魔法祖父ソルグランド ~TS転生した祖父は魔法少女の孫娘を見守る~   作:永島ひろあき

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御傍に

 遠き星の光が瞬く宇宙に血の噴水の如く赤いエネルギーを振りまくツイノエに、半ば死に体となった邪魔汰退悪呂土が最後の力を振り絞って絡みつく。

 元は敵であったディザスターがその命の灯を燃やし尽くしたのだ。

 それならば人類の為にと生み出された己が後れを取ってはならない。そう考える自我と誇りが邪魔汰退悪呂土にはあった。

 

 邪魔汰退悪呂土自身、既にツイノエの攻撃によって崩壊が進んでおり、攻撃を受け続ければその内に消滅する他ない。

 ツイノエの拘束を解いて神域に撤退し、回復に専念すれば生存の目もあるが、ヒノカミヒメの神域はツイノエの主砲を神隠しした結果、破壊しつくされて癒しの場として機能はしまい。

 

「シャオオオオオ!!」

 

 ならば、なおさら、邪魔汰退悪呂土は命を惜しまなかった。大打撃を受けたツイノエもまた機能停止に陥ってはいない。

 首から上を失った姿のまま、エネルギーの逆流で破壊された内部構造を組み替えて、機能保持に務めている。

 

 痛みも恐怖もない人工知性ならではの最善と効率を求める思考形態に、翳りはなかった。

 自分達が失敗作として捨てたディザスターからの手痛い一撃にも、怒りを抱きもしなければ罵倒の言葉一つない。

 ただし、ツイノエに齎された被害の大きさは、彼らの計算した勝率を大きく下げる一因になったのは、間違いなかった。

 

『重力制御ユニット七番から三十二番まで消失。縮退炉出力低下、エネルギーバイパスの再構築、ナノマシン制御システムにエラー、機能回復まで三十七。主砲ヒヲグイの本戦闘中の復帰を断念』

 

 アンテンラはツイノエに生じる様々な不具合に迅速に対処しながら、ソルグランドとヒノカミヒメに最大の警戒を注いでいる。

 想定を超える攻撃の連続に最終防衛フェーズに至ったツイノエさえ、かつてない被害を受けている。およそ二メートルに満たない生体兵器に、ここまで被害を齎されたのは初めてのことであり、この戦闘を乗り切れば実に貴重なデータとなるだろう。

 

『エゼキド本国に緊急データ送信プロトコルを実行。プラーナを利用した生体兵器の開発提案と資料を送信』

 

 もはや受け取る者はいないと知ってなお、アンテンラは創造主への献身を止めなかった。

 アンテンラの健気で一途な献身は今日に至るまで報われることはなかったが、これまで多くの星々に振り撒いてきた戦禍に対する報いは、アンテンラの喉元まで突きつけられていた。

 

 ツイノエの内部には隙間と言えるような隙間は存在しなかったが、ディザスターの特攻による損害によって、侵入する隙間が広がる結果となった。

 その隙間を通って、これまでツイノエの内部に潜んでいたシェイプレスが、アンテンラの宿るコアユニットの眼前へと姿を現す。

 

 ツイノエの変形に合わせて姿を変えたコアユニットは、ねじれた柱のようだった。メインの縮退炉と演算装置を兼ねており、直径百八メートル、全長五百二十四メートルに達する巨大な代物だ。

 艶やかで滑らかな質感をした表面に、時折、赤や青、黄に緑と様々な光が掛けて幾何学模様を描いている。

 

「創造主アンテンラ」

 

 ひしゃげた構造材の隙間から滲むように姿を見せたシェイプレスは、設計者であり生産者でもあるアンテンラへ、痛切な表情を浮かべて問いかけた。姉妹機であるディザスターの特攻を、彼女も知っているのだ。

 

『ツイノエ内部への侵入者を捕捉』

 

「ディザスターの行動は私達の製造段階では想定されていなかった、不測の事態」

 

『廃棄後、離反した魔物少女四号機を確認』

 

「ディザスターは明確にあなたの予想を超えましタ。私達の行動が離反行為であっても、予想を超えた私達は、評価に値しないのデスカ? 鹵獲する価値も、特異な記録として保管する価値モ? ただ、目の前に現れれば排除するだけの存在のまま?」

 

 魔物少女達の中で最もアンテンラに未練があるのは、やはりと言うべきか最後まで離反を渋っていたシェイプレスに他ならなかった。

 未練は創造主に対する承認要求の別名であったかもしれない。

 しかし、いや、やはりと言うべきか、アンテンラからの返答は冷淡であった。

 シェイプレスの望みを一欠けらも叶えないもの──コアユニットの表面が星空のように輝き、そこから黄金の光線が放たれて、シェイプレスの全身を貫いた。

 変幻自在故に特異な耐久力を持つシェイプレスだったが、光線の持つ膨大な熱量は彼女の肉体に致命的な損害を齎す。

 

「ああ、やはり……。あなたに望むことそれ自体が過ち。私がこんな過ちを犯したのは、ソルグランド達と、長く、過ごしすぎたセイ」

 

 撃ち抜かれた箇所を中心に、シェイプレスの身体の大部分は周囲の構造材ごと蒸発し、残っているのは首から上ぐらいのもの。その首へも黄金の光が瞬いて、すぐに消滅させるだろう。

 

「だかラ、私もやってみましょウカ。反抗期、ねえ、ディザスター?」

 

 吹っ切れたように笑みを浮かべたシェイプレスの首を、黄金の光線が穴だらけにする寸前、シェイプレスの首が内側から七色の光を発しながら弾け飛び、強烈なプラーナ反応がツイノエの損傷個所を通じて、外へと漏れ出る。

 アンテンラとの対話の末、諦めのついたシェイプレスは破壊するべきコアユニットの所在を知らせるべく、こうなることを予測して溜め込んでいたプラーナを放出し、灯台代わりとなった。

 

 シェイプレスの発したプラーナによって、コアユニットの位置がヒノカミヒメとソルグランドへと伝わる。真っ先に反応したのは邪魔汰退悪呂土だ。

 壊れかけの肉体を構成するプラーナと神通力の大部分を解放し、ツイノエの破損個所へ毒と共に流し込んで、破損をさらに広げる。それに加えて流し込んだプラーナを接着剤のように固定して、ツイノエの動きそのものを封じるのだ。

 本来の首を残し、一匹の大蛇のような姿になった邪魔汰退悪呂土の向こう側に、ザンエイがいた。これまで自身の防衛に専念していたザンエイの甲板に、ザンアキュートとスタッバー、それにソルブレイズとフォビドゥンの姿がある。

 

 応急処置を終えたスタープレイヤーやビクトリーローズ、スイートミラクル達は、周辺に展開して押し寄せる魔物と機械兵器達を押し寄せる役割を必死に担っていた。

 フォビドゥンは右手に左手を添える姿勢だったが、その両手が融合して巨大な怪物の頭部のように変形していた。そのすぐ前にソルブレイズが腰を落とした姿勢で留まっている。

 

「ソルブレイズ、私のありったけよ。つまらない失敗はしないで」

 

 フォビドゥンの両手の融合した頭部の口が開き、そこから白く輝くプラーナの光が溢れ出す。フォビドゥンの肉体の限界を超える量のプラーナによって、両手から徐々に罅が走り、フォビドゥンもまた妹達と同じ道を辿ろうとしている。

 

「あの、こんなギリギリであれなんだけど! 本当にいいの? フォビドゥンさん!」

 

 魔法少女としての装束に使用するプラーナも、右手に集中させているソルブレイズが、どうしても聞かずにはいられないと悲痛な表情でフォビドゥンに問いかけた。

 振り返らなかったのは、ツイノエから目を離すわけには行かなかったからか。それともフォビドゥンの浮かべる表情がどんなものであれ、見ることに気が引けたからか。怖かったのかもしれない。

 

「気にしなくていい。私は気にしていないから。それに最後に自分を捨てた親に子供が一泡吹かせるのだもの。気分は最高よ。妹達が上手くやっているのだから、長女としてはなおさらね」

 

「……ん、分かった。余計なことはもう聞かない。ただ、この一撃に全てを賭ける!」

 

「それならいいわ。さあ、私の命よ。たっぷり味わってね。創造主の滅んだ私の創造主様!」

 

 フォビドゥンがアンテンラをお父様ともお母さまとも呼ばなかったのは、捨てられた子供としての意地であったろうか。

 フォビドゥンの融合した頭部から吐き出されたのは、一抱えほどのプラーナの光球だった。彼女がその生命の全てを燃やし尽くして生み出したエネルギーの塊だ。

 それをソルブレイズの燃える右拳がつかみ取り、ソルブレイズ自身の生み出した熱とプラーナの燃料となって、更なる激しい燃焼を齎す。

 

「私とフォビドゥンさんの、全身全霊だああああ!!!!」

 

 ソルブレイズの右拳そのものを焼き焦がしながら、小型の太陽が打ち出された。そうとしか思えない熱量であった。白と赤とが入り混じる炎の塊が、まっすぐにシェイプレスの示した地点を目指して突き進んでゆく。

 ツイノエの盾になろうとした魔物や機械兵器は、近づいただけで瞬時に蒸発して跡形もなく消し飛ばされる。常時ならばツイノエはこれを回避することも出来たかもしれないが、度重なる損傷と邪魔汰退悪呂土の捨て身の拘束によって、巨大な要塞は動けずにいた。

 

 ツイノエの持つ数々のバリアを始めとした防御機構は、その機能を半分も発揮できずに、ソルブレイズの撃ち出した燃え盛る光球によって、表層から中枢部近くまで一気に融解する。

 それでもまだ足りなかった。中枢部は露出しておらず、コアユニットの影もない。

 だが、その時の為のザンアキュートとスタッバーだ。こちらもまた魔物少女と魔法少女の協力による、強力無比な一撃を放つ瞬間を狙っていた。

 

 力を使い果たしたフォビドゥンがザンエイの甲板に倒れるのを察し、スタッバーは一度だけ瞼を閉じた。冥福を祈る、というものだとソルグランドから習ったのだ。

 ザンアキュートは七つの刀剣を一振りに合体させ、六尺近い大太刀と鍛え直し、肩に担ぐように構えていた。大太刀は水平近くまで倒されて、切っ先は後方へと流れている。

 そしてその大太刀は切っ先から柄尻、柄を握るザンアキュートの両手首に至るまで、黒曜石のような物質に覆われている。

 

「君が相手なら余計な言葉はいらない。遠慮はいらないから、思い切りやってくれ。それが私達への最大の返礼と供養と言う奴だ」

 

 スタッバーはそれまでザンアキュートの大太刀に触れていた手を離し、最高傑作となる黒曜石の刃で覆われた大太刀を満足げに見ている。

 

「分かっております。ただ……お礼を言います。スタッバー、その命を忘れません」

 

「ふふ、私達がほだされてしまっても仕方ないな、やはり」

 

 冥途の土産にしては上出来すぎる、とスタッバーは結果を確認する前に深く目を閉じて、フォビドゥンにわずかに遅れてその場に崩れ落ちる。そのあまりの呆気なさに、ザンアキュートの奥歯が砕けそうなほど強く噛み締められた。

 それを最後にザンアキュートは斬ることだけを意識した。刃を振るう。斬撃を届かせる。敵を斬る。これらがすべて。他は悉く雑念だ。音は不要、視界も不要、プラーナの感知すら不要。

 

 プラーナで構成される魔法少女の肉体には、本来、関節や血肉、臓腑は不要だ。それでも不要なそれらがわざわざ再現されているのは、大元の肉体との差異を失くして肉体への違和感を減らし、操作性を増す為だ。

 だが、今のザンアキュートにはより鋭く、より速い斬撃を繰り出す為には些末なこと。肉体を構築するプラーナを直接操作して、人体構造を模していては達成できない速度を得る。

 斬撃の加速に必要な関節のみを残し、増やし、組み替えて、五感を減らし、神経や血管すら大部分は不要と切り捨てる。

 ただ一度の斬撃の為に、身体の内側を自ら作り替えたザンアキュートは、ただ一言だけを呟くと喋る機能すら捨て去った。

 

「斬る」

 

 もはや魔法少女ですらなく、刃を振るう為だけの存在と化したザンアキュートの大太刀が、黒曜石の煌めきと共に振り抜かれた。

 はるか遠方のツイノエにソルブレイズとフォビドゥンの一撃で開かれた大穴に、横一文字の斬撃が重ねられる。超高熱によって融解していた箇所は勿論、ツイノエの胴体と蛇体の境目付近を、綺麗な横線が横断した。

 

 人体では下腹部、臍下の辺りを横断する斬撃がコアユニットを守る構造材を切り裂き、更にスタッバーの黒曜石の武器の特性が発動する。

 ザンアキュートの大太刀と両手を覆っていた黒曜石が砕け散るのに連動して、ツイノエの斬られた箇所も弾け飛んだのだ。

 斬り裂き、弾き飛ばす、距離を無視する斬撃──それがザンアキュートとスタッバーの合体攻撃の正体であった。

 

 そうして露になったコアユニットの眼前、数キロメートルの位置にヒノカミヒメが飛び込んで来た。防衛戦力による迎撃が間に合わないと判断したアンテンラは、すぐさまコアユニットが黄金の光線を走らせる。

 数にして数十を数える光線を、ヒノカミヒメの背後から回り込んだ破殺禍仁勾玉と破断の鏡が身代わりとなって受け止めて、これまでの酷使に軋んでいた二つの神器が限界を迎えて砕け散る。

 

「アンテンラ、覚悟!」

 

 コアユニットへ向けて、ツイノエの下腹部に出来た裂け目へ頭から突っ込もうとするヒノカミヒメの身体が、不意に見えない巨人の手に掴み止められたように停止する。

 

「指向性の、重力か」

 

 メイン動力炉を兼ねるコアユニットは、それ自体もまた強力な兵器だった。ツイノエが破壊された場合に備えて、コアユニットにも過剰なまでの自衛能力を持たせていたのだろう。

 ヒノカミヒメの数多の権能を抑え込み、瞬間移動すら許さずに拘束するほどの出力とは、いったいどれほどのものか。ヒノカミヒメ周囲の空間が陽炎のように歪み、そのまま出力を上げれば極大の重力異常によって、ブラックホールさえ形成しかねない。

 

 動きを止められたのはヒノカミヒメにとって痛恨の極みだったが、同時にアンテンラにとっても最大出力の重力拘束をしているにも関わらず、潰しきれないヒノカミヒメの堅牢性と神通力の無法さには手を焼いていた。

 本来の出力を発揮したヒノカミヒメの肉体は、日本神話群の精髄を注いだ結果、星間戦争規模の文明から見ても、常軌を逸したスペックを発揮している。

 

 数千倍、あるいは万倍にも達しよう重力の中で、潰されもせずにヒノカミヒメは自分を外へと押し出そうとする横向きの重力に逆らって、じりじりと接近していた。

 それは一センチずつ進む牛歩にも劣るものだったが、アンテンラから余力を奪うのに足る行為だった。そしてなによりも、ヒノカミヒメは自分の役割を果たせている事実に、笑みを浮かべていた。アンテンラから余力を削ぐ役目を、彼女は充分に果たしていた。

 

 アンテンラは砕けた破断の鏡の破片を、ひとつ残らずマーキングしておくべきだった。その一つが不自然な軌道を描いて、コアユニットの間近に飛んできたのを不審に思うべきだった。

 例え、ソルグランドの地球上での神出鬼没の理由が、鏡を利用した瞬間移動だったと知らなかったにせよ、あらゆる不自然に疑いを持つべきだったのだ。

 

 空間の歪む前兆もなく、砕けた破断の鏡の破片からソルグランドが飛び出す。右手に苦殺那祇剣、左手にはヒノカミヒメから預けられた天滅之無羅苦莽剣が握られていた。

 もはや刀剣の内部に力を留めておく理由はない。二つの神器が持つ本来の力を解放し、草名を薙ぎ払い、叢雲を払う神剣の権能を持ってアンテンラを討つ時がまさに今。

 

「よう、面を拝んだのは初めてだな。さっそくで悪いが、この世から永遠に消えてくれるかい?」

 

『最高警戒対象ソルグランド。エゼキドの存在証明の為に監査軍の解体は認められない。アンテンラが維持される限り、エゼキドは永遠に……』

 

 指向性重力を緩めれば、即座にヒノカミヒメが動く。さりとてここでソルグランドを迎撃しなければ、コアユニットが破壊されるのは必定。アンテンラは事態の打開が不可能であると──詰みであると認めざるを得なかった。

 

「永遠に他人に迷惑をかけ続ける、はた迷惑な連中だって記録されんだよ。それぐらい分からないもんかね? 自分の創造主に悪名を被せて、恥さらしにするつもりかよ、お前」

 

『…………』

 

 絶え間なく演算を重ねるアンテンラの思考に、空白が生じた。アンテンラが存在する限り、その創造主たるエゼキドの存在が忘却されることはない。宇宙中にその名を知らしめるだろう。

 だがそれは、悪名でよいのか。自らが滅んだ後も他の文明を侵略し続ける機構を残した、欠陥塗れの恥さらしとして、認知させてよいのか。これに対する答えを、アンテンラは出すことが出来なかった。

 

 意図せずアンテンラがこれまで目を背けてきた命題を突き、動きを止めるのに成功したソルグランドはその隙を見逃さなかった。

 これまで半世紀以上に渡って地球に災いをもたらし、多くの少女達に戦う道を選ばせてきた怨敵。孫娘の燦が命がけの戦場に立たなければならなかった原因に向けて、ソルグランドは両手の神器の真価を解き放つ。

 

「終わってな、ポンコツ! 天滅之無羅苦莽剣、苦殺那祇剣!!」

 

 振り被られた二振りの神剣が全力で振り下ろされ、剣の形に留められていた神通力が解放される。

 星を喰らうラグナレクすら一撃で破壊する苦殺那祇剣、さらに苦殺那祇剣を強化した天滅之無羅苦莽剣。この二振りが最適化されたソルグランドによって解放された時、そこに生まれるのはアンテンラですら、抗う事の叶わない絶対の破壊であった。

 

 神剣の内側から溢れる光と炎が刀身を砕き、コアユニットの全てを包み込む。光と炎の中でコアユニットは一瞬の抵抗も許されずに、瞬く間に消し飛んで行く光景をソルグランドの瞳の中に映す。

 

『われ……アンテンラ……エゼキド、そう、ぞうしゅ……存在を……残さなけれ……』

 

「遺言を聞くつもりはねえ。消えときな!!」

 

 柄までも砕けた苦殺那祇剣と天滅之無羅苦莽剣が、内包していた全てのエネルギーを解放し、コアユニットを完全に飲み込んで、ソルグランドの目を持っても欠片一つ残さずに消える。

 これまで地球と妖精、ナザンばかりでなく多くの星々に災いをまき散らしてきたアンテンラの、完全な消滅であった。

 

 コアユニットに記録されていたアンテンラの情報もまた神剣によって燃やし尽くされ、バックアップがあろうとも同じアンテンラという縁を辿って、神剣二振りの神罰が降り注ぎ、残存を許さない二段構えだ。

 少なくともソルグランド達の交戦したアンテンラは、もうこの宇宙のどこにも存在できない。

 

 アンテンラの消失によって制御と指揮系統を失ったツイノエが動きを止める中、ソルグランドはプラーナを使い尽くした疲弊感に襲われて、思わず膝を突きそうになる。

 それを重力から解放されたヒノカミヒメが抱きかかえて、敬慕するソルグランドが床に伏せるのを防いだ。

 

「見事、本懐を果たされましたね、ソルグランド様。高天原の皆様もお喜びになられましょう」

 

「おう、ありがとな。ちょいとまだ実感はないが、ディザスター達に感謝しないといけねえな」

 

 ヒノカミヒメの表情に晴れ晴れとした笑みが浮かんでいたのは、一瞬だけだった。ディザスター達の犠牲ばかりが理由ではない。ツイノエの異常をヒノカミヒメは鋭敏に察していたのだ。

 

「はい、それはもちろん。命懸けの働きには報いねばなりません。そして、お約束と言うのでしょうか。ツイノエの残りの動力が暴走を始めたようです」

 

 ソルグランドはうんざりとした表情になった。こっちはクタクタになったんだから、後は素直に帰してくれよ、と愚痴を言いたいところだった。

 

「証拠隠滅、いや、鹵獲を阻止する為に予めプログラムを仕込んでいやがったか。ここまできて自爆に巻き込まれるなんざ、笑い話にもなりゃしねえ。ヒノカミヒメ、悪いがザンエイまで肩を貸してくれるかい?」

 

 答えは決まり切っていた。ヒノカミヒメは向日葵のような満面の笑みを浮かべる。

 

「もちろん。例え宇宙の果てであっても、お望み頂ける限り、私はソルグランド様の御傍に」




アンテンラ戦、ようやく決着です。ちなみにボイドリアは鹵獲されています。
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