日本国防軍…深海棲艦に対応するために設立された防衛省とは違う管軸の軍事組織。陸軍、海軍、空軍の三つの軍によって組織されており、それぞれ陸軍大臣、海軍大臣、空軍大臣が統括している。
ご意見から台本方式をやめました。
ここはどこだろうか。まるで分からない。ただただ明るい光に包まれている。よく見てみると薄っすらと人の影が見える。人が死ぬ前に見るという走馬灯だろうか。だんだん人影が濃くなっていく。それはどうやら幼い少女のようだった。
少女がこちらに向かって何やら言っている。これは夢なのだろうか?でもあの少女からは何やら懐かしい感覚を覚えた。
まるでかつて家族と過ごした時の感覚に似ている。俺はこのまま死ぬのか…。
『輪斗。まだこっちに来ちゃだめだ。』
新たに影が現れ彼、”蒼海輪斗”に言う。
「でも、俺は死んだんじゃ…」
『まだだ。まだ生きている。約束しただろ?』
思い出した。この声は父さんだ。”約束”…。その言葉を思い出した。そうだ。まだ自分は約束を果たせていない。でも大丈夫だろうか。
『大丈夫よ。心配ないわ。』
さらに影が増える。肩に優しく手が置かれる。この声は母さん…。
『あの子はまだ生きてるわ。』
「!?どこにいるの!!」
『お前のすぐそばにいる。俺たちの代わりに守ってやってくれ。』
そして父さんは笑顔で言葉を続けた。
『お前の妹、”輪花”を守ってやれよ。』
『いつでも見守ってるからね。ほら、帰りなさい。みんなの元へ…』
そうして二人から背中を押された。光がさらに眩しくなる。
「っ!!」
眩しさのあまり後ろを振り返る。こちらを両親が見守っている。
「父さん!母さん!また会えるよねっ!?」
俺の問いかけに母さんが笑顔で答える。
『もちろんよ。』
そして俺の体は眩しい光に包まれていった。
『お兄ちゃん。頑張ってね。』
どこからか聞こえた声を最後に俺の意識は途絶えた。
「はっ!!」
目が覚めたら俺は病院のベッドの上にいた。そして自分の体を見る。体中に包帯が巻かれており痛みを感じる。
彼、”蒼海輪斗海軍提督”は目を覚ましたのだ。
「大丈夫ですか?」
気がついたら看護師が心配そうな顔をしてこちらを見ている。
「あっ、はい…。すみません!この病院はどこでいつから入院していますか!?」
「えっ、はい。ここは呉共済病院で二週間前からです。」
呉共済病院はここから鎮守府までそれほど距離が離れていない病院だ。どうやら二週間前から入院していたようだ。
「すぐに鎮守府に!!うっ!?」
提督はすぐにベットから降りようとしてが、そのとき左腕に激痛が走った。痛みのあまり思わず左腕を抑える。
「大丈夫ですか!まだ骨が修復したわけではないので無理しないでください!」
どうやら左腕の骨が折れていたようだ。動かすたびに激痛が走る。
「くっ…。だめだ…。早く鎮守府に…」
「いけません!まだ怪我は完治していません!無理に動かすと悪化してしまいます!」
「でもこうしてはいられないです!今でも艦娘たちは俺の指揮のない中懸命に戦ってる!提督として艦娘たちの指揮を執るのが俺の責務なんです!」
提督の声を聞き、彼の担当医も飛んでくる。
「蒼海さん!動かないでください!このまま怪我が悪化したら帰れなくなりますよ!」
「それでもっ!!」
提督は医師の説明にも耳を貸さない。その時そこへ、ある人物が現れた。
「蒼海君!!無事だったんだ!!」
「!!軍令部総長!!」
そうだ。軍令部総長だったのだ。そしてさらに後ろから新たな人物が現れる。
「蒼海君!!無事で何よりだ…。」
「元帥!!」
「よかった…。本当によかった…」
元帥が目元を抑える。どうやら嬉しさのあまりに涙がでてきたようだ。
「元帥!自分がいない間鎮守府は…!!」
「大丈夫。栗林君がしっかり代理提督をしてくれているよ。栗林君も蒼海君が帰ってくることを信じていたんだ。」
「そうなんですか…。少し安心しました…。」
それから元帥は俺が不在の間に何があり、どうしてここに俺がいることを説明した。連山が撃墜された後爆発が起きたが、俺は爆風で飛ばされ捜索三時間後に発見され、応急処置を受けた後に本土に帰還。影の艦隊に俺の生存が知られるのを防ぐため、海軍内には徹底的に箝口令が敷かれたこと。俺の不在の間に栗林が臨時提督を務めていたこと。呉鎮守府が影の艦隊に侵攻されたものの、第七艦隊や響の活躍、栗林の指揮によって撃退したこと。そして雷が広島湾でタンカー護衛中に影の艦隊の潜水空母の雷撃によって轟沈したこと…。
衝撃の報告を聞き、提督は目を見開いた。
「これは広島湾の警備を怠った我々海軍の責任だ。君や栗林君の責任ではない。」
「僕のほうからも謝るよ。ごめんね。」
「いえ、そんなことありませんよ。元はと言えば撃墜され鎮守府を空けることになった自分の責任です。元帥たちが気を病む必要はありません。」
「…本当に君は優しいね。さすが前軍令部総長の息子さんだね。」
「いえ、僕は父さんみたいに立派な人間じゃありませんよ。本当なら三号作戦で艦娘たちを除隊に追い込むようなことはしません。」
「いや、あの状況下では轟沈する可能性のほうが大きかった。それを誰一人失わずに戦い抜いたのは称賛すべきことだよ。」
「そうだよ。呉鎮守府のことについては任せて。まずはしっかり傷を癒やしてね。」
そうして軍令部総長たちは俺に捷二号作戦について話した後、病室を後にした。それと同時に担当医と看護師も提督に一礼し、部屋を後にした。
「(そうか…。まず傷を癒やさないとな。十六夜やみんなに心配をかける。元気になってからみんなに会おう!)」
俺はそう決めた。
意識を取り戻してから三日。俺は予定より早い退院となった。まだ左腕のギブスは外れていないが、体は以前通り回復している。
手を広げて大きく深呼吸をする。
「やっぱり外の空気はうまいな〜!」
タクシーから降り、鎮守府の正門前に着く。どうやら元帥たちは俺が帰ってくることを栗林には言ったが艦娘たちには言っていないようだ。それに栗林のことだから十六夜たちにも俺の生存については言っていないはずだ。
「びっくりするだろうなぁ。」
「!?そ、蒼海提督!!」
いきなり名前を呼ばれた提督を驚き、声のしたほうを向く。声を上げたのは呉鎮守府の正門前に立っている門兵だった。
「い、生きていらしたのですか!?」
「ああ、悪い。教えてなかったな。」
「提督、左腕が!」
「ああ、これなら大丈夫だ。すぐに治るから。」
「早く中へ!これは長谷川連隊長にも報告しなければ!」
そうして鎮守府の門が開かれる。俺はいそいそと中に入っていく。
朝方のせいか、あまり人気が感じられない。いたとしても憲兵が巡回しているくらいだ。すれ違うたびに驚かれながら俺は本庁舎へと向かった。
「ん?あれは響か?」
朝早くなのに本庁舎の入り口に座り込んでいる響を発見する。あからさまに顔色が悪い。雷のこともあったからだろうか。
「( 俺の次には姉妹艦が轟沈…。それは精神的にくるな…。)」
俺も実際にそうだった。まだ子供だった頃、大切な両親と妹を深海棲艦の空襲で一度に失った。父さんは軍人だったため自分よりも俺たち家族や住民の避難を優先していた。当時海軍救援隊だった元帥に救助された後に、数日後父さんの戦死報告を受け取った。空襲の前日に父さんが俺に自分がいつも身につけていた懐中時計を手渡した理由を知ったのはその時だった。
その日以降、俺は何も失いたくないと強く思い始めた。海軍に入った理由がそれだ。訓練生の頃、上官はよく言っていた。『失い続けたいのか、戦いたいのか』と。失い続けるのはもう嫌だった。だから俺は、戦い続ける道を選んだ。ここにいる艦娘たちのように…
俺は少しずつ響に近づいていく。下を見ているせいか俺には気づいていないようだ。
「響。」
俺が名前を呼ぶ。すると響がはっ、と顔を上げてこちらを見る。
「しれい、かん?」
響が驚きの表情で俺の顔を覗く。その顔に俺は笑顔を作って言った。
「ただいま。」
「司令官…」
響が確かめるかのように俺の名を呼ぶ。
「どうした?」
「司令官、だよね。?」
その問いに俺はできるだけ笑顔で答えた。
「ああ、お前の知ってる提督だよ。」
「司令官!!」
そのまま響が俺の胸元に飛び込んできた。
「うぉ!?」
不意打ちを喰らったが、飛び込んできた響をしっかり受け止める。
「よかった…、うう、本当によかった…ぐすっ…」
嗚咽を漏らしながら響は俺に抱きつく。よほど心配してくれてたんだな…。俺はしっかり響のことを抱き受け、しばらくの間そのままで過ごした。
「もう大丈夫か?」
「うん…。大丈夫だよ。」
ようやく落ち着いた響が俺から顔を離す。すると、俺の左腕の状態に気がついたようだ。
「し、司令官!?その腕は…!」
「なに、大丈夫だ。少し折れただけだ。すぐに治る。」
俺はそう言いながら、立ち上がる。
「さて、執務室に行って俺の生存を伝えないとな。」
「っ!そうだね。手を貸すから早く行こう。」
そう言って響は俺の手を取る。そのまま俺は響の手を取りながら執務室へと向かった。
執務室
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
秘書艦机に頬を当てながら十六夜が盛大なため息をつく。執務をしていたため、まだ右手にはペンが握られている。
「そんなにため息をついてどうしたんですか?」
資料をまとめながら栗林は十六夜に声をかける。提督がいなくなってからずっとこの調子だいい加減慣れてほしいところだ。
「(すごく言いたいです。提督が生存していて今日帰ってくることをすごく言いたいです。)」
実は栗林も提督が帰ってくることは表情にでていないだけで、飛び上がりそうなくらい内面では喜んでいる。天象孤独の栗林にとって提督は兄のような存在だ。失うのは栗林からしてみてもなんとか避けたいことだ。しかし、連山の爆発を目の前で目撃したときは、完全に提督を失ってしまったと思った。
なので元帥からの報告を聞いた時は戸惑いはしたものの、大きな喜びが心の中を満たした。
するとかすかに足音が聞こえてきた。おそらく提督だ。栗林は卓越した計算能力で足音だけで誰であるかは大体分かる。
「誰か来たみたいですね。」
「へっ?」
十六夜がまぬけな声を上げた途端、執務室のドアが開いた。開かれたドアに立っていたのは、第二種軍装に身を包み、海軍大将の階級章を身に着けた呉鎮守府の”提督”の姿だった…。
「………!?」
十六夜が驚愕の表情を浮かべ、持っていたペンをポトリと落とす。
「て、提督〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」
十六夜の絶叫が呉鎮守府内に響き渡ったのだった。
次回 過去
読者の皆さんお久しぶりです!小説の書き方を学び直してる間にこんなに時間がたってしまいました。投稿スペースを戻さないと…。