魔法祖父ソルグランド ~TS転生した祖父は魔法少女の孫娘を見守る~   作:永島ひろあき

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いってらっしゃい

 魔物が地球に襲来し、多くの破壊と死と悲しみを生み出してから六十一年目。

 遠き宇宙の彼方に存在した魔物──エゼキド監査軍の本拠地ツイノエは、首魁たるアンテンラと共に破壊された。

 アンテンラの残した命令に従う魔物と機械兵器を殲滅後、ザンエイに乗った魔法少女達が惑星ナザンへ帰還したとの知らせは、瞬時に地球とフェアリヘイムへ伝えられ、二つの世界を歓喜の声が包んだ。

 

 未帰還の可能性も高かった敵本拠地への襲撃は、未帰還者ゼロとこの上なく都合の良い奇跡のような結果となり、知人や家族を失った者はおらず、世界中の誰もが引け目を感じることなく祝う事が出来た。

 船体に大きなダメージを受け、エンジンを酷使されたザンエイは、回収したツイノエの残骸共々、ナザンの衛星軌道上に留められ、一旦、ナザンで休息を取った魔法少女達は、それぞれの帰るべき場所へと帰還した。

 

 ソルグランドこと真上大我は、魔法少女の中に可愛い孫娘が含まれているのもあって、なによりもその事実を喜んだ。

 年端も行かない少女達に戦いを委ねる他なかった事実に、歯がゆい思いをしてきた大人達はようやく少女達を戦いから解放できると、この時ばかりは世界中の誰もが思いを一つにしていたことだろう。

 

 魔物の脅威は去った。魔法少女達は元の普通の少女達へと戻る。

 フェアリヘイムの妖精達とはこれまでとは違った形で、これまで以上の友好関係を築いてゆくだろう。

 共に魔物の脅威にさらされて、偶然に出会い生き延びることの出来た種族同士。

 ようやく迎えられた平和の時を少しでも長く、そしてより良いものにしたいという願いは、双方に違いはない。

 

 元々、妖精女王の下で一致団結して平穏の時を過ごしていた妖精達と違い、魔物の襲来まで経済格差、歴史、思想、宗教等々、多くの理由によって争い合って来た地球人類は、いつか大我が危惧した通りに人類同士の戦争を始める恐れはあった。

 戦後のイニシアチブを狙う動きがあったように、本質的な部分での変化はないかもしれない。だが、皮一枚めくればケダモノだとしても、たった一枚の皮を被るだけでケダモノから理性ある人間になれるのだ。

 数十年の長きを地球人類として団結して戦い抜いた共感、妖精やカジンという隣人の存在が人類に歯止めをかけてくれると期待しよう。

 

 そして戦いを終えたからといって、魔法少女達の人生がそこで終わるわけではない。ソルブレイズだった真上燦も、ソルグランドだった真上大我もそれは同じことである。

 六十一年の歳月を経て終結した魔物との戦い──エゼキド大戦の終結からしばし、魔法少女を引退して、元の女子中学生へと戻った真上燦は、魔法少女時代に出来た新たな友人、ザンアキュートこと黒鉄(くろがね)(そら)と、プライベートな時間を過ごしていた。

 

 季節は廻り、夏の暑さが過ぎ去って秋のどこか物悲しい冷たさが、空気に混じるようになった時期である。

 燦は白を基調としたブレザーと赤いプリーツスカートの制服姿、昊は白いスカーフが黒い生地に映えるセーラー服姿である。人間としての昊は、鴉の濡れ羽色の髪の毛先を切りそろえ、腰の裏まで長く伸ばした細身の少女だった。

 平時は鞘に収まった刀の如くただ美しく静かだが、ザンアキュートとして振るった斬撃の鋭さ、戦闘となれば触れるものすべてを斬らずにはおかない危険性を微塵も感じさせない、古き深窓の令嬢然とした美少女である。

 

 性格も容姿も正反対の二人の住所はそれなりに離れていたが、時折、時間を見つけては直に会う機会を設ける仲になっていた。魔法少女としての戦友であり、ソルグランドの傍で戦い続けた仲でもあった。

 住宅地の中にひっそりと隠れるようにして佇む個人経営の喫茶店のテーブル席で、燦はカフェラテを頼み、昊はアップルティーを味わっている。

 

「昊さんはもう試験は終わった? 淡浪(あわなみ)さんはこれから大勝負って、元気よく言っていたよ。あれって、たぶん、自棄が半分入っていると思うなあ」

 

 淡浪とはアワバリィプールのことで、淡浪(あわなみ)(うた)が、アワバリィプールの本名だ。ひんひんと泣きながら勉強に取り組むアワバリィプールの姿が、あまりにも簡単に思い浮かべられるものだから、昊はくすくすと鈴を転がすように笑う。

 差し込む日差しに照らされる昊の黒い髪やセーラー服、白い首筋や頬の美しさに、燦は同性ながらドギマギする自分に気付いていた。

 昊が超がいくつもつくようなお嬢様学校に通う上流階級の出身なのもあってか、日常の何気ない所作のどれもが洗練され、流麗なのだ。おまけに昊自身が途方もない美少女と来た。

 

「最後の戦いでも泣き言を言いながら、役目はきっちりと果たしてくれたのに、日常のこととなると気が抜けてしまうのかしらね? 後になって困るのは自分だって、泡も分かっているでしょうに」

 

 ソルグランドに関わっている時とは、まるで別人の様子の昊だが、それなりに長い付き合いをしてきた燦にとっては、もうすっかりと慣れたものだ。

 

「日常、か。真上さんは今後の進路はもう決まっているの? 高校への進学とかではなくて、もっと先のこと」

 

「んー、それがあんまり。魔法少女になってからは負けないようにすることだけで精一杯で、なかなか将来を考える暇なんて無かったし、魔法少女になる前はなにになりたかったのかも、忘れちゃった。今も新しい夢とか、辿り着きたい未来は決まっていないかな」

 

 きっとそれは燦だけではなく、魔法少女として過酷な戦いを続けてきた全ての少女達に共通する悩み、あるいは戸惑いであったろう。

 これまで魔法少女達は、負ければ多くの人々の命や生活が脅かされる重圧に晒されながら戦い続けてきた。思春期の少女達にとって、それがどれだけのストレスとなり、精神を摩耗させてきたことか。

 各国とフェアリヘイムが魔法少女達のメンタルケアを優先していたから、燦はこの程度で済んでいるが、中には燃え尽きたようにぼうっとしたまま日々を過ごす元魔法少女もいるに違いない。

 

「そう。私も似たようなもの。本当にしたかったことを禁じられてしまったから、余計にね」

 

 昊の言う“本当にしたかったこと”に思い至り、燦は共感混じりの苦笑を浮かべる。

 戦いの終わった魔法少女達は全員が卒業をして、元の少女へと戻った。では魔法少女でない者達はどうなったのか?

 マジカルドールとなった軍人達は、今もその多くがナザンへと残り、ザンエイと共に再び外宇宙へと旅立つ準備を進めている。昊は、魔法少女ザンアキュートはその旅路に同行したかったのだ。

 

 ツイノエに配備されていた魔物は壊滅させ、アンテンラも排除したが、地球とフェアリヘイム以外にもエゼキドの魔の手が伸びていたのは確定している。

 ツイノエの残骸から吸い出したデータを解析した結果、天の川銀河の各地で今も魔物の被害を受けている異星人の存在が発覚し、そうした人々の救援に向かうことが決定したのである。

 

 恒星間航行を可能とするザンエイはその任に最適であり、魔物に対する怒りと憎しみを強く抱く一部の軍人達は、率先してマジカルドールとしての参戦を希望している。

 人手の少なさを補う為に、フェアリヘイムから提供されるキグルミやヌイグルミに人工知能を搭載した無人機の運用も決定していた。

 救援部隊にはカジンの同行も決定しているのだが、彼らにも変化が起きていた。

 アンテンラの排除を受けて、意識の統合の一部を解放し、ナザンに残って故郷の復興と地球人類、妖精との共生を望む者、魔物の根絶に挑む者、安らぎを望む者達などに分かれたのだ。

 

 中にはプラーナ技術を用いて作り出した生体アンドロイドに意識を移し、疑似的に生身の肉体を取り戻して活動するナザン人もちらほらと居る。

 ソルグランドによってテラフォーミングの土台が築かれたナザンが、在りし日の姿を取り戻すのか、それとも地球人類の開拓によってまた別の光景となるのかは、これからのナザン人地球人類次第である。

 

 そしてこの救援部隊にはヒノカミヒメの姿があった。ネイバーは解散し、神々が手を引く中で唯一残った女神だ。魔物の撃退による地球人類の救済を目的とした誕生したヒノカミヒメは、新たな戦いの場を外宇宙へと見定めたのである。

 ソルグランドとヒノカミヒメを輩出したなんちゃって組織ヤオヨロズは、多くの技術を開示して地球人類に恩恵をもたらしたが、その正体についてついぞ明かされず、活動停止と解散が一方的を通達していた。

 人間が神の手から離れた時代であり、今回の魔物襲撃に対する行動はあくまで例外と、地球の神々は合意したようだ。

 

 そして外宇宙の人々に助けの手を差し伸べるべく、惑星ナザンを旅立つ救援部隊の中にソルグランドの姿はなかった。

 救援部隊が出立する前日、ナザンの衛星軌道上に浮かぶザンエイの甲板に、その日、ソルグランドとヒノカミヒメ、夜羽音とオマケ達の姿があった。

 

「いよいよ出発か。ツイノエを叩き壊してからこっち、あっという間に時間が経ったな」

 

 ソルグランドはザンエイの甲板から見下ろせるナザンの光景と周囲に広がる星々の輝きを見回してから、長い黒髪を風になびかせるヒノカミヒメを振り返った。

 

「ツイノエに乗り込む時と同じかそれ以上の熱意を持って、皆さま、奮起されましたから。今度は自分達が誰かを助けに行く番だとお考えなのでしょう。誰かの為により強く力を発揮できるのが人間であるのなら、私としては喜ばしい限りです」

 

「ん~そうだなあ。手助けしてくださった神々に対して、人間のいいところを少しは見せなくっちゃ、助けた甲斐がないって失望されちまうからな。流石に魔法少女達を付き合わせるわけにはいかなかったが」

 

 ソルグランドはヒノカミヒメに対する申し訳なさを隠さず表情に浮かべている。ヒノカミヒメはその表情の理由を分かっていたから、口にはせずにソルグランドの言葉を継ぐように話した。

 

「せっかく戦いから離れられるのです。たとえ希望者が居たとして断固として認めない。それで正しい選択であると、私も思います。ツイノエに赴いた時より数は少なくなりましたが、邪魔汰退悪呂土も再生が終わりましたし、遠き星で戦っておられる方々の助けとなるには、充分です」

 

「ふん、ソルグランドに寂しいから着いてきて~っと泣き付けばいいのに」

 

 ソルグランドとヒノカミヒメの間にあった感傷を吹き飛ばしたのは、ヒノカミヒメの周囲に浮かぶ二十センチ程度の小人──オマケ達の一人だった。それはぬいぐるみのような姿にデフォルメされたディザスターだった。

 生意気な子供風の口調は変わらず、ヒノカミヒメを相手に恐れを知らぬ言葉遣いである。ぷかぷかと宙に浮かぶディザスターを、ヒノカミヒメの左手のデコピンが軽く打った。

 

「いたあ!?」

 

「あなたは余計なお喋りをするのは、変わりませんね。まったく、肉体を失ったあなた達四人の魂を黄泉比良坂に避難させていなかったら、本当に死んでいたのです。少しくらいは私に対して感謝をしても良い筈です」

 

 ぐおおお、と悶えているディザスターを尻目に、こちらもデフォルメ姿のフォビドゥンが妹の失態に呆れながら答える。

 

「私達だけじゃなくディザスターも感謝自体はしているわ。ただこの子はこういう性格なのよ。恩義を感じている相手でも、煽れるとなったら煽る。そういう残念な性格」

 

 フォビドゥンの言葉にシェイプレスとスタッバーが揃って頷く中、デコピンのダメージから復活したディザスターは、ギザギザの歯を覗かせながら大声で抗議する。

 

「残念呼ばわりするな! 助けられたのには感謝しとくけどなんだこのチビの体は!?」

 

「流石にあなた達の肉体を元通りに再現するのは、簡単ではありませんからね。その姿も私の眷属として仮登録することで、成立させているのです。元通りになりたかったら、どこかでアルバイトでもしてプラーナなり集めてらっしゃい」

 

 むぎーとディザスターは不満も露わだが、フォビドゥンやスタッバー達はこれといって不満はない様子。魔物少女姉妹の間で、かなりの温度差があるようだった。

 

「命あっての物種というそうですヨ、ディザスター。今度はヒノカミヒメを相手に反抗期ですカ。落ち着かないことですネ」

 

 やれやれと言葉にする代わりに肩を竦めるシェイプレスに、ディザスターは油を注がれた火の如く燃え上がる。

 

「お前はあれだけアンテンラに反旗を翻すのを渋っておいて、いざ翻して倒したと思ったら、なんだその余裕しゃくしゃく、いや、太々しい? 図々しい態度は? 元から人類の味方だったと言わんばかりじゃないか」

 

「状況に適した態度を心掛けているだけでス。今更、過去は変えられませんかラ」

 

「ディザスターもシェイプレスもその辺にしておけ。私達はソルグランド達の挨拶の場に邪魔をしている立場なのだ。騒がしくするのはよくない」

 

 ここで大人の意見を口にしたのがスタッバーである。

 元々小柄な体躯だったのがデフォルメ化した影響で、一層幼く見えるが、精神年齢で言えばディザスターとシェイプレスより確実に上だ。

 フォビドゥンもスタッバーに加勢して、因縁の魔法女神と魔法祖父に敵意のない瞳を向ける。

 

「スタッバーの言う通りよ。眷属化の影響であまりヒノカミヒメから離れられないとはいえ、私達は騒々しくしていい立場ではない。これからも長い付き合いになるのだから、弁えなければね?」

 

「ふん」

 

 これ以上、正論を重ねてもディザスターがへそを曲げるばかりだと、フォビドゥンとスタッバーには分かっていたから言葉攻めはここで終わりとなった。

 ヒノカミヒメは、相変わらず生意気なディザスターに溜息こそ零したが、別段、怒っている気配はない。

 アンテンラとの戦いでディザスターが自ら命を散らした時に抱いた悲しみは、紛れもない本物だった。ヒノカミヒメはそれくらい、魔物少女達に情を寄せている。

 

「あの時はきちんとお礼が言えるようになって、あなたも成長したと感心しましたけれど、早とちりだったかもしれませんね。とはいえフォビドゥンの言う通り、あなた達とはこれから共に星の海の彼方へと行く者同士。いちいち目くじらを立てるつもりはありませんよ」

 

 ヒノカミヒメはそれだけ言うと、ふっと力を抜いてソルグランドとその左肩に留まる夜羽音と居住まいを正して向き合う。

 

「ソルグランド様、夜羽音様、私は生まれ持った使命を新たに、地球を離れて遠く宇宙の彼方で、今もエゼキドの遺産に苦しめられている命の助けとなるべく、旅立ちましょう。魔法少女達はその重責から解放され、本来あるべき生活へと帰りました。その中にあって、真上大我様、あなたに地球をお任せするのは酷なことと承知の上でお頼みします。どうか私の去った後の地球をお願い申し上げます」

 

 ネイバーは活動を停止し、魔法少女達は卒業した。それでも地球には量産体制の確立したマジカルドールが残っているが、仮に特級の魔物が複数襲来することとなったら、撃退までに多くの被害が齎される。

 万が一の事態に備える為には、それらに対抗できる圧倒的な戦力が必要だった。そしてそれには、真上大我として地球に残るソルグランドこそうってつけの人材に他ならない。

 

「おう、全部、任せておいてくれ。俺がぽっくり逝くまでの間に、地球もばっちりエゼキド相手の防衛体制を整えられるだろう。俺が気を付けなきゃならんのは、急な病気と事故であっさり死んでしまうことだな。ま、縁起でもない話だが、あと二十年、いや、三十年は持たせるさ」

 

 ソルグランドは自分の死が自分だけのものではないと、悲嘆を感じさせないように笑いながら語り、ヒノカミヒメの肩に手をやって頭を上げさせた。

 それからヒノカミヒメがなにかを言う前に優しく抱きしめる。旅立つ愛娘かあるいは孫娘を送り出す為に。たくさんの愛情をこめて。

 

「こっちこそヒノカミヒメに重たい役目を任せてしまってすまない。地球を代表して宇宙の困っている人達を助けに行く、そりゃあ立派な役目だが、それでも寂しい思いや責任を負わせるのには変わりない。すまない」

 

 ヒノカミヒメは自分を包み込むぬくもりと優しさを一つも零さぬようにと、ソルグランドを抱きしめ返し、静かに瞼を閉じる。ソルグランドから与えられたこの愛情を憶えている限り、自分は無限の暗黒に旅立とうとも絶望に屈することはないと、信じられた。

 

「いいえ、子は巣立つもの。私はこの通り女神でございますから、少々、人間の子供より巣立つ時の規模が大きいものなのです。日本だけでなく地球を代表して、マジカルドールの皆様とカジン殿、そしてフォビドゥンらと共に、一足お先に宇宙の同胞へご挨拶に行くのです。寂しさがないと言えば嘘になりますが、誇らしさの方が大きゅうございます」

 

「ああ。君は強くて優しい子だ。地球代表としてなんの問題もない。そうでしょう、夜羽音さん」

 

 これまで二人のやり取りに黙って耳を傾けていた夜羽音が、ソルグランドと同じく優しい声音でヒノカミヒメに語り掛ける。

 本来、八百万の神々にとってソルグランドの誕生は想定外であり、元々、夜羽音はヒノカミヒメの補佐役として抜擢された八咫烏の一員だった。

 

「ええ。いささか巣立つのが早い気はしますが、ヒノカミヒメ、あなたはどこに出しても恥ずかしくない、我々の誇りと言える娘です。私とソルグランドさんが太鼓判を押しますとも。だから地球のことはなにも心配する必要はありません。あなたが皆さんと共に凱旋する日を心待ちにしておりますよ」

 

「そういうわけだからフォビドゥン、ディザスター、スタッバー、シェイプレス、ヒノカミヒメのこと、よろしく頼むぜ?」

 

 ソルグランドがウインクと共に託した願いを、フォビドゥンが代表して受け取った。デフォルメされた小さな体で胸を張り、なんの気負いもなく引き受ける姿は、かつての敵対関係を思えば感慨深いものがあった。

 

「ええ。私達はまだ地球で受け入れられるのは難しいでしょう。今もエゼキドの脅威にさらされている星々でも似たようなものでしょうけど、外からわざわざ助けにやってきたのなら、恩に来てくれる可能性も高いし。ヒノカミヒメのことは任されたわ」

 

「ああ。頼りにしている」

 

 そしてソルグランドは名残惜しさを噛み締めながら、抱きしめていたヒノカミヒメの体を離し、半身であり娘でもある最新の女神に笑いかけた。

 

「気を付けて行っておいで。拾ったものを食べるんじゃないぞ。外から帰ってきたら手洗いとうがいを忘れずにな。歯磨きもだ」

 

「もう、私はそこまで子供ではありません、ソルグランド様」

 

「はは、それはそうだが、まあ、旅立つ子供に言う事なんて、古今東西大して変わりはしないものさ。ヒノカミヒメ、君の無事を心から祈っている。……いってらっしゃい」

 

「はい。ソルグランド様、そして真上大我様、行ってまいります」

 

 そうして地球を旅立ったヒノカミヒメと救援部隊は、星の海へと漕ぎだし、多くの武勇伝を銀河に刻むこととなる。

 ヒノカミヒメ達の活躍によって、地球の存在は大きな意味と価値を持ち、この後、アンテンラ以外にも存在したエゼキドの遺産やそれとも異なる脅威に立ち向かうのに、大きな助けとなった。

 

 そして九十九歳の天寿を全うするまでの間、真上大我は再びソルグランドとして、戦場に立つことはなく、ひ孫と玄孫にも恵まれて穏やかな最期を迎える。

 真上大我が望んだとおりに地球の人々は、神々の作り出した女神へと転生した一人の祖父が、魔法少女ソルグランドの正体だったとついぞ知ることはなく、伝説として語り継がれてゆくのだった。




エゼキド……穢世忌土

これにて一旦、ソルグランドの物語は幕を閉ざします。思い付きから始まった物語に難とか区切りを付けられてほっとしています。
これまでお付き合いくださった皆様には心からの感謝を。
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