花園桃視点
その日、彼女に会ったのは偶然だった。
「うん? 何か音がする?」
通学路を下校していると、路地裏辺りから変な音が聞こえた。……もしかして、そう思い物陰に移動し、変身をした。
女神様からもらった魔法少女に変身する力。それを使い、私は悪い人たちと戦っている。大変だけど町の平和を守るのはやりがいがある。
「確かここら辺、っ!?」
私は急いで音のしたところに向かうと、いたのは黒い何かだった。身長は140か150センチぐらいだと思うけど、それ以外は砂嵐を思わせる黒い砂嵐みたいなものを纏っていて、詳しいことは分からない。
何だ?これは?
そう呆けていると、黒い何かは屋根の上を走って行った。
「あっ」
追いかけようと思考していた間に、もうどこに行ったか分からなくなってしまった。……見失ってしまった。あれは何だったのだろうか?そう考えていると、黒い欠片のようなものが落ちていた。やけに硬いし、やけに重たいし、形も整い過ぎている。……なんとなくだがこの黒い欠片のようなものは怪しい。私はポケットに黒い欠片を入れ、その場を去った。
その事実は私の家で明かされた。
「えっ、死体?」
「そうです。花園さんが拾ったのは死体、それもとんでもなく圧縮されたものです」
私は、榊ちゃんからそう言われ目を瞬かせた。
「えっと、それは化石とか、そういうタイプの?」
「いえ、最近作られた死体です、ただ――」
「ただ?」
「死体が人間では無さそうなんです、鱗の痕跡がありました。まあ、私のあれがなければ分からないぐらいの違いですが」
「流石」
魔法少女の中には単純に戦闘能力を持った者から特殊能力を持った者までいる。榊ちゃんは後者、能力は鑑定。敵からしたら真っ先に排除したい能力だと思うので相手からは分からないように心がけている。
「となると、魚とかを黒い石みたいのに変えたの?」
「……そうとも言えないのです。あれはすごく圧縮された代物、魚でいったら大きな鮪ぐらいの大きさはある上に人体に似た部分もあるです」
「え、それって」
「はい、怪人の特徴です」
ということは、怪人が石にされたということだろうか?
「……なんで?」
「可能性としては色々ありますが、一番あり得そうなのは第三勢力が表れたのかもです」
「第三勢力?」
「そうです。だってこんなやり方で怪人を倒す存在を私は知りませんし、私たちに被害が今のところ出た痕跡がないです。とはいえ味方なら基本他の魔法少女に接触を図るはず。でも今のところそんな報告はない。となると、第三勢力の可能性が出てきたです」
第三勢力、もしかしてあれかな?
「もしかしてそれって」
「花園さんが見たと言っていた黒い何かの可能性が高いですね」
「……やっぱりそうなのかな?」
「まあ、まだ分からないです。だから様子を見てみましょう。もしあっちが攻撃の意思を少しでも示したら花園さんも即座に攻撃してください」
「……分かった」
「頼みましたよ。あなたは魔法少女の最高戦力なんですから」
「……いや私より強い人はいるし、そんなにプレッシャーかけないでよ」
「事実です」
榊ちゃんの真顔で言ったそのセリフに思わず笑ってしまった。
榊視点
ヤバイのが現れたと思った。
あまりにもおぞましい能力であると思った。
何せ殺し方が直接的すぎる。圧死、窒息死のどちらかは分からないがどちらにしても苦しいのは変わらない。
人が人を殺すときには忌避が出るものだと思う。だから力を授けた女神は魔法で殺す力を授けたのだろう。何やら実際には魔法で倒しても死なないと誤魔化していたが、多分嘘だろう。殺しを躊躇させないための方便。そんな都合のいいものあるわけがない。
だが、そいつは違う。明らかに死んだと思われる方法で殺している。つまり、殺していると認識しながらも殺しているのだ。できるだろうか、自分にこんなことが?
分からない。今も誤魔化しているだけの自分には。もし、話せるなら話してみたい。こんなことをできるのがどんな存在なのか。
九重 戦視点
それは幻影のようだった。
「……まじかよ」
俺の攻撃が全く通じない怪人を瞬殺した、黒い何か。それを私は信じられない思いで電柱の影から見ていた。
厄介な敵のはずだった。受けた衝撃を与えた対象に跳ね返す能力を持った敵。最近の敵は、魔法少女でも倒せない、いや魔法少女だからこそ苦戦する敵が多かった。魔法を吸収する敵とか、そんな感じの敵が。しかし、今回はどうやったら倒せるか分からない敵だ。実際、魔法少女の中では異質の肉弾戦が得意な私も、攻略方が思い付かない。
なのに、だ。黒い何かはそれを瞬殺した。あっという間に、まるで息をするように簡単に。
……格が違う。そう思わされた。一応敵か味方か分からないので隠れていたらいつの間にか黒い何かは消えていた。
それから、ちょくちょく黒い何かを見つけるようになった。あるときは私の妹が襲われているときに、あるときは苦戦する私を助けるように現れた。……そんな風に会っていく内になんとなくだが敵ではないと思うようになった。とは言え警戒しないのは論外である。一応魔法少女の仲間である、です、が語尾に付きがちな幼なじみと賭博好きの友達に黒い何かの情報を渡して置くべきだろう。まあ、あいつらは大丈夫だとは思うが。何せ馬鹿みたいに強いピンク髪の奴とチームにいるんだ。大抵の奴は瞬殺だ。それに加えて一時的とはいえ全知に近い探知能力持ち、実質不死の能力を持った奴らのチームに何とかできるとは思わない。
「一応メールはして置かないとな 」
まあ、多分大丈夫だと内心思いつつ携帯を操作した。
魔法少女のスペック
主人公
呼吸をしている生き物には大体勝てる。ただし、ワープとかスピード系の避けるタイプの相手には弱い。
花園桃
雑に戦っても強い。大抵の敵には勝てる。
榊恵
支援系なので基本弱い。妨害に回るとかなり面倒くさい。
轟賭博
運がよければどんな相手でも勝つ可能性がある。常人なら使えないスキルを使いこなしており、実質不死身(寿命を一気に削る可能性がある等のリスク高めの魔法が幾つかある)。
九重戦
身体能力を上げる魔法が多めのため接近できればめちゃくちゃ強い。接近できないと負けるので閃光手榴弾などを買い込んでいる。