敵のボスと私の相性は悪いとは聞いていた。だがこれはあまりにも……。
「参りましたね」
「シネ」
クロムデアは私に向かい黒い球状のものを放ってきた。
「みなごろし」
私は即座に触手の壁を目の前に作り出した。しかし――
「うわあ」
私が作り出した触手の壁は豆腐のように簡単にぐしゃりと球体の中に吸い込まれ潰れてしまった。……結構頑丈なはずなのだが……。
あの球体はまるでブラックホールのような性質を持っているように見える、回りのものを引き込み、潰す重力の檻、光さえも捕らえ逃がさないブラックホールに。
一応、触手の壁で時間稼ぎぐらいはできる。あの球体が物を吸い込むには数秒はかかるようだ。……とはいえ、私の触手はいくらでも作り出せるものではない。本来、一撃必殺用なのだ。その必殺技も数分前に放ったが全然効いていなかった。触手を潰して出て来るとこれだけ?と言わんばかりに首をかしげていた。つまり、相性最悪である。
「みなごろし、こどく」
とりあえず、クロムデアの視界を一時的に封じる、これで時間を何とか稼げれば……。そう思っていたのだが――
「シネ」
そんな考えは甘かったらしい。私に向かって大量の黒い球体が迫ってきた。あ、これ死んだかも。
「ハートフルインパクト!!」
走馬灯って本当に見えるのかなと考えるぐらいには現実逃避していた私が見たのは、黒い球体がピンク色の光線になぎはらわれる光景だった。
ってこの声は……。
「あっ、やっぱり黒いもやの人だ」
やっぱりあの時の少女か。いやぁ、まじで助かった。死ぬかと思ったもん。
あの光線が吹き飛ばしてくれなかったら避けることも防御も不可能だったからね。
「あなたは一体、……今はいいか。じっとしててね」
そう言うと彼女はクロムデアに向かって行った。
彼女とクロムデアが戦ってから三時間程経った。目の前には体がキラキラと光の粒子へと変わるクロムデアがいた。
本当に接戦だった。クロムデアの攻撃は即死攻撃のようなものがほとんどだから一発でもくらえばそこで終わってしまうのだ。本当に際どい戦いだった。お互い回避に専念していたから余計だろう。一応私も彼女の援護ぐらいはしたが決定打がなかったので結局長引かざるを得なかった。
「オノレ、オノレオノレ!!」
クロムデアは叫び、私たちを睨んだ。だけど、ごめんね。あなたにはもうどうしようもないんだ。死んでくれ、それが戦争だろう?
クロムデアの体はクロムデアが叫んでいる間にもどんどん光へと変わっていく。そして、数分後には声さえ出せなくなったらしい。完全に体が光になり、空を舞っていた。
「終わりましたね」
「……ごめんなさい、何て言ってるか分からないです」
あ、そうだ。くろまくを使っているから彼女私の言葉が分からないや。
私は慌ててくろまくを解くのだった。