【長期更新停止】やはり俺の人間関係は中学時代からどこか可笑しい   作:Mr,嶺上開花

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やはり俺のプロットは切れ始めているらしい


5話どうやら小坪空は邪険に扱われている

 

 

 

火災未遂が発生した翌日、親が作り置きした朝ごはんを掻き込んだ俺はスクールバックを持って登校していた。

 

 

…それにしても暑い、暑すぎる。日本晴れの良い天気と言えば聞こえは良いが、その実ヒートアイランド現象が起きていて、俺の前はボヤけて見える。暑い。

 

 

 

学校に着いても今日は冷房は着いていないようで、教室は窓全開になっている。この時ばかりは窓際でよかっと思うばかりだ、暑いことには変わりないが風が少し気持ち良い。

…暑い。

 

そんな風に暑い暑い暑すぎるとそんなことばかりを考えていると、雪ノ下が教室に入って来た。名前は確か……雪乃…だったか?そう考えると、どちらも雪が名前に入っていてとても涼しそうだが、別にあいつに近寄っても気温も湿度も変化しないし、寧ろ蔑んだ視線でも送られて来て別の意味で俺の体内の気温が下がりそうだ。…って何訳の分からない事を考えているんだ俺。

 

 

その噂の雪ノ下は俺の方に遠くから軽く会釈をして来たので、一応俺も会釈をする。…何で、遠くから?クラス内で話すくらいは別に良いんじゃないだろうか?

 

ーーーーーまああいつにはあいつの事情があるのだろう。

 

最後にその結論に達した俺は、雪ノ下が自分の席に座るところから目線を外して外の景色を眺める。今日の天気は相変わらずの日本晴れで、何度瞬きしてもその事実から目を逸らす事は出来ない。ああ、曇れば良いのに。

そんな事を考えつつ、俺は冷たい水の入った水筒の半分を一気飲みして喉を潤した。

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わっても今日は数学部はない…らしい。昨日入らされたばかりだが、確か俺の記憶だとそうだったはずだ。今日は火曜日、部活がある日は月水土、ほらこの記憶力!この性能でお値段はなんと今なら5万円!

…あ、木曜もあったような……。

 

 

「あの、比企谷君……」

 

「んっ…雪ノ下?」

 

 

突然話しかけられた相手は何と雪ノ下だった、朝に遠くから会釈されたのは話したくなかったからでは無いのかよ。

 

 

「今日これから部室でミーティングがあるから来てくれないかしら」

 

「ミーティング?」

 

「ええ、我が部は毎月1日を定例ミーティングをしているの。そこでその月の主な活動を決めるわ」

 

 

主な活動って…数学を勉強するだけじゃないか?別にそれ以外の事はないだろ普通。

 

 

「でも勉強するだけじゃないのか?」

 

 

「違うわ。毎月最低一回は部内の関係を良くする為に親睦会を開くの」

 

 

「……何か少し大袈裟すぎる表現だな、親睦会なんて堅苦しい言葉を使う必要あるのか?」

 

 

「まあ…そうね、簡単に表すならお遊戯会、と言ったところかしら。ただ名目上少し難しい言葉を用いているに過ぎないわ」

 

 

…はあ、さいですか……。

 

…まあ別に良いか。ただ遊ぶだけだろうし。

 

 

「あ、言い忘れていたわ。今年の親睦会は長野に合宿で行くから」

 

 

……………はっ?

 

 

「合宿って校内でするもんじゃないのか普通?」

 

何故親睦会に長野?最早それは旅行じゃないのか?

 

「そう…ね。ただこれは浅浦先生の決定だから覆ることはないと思うし、何より私には口出し出来ないわ」

 

「部長の権限とか普通はあるんじゃないのか?」

 

「いいえ、言って無かったのだけれどこの部はまだ設立して1年と少し程度なの。それで私が最初に入ったから部長になっただけであって特に何かしらの目立った権利とかは有してないの」

 

「それはまた面倒な……」

 

 

つまり雪ノ下は部長ではあるがそれは肩書きのみで、予算などの使用権は全て浅浦先生の支配下にあると。

……それってありなのか?

 

 

「そろそろ行きましょう、他の人もそろそろ集まってる時間だわ」

 

「…おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、これよりミーティングを始めるわ」

 

 

その後部室に来た俺たちは既に集まっていた2人を交え少しのそれとない雑談をした後、雪ノ下が本題を切り出していた。

 

 

「今回の議題、と言うより連絡事項の方が正しいかしら」

 

「それってつまり、もう決定して変更不可能ってことだよねー」

 

 

谷津がそう言うと雪ノ下はええ、と相槌を打って話を進める。…小坪だけは理解してなさそうな顔をしているが、いつもの事なのか、全く気にも留めず雪ノ下は話を続ける。無視するらしい。やだ、クールビューティーってこの事ですか。ここでのクールの意味はかっこいいじゃなくて冷たいって意味だが。

 

 

「今月は夏休みもあると言うのもあって、合宿を行うわ。日にちは三週間後の今日から三日間」

 

「ええ⁉︎三日間って事は1泊3日⁉︎」

 

「それ言うなら2泊3日ねー」

 

 

1泊3日とかお前1日野宿する気か?

…とかそんなツッコミをしようとしたが、谷津に先にツッコミを入れられてしまった。流石リア充っぽい髪色(黄髪)していることだけあって人の言葉に対しての反応早い、俺には一生無理な芸当だ。

 

そんな多少の悲観をしていると雪ノ下は軽く咳払いをして続きを説明し始めた。

 

 

「場所は長野県の標高1600mくらい…だったかしら?詳しくは覚えていないのだけれど、そこにあるホテルに宿泊するわ。移動は部費で賄うことになっているから宿泊費用のみで計三万円を再来週の部活までに持って来てくれれば良いわ」

 

「おおっ!何か分からないけど凄そうだね!」

 

「にしてもアレだな、よくそんな部費あるよな」

 

 

俺は小坪の発言を無視して思ったことを口にした。何しろ長野までの移動費はバカにならないくらい高いはずだ。ここらへん(千葉)からだと東京までに千円以上、新幹線で1万以上は確実だろう。さらにそこからバスとか使うんなら余計にかかると思われる。その往復の合計金額を4万程度と仮定すると四人分で16万円、普通の中学校の部活で使う部費のレベルじゃない。

 

 

「それはさっきも言ったけれど、私には分からないわ。それとも貴方のその耳はお飾りなのかしら」

 

「俺が悪かったからその威圧感を引っ込めてくれ、本当に」

 

 

その発言が気に入らなかったのか、雪ノ下はいつだかを思い出させるようなプレッシャーを俺に放っていた。だから怖いって、後恐い。

 

 

「ねえねえ、因みにここからホテルまでどの位時間かかるのー?取り敢えず知っときたいんだけどー」

 

谷津のその質問を受けて雪ノ下は自分のスカートのポケットからメモ帳を切り取ったような紙切れを取り出した。多分浅浦先生からでも受け取ったのだろう。

 

 

「…浅浦先生によると4時間らしわ。それまでは電車やバスを乗り継いでの長時間移動の予定ね」

 

 

そんな俺のどうでも良い予想は何故か当たり、少しモチベが上がる。それが何のモチベかと言われたらまあ、今日と言うこの日の残り時間、つまりは約7・8時間程度を有意義に過ごすモチベである。

無いか?無いな。

 

 

そんな感じの意味不明の思考回路を回していると、小坪が元気良くハイハイ!と手を上げて来た。…正直あざといが、まあそれがこいつのキャラなんだろうと思い直す。

 

「ねえねえ!お菓子は何円分⁉︎」

「…ここは小学校では無いわ、小坪さん」

「ふぇ?」

 

 

雪ノ下は暗にお菓子の制限がないと言うことを軽く皮肉を含めて言ったが当然天然キャラには全く通じず、頭を軽く押さえていた。

…またまたこれは2あざといポイント、このポイントは1ポイントにつき−500八幡ポイントに変えれるぞ‼︎

 

 

「雪乃が言ってる事を要約すると、何個でも買ってもいいって事だよー」

 

「そうなの⁉︎いやぁー、美涼ありがと!分からなかった事が分かるのって気持ち良いね!」

 

 

もうお前どっかのリア充グループ入って来いよ。俺の見立てだと良いとこまで戦えるぞ。

 

そんな言葉を言いそうになり、少しばかり自制する。そんな事言ったら完全に誤解されるだろう、それも確実に悪い方で。まじ危ない、もう今日の一句を【あざといは 危険の合図 気を付けろ】みたいな5・7・5の俳句にして良いんでは無いか?よしそうしよう。

 

 

「雪乃ゴメンね、私ちょっとバカっぽいから…」

 

「え…ええ」

 

流石の雪ノ下と言ってもやはりこのようなキャラに戸惑うのだろう。何しろちょっとしたことで自虐しつつ謝ってくるなんてやりにくいったらありゃしない。俺だったら即刻【お、俺トイレい行ってくる】と、どもりつつ緊急撤退と見せかけて家へ帰るまでである。

 

 

「他には無いかしら?」

 

 

雪ノ下のその発言で俺含まず他のメンバーは悩む表情を作る。さながらクイズ大会のようだ。

つか別に南の変哲もない質疑応答なのに何でそんな悩ましげな表情なのか俺には分からない。別に質問一個につき100円貰えるとか抽選1000名様に図書カードが当たるとかじゃないよな。

 

………そう…だよな?

 

 

「そういや待ち合わせ場所とか時間とかはどうなんだ?」

 

 

あんな自分でも下らないと思える事を考えていたとしても、別の脳でしっかり質問に関して考えていたらしい。

…もしかして俺のIQ、高すぎ?

 

 

「そうね、そちらも貴方には伝えておかなければいけないことだったわね。うっかり忘れてたわ」

 

 

…何で俺にしぼって伝えておかなければいけないとか言ってるんだよ。まさか俺ハブられる予定だったのか?本当にうっかり忘れてたのか?そこんとこちょっと大丈夫ですか雪ノ下さん。

 

 

……ぼっち故か、このような恐らくは無意味と思われる勘ぐりをしてしまうのはもはや習性としか言いようがないだろう。

…本当に伝えなかったのわざとじゃないよな?やば、また不安が込め上げて来たんだけど……。

 

そんな俺の不安を全く取り除くことなく、雪ノ下は淡々と告げる

 

「そうね、集合はこの中学校で午前6時。これで良いかしら?比企谷君?」

「おい待て何で名指しで言ったんだよ。本当に俺ハブるつもりだったのかよ」

「比企谷どうしたの〜?…何か難しいことになってて分からないから誰か説明して!」

「空は黙ってて」

 

 

やはり小坪がスルーされたり邪険に扱われるのは日常茶飯事らしい。何か可哀想だ………

 

……って違う、そうじゃなかった。

 

 

「なぜ私が比企やる気ゼロ君をハブる必要があるのかしら?まずはそこから説明してくれないと貴方の考えは成立しないわ」

 

「その前にいつ俺がやる気ゼロになった?俺はやる気はない方だがやる気ゼロとまでは行かないぞ」

 

「……そんな事を言っている時点で駄目なことに気付けないのかしらこの比企こもりは」

 

「おいそれレベルアップしたのか?やる気ゼロになって部屋でニートに就職したから上位職にジョブチェンジしたのか?つかそれ昨日も聞いたぞ」

 

レパートリーが少なくなっているのだろうか?まあ多くても困るが。

 

『比企……比企…比企止まり?だけれど少しイントネーションが悪いわね。他には…比企………』

 

「それ聞こえてるから、小声で言ってるつもりだろうが俺にばっちり聞こえてるから。つか今更だが俺の名前を弄るな」

 

 

…このままではマズイ、某化け物的な物語の主人公に俺はなってしまう。まだ俺は吸血鬼なんかに成りたくない。

てかそのせいか雪ノ下がだんだん何ヶ原さんに見えて来たんだけど、これどうすれば治るの?昭和のテレビみたく殴れば治るの?

 

 

これがもし雪ノ下が文房具を体中に仕込んでたらすぐ退避、と心に刻んだ瞬間だった。

……これ伏線じゃないよな?超回収したくないんだけど……。

 

 

 

 

 

「ねえねえ!私も質問あるんだけどいい⁉︎」

 

雪ノ下に対する評価を改めていると突然、横槍ならぬ横ウザが入ってきた。あ、横ウザは横ウザいの略な、念のため言っとくけど。

 

 

「……何かしら小坪さん?」

 

これには雪ノ下も驚き…というか少々ご立腹だ。まあ確かにこいつ(小坪)の話に限って真面目な話はありえなそうだし、自分が考えてる時に話しかけられた少しはイラッとはくるけど。…考えてる内容はアレだが。

それに表情には出てないからバレないだろう……まあ俺には分かるが。なぜなら既に数回浴びている威圧感がダダ漏れてるから。

…本当にこいつ女子中学生なのか?俺、こいつが転生してて実は中身はDI◯様でしたーとか言われても納得できる自信があるぞ?

 

 

「あのねあのねー!お土産とかどこで買うのか分かる⁉︎」

 

予想は出来てたが、本当にくだらない質問だった。んなのあったら買えば良いだろ、そこまで綿密に日程決めなくとも良いんだよ。

 

「ホテルに売ってるわ」

 

それに対し雪ノ下選手、即答でカウンターしました!おおっと小坪選手はあまり早いカウンターに動揺しております!

 

…ボクシングの試合風に話してみたが、正直これは無いな。

 

 

 

他の人面子も話すことがなくなったので少々の沈黙、俺にとっては話しやすくなったので取り敢えずこんな話題を俺から提供させてもらおうか。

 

 

 

 

「……今日はもう、帰らないか?」

 

 

話題と言うより提案に近いが。

 

 

 


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