艦これ2 〜影の反攻〜   作:蒼海 輪斗

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本土空襲…第二次あ号作戦が失敗してから影の艦隊は沖ノ鳥島海域を占領。そこを足がかりにし、富嶽爆撃隊による日本本土空襲を開始した。主に鎮守府や東京など海軍の拠点を積極的に爆撃している。

今回が第三章最終回です。


第十五話 帰投

リンガ泊地

 

 「提督!!第四部隊が帰投しました!!」

 

 「そうか。わかった。今行く。」

 

 大淀の報告に提督は部屋を出て、外へ出る。そのまま埠頭へと向かい、艦隊を出迎える。

 

 「提督さん…、第四部隊、帰投しました!」

 

 瑞鶴がボロボロの状態で提督に戦火報告を行う。敵大規模機動部隊を半壊させたこと。轟沈は無いことを。

 

 「そうか。分かった。瑞鶴、そのまま早くドックで修復だ。北村整備長がいるから早く直してもらえ。」

 

 「うん…。いてて…」

 

 瑞鶴は蒼永に肩を貸してもらいながらドックへと向かっていった。

 

 「伊勢、日向。よかった〜…。無事に戻ってきてくれて…。」

 

 西沢が安堵の声をもらす。

 

 「あったりまえじゃない!無事で当然よ!」

 

 「まあ、そうなるな。」

 

 佐世保鎮守府に所属している伊勢と日向が戻ってきてくれたことに、西沢はホッとしているようだ。

 

 「瑞鳳!?大丈夫か!!この傷…!」

 

 「あはは…、少し無理しちゃった…。」

 

 大破した瑞鳳を見て加藤は慌てている。

 

 「早くドックにいかないと!」

 

 そう言い、加藤は瑞鳳を抱きかかえる。俗に言う、お姫様抱っこの状態で。

 

 「ちょっ!?て、提督!?何やってんの〜!?」

 

 「大破してるんだから俺が運ぶよ。痛いだろ?」

 

 「そ、そうだけど…。流石にこれは…」

 

 瑞鳳は恥ずかしそうに頬を染めている。真面目な加藤は気づいていないが。

 

 「中村、後は頼めるか?」

 

 「分かりました。任せてください。」

 

 加藤は副司令の中村に他の艦娘たちの状態を確認することを頼み、自身は瑞鳳とともにドックへと向かった。

 

 「昔から変わらないよね、隼って。」

 

 「ああ、そうだな。」

 

 提督と西沢がつぶやく。そこへ十六夜と響が走ってきた。

 

 「提督〜!!瑞鶴さんたち大丈夫だった?」

 

 十六夜が心配そうな顔で尋ねる。提督は表情を保ったまま、返事をする。

 

 「大丈夫だ。損傷は激しいが、轟沈者もいない。」

 

 「そう、よかった〜…。」

 

 十六夜はホッとした表情を浮かべる。作戦の前半、道中で影の艦隊航空隊の攻撃を受けた時、武蔵がすべての攻撃を受け止めて轟沈したことから十六夜は仲間がいなくなることを恐れていた。

 

 「司令官、栗林補佐官から連絡がきていたよ。」

 

 十六夜と一緒に来た響が提督に伝える。

 

 「えっ、そうなのか。分かった。連絡してみる。」

 

 そのまま提督は庁舎へ戻り、通信室へと入る。そのまま呉鎮守府へと連絡をつなげる。

 

「はい、こちら呉鎮守府栗林です。」

 

 「栗林か、俺だ。」

 

 「提督ですか。」

 

 「ああ、響から連絡がきていると聞いて連絡したが、なにかあったのか?」

 

 「はい、そうなんです。」

 

 そのまま提督は栗林に何があったのかを聞いた。すると、栗林の言葉に提督は青ざめた。

 

 「く、呉鎮が空襲にあった…!?」

 

 「はい。富嶽爆撃隊が来襲しましたが、被害はそれほど大きくなく怪我人もいません。長谷川さんたちのおかげで迎撃に成功しました。」

 

 「そうか…。ならよかった…。」

 

 提督は安堵する。すると今度は栗林から質問を受ける。

 

 「提督、そっちはどうですか?」

 

 「ああ、作戦は成功した。結構被害は大きいが、影の艦隊にも大打撃を与えることができた。これから帰投する。」

 

 「そうですか。分かりました。十分気をつけてくださいね。」

 

 「ああ、分かった。」

 

 そう言い残し、提督は栗林との通信を切った。

 

 「(さて、明日の早朝にはリンガ泊地を出港か…。なにも起きないといいけど…。)」

 

 提督はそう考えながら、通信室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

 早朝、予定通り提督は海上自衛隊の護衛艦あきづきへと乗艦した。艦娘は負傷者以外は交代制で護衛を行うこととなり、日本へ帰投することとなった。

 

 「それでは出港します。」

 

 あきづき艦長が号令をかけ、艦が動き出す。護衛の無傷の艦娘たちも護衛艦とともに航行を始める。

 

 「提督、大丈夫かな…。」

 

 あきづきの艦橋で十六夜が不安そうに提督に声をかける。どうやら海軍丙事件のことを思い出しているようだ。

 

 「大丈夫だ十六夜。今回は精鋭を誇る海上自衛隊の護衛艦だ。影の艦隊でも攻撃するのは容易じゃないし、護衛もいる。そう心配することはない。」

 

 「う、うん。だね。じゃあ大丈夫か!」

 

 十六夜は提督の言葉に安心したのか、いつも通り元気な声で返事をした。十六夜の人懐っこそうな笑顔に提督はなぜか亡き妹の顔が浮かぶ。

 

 「(ほんとに似てるな。十六夜と輪花は…。なにか関わりがあるのか?いや、考えすぎか。)」

 

 提督は十六夜の頭を軽く撫でる。

 

 「提督?どうしたの?」

 

 十六夜がキョトンとした顔で提督を見つめる。

 

 「いや、別になんでもない。」

 

 そう言い残し、提督は扉を開き、艦橋から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室

 

 「いてて…。まだ治っていないみたい…。」

 

 「瑞鶴ちゃん、まだ無理しないほうがいいわね。」

 

 医務室では蒼永が瑞鶴に包帯を巻いてあげていた。蒼永は元気そうだが、瑞鶴はまだ完全に怪我は治っていないようだ。 

 

 「そうですねぇ…。まだ艦娘としては戦えますが、鎮守府に戻ったら本格的な修理が必要ですね。」

 

 瑞鶴と他の艦娘の容態を診ながら整備長の北村が言う。艦娘の応急修理を行うために呉鎮守府からやってきた彼だが、ここまでの損傷は初めてだった。

 

 「除隊待ち状態の艦娘も多いですし、行方不明者もいます。戦力を維持するためには無理をしないほうがいいでしょう。」

 

 「そうですね…。」

 

 蒼永がうなずく。北村は瑞鶴の処置を終えると、次の艦娘の処置のために蒼永たちの元を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 日本本土まであと僅かのところ、あきづきの対潜観測員が潜望鏡を発見。全艦、艦娘に戦闘態勢が敷かれた。提督たちは艦橋のブリッジに出る。

 

 

 「対潜ソナーに感あり。距離7000。深度40。潜母700型かと思われます。」

 

 あきづきのCIC(戦闘指揮所)ではすでに戦闘警戒状態となり、水雷観測員が水雷長へ報告する。

 

 「分かった。対潜見張りは厳としろ!」

 

 「了解!!」

 

 あきづきの護衛に加わっていた十六夜、響、曙、霞は潜望鏡確認地点へと急行する。残りのあきづき護衛に加わっていた金剛と榛名は奇襲警戒のため、あきづきの周辺で待機する。

 

 

 「敵艦は単艦みたいよ。包囲して仕留めましょ!」

 

 「うん、分かった!」

 

 「あんなクソみたいな潜水艦、とっとと沈めましょ!」

 

 「了解。攻撃開始する。」

 

 四隻の駆逐艦が高速で航行していく。

 

 「Oh…。これはワタシたちが出る幕はなさそうデスネ…。」

 

 「金剛お姉様。そうかもしれませんが、奇襲が来る可能性があります。しっかり提督を護衛しましょう。」

 

 「!!そうですネ!榛名!!周辺を警戒しましょう!!」

 

 「はい!お姉様!」

 

 

 

 

 まずは響が対潜魚雷の07式ロケットを発射する。放たれた対潜魚雷は海中に潜む潜母700型に接近していく。

 

 「コノ手ハモウ通ジナイ…」

 

 すると潜母700型は口内から大型の魚雷を発射した。なんとそれは影の回天だった。回天は魚のように動きながら対潜魚雷に向かっていく。

 そのまま対潜魚雷に命中、水中爆発が起きた。

 

 「仕留めた!?」

 

 「いや、まだだね。対潜ソナーが反応してる。」

 

 響はソナーを見ながら苦い表情を浮かべる。できれば一撃で仕留めたかったのだ。

 

 「次ハコッチノ番ダ。」

 

 潜母700型は脇に備えられた四連装酸素魚雷を発射させる。続いて影の回天も口内から発射させる。

 

 「魚雷確認!!あきづきに向かってる!!」

 

 十六夜があきづきへ無線連絡を行う。影の回天が向かってい行ったため、なんとしても破壊しなければいけない。

 

 「CIWS起動!!海面に向けて撃て!!」

 

 砲雷長が発射指示を出し、CIWSが起動する。CIWAは高速で銃身を回転させて火を吹く。海面に次々と銃弾が撃ち込まれる。

 そして海面が爆発した。影の回天が爆発したのだ。

 

 「敵大型魚雷排除完了です。」

 

 「気を抜くな!!」

 

 回天が破壊された潜母700型はさらに回天を発射させる。しかし次の瞬間、周りに衝撃が加わる。

 

 「グゥゥ!!?」

 

 爆雷だ。爆雷が投下されたのだ。

 

 「よし、当たった!!」

 

 十六夜が命中を確認する。十六夜は対潜効果が高い五式爆雷を投下していた。それが命中したのだ。

 

 「クッ…、コノママデ済ムト思ウナ…。」

 

 潜母700型は苦し紛れに最後に残った、影の回天を発射させる。その瞬間、潜母700型は爆発を起こし沈没した。

 

 「反応消滅。敵艦撃沈!」

 

 響が対潜ソナーを見て、声を上げる。

 

 「やった!!」

 

 「まぁ、当然ね。」

 

 十六夜と霞は敵艦を撃沈したことに安堵している。しかし曙はなにか不自然に感じた。

 

 「(何かがおかしい…。スクリュー音が多い。…まさか!!)」

 

 曙が振り向いたときには手遅れだった。影の回天は真っ直ぐ金剛に向けて直進している。

 

 「逃げてぇ〜〜〜〜!!!!」

 

 曙が叫ぶ。それと同時に爆発音が響く。

 

 「!!どうした!?何があった!!?」

 

 ブリッジにいた提督が声をあげる。西沢や加藤も身を乗り出す。ブリッジに水しぶきがかかる。

 

 「左舷にて爆発確認!!船体の損傷は無し!」

 

 偵察員の声がこだます。提督はブリッジから爆発のあった海を見下ろした。

 

 そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 海上に横たわっている金剛の姿があった…。

 

 

 

 

 「(あれ…?体が冷たい?…ああ海に倒れてるんですネ…。)」

 

 艦娘は艤装を利用して海上に浮いている。金剛は潜母700型が放った影の回天により艤装が破壊されており浮力が低下、海上に倒れている。

 

 「(きっとこのまま沈むんですネ…。最後の最後で油断しちゃいましタ…。ああ、提督…、ごめん…、な、さい…。)」

 

 だんだんと意識が薄れていく。ブリッジでなにかを叫んでいる提督たちの姿が少し見えたが視界が霞んでいく。

 

 そのまま金剛の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気づいたら金剛はベットに横たわっていた。

 

 「!?」

 

 体が痛くて動かせない。かろうじて首を動かし窓を見ると柔らかな木漏れ日が射していた。

 

 「ここは…?」

 

 「こっ、金剛さん!?てっ、提督〜!!」

 

 いきなり大声がしたのでそちらを振り向くと、十六夜が大慌てで部屋を出ていく姿が目に写った。

 しばらくすると、足音が聞こえてきた。ドアを開く音がし提督と十六夜、北村が入ってきた。

 

 「金剛!目が覚めたのか!?」

 

 「て、提督ですカ…。な、なにがあったんですカ…?」

 

 金剛は十六夜にベットから起こしてもらいながら、提督に質問する。

 

 「よかった…。間に合わなかったと思った…。」

 

 提督が脱力し、椅子に座り込む。

 

 それから金剛は自身に何があったのかを提督から聞いた。あの後轟沈寸前だった金剛を、提督と北村が危険を顧みず海に飛び込み救助。そのまま北村による応急修理が施され、轟沈を防いだ。しかし目を覚まさないのでしばらく安静にさせていたという。

 

 「昨日鎮守府には戻ってきたんだ。二日意識がなかったからな。焦ったよ…。」

 

 「あはは、ソーリーデース…。」

 

 金剛は少し笑いながら答えた。十六夜も安心したように笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都 霞が関 

 

海軍省

 

 「霞ちゃぁぁん!!!!よかった無事でぇ〜〜〜〜〜!!!!」

 

 「ちょっ、そんなにくっつかないでよ!!!!」

 

 元帥は軍令部総長が作戦から返ってきた霞に抱きついている光景を、苦笑しながらみていた。霞は頭に包帯を巻いているがそれ以外に怪我はないようだ。

 

 「いなくなったらどうしようかと思ったよぉ〜!!」

 

 「分かったから離しなさいよ!!」

 

 霞は怒っているが、心なしか嬉しそうだ。元帥の目にはそう見えた。

 

 「そういえば田中。戦果と被害のほうはどうなっている?」

 

 元帥はかたわらに控えている部下の田中に声をかける。田中は手に持っていた資料を見ながら答える。

 

 「はい。フィリピンの影の艦隊は潜水艦を除いてほとんど全滅。シーレーン防衛も成功し、海上輸送路は確保できています。被害のほうは三大鎮守府の一型艦娘数人が轟沈、行方不明。その他除隊待ち艦娘も数十人確認されています。」

 

 「流石に損害が激しいな…。奴らの前哨基地を潰し、大打撃を与えただけでも良しとするか。新しい艦娘の召集にも時間がかかる。そこは他の鎮守府に頼むことにするか。」

 

 「了解しました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 捷二号作戦は成功。海上輸送路の防衛に成功し、影の艦隊に大打撃を与えることに成功した。しかしその代償も大きく、優秀な数人の艦娘を失い、少なくない艦娘が除隊することとなった。両者戦力が激減し、決戦の日は着実に迫っている。

 

 

 

 

       勝者は日本国を守る艦娘たちか、亡国を狙う影の艦隊か。

 

 

 それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

第三章 完




第三章完結です!次回が遂に最終章。十六夜たち艦娘の戦いを最後まで御覧ください!!
勝利するのは、一体どちらか…。
投稿は年明けにします。それでは皆さん、良いお年を!
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