魔法祖父ソルグランド ~TS転生した祖父は魔法少女の孫娘を見守る~ 作:永島ひろあき
ザンエイへと群がる魔物と機械兵器は、放たれる迎撃兵器によって相当数を撃墜されながらも、アンテンラの指示に忠実に従って速度を落とさない。
生命を失う恐怖も、恐怖を感じる自我も、そもそも生命もない彼らの強みであり、指示通りにしか動けず柔軟性のない点の弱みでもあった。
天魔禍反刺戈による結界は絶対的な防御力を誇るが、維持し続けるコストは高く、ザンエイに貯蓄されたプラーナとエネルギーを激しく消耗させてしまう。
なるべくザンエイを長持ちさせるのなら、結界に大きな負荷が連続して発生する状況は避けるべきだ。当然、全体の指揮を執るマルザーダも、ザンエイの指揮を執るガルダマンも承知していること。
ザンエイの巨体から雨あられと発射される兵器群に混じって、大口径火器で武装したマジカルドールとヌイグルミ達が、数十メートルの巨体を誇るキグルミをトーチカ替わりにして結界の外に飛び出し、敵の群れへと下方から襲い掛かった。
マジカルドールの身体だから扱える大口径、超重量、そして宇宙空間でも使用可能なように開発された数々の火器は、プラーナ製の弾丸や砲弾などを消費して、ザンエイのみに集中していた敵機を容赦なく破壊してゆく。
「アルファリーダーよりザンエイ。敵グループ、レッド1からレッド4と交戦開始!」
「ブルー7からブルー22、進行方向を転進。こちらを標的と定めた模様」
「フェアリーガード部隊は前面に! ヌイグルミ部隊とマジカルドール部隊各員は打ち合わせの通りに動け。敵グループの火力と射程、異能次第で優先撃破目標を更新するのを忘れるな」
各部隊の通信が入り乱れ、リアルタイムで変化し続ける戦況をザンエイのオペレーター達が捌き、最高効率でザンエイの防衛が成されるように戦闘情報と指示が更新されてゆく。
敵の特徴はエゼキドが接触した各惑星の生物の特徴を取り込んだ魔物は、多種多様で鳥獣、昆虫に魚介、中には人間に近い外見の者もある中で、機械兵器は三種ほどだ。
ミサイルやビーム砲を内蔵したパーツが蛇のように連なった、全長百メートルほどの機体。人類側の暫定コードネームは『ブロックスネーク』。
流線型の胴体から手首から先が銃になっている四本の腕を伸ばす、全高二十メートル弱の戦闘機型の機体。コードネーム『フォーガンズ』。
無数のミサイルを内蔵した大小のリングを、同心円状に配置した直径六十メートルほどの小型機。コードネーム『ファイヤーリング』。
これらエゼキドの運用する機械兵器のスタンダードなのであろう。
有機的な魔物とは正反対の外見のこれらの一群の先陣を切ったのは、フォーガンズだった。ファイヤーリングの発射した無数のミサイルが、紫色の光の尾を引いて、複雑な光の格子模様を描いて、突撃するフォーガンズを支援する。
重装甲を施したキグルミの影に隠れるマジカルドール達の幾人かが、ロケットランチャーを発射し、発射された弾頭が敵ミサイル群の目の前で爆ぜて、マジカルドールの幻影を浮かび上がらせた。
プラーナ反応と実態を持たせたデコイだ。ミサイルの半数ほどが目標をデコイへと切り替えて、機動を乱す。彼我の技術格差から通用しない可能性もあったが、結果は見ての通りだ。
残る半数をプラーナの弾丸やビームが撃ち落し、ツイノエの表面を新たな無数の爆発が飾り付ける。
その爆炎の無効から、ブロックスネークの巨体より発射された無数のビームと新たなミサイルがキグルミ達に襲い掛かり、キグルミの纏う重装甲を少なからず吹き飛ばす。
共に消耗品に分類される魔物と機械兵器、そしてマジカルドールと妖精達が、直に銃火を交わし始めたが、魔法少女達の多くはまだ結界の内側に留まり、温存されている。
新たな体に意識を移せばいいマジカルドール達と、強力だが専用のボディに拘束される魔法少女の差であり、また同時に中身が軍人か否か、その差でもあった。戦術的な理由と倫理観の両面からの措置でもある。
そして結界内部のザンエイの船首には、ビクトリーフラッグの姿があった。イギリスの誇るワールドランカーである魔法少女をその名を体現する旗を高く掲げて、ひと際、大きくプラーナを輝かせる。
直接戦闘よりも支援を得意とする彼女が、決戦の為に温存していた、とっておきの支援魔法の使用に踏み切ったのだ。宇宙空間でも結界内部には神域の清浄な空気とヒノカミヒメのプラーナに満ちて、ユニオンフラッグが雄々しくはためている。
「同胞よ 我と皆の道行に勝利あり 勝利の先に栄光あり 我らの剣が敵の運命を絶ち 我らの盾が民に降りかかる災いを防ぐ 輝かしき未来よ 愛しき人の微笑よ 馥郁たる祝福よあれ 『
ビクトリーフラッグはその瞬間から、彼女自身が勝利を示す旗となり、その旗の発する壮麗なる光の届くところ、味方はビクトリーフラッグの持つプラーナを分け与えられ、更には理想郷の加護を得て、心身に気力が充溢して持てるポテンシャルを全力で発揮できるようになる。
ビクトリーフラッグの加護によってあらゆる毒物、呪詛、不運に対する耐性を獲得し、結界内部に居る者となれば、神域の加護も相まってあらゆる病苦と毒を弾けるだろう。
魔法少女の中でも随一の支援魔法が発動されるのに合わせて、その恩恵の凄まじさに味方の多くが驚きの声を上げる中、ザンエイの守りに移ったジェノルインは彼女と同じような広域攻撃を得意とする魔法少女達と連携して、結界内部からの攻撃を始めようとしていた。
マジカルドール達を無視して結界に食らいつく魔物達の醜い姿、攻撃を加え続ける機械兵器達へ、闘志といくばくかの恐怖を交えて、ジェノルイン達はついに魔法による破壊の嵐を敵本拠地に巻き起こした。
*
ヒノカミヒメの迎撃と同時にザンエイの破壊を目論むアンテンラは、戦況が硬直次第、新たな戦力を投入してくるだろう。人類側が勝利を手にするには、なんとしても、一刻も早くツイノエ中枢とアンテンラの抹殺を実行する他ない。
ツイノエ中枢を目指して突入したヒノカミヒメ達は、進む先々で形を変える通路や前後左右どこからでも出現する魔物、変動する重力や雨あられと降り注ぐプラズマ砲弾、吹き荒れる電磁波の嵐などに晒されながら、着実にボイドリアを目指して距離を詰めていった。
この数か月でボイドリアにどこまでヒノカミヒメ対策を施したのかは不明だが、ヒノカミヒメもまたソルグランドから引き継いだ戦いを全うする為に、研鑽を怠った覚えはない。
先のナラカ・コーラル攻略戦は止めを刺し損ねたが、そのお陰でこうしてツイノエの所在を突き止められたのだから、これは怪我の功名というもの。
そして今度こそ、指し損ねたトドメを刺す時なのだ。
「一振りにて百鬼を攻め破る 『
少しでもヒノカミヒメの損耗を小さくするべく、天の羽衣フォームとなったザンアキュートは先陣を切って、真空の通路を駆け、向こう側から姿を見せた魔物と機械の混在する敵部隊へ百の斬撃を放った。
進行方向の通路を埋め尽くする蛙や蜥蜴、百足を不規則に混ぜたような魔物達は、天の羽衣フォームによって、七倍化した斬撃、つまり七百の斬撃を受けて見る間に細切れにされる。
無数の素材不明な肉片の隙間を縫って、紫色の粘液がドロリと滲み、直後、凄まじい速さでヒノカミヒメ達へと襲い掛かる。飲み込んだ魔物の肉片を瞬時に消化しながら迫るコレもまた、魔物の一種である。
巨大スライムとでも呼ぶべき魔物の表面に、無数の斬撃が刻まれるがそれもすぐに消えてなくなる。
「液体の敵! 気を付けて、斬撃に乗せたプラーナを食べられたわ」
粘液状に加工されたプラーナで構成される巨大スライムは、打撃と斬撃、刺突などに対して極めて高い耐性を有し、更には触れた対象を分子レベルに分解して消化する機能を持つのだ。
ただの液体型の魔物であるのなら、これまでザンアキュートは幾度となく斬り捨てている。斬撃の断面に自分のプラーナをわざと残留させて、再生を防ぐという斬り方を彼女は習得しているが、その残留させたプラーナを食われたのだ。
「斬撃が効かないなら、炎はどう!」
顔をしかめるザンアキュートの脇を抜けて、ソルブレイズが全身に黄金の炎を纏いながら巨大スライムへと恐れげもなく突っ込む。この時、ソルブレイズの纏う炎は触れる者のみを焼き尽くす、一千万度超の高熱を発していた。
もし制御無しでこの高熱を発していたら、共に戦う味方へも甚大な被害をもたらしていたのは想像に難くない。太陽の如き人型の流星とでも言いたくなるソルブレイズの振り上げた右拳は、炎の輪を五つ巻いていた。
通路一杯に広がる巨大スライムに自ら飲み込まれるように飛び込んだソルブレイズの拳が、なんの躊躇もなく紫色の粘液に叩き込まれて、消化と炎による燃焼が拮抗状態を作り出す。
ならばと巨大スライムはソルブレイズを四方から包み込もうと、勢いよく体を伸ばした。
拮抗状態はソルブレイズの右拳との間にだけ生じている。それならば他の部位を喰らいつくそうとするのは、合理的な判断と言えた。
紫色の粘液に四方を包まれても、ソルブレイズの瞳に焦りや恐怖の色はなかった。彼女もまたヒノカミヒメ同様に、ソルグランドが失われた日より、その代わりを務められるようにと鍛錬を欠かさずに重ねてきたのだ。
彼女の固有魔法『憎炎愛火』はその名前の通りに、敬愛するソルグランドを奪われた怒りと憎しみを糧として、莫大なプラーナを生み出している。
「広がれ! 『
次の瞬間、ソルブレイズの右腕を巻く炎の輪が瞬時に巨大化して、巨大スライムを内部から輪切りにしてのけた。炎の輪は巨大化と同時に蓄えた高熱を巨大スライムの全身へと伝播させて、危険な粘液を一滴残らずこの世のから消し去っていた。
結果を見れば巨大スライムを瞬殺したが、ソルブレイズを始め他の魔法少女達に安堵の色はない。
上下左右の通路の一部が組み代わって新たな道が出来上がり、そこから新たな魔物や機械兵器達が姿を見せていたからだ。
ヒノカミヒメがソルグランドから受け継いだ──真似したというべきか──破殺禍仁勾玉を使い、味方の援護をと考えたその矢先に、彼女の視界の片隅にプラーナから生成された渦潮が映り込む。
「ええい! 足止めくらいなら私にも出来る! 出来るったらぁ、出来る!!」
いつもの如く冗談みたいな大きさのナルトに乗ったアワバリィプールだ。地球とナザンとフェアリヘイムの運命を掛けた決戦とあって、戦闘が始まる前は凄まじい緊張に襲われていた彼女も、いざ戦闘が始まればそこは激戦を潜り抜けてきた猛者。
非力な自分でもやれることはあると、覚悟を決めてプラーナと根性を振り絞って、新たな敵の出鼻を挫く活躍を見せる。
「私の渦巻き、そう簡単にはほどけないよ!」
額に汗を滲ませながら、好戦的な笑みを浮かべるアワバリィプールは意外と頼もしさに満ちていた。通路から飛び出す出鼻をくじかれた敵がなんとか拘束を解くか、あるいは無事な部位から攻撃を加えようとするのを、ディザスターとフォビドゥンが阻んだ。
ディザスターは尻尾の先端に開いた口から、圧縮した重力砲弾を連射して同胞でもある敵をことごとく原子にまですり潰し、フォビドゥンは最強の武器である自分の手足を叩きつけて、魔物と機械の区別なく叩き潰していった。
「ふいー。あれだけの数だと拘束するのも楽じゃないよ」
「良い反応だったぞ。だがこれで終わりじゃない。退路はアシュラゴゼンやヌラリピョンが確保しているとはいえ、後ろから襲ってくる奴らも出てくる」
消滅させた元同胞への感慨は欠片もなく、ディザスターが懸念を口にする。先ほどのように通路を組みかえればいくらでも背後からの奇襲が可能となる。
歯ごたえの無さに物足りない表情を浮かべているフォビドゥンが、ヒノカミヒメに問いかけた。水先案内人は彼女なのだ。
「ボイドリアが待ち構えている所まで、後、どれくらいかかりそうなんだ? いちいち待ち構えているのと湧いてくる奴らを相手にするのは、メンドーなんだけど」
「今の速さならそう掛かりませんが、たしかに時間稼ぎの雑魚が鬱陶しいですね。背後からの襲い掛かってくる者共を足止めする手は打っておきましょう」
「ならここで足止めする奴らを残す? あたしはヤダけど」
話している時間も勿体ないと、こうしている間もヒノカミヒメ達は移動を再開している。
ボイドリアは先ほどから動こうとせず、ずっと同じ地点にいるそこまで万全の備えをして、ヒノカミヒメを待ち構えているのは明白だった。
だがヒノカミヒメ以外の突入戦力については、ボイドリアが手を下すまでもないと防衛戦力で片づける腹積もりであろう。
いくらヒノカミヒメ対策をしたとしても、基本スペックがあまりにも高いヒノカミヒメを撃破するのに、ボイドリアが多大な損害を負うのは、アンテンラも承知の上だ。
ハイエンドの魔物少女であるボイドリアを、ヒノカミヒメ撃破と引き換えに消耗したところ他の魔法少女などに倒されては、製造コストとまるで釣り合わない。だから余計な敵はボイドリアに到達する前に排除したいのだ。
「まずは罠を仕掛けておきましょう」
不意にヒノカミヒメが巫女服の袂に手を入れて、数十枚のお札を取り出した。それを三枚一組にしてばら撒いてゆく。高速で移動するヒノカミヒメの手を離れたお札は、意思があるかのように通路へと貼りついていった。
陰陽師や仙道をモチーフとした魔法少女は、おおむね札を使うケースが多いから、お札そのものは珍しくない。
「一枚は私達の身代わりとなり、一枚は大きな川となり、一枚は火の海と化す。三枚のお札という昔話を基礎とする神器です。三枚一組にする必要はありますが、これで背後からの奇襲に対してある程度の足止めが叶いましょう……口にした端からですか」
ヒノカミヒメの反応は最初に放ったお札がさっそく発動したのを、感知したからだ。身代わりとなった札に機械兵器が殺到し、二枚目のお札から溢れ出した膨大な水流に阻まれている。
それだけではなかった。アンテンラがお札によって、妨害を受けていることに気付き、お札の貼られた通路の一部を組み替えて、そもそもお札が起動しないように操作を始めていた。
そしてまた通路の進行方向には別の通路が接続されて、ヒノカミヒメを消耗させる為の敵がわらわらと無尽蔵に姿を見せ始める。
こちらへ向けて先頭の機械兵器群が金属粒子砲を乱射し始めるよりも先に、ザンアキュートの斬撃が虚空を走り、無数の火花が散った。
「お互いに考えることはお見通しのようですね。こうなると足止めの戦力を残すよりも、このまま全員で進み続ける方が、結局は最短の道を進むことになりそうですね」
ザンアキュートの言葉を誰も否定はしなかった。アンテンラの思惑通りに進むほかない事実に対する、悔しさや小さな焦りはあったが、ソルグランドの後継者たるヒノカミヒメならボイドリアには負けないという信用も同時にあった。
ザンアキュートに突入部隊に参加しているブレイブローズが、前に飛び出て言葉ではなく行動で示した。
「私もザンアキュートさんに同意します。当初の作戦通り、私達で道を切り開いて、ヒノカミヒメさんを極力消耗の無い状態で、中枢まで送り届ける。これが私達の勝ち筋なのでしょう」
ブレイブローズがポセイドンの槍を模したトライデントを突き出した姿勢を取り、トライデントの穂先から薔薇の花弁が水流のように渦を巻き、攻防一体のバリアとなる。
艶やかな薔薇の奔流は飛び掛かってきた四つ首の鰐を思わせる魔物や回転する車輪のような機械兵器、生体エネルギー砲を背負ったカブト虫めいた魔物らを容赦なく粉砕してゆき、そのまま八百メートル以上に渡って破壊をもたらす。
「この勢いに乗るのが吉ですね。ザンアキュート、推して参ります」
「私も行きます! ソルブレイズ、突撃します!!」
薔薇の花弁が舞い散る中を、六振りの刀剣を従えるザンアキュートが視界に入るものすべてに斬りかかる斬撃の災害となって通路を飛翔する。
そしてソルブレイズも仲間には一切、熱を加えずに敵だけを燃やす魔法の炎を纏い、ツイノエの内部を焼き尽くす炎の流星となって続く。
「誰も彼もお前に期待しているわ、ヒノカミヒメ。いつまで経ってもソルグランドの代役だが、気にならないの?」
煽っているような、それでいて心配してもいるような、ディザスターの言葉に、ヒノカミヒメは誰をも魅了する微笑を浮かべて答えた。
「私を通してソルグランド様を見ていただけるのなら、それは私にとってこの上なき誉、そして喜び。気を病んでいるかなど、的外れもよいところですよ、ディザスター」
「そう。まだあなたへの理解が足りていないようね。でもザンアキュートの言う通り、戦力分散をせずにこのまま雑魚を蹴散らし続けるのがいいでしょう。後ろを気にするよりも、より速く前に進むべきだわ」
ディザスターは創造主に対する未練を振り切れたのか、後れを取ったと言わんばかりに速度を上げてザンアキュート達に続いてゆく。自覚があるかどうか分からないが、魔物少女四姉妹の中で長女に該当するディザスターは、ごく自然とリーダー的な役割を務めている。
そんな彼女が率先してザンアキュート達を追い抜かんばかりの速度で突出すれば、フォビドゥンやスタッバー、シェイプレス達も続いてゆく。
途端に激しい戦闘音とエネルギーの衝突がツイノエの内部に伝播する中で、ヒノカミヒメは三枚一組のお札を新しく巫女服の袂から取り出しながら、自分が殿を務めるなどあってはならない、とこちらも速度を上げていった。
立ちはだかる魔物と機械兵器、それに立ち向かう魔法少女、ネイバー、魔物少女、ヒノカミヒメから成る突入部隊の戦闘は更に十数度繰り返され、ヒノカミヒメはボイドリアの待つ戦闘フィールドへの到達に成功する。
傷ついても即座に修復を始める液体金属とエネルギーバリアで構成される隔壁を、同行するトウセンショウの如意棒の一撃がまとめて吹き飛ばし、待ち構えていた多脚戦車型の機械兵器を、サンダーハンマーの雷を纏う戦鎚がまとめて粉砕する。
着地の瞬間を狙って殺到する次元渦動砲は、マーズグラディウスが片手でしごいた槍の刺突に、渦を巻く次元ごと貫かれて無力化される。戦闘フィールドへ勇んで飛び込んだのは、ネイバーの中でも特に戦闘能力や神格の高い三柱であった。
三柱がとりあえずの安全地帯を確保した後、ソルブレイズやザンアキュート、そして魔物少女達にかしずかれるようにして、ヒノカミヒメはボイドリアとの決闘場へと降り立つ。
一度目の戦いではソルグランドの置き土産によって多大なダメージを負っていたとはいえ、ボイドリアを圧勝した日本神話の寵児だが、時を置いて対峙した仇敵の姿に、桜の花びらのような丸い眉を寄せる。
「今度こそあらゆる情報を奪いつくしてから、塵芥も残さずに消してあげましょう。ボイドリアとやら」
「測定プラーナ値、5.8パーセントの上昇を確認。ヒノカミヒメの戦闘能力値を上昇修正、終了。……ヒノカミヒメ、それはこちらのセリフである。我が創造主アンテンラの安寧と繁栄に対する、最も危険な存在。本機の全機能を持って貴様を抹消する」
ボイドリアがその異星の技術によって形作られた美貌に、はっきりと敵意とそして怒りらしいものを浮かべるのを、ヒノカミヒメは冷徹を極めた眼差しで睨むだけだった。
色々とキャラクターを登場させてきましたが、掘り下げの度合いについて今更になって悩んだりしています。