしまった。

 

 「くっ…」

 

 「当たらない…」

 

 やはり戦艦では高速を誇る魚雷艇相手には分が悪いようだ。

 

 「くっ、させるか!」

 

 時雨たちが甲型改に向けて砲撃を行う。放たれた砲弾は甲型改の付近に着弾し、爆風によって甲型改は奇声を上げながら撃沈された。

 

 「やった!よし、このまま…」

 

 その後も時雨たちは襲いかかる魚雷艇郡を各自で撃沈していった。数隻の乙型改は魚雷を投下していったが、全て回避され、山城の砲撃により撃沈されていった。

 

 『コチラ雷艇甲型改。襲撃ニ失敗。艦隊壊滅ス…』

 

 この通信を最後に、魚雷艇郡とスリガオ海峡の本隊との連絡は途切れた。

 

 「〜〜影姫様。魚雷艇郡との連絡が途絶しました。おそらく全滅したようです。」

 

 戦艦百十型の報告に、〜〜影姫のうち白髪のほうが返事をする。

 

 「あら、そうなの?やられちゃったみたいねぇ」

 

 白髪はもう一人の黒髪のほうをみる。黒髪のほうは落ち着いて答える。

 

 「問題ない。魚雷艇郡はどのみち全滅するからな。潜母艦隊からなにかあるか?」

 

 「はっ!現在敵艦隊の隠密追跡中とのことですが、駆逐艦が対潜行動を行っているため攻撃ができないとのことです。」

 

 「…そうか。わかった。引き続き警戒にあたれ。」

 

 「了解しました。」

 

 戦艦百十型は一礼をし、艦隊の護衛に戻っていった。

 

 「このままこの海峡に入ったらあの艦娘はおしまいね…。」

 

 白髪はニタリと不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃

 

スリガオ海峡 入口付近

 

 「こちら第三部隊旗艦山城。これよりスリガオ海峡へ突入します。」

 

 旗艦である山城が、司令部のあるリンガ泊地へ無線連絡を行っていた。

 

 「分かった。十分に注意しろ。まもなく主力艦隊が突入するはずだ。本当に申し訳ないがそれまでなんとか耐えてくれ。」

 

 無線連絡で提督が念を押す。本当はもう少し早く主力艦隊を到着させたかったが、影の艦隊の大規模機動部隊に阻まれており、予定より到着が遅れているのだ。

 

 「大丈夫よ提督。絶対に耐えてみせます。」

 

 山城は提督の言葉に力強く答える。戦力差は明らかに歴然だが、主力艦隊が到着するまでは絶対に耐えてみせる。山城だけでなく第三部隊全員がそう決意していた。

 

 提督との通信が終了してしばらくした時、遂に影の艦隊の駆逐十六型後期型の艦隊が姿を現した。

 

 「駆逐十六型視認!!各艦戦闘開始!!」

 

 山城の号令に一斉に第三部隊が攻撃を開始する。

 

 「ここは譲れない。」

 

 早速時雨が砲撃を行い、一隻の駆逐十六型後期型に砲弾を命中させる。被弾した駆逐十六型後期型は奇声を上げながら轟沈した。

 

 「やった!!この調子で…」

 

 満潮たち第四駆逐隊も一方的に駆逐十六型後期型に攻撃を加えている。駆逐十六型は雷撃性能、高速性能を向上させた後期型であるが、三大鎮守府の高練度艦娘たちの敵ではなかった。

 生き残った駆逐十六型後期型たちは不利を悟ったのか、撤退を開始した。もしくは主力艦隊へと誘い込んだか。山城たちは追おうとはしなかった。

 

 「影の艦隊って言ってもこの程度ね…。」

 

 満潮が呆れたように言う。

 

 「満潮。確かに”今は”そうかもしれないけど、スリガオ海峡には影姫がいる可能性がある。気を引き締めていかないと。」

 

 時雨はそう言って満潮に警鐘を伝える。

 

 「分かってるわよ。十分気をつけるわy」

 

 「左舷魚雷多数!!」

 

 満潮が言い終わらないうちに、朝雲が叫ぶ。なんと多数の魚雷が接近しているではないか。おそらく駆逐十六型後期型たちが撤退の際に投下していったのだろう。

 

 「左舷…?まさか…!!」

 

 山城がとっさに左舷へ振り返る。そこには扶桑がいたはずだ。

 

 「!!」

 

 一瞬、扶桑の姿が目に入ったが、次の瞬間。

 

 

 

 

 爆発音が響き渡り、多数の水柱が上がる。

 

 「姉様ぁぁぁ!!!!」

 

 山城が絶叫する。多数の魚雷を被雷した扶桑は、爆炎に包まれて姿が見えない。しばらくすると爆炎が晴れ始め、片膝を海面についた扶桑が山城たちの目に写っていた。

 

 「ううぅ…」

 

 「姉様!!大丈夫ですか!!!?」

 

 「扶桑!!大丈夫!?」

 

 すぐに山城と時雨が扶桑に寄り添う。

 

 「だ、大丈夫よ…、これくらい…。うっ…」

 

 「姉様!!この怪我は大丈夫じゃないですよ!!」

 

 山城の言う通りだ。片膝を海面についているということは、軍艦で例えると傾斜しているようなものだ。このまま何も手を打たなければ、扶桑は海の底に沈むだろう。

 

 「扶桑、このままじゃ…」

 

 時雨がどうしようかと悩む。もう敵は目の前だ。撤退という選択肢はない。ただ海峡を突破。それしか道は残されていなかった。

 

 すると扶桑は肩で息をしながら、

 

 「…おいていきなさい。大丈夫よ、私は。」

 

 「姉様!?」

 

 「扶桑!?」

 

 扶桑のとんでもない言葉に山城と時雨は驚きの声を上げる。

 

 「そ、そんなことできません!!姉様がいなくなったら私はどうすればいいんですか…!!」

 

 山城が扶桑の手を取り、涙ながらに訴える。しかし扶桑はフッ、と笑顔を作り答えた。

 

 「大丈夫よ…。必ず帰るって提督とも約束したじゃない…。私は大丈夫。いくら欠陥戦艦と言われても、この程度では沈まないわ。」

 

 「姉様…。」

 

 「扶桑…。」

 

 二人は黙っていたが、やがて決断したのか山城が声を上げた。

 

 「全艦、このままスリガオ海峡を突破します!!ただ、前に進みなさい!!!!」

 

 山城は涙を流しながら、扶桑をおいて前進する。第四駆逐隊、最上もそれに続く。

 

 「…頑張って…、ね…」

 

 扶桑は薄れよく意識の中、いつまでも山城たちの背中を見つめ続けた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「来たようだな。艦娘共め。」

 

 「そうみたいね。どう沈めてあげようかしら…。」

 

 黒髪と白髪の双子の影姫、”スリガオ海峡影姫”が手を合わせあう。スリガオ海峡影姫の周りには、戦艦百十型後期型が四隻護衛についている。

 

 それよりも遥か前方には、多数の駆逐艦、巡洋艦が丁字陣地で布陣している。丁字戦法は全艦隊の火力を集中できる陣形であり、スリガオ海峡に突入してくる第一遊撃部隊第三部隊を迎え撃つ戦法のようだ。

 

 「これほどの艦隊相手にたった数隻の艦娘が勝てるわけ無いわ。そうよね?」

 

 白髪の影姫が黒髪の影姫に問いかける。その問いに黒髪の影姫が答える。

 

 「まぁ、そうだな。しかし気をつけろ。油断している時こそ足元はすくわれやすいと影浦提督もおっしゃていた。」

 

 「分かってるわよ。早く艦娘たちを海の底に送って影浦提督に成功報告を伝えましょう。」

 

 「あぁ、そうだな。」

 

 二人の影姫はニタリと微笑んでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「全艦隊、スリガオ海峡に突入!!各艦、主力艦隊が到着するまで敵を撃破してください!!!!」

 

 「「「了解!!」」」

 

 扶桑を除いた第三部隊は丁字戦法で待ち受ける影の艦隊へと突撃を開始した。早速駆逐十六型後期型の大艦隊と遭遇、砲撃戦が始まった。

 

 「魚雷多数確認!!回避ぃ〜!!」

 

 駆逐十六型後期型が魚雷を一斉発射したようだ。駆逐十六型後期型は雷撃性能が向上しているため、戦艦であっても致命傷になりかねない。

 

 「くっ、だめ、避けきれない!!」

 

 満潮が叫び、次の瞬間、満潮に魚雷が命中した。水柱が上がり、爆発音が響き渡る。

 

 「きゃあああああああああああ!!!!」

 

 「満潮〜〜〜〜〜!!!!」

 

 時雨が叫ぶ。さらに今度は左方向で爆発音が響く。時雨が振り向くと、山雲が被雷していた。

 

 「いやあああああ!!!!」

 

 「山雲!!!!」

 

 さらに時雨が叫ぶ。影の艦隊はスリガオ海峡が狭いことをいいことに、放射状に魚雷をばらまいていたのだ。放射状に放つことにより、命中精度が上がった魚雷に第三部隊は襲われていたのだ。

 

 さらに続いては朝雲が被雷。かすったものの中破にまで追い込まれたようだ。

 

 「こちら朝雲…。しばらく艦隊を離脱しま…す…。」

 

 旗艦である山城に送られた連絡を最後に朝雲からの通信は途切れた。

 

 「くっ、邪魔だ!!どけぇ〜〜〜!!!!」

 

 山城が怒りに身を任せ、砲撃を行う。放たれた砲弾は数隻の駆逐十六型後期型に命中した。戦艦砲弾が命中した駆逐十六型後期型たちは爆発を起こし、瞬時に轟沈した。

 

 「まだ、まだ耐えないと…」

 

 時雨も主砲を構え、駆逐十六型後期型、軽巡二十型後期型へと砲撃を行う。駆逐十六型後期型も軽巡二十型後期型も時雨に向けて砲撃を行う。

 

 「くっ…!」

 

 時雨は砲撃を避け、さらに反撃を行う。時雨の放った砲弾は軽巡二十型後期型の口内に命中、内部から爆発を起こしてそのまま轟沈した。

 

 「まだまだ負けないよ!!」

 

 最上も重巡二十一型後期型に砲撃を行い、魚雷を発射する。重巡二十一型後期型も魚雷を発射する。

 

 「くっ、無駄な抵抗を…!!」

 

 重巡二十一型後期型はさらに25cm三連装砲で、最上に向けて砲撃を行う。放たれた砲弾は最上の周りを夾叉して着弾した。最上の周りに水柱が上がる。

 

 「やったなぁ!!」

 

 最上も20.6cm連装砲で反撃を行う。砲弾は重巡二十一型後期型の頭部に命中した。

 

 「ぐはぁ!?」

 

 重巡二十一型後期型はそのまま昏倒する。最上は重巡二十一型後期型が放った魚雷も回避する。そこへ最上が先程発射した魚雷が着弾し、爆発が起きる。重巡二十一型後期型を撃沈した最上は駆逐艦隊へと攻撃を始める。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 魚雷の炸裂音が響き渡った。

 

 「!?何!!?」

 

 最上が周りを確認すると、何が起きたのか分かった。山城が駆逐十六型後期型からの雷撃を受けたのだ。

 

 「くっ…!!こ、これくらい…!!」

 

 「山城!!!!」

 

 時雨が絶叫する。しかし山城は血まみれになりながらも、時雨たちに叫ぶ。

 

 「時雨!!最上!!あなた達は私のことなんか顧みず、海峡を進みなさい!!」

 

 「山城…!!でも…」

 

 「さぁ、早く!!敵艦隊を攻撃しなさい!!」

 

 山城はそう叫ぶと、駆逐艦隊へと突っ込んでいった。

 

 「さぁ来なさい!!私が全部沈めてあげるわ!!」

 

 山城はそのまま駆逐十六型後期型たちに砲撃を行う。駆逐十六型後期型たちも攻撃が読めてきたのだろう。砲弾の合間を通って山城に近づいていく。

 

 

 「(お願い…、どうか、間に合って…。)」

 

 そう願い、山城は駆逐艦隊、巡洋艦隊へと突入していった…。

 

 

 

 

次回   艦隊全滅 〜スリガオ海峡の決戦〜




スリガオ海峡影姫…スリガオ海峡に沈んだ艦艇の怨念が具現化した影姫。影の艦隊では珍しく双子の影姫であり二人で一つ。片方でも欠けると攻撃力が半減するなど戦闘に支障がきたすが、他の影姫とはかけ離れた戦闘力を持つ。
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