もし、異聞帯のウーサー君がバグキャラだったら 作:北国の放浪者
ソールズベリー遠征は、『円卓』率いる討伐軍の勝利に終わった。
正確には、敵の自滅に近いものであったが……逆賊の排除という望んだ成果が得られたのだから、勝利扱いしても問題ないだろう。
オーロラ及びその信奉者達が排除されたことで、ソールズベリーの統治機能は失われた。よって、その役目は当然ながら討伐軍が負うことになる。いわば占領統治だ。
戦いが終了した直後はウーサー直々に統治の指揮を執ったが、ブリテンの王である彼がいつまでもその役目を担うわけにはいかない。数日経ってそれなりに状況が落ち着いたら、他の者が占領統治の役目を引き受けるのは自然な流れだった。
その引き受け手となったのは『円卓』の指揮官級の騎士達であったが、サポート役として協力する立場となったのが、翅の氏族の長ムリアンである。
なぜ彼女が占領統治のサポート役として選ばれたかといえば、彼女が『円卓』結成当初からの協力者だからだ。加えて翅の氏族は戦闘が不得手であり、今回の遠征における戦闘行為に直接的な貢献はあまりしなかったため、占領統治にその手腕を発揮するという事だ。
ただ、妖精は妖精に従わないものだから、あまりムリアンが前面に出る訳にはいかない。あくまで指揮を執るのは『円卓』の指揮官級の者達であり、彼女はサポート役に徹することになる。
それなりに状況が落ち着いたとはいえ、ソールズベリーの大暴動からまだ数日しか経っていないから、ムリアンの助力は『円卓』にとって大いに助かるだろう。
もちろん、彼女には本来治めている街の統治という責務があるため、ずっと占領統治に助力し続けるという訳にはいかない。状況を見てソールズベリーの占領統治から離れることになる。
本人の弁は、『負担は軽くないですが、やるしかないですよね』とのこと。積極的という訳ではないが、氏族を率いる立場であるから無責任な真似はしない。『円卓』結成当初からの協力者という自負もあるから、前面に出ない形であっても上手く貢献するつもりだ。
占領統治の人員は『円卓』の兵士たちを主体としながら、各氏族の妖精達にも役割を担ってもらっている。ただし、氏族の特性に応じて役割配分は考えられた。
牙の氏族などは闘争本能が強く、占領地の住人へ高圧的になる可能性が強い──というか確実にそうなるため、占領地の巡回ではなく事務作業に従事してもらっている。本人達にとって不得手な仕事であるが、暴走して住人へ乱暴を働かれるよりはマシであった。
土の氏族は以前から風の氏族と折り合いが悪いため、出来るだけ彼らと接触しない仕事を割り当てている。まあ、これは土の氏族の長の『これ以上は心労を負いたくない』という誠に切実な願いも込められていたが。
そういったわけで、街の巡回といった住人との接触機会が多い仕事は、鏡の氏族や翅の氏族が担うことになる。
繰り返しになるが、占領統治を主体的に行うのは『円卓』の兵士達───つまり人間達だ。
あくまでも、ウーサー率いる『円卓』がブリテンの統治組織なのである。
ソールズベリーの占領統治に必要な人員を残し、引継ぎを済ませたウーサー達は、ロンディニウムへの帰路についた。
ウーサー率いる討伐軍がロンディニウムに戻ってくると、出迎えのため郊外に集まっていた兵士達から歓声が湧き上がった。
「我らの王が戻ってきたぞー!」
「英雄たちの凱旋だ!」
皆が口々に叫んで、討伐軍の帰還を帰還を称える。偉大なる王の帰還を称える。
拳を空に向かって突き出す者が多数現れ、普段はしっかり規律を守っている彼らも、高揚感に突き動かされるまま振舞うのを良しとしていた。
そして、そんな歓声の中で駆け寄ってくる者がいる。
「トネリコ―!」
長年に渡ってトネリコと歩んできたトトロットだ。他の者達と同様に喜びの声をあげている。
「おかえりトネリコ!ウーサーやエインセル、他のみんなも!無事に帰ってきて何よりだ!」
「トトロット……はい、無事に目的を果たしてきました」
長年の友人である糸紡ぎの妖精に、穏やかな表情を浮かべて答える救世主の少女。
そんな彼女に、トトロットの後から歩いてきたエクターやグリムも労いの声をかけてくる。
「よく敵を倒して戻ってきた。お前たちに限って大丈夫だとは思っていたが、相手が相手だからな。全く心配無しという訳にはいかなかったぞ」
「相手は密かにブリテンを引っ掻き回してきた奴らだから、こっちも気楽に構える訳にはいかなかったのさ」
「黒騎士とグリムにも、心配をおかけしました。そして、私達の帰る場所を守ってくれて、本当にありがとう」
留守を預かっていた仲間達に礼を言い、また向こう側にいる兵士達にも頭を下げるトネリコ。
遠征の間に帰る場所を守護した彼らには、どれだけ感謝しても足りない。
そんな妻の様子を微笑みながら見ていたウーサーは、その表情を王のソレへと切り替える。
彼は出迎えた者達に見渡し、その口を開く。
「ロンディニウムの民よ、兵士達よ!留守を守り抜いてくれたこと、本当に感謝する!
遠征の目的を果たし、我々は戻ってきたっ!!」
ウーサーが力強く宣言した瞬間、出迎えた兵士達の歓声はより力強く響き渡った。彼らの熱狂はさらに高まる。
「勝利だ!我らの王が逆賊達を打倒した!」
「これでブリテンの未来は明るいモノとなる!」
「ウーサー陛下に栄光あれ!」
歓喜の声に包まれ、討伐軍に参加した者達は誇らしげな顔を見せる。人間と妖精を問わず、高揚と達成感で満たされているのが見て取れた。
その光景を眺め、トネリコとウーサーはお互いに明るい表情を交わしながら、他の者達を伴って凱旋していく。
ロンディニウムの街は、祝祭の光に包まれることだろう。
「改めてお疲れさん。城に戻ってからも、やるべき事は沢山あるだろうが……まずは一休みだ」
夜を迎えたロンディニウムの城の一室にて、トネリコの仲間達が集まっていた。
ソールズベリー遠征の成功と帰還を労うために、皆で軽く一杯飲もうという訳だ。
室内にいるのは、ウーサー、トネリコ、グリム、トトロット、エクターの5人である。
ライネック、エインセル、マヴは氏族の長としてやる事があるため、今回は参加していない。
ムリアンは前述の役割でソールズベリーに残っており、土の氏族長は気分が優れなかったため自分の住処へと帰還している。
皆でコップに注がれた飲み物に口を付け、ホッと一息つく。
「遠征開始から戻ってくるまで23日間か。一か月も経っていないが、随分と長く感じたもんだ」
しみじみとした口調のグリム。この日数が、少年にとっても特別な期間だったことが伺える。
「確かにそうですね……それだけ、緊張感があったということなのでは?」
「違いない。ブリテンの未来を大きく左右する戦いだったからな」
トネリコの言葉に同意するグリム。前もって色々と準備していたとはいえ、結果が出るまでは気を抜く事など出来ないのだから。
「当初はもっと戦いが長引くと予想していました。これまで暗躍してきた者達だ、黙って討伐されるような潔い相手とは全く思っていなかったので。
ですから……あの展開は、予想の斜め上でした」
テーブルの上にコップを置き、当時の光景を思い浮かべるトネリコ。
ソールズベリーでの出来事が意外だったのは、グリムとしても同感だった。
「話は聞いている。予め情報戦で優位に立っていたとはいえ、向こうから盛大に自滅するとはな。
あちらに混乱状態を引き起こし、あわよくば内部分裂まで持っていければと考えていたが……結果的には、想像以上に効いたということか」
「はい。そのため途中でソールズベリーに介入し、あの街が滅びないようダメージコントロールしました。介入のタイミングは、やや遅れてしまいましたが……」
そう述べるトネリコの表情は、やや後味の悪いものを感じている様子が見て取れた。
そんな彼女を、ウーサーは慰めるようにフォローする。
「トネリコが救世主として
「そうだろうな。思い立ったらすぐ行動に移すところは、これまで嫌というほど見てきた」
ウーサーの言葉に、これまで幾度となく無茶ぶりに付き合わされてきたエクターが頷く。その隣にいるトトロットも全く異論はなく、首を縦に振っている。
そんな付き合いの長い仲間の反応に苦笑し、トネリコは続ける。
「今回は
「個人的にはトネリコの思うように行動させたかったんだけど……討伐軍の戦略目標もあったからね」
「はい。私達にソールズベリー攻略という目的があった以上、純粋に救世主としての動きをする訳にはいかなかった」
もし、介入して救助する対象が敵対勢力ではなければ、トネリコは即座に動いてウーサーには事後承諾という形を取っただろう。
あるいは、彼女が救世主として単独で動いていたら、敵対勢力であってもすぐに介入していたかもしれない──その際に迷いは生じたであろうが──。
相手が敵対勢力であり、かつトネリコが討伐軍の指揮系統に属しているという、その二つの条件が合わさったからこそ。
彼女は、即決で介入するようなことはしなかったのだ。
「ま、そこら辺は必要以上に気にしても仕方ない。最終的にはそれなりに状況をコントロールできたと、ポジティブに考えた方が良いだろうさ」
「……そうですね。ソールズベリーは滅びず、逆賊達を排除できた。そう前向きに考えます」
グリムの言葉を素直に受け入れるトネリコ。
現地で戦いが終わった段階でそこら辺の折り合いは付けているし、この手の事を長々と引きづる初心さなど、今の彼女には無縁であった。
「こちらの遠征はそんな感じでしたが、ロンディニウムの方では、攻め込んできた者達をグリムが見事に殲滅したようで」
トネリコは会話の内容を、遠征の道中で連絡を受けた内容──風の氏族以外の反円卓派によるロンディニウム襲撃へと移す。
その話題へ真っ先に反応したのは、グリムと同じ残留組であるトトロットだった。
「そうなんだわ!グリムの奴、今回はホント敵に容赦なかった!流石にちょっぴり気の毒になってしまったぞ!」
「トトロットがそう言うからには、よほど
かつて賢人だった少年は、ウーサーの眷属としての力を思う存分発揮し、ロンディニウムに攻め込んできた愚か者達を一方的に殲滅した。
その戦いぶりはすさまじく、そして容赦がなかった。敵が恥も外聞も捨てて逃げようとしても、また泣き叫びながら命乞いしてきても、それを一切許さずに焼き払ったのだ。その非情さは、見ていたトトロットが敵に同情してしまうくらいであった。
まあ同情で済んでいる分、攻め込んできた反円卓派がどれだけアレであったか伺えるというものだが。
「お前達の留守を狙うような不届きな連中だからな。オレとしては、生かして返す理由は全く無かった」
「ええ、私もその点に異論はありません。後々の憂いを断つことを考えると、グリムのやった事は正しい」
魔術の師弟が揃って同じような考えを口にする。この辺り、両名共にシビアな判断であった。
「攻め込んできた連中を街中に誘い込み、逃げ道の無い状態にしたうえで、グリムの魔術で囲んで殲滅したのだが……あそこまで策にハマってくれるとは思わなかった」
エクターが当時攻め込んできた反円卓派の様子を思い出し、なかば呆れ交じりに言う。
「こっちが押されている風を装って城へ逃げ込んだら、『奴らは弱いぞ、このまま皆殺しだ!一人たりとも逃がすなー!』とあっさり騙されてたからなー」
「それで考えなしに突入してきたんだよな、あいつら。思わず『少しは疑え』と思っちまったぞ」
トトロットとグリムの言葉を聞き、トネリコとウーサーにも呆れの感情が浮かんだ。
「ソールズベリーの逆賊達と同じように、ロンディニウムへ攻め込んできた者達も自分達で墓穴を掘りましたか……」
「ははは……まあ、仮に敵がもう少し賢かったとしても、グリムの力なら同じ結果に持っていけただろう」
ウーサーが仮定の話をすると、グリム本人もそれに同意する。
「そうだな。奴らがもう少し賢かったところで、遅れは取らなかったさ。オレだけでなく、この街に残った兵士達もいた訳だしな」
「ああ、その通りだ。改めて皆には感謝しなくては」
実際のところ、攻め込んできた敵の数はだいたい2000くらい──これでも敵は頑張って集めたのだろう──であったため、城に残っていた人間の兵士達や妖精達だけでも充分に対処可能であった。
ただ、彼らだけで戦えばある程度の犠牲者が出ていただろう。いくらロンディニウム側が数と練度で上回っているとはいえ、攻め込んできた妖精達の力を侮ることは出来ない。
そういった被害の発生を防いだのは、紛れもないグリムの功績であった。
「ソールズベリーの逆賊達を倒したし、ロンディニウム攻め込んできた奴らも倒した!鏡の氏族の街を攻めた奴らは逃げたけど、そいつらの数は少ないからな!
これで、トネリコの頑張りを台無しにしようとする奴らはほぼ無力化出来たんだわ!」
戴冠式からの短い期間で大きな成果をあげ、トトロットは嬉し気だった。
「ロクでもない奴らはあらかた倒した!なら、ボク達には
「やらなければいけないこと?」
オウム返しに尋ねるトネリコ。
トトロットの口ぶりからして、ブリテンの統治や社会制度に関する事ではないだろう。
一体何のことだろうかと疑問符を浮かべるトネリコ。
そんな彼女の疑問に答えるべく、トトロットは力強く宣言する。
「これからやるべき大事な事は───
トネリコとウーサーの、
「え、えーーーー!?」
その宣言を聞いて、トネリコは驚愕の声をあげる。
当人的に、全くの想定外であったからだ。
「やっぱり、トネリコの中ではアレで終わった事になってたんだな!」
救世主の少女の反応に、友人である糸紡ぎの妖精は『世話の焼ける女の子だな!』といった表情で胸を張る。
「トネリコとウーサーの大事な結婚式が、
「そうだな、トトロットの言う通りだ。お前達を祝う催しが
トトロットの主張を聞いていたエクターも同意する。どうやら彼も、あれで終わりとする事には納得がいってなかったようだ。
「オレも賛成だ。特にトネリコは、ずっとブリテンを救う事に専念してきた。結婚式は目出度い形で完遂しないとな」
続けて、グリムも賛同の意を示す。異論などあろう筈もなかった。
というか、そもそも───
(これって、もう他の関係者にも根回し済み!?)
妖精眼で視た感じ、ロンディニウムに残った仲間内で合意しているのはもちろん、『円卓』の関係者にも話を通している様だ。
なんか、すでにどうセキュリティを高めて式を運営するか話し合われているっぽい。
救世主一行のメンバーはともかく、円卓情報局をはじめとした『円卓』の関係者まで動いているとは、驚きであった。まだウーサーに話を通してない段階なのに──組織運営的にそれでいいのかと思ってしまう──。
「い、いいんですか……?わざわざ、新たな手間を掛けさせてしまって……」
仲間達や関係者の厚意に恐縮するトネリコ。これからやるべき事は沢山あるのに、自分達個人のために労力をかけて良いのかと。
「トネリコの妖精生の節目なんだ、むしろ手間をかけない方がおかしい!ここはしっかりと祝うんだわ!」
水臭いことを言うなと言った感じのトトロット。やる気満々である。
そして彼女的に、あの日の式は風の氏族のやらかし以外で
「そもそもあの日のトネリコ、結婚式なのにいつもの格好のままでドレスを着ていなかったじゃないか!せっかくの晴れ舞台で花嫁が着飾らないなんて、すごく勿体なかった!」
「うっ……そ、それは……」
そこを指摘されると引け目を感じざるを得ないトネリコ。味気ない判断を下した当人だからだ。
目を泳がせながら、かなり無理のある弁明を試みる。
「け、けれど……結局は式そのものが風の氏族によって
「そんなの後付けでしかないんだわ!最初からあんな事になるなんてわかる訳がないし!」
「あ、あはは……トトロットの仰る通りで……」
救世主の弁明は失敗に終わった。当然の結果だろう。
思わず畏まった言葉遣いになっていた。
「ボクは、このまま終わらせるつもりなんて全く無い!」
友人の幸せを願う妖精は、止まらない。
トトロットは……力強く宣言する。
「だからトネリコには、今度こそ───
その宣言は。
トネリコにとって、驚くべきものだった。
「───っ!?
トトロットがやりたかった事、出来るようになったの!?」
このブリテン異聞帯には『花嫁を送る』文化がなかったため、記憶容量に問題が生じて物事を上手く覚えられず、最近なんとか簡単な服を作れるレベルに留まっていたトトロット。
そんな彼女が、いつの間にか念願のドレスの製作まで出来るようになっている。
その事実に、トネリコは友人として喜び混じりに驚愕する。
「仮契約という形だけどウーサーの眷属になったことで、
ここでも、ウーサーはいつの間にか貢献していた。
トトロットの記憶容量の問題が、解決したのだ。
「ロンディニウムに攻め込んできた奴らを倒した後、早速ドレスの製作に取り掛かった!まだ作っている最中なんだけど、完成はそう遠くないぜー!」
活き活きと語るトトロット。
心からの喜びが、伝わってくる。
「花嫁ドレスを着たトネリコを、みんなで祝うんだわ!
そして、君は幸せになるんだ!」
室内に、花嫁を祝福する妖精の声が響き渡る。
「─────────」
つい、言葉を失ってしまうトネリコ。
ああ……ウーサー君を始め、みんなどうして心を揺さぶるような事を言ってくれるのか。
どうして、ここまで私を想う言葉を言ってくれるのか。
「……ありがとう、トトロット」
トネリコの口から自然と、感謝の言葉が出てくる。
「あなたの温かさには、一体何度助けられた事か……」
その親愛に、トトロットは二カッと笑う。
「水臭いってばトネリコ!以前に言ったじゃないか、ボクは『がんばる女の子の味方だ』って!」
「ふふ……そうでしたね……」
戴冠式の半年前ぐらいに、確かに言っていた。
嬉しくて覚えていた言葉だが、言った当事者も忘れていなかったようだ。
本当に……嬉しい。
そんなトネリコと仲間たちのやり取りを見守っていたウーサー。
感謝の念と共に、口を開く。
「ありがとう、トトロット、エクター、グリム。
それじゃあ、みんなの言葉に甘えさせてもらうとしようか」
そう言って、彼はトネリコの肩に手を置く。
「僕自身、あれで結婚式を終わりにしてしまうのは悔いが残る。トネリコにはやはり、心置きなく笑顔で結婚式を完遂してほしい」
あの結婚式を兼ねた戴冠式の後半から、ウーサーは『トネリコおよびブリテンを害するであろう愚か者共の排除』という目的に向かって全力疾走してきた。
あまり結婚式の余韻に浸るという訳にはいかず、その点はトネリコに対して申し訳ないと思っていたのだ。
トトロットの言葉に異論などあろう筈がないし、自主判断で具体化に動いている『円卓』関係者に対しても同様だ。
国家運営に関わる事なら自主判断は問題になるが、今回は自分達への祝福だ。だから、『組織運営がどうこう』といった杓子定規な事を言うつもりなど、ウーサーには無い。
この話の実現に動いてくれている全員に、感謝しかなかった。
「だからトネリコ。あの日の続きを、みんなで行おう」
「───はいっ!」
元気よく答えるトネリコ。
彼女の目尻には、光るモノが見えた。
「結婚式の続きを盛大に行った後は、見知った者同士の内輪向けの祝いもやろう!」
「お、そいつはいいな!内輪向けの方は、公のと違って無礼講でいくか!」
結婚式の続きが正式に決まり、さらに元気いっぱいになるトトロット。
それに、わんぱくなグリムが追随する。
「お前達、その時は羽目を外し過ぎるなよ。何事も節度を保ってだ」
「なんだよ黒騎士ー。人目を気にせず済む場なら、固い事は言いっこなしだぜ?」
「そうだそうだー!身内同士の集まりなら、むしろ盛り上がらないと!なんせトネリコとウーサーのお祝いなんだからな!」
「グリム、トトロット……お前達なあ……」
常識人としての言葉を口にするエクターだが、テンションが上がっている二人にはあまり届かなかった。
まあ、言った当人も祝う気持ちが強いため、それほど拘ってはない。
「今度はライネックとマヴも参加してもらおう。公の結婚式と内輪向けの祝い事、両方とも」
「そうですね。あの時は色々と仕事を任せてしまっていましたし……ウーサー君が」
「ああ、うん。その節は誠に申し訳ございませんでした」
話しているうちに藪蛇をついたウーサー。
頬に一筋の汗が流れるのは、まあ仕方ないだろう。
「氏族長本人の出席が二人だけになったのは、ホント驚いたなあ……」
「いや、マジすいませんでした」
「ふふふ……ちょっとした冗談です。お気になさらず」
汗を垂らしながら恐縮するウーサーに、思わずおかしくなって笑いが零れるトネリコ。
おかしくて、楽しくて、愛おしくて。
目の前の青年と言葉を交わす時間が、幸せで仕方ない。
こうして……ソールズベリー遠征の祝祭とは別に。
トネリコとウーサーの結婚式の続きが、ロンディニウムで執り行われる事となった。
長い苦難の旅路を歩いてきた少女に……
再び、春の季節が訪れる。
もちろんトトロットは、変な連中がやらかさないよう徹底的に対策することを前提に『続・結婚式』を宣言しました。
次回の話で、その対策については触れます。
逆賊討伐編は、『続・結婚式』で締めくくりとなります。
そして妖精歴ですが、まだある程度は続きます。