女性がその知らせを聞いた時、信じられないと言う感想と体から熱が奪われる感覚に支配された。
「うそ……でしょ……」
スマホを思わず落とし、膝から崩れ落ちていた。三上悟が通り魔に襲われて刺されて死んだと聞いて、受け止めきれないと言う想いが心を支配し、思考を停止させた。
女性の名前は四宮 凛。三上悟とは幼稚園から中学まで一緒で母方の実家では隣に住んでいた言わいる幼馴染だった。しかし、父の転勤が決まり中学三年の秋に引越した。それを契機に遠くに行くことになり、文通も1年していたが、互いに受験やらで忙しくなったり、その学校での友達付き合い等で付き合いはそこまでになっていた。互いに互いがそれぞれの道を歩いて、独身のままこの歳になるまで。
『……明後日お通夜があるから、悟君の最後の顔見てあげてね』
電話の主は実家の母親。突然の母から告げられた訃報に凛は
「……分かった」
ただそう言うしか無かった。
実家に一度戻り、葬式に向かう頃には雪が降り注ぎ、夜景と相まってある種ロマンチックとも言える光景になっていた。しかし、纏う服装は喪服。そして、葬式に参列し、ご焼香して自分の席に戻る。悲しむ遺族、泣いている仕事の同僚と思う人物達、そんな中、凛はまだ、悟が亡くなったことを何処か受け入れることができていなかった。
(まだ、信じられない……。悟君が死んだなんて……。私……後悔……してるな……?)
凛の初恋は三上悟であり、今ですら想っていた。だが、流石に向こうも結婚とかしてるだろうしと思い、今まで声をかけていなかった。いや、彼女が強ければ、高校すら一人暮らしを選んで同じ道を歩むことすら出来た。仕方ないと言って諦めた自分が情けなく感じる。
(こんな思いをするなら……自分を曲げずに、親に言えば良かったんだ!幾らでも可能性や方法はあったろうに……!)
そう思っている間に葬式が終わる。見送りをして、火葬場に着いていくかで悩んでいると
「ねぇ?貴女凛ちゃんよね?中学まで悟と遊んでくれた幼馴染の」
「そうで……おばさん!?」
「そうよ、今日は来てくれてありがとうね……。少し、話いいかな?」
悟の母がそういうので、凛は応じて場所を変えて話をする。
「あの子ね、高校卒業の間際に時にうっかり言ったのよ」
「何をですか?」
悟の母親は凛の方を向きその言葉を言う。
「『俺、後悔している。凛が引っ越す時何か言いたそうだったのに聞けなかったこと、俺の想いを伝えることが出来なかったこと。同じ高校に受験すりゃ良かったなぁ』って。あの子の初恋は貴女だったんだよ。全く、後悔するくらいなら言えば良かったのにねぇ。その後も彼女を作ろうとしたけど、上手くいかなったしね」
それを聞き、凛は静かに涙を零していた。悟の知らない言葉を聞き、自分も後悔していたが、悟も後悔していたと。火葬場に到着し最後に見送る。最後に眠っている悟の顔を見て、再度涙が零れそうになる。
(あぁ……死んだんだ……本当に)
そこで、ようやく悟の死を受け入れることが出来き、思い出が溢れてくる。一緒ゲームをした日々や映画を見に行ったり、楽しかった記憶が、
そんな思い出に馳せ帰り道を歩く。雪が降り積もった町を歩き実家に向かう凛。白い息を吐き、涙で濡れた顔を冷気が駆け抜ける。歩道橋の上で息を吐き
「寒いなぁ」
当たり前のことを呟く。雪降る天を見上げて少し黄昏れる。そんな時、
「ひったくりよぉ!」
その言葉で振り返ると、黒い服にヘルメットを被った男らしき人物が女性の鞄を奪い走ってきていた。
(止めないと!)
凛は迫ってくる人物に対してカバンで殴りつける。
「ぬあ!?」
その人物はそのまま転倒する。ヘルメットを被っているため頭部を守られているので転倒しても安心だと胸を撫で下ろし
「人が悲しんでいたのに、何を……」
その人物から鞄を取り上げようと腰を下ろしたした瞬間
ドスッ!
腹部に鋭い痛みが走る。恐る恐る傷を見ると、ナイフが刺さっていた。
「え……?は?」
白い雪に赤い液体が落ちる。刺されたのだと理解するに時間はそう掛からなかった。
「てめぇが邪魔しなければ!」
口の中が鉄の味に支配される。
視界の奥からは警察が走ってきていた。どうやら巡回中の警察がちょうど通ったという所だろうが、凛が次にとる行動は、逃げようとする目の前の男の逃走を阻止だ。
「ごふっ……にが……さない!」
必死に掴み逃がさないと言う。
「邪魔だ!どけぇ!」
その人物は力いっぱい凛を蹴り飛ばす。凛の体は宙に浮く。すぐさま床の感触が来ないことに落下地点を見ようと後ろを見ると階段が見えた。その直後に来るのは転がる感触と激痛のみ。遠くで警察に取り押さえられる男の声が凛には聞こえるが、凛はもうそんな事を考える余裕が無かった。
(……これが……私の運命なのかなぁ。こうやって悟のお通夜に行くのも、私が今死にそうなのも全て運命……とでも言うのかな?そんな運命私は認めたくない……)
そんな風に考えていると
『確認しました。ユニークスキル
そんな声が聞こえた。凛はそんな時に悟とのゲームを思い出していた。
(そういえば、私、竜が好きだったなぁ……よく、ゲームでも……ドラゴン系のモンスターとか使ってスキルとか積んで……無尽蔵のMPで魔法連打とかしたなぁ……だから、彼氏出来なかったんだけど……)
『確認しました。無尽蔵と竜ということで、検索します……成功しました。ユニークスキル
(さっきから……何?この声……寒いなぁ。そりゃ雪降ってるもんね、夏の暑いのも嫌いだけど……)
『スキル自然影響耐性を獲得しました』
赤く染る白い道で雪を浴びながら息を漏らす。なかなかにしぶといなと内心吐き捨てる。
(後悔は……ひとり暮らしをしてでも、同じ高校に受験するくらい頑張ればよかったなぁ……。親の仕事だからと言って、挑む事もせず…。一緒にいたいと思うなら……その意思を貫けばよかったんだ……)
次があるならと雪降る空を睨みつける。
『確認しました、ユニークスキル
(さっきから……なんだろう?この声……バカにしてるの……?まぁ、私には相応しいのかな?)
人が集まってくる中、四宮 凛は静かに目を閉じ、人生に幕を下ろした。
はずだった……
四宮 凛だった人物は水滴が顔に落ちてくる感触で目を覚ます。
「ここは……?どう見ても病院じゃないわね……うん?声が反響するし、声がなんか違うし、水も落ちてきたし、洞窟?私……確か、刺されて、蹴っ飛ばされて階段から落ちて……どう考えても助からないはずなんだけど」
ゆっくりと起き上がり周りを確かめる。しかし、明かりのない洞窟ではそれほど視界は効かない。しかもそれだけじゃない。
「心無しか、少し視点が低い?縮んでる?そんな事ある?某小学生の探偵じゃあるまいし……」
辺りを見渡しながら手探りで歩き始める。かなりへっぴり腰ではあるが、前に進んではいる。
「不便がすぎる……。何とかならないのかな……そう言えば、あの時の声何だったんだろう……」
考えると同時に頭に浮かぶ。自分がこの世界でどう言った力を持つのかを
【
以下の複合スキル
『超速再生』傷の身体のダメージを受けた部分を修復するスキル。
『魔素超速回復』 消費した魔素を回復させるスキル。
『竜之炉心』心臓より高密度の魔素が生成され、魔素切れを起こしにくくしているスキル。
『魔素高速収束』大気にある魔素を一箇所に集めるスキル。
『状態異常超速回復』麻痺や毒などの状態異常から立ち直るスキル。
【
以下の複合スキル
『未来視』数秒先から数日先の未来を見ることが可能。しかし、任意に視ることができるのは数秒先の未来までである。
『過去視』 触れた対象の過去の事象を見ることが出来る。
『憑依経験』触れた対象の過去を閲覧し、自身の経験として、技術や記憶の継承を行う。
『選定運命』『未来視』で見た未来を枝のように観測し、最良の未来を選択することが可能となるスキル。
【
以下の複合スキル
『耐性無視』対象の耐性・耐性系のスキルの効果を無視して攻撃することが可能。
『精神攻撃耐性』精神攻撃・幻覚・幻聴に対して耐性を得ている。
『高速習得』 見た、教わった魔法・技術を瞬時に自分のモノとして会得するスキル。
『解析鑑定』 対象を構成する物質、能力、魔素の量などを判定する。
「なにこれ、すごい凝縮されてる……。でも、この状況を打開する術は……無いじゃん」
大きくため息をついて歩き進める。へっぴり腰で。
「足滑らせて転けてまた死にましたとなっても、ねぇ……嫌だし」
恐る恐る歩いている時、案の定
「うわっ!?」
足を滑らせて落ちる。その時滑る痛みは多少あったが、地面に到達した時には柔らかくてひんやりしたモノの上に落ちる。
「冷た!?水溜まり?いや、何だろうこの柔らかい……球体?」
立ち上がり、それを見る。暗がりで目が慣れそれを見ると、そこに居たのはスライムだった。
「……スライム?」
スライムはぽよぽよ跳ねている。
「ええと、踏んじゃってごめんね?あと、助けてくれてありがとう」
そうお礼を言うと嬉しいのか、さらに跳ねていた。
「ねぇ、貴方はも独り?もしそうなら、一緒に行かない?悪いスライムじゃ無さそうだし。ほら、ぷるぷるぼく悪いスライムじゃないよってやつに見えるし」
そういった時、スライムの動きが止まる。
「あっ、意味わかんないか。ごめんごめん、少し思い出しててね。知り合いの葬式に出て、私も死んで今ここにいるから、話したい気分だったんだよ。とりあえず、ここを出るまでかもしれないけど、よろしくね」
そういいスライムを撫でる。そして、暫く歩く。スライムと共に。
「それでさ、お通夜の帰りに刺されてね、そして追撃に蹴り飛ばされて階段から落とされたんだよ。なかなかでしょ?」
自分の死に様を何ともないように話すと、隣であるくスライムは震えながら動いているように見える。
「どうしたのさ?上手くわかんないけど、怒ってる?」
そんな事を聞くと頷く。首を傾げて
「スライムでも感じるんだ?ああ、でも、ゲームのスライムも言葉話してたしそんなもんかな」
一人で納得する。しばらく歩き、水辺に来る
「喉乾いたし、少し水を飲も」
そう言い水面を見ると
「え?な、何これ!これが今の私!?」
一対の大きめの翼にもう一対の小さな翼があり、足は白い鱗に覆われ、人の足とは思えないものが写り、手は鋭い短い爪がある。頭部には角らしき黒と紫の突起物が二本ある。髪は銀髪で、姿は少女のそれだった。
「竜人に……なったの?しかも、翼って飛べるのかな?けど、竜翼というよりまるで……天使とかの翼にも見えないことはないかな……」
背中を見たり、翼を意識的に動かそうとしてみたり、色々していると、
ボチャン!!!
物体が水に落ちる音がした。
「え!?まさかあのスライム落ちた!?」
それを追うように水に飛び込む。
(ど、どこ!?どこに落ちたの!?というか、翼邪魔!)
翼を上手く動かせず、翼の分で浮き上がってしまう身体に悪戦苦闘していると、異様に膨らんだスライムに触れることが出来た。
(よし、なんかでかいけど掴ん……!?)
その次の瞬間凄まじい勢いでスライムが水を吐き出し水流を生み出す。スライムの後ろに居たため、その衝撃を腹部で受け止め、そのまま押されて凄まじい勢いで水中を進み、水の外に投げ出される。
「グホッ!?ゲホッゲホ!!!痛った……!死ぬかと思った!」
スライムが心配したのか近くに来る。それを見て
「ぶ、無事なら…よかった…!」
お腹を抑えながらゆっくり立つ。それと同時に頭に声が響く
(聞こえるか?小さき者達よ)
スライムと凛はキョロキョロする。
(おい!聞こえているだろう?返事をするのが良い!)
声の主はキョロキョロしている二人に苛立ったのかやや強い口調で言うそんな時、
(聞こえているよ!うっさいわ!ハゲ!)
第三者の声が頭で聞こえた。それを聞いた謎の声が
(ハゲっ……ほうほう、死にたいらしいな?)
謎の声と圧を強める。凛も内心恐怖で震える。だが、それと同時に疑問が生まれ
(これ、考えていることがわかる感じなのかな?)
と内心で呟くように考える。
(いや、これは念話だ。貴様らは目が見えんのか?)
凛の疑問に謎の声が答えた。
(暗くて分からないです……)
(自分 目も見えない状態でして……貴方は?)
(む、我が名は…いや、姿が見えない事には始まらんな。よし、見えるように手助けしてやろう)
(え!?)
(本当ですか!?)
凛とスライムは驚く。
(ただし!我の姿を見ても怯えるなよ?では、説明する。『魔力感知』というスキルがある、周囲の魔素を感知するものだ。体外の魔素の動きを感じるだけで獲得出来る。これで視る、聴くことも可能だ)
そう言われて凛は試してみる。魔素が何なのかは分からないが周囲の気配を感じるように少し集中すると
(なんか漂っている感じがする。この感覚を広げるのかな?)
そんなことを考えていると頭に浮かぶ。
『魔力感知』獲得
その頭の中に浮かんだ文言を見て凛は早速魔力感知を発動させる。
すると同時に、辺りの景色が一変する。暗がりにから光が灯ったように鮮明にみえ、鉱石や草の形、洞窟の道も見えるようになった。
(すごい!こんなにはっきり見えるなんて!)
(視えるっ!視えるぞぉぉ!)
スライムは喜び、凛も嬉しそうに周りを見る。
『出来たようだな、では改めて名乗ろうか、我が名は暴風竜ヴェルドラ!!!この世に4体のみ存在する竜種が一体である!!クァ―――ハハハハ!!!』
その時、スライムと凛の心は一致していた
『ドラゴンじゃん!!』
『竜じゃねーか!!』
目の前にドラゴンがいて一人と一匹は驚いたのは見た通りであった。
スキルはかなりチートだと思いますが……そうでもしないと生き残れるかだよね