ガチ恋勢の恋模様〜傍観者的に大変そうだなぁって思いましたまる〜 作:色月 茉夜
ガチまる24話、投稿します。
ぱちっと目を開けるとカーテンから漏れる日差しは随分と傾いていた。スマホで時間を確認すると現在4時。1時間ぐらい寝たのか。
『その時にコハク隊長がさ』
「マジで?隊長やっぱすごいよなぁ」
背後からは楽しそうな話し声が聞こえる。寝返りを打つと未だに2人は話していた。すごいじゃん、最初からこんなに話せるとは思わなかったよ。
2人の話題はコハク隊長という配信者だった。僕やバヤより20歳年上のシンガーソングライターで、家族や友情といったあったかい歌を歌う人だ。僕自身は配信に行ったことがなくバヤから聞いた程度の情報しか知らないが、バヤにとってはEleven Studioを始めるきっかけになった師匠的な人で尊敬しているらしい。
楽しく話している2人を邪魔するのは気が引けるが、実はこの後予定がある。僕はわざと大きくあくびをして今起きたフリをする。
『あっ、まちゅ起きた』
「おはよー、ツマさん」
「おはよーさん。随分打ち解けたみたいだね」
からかうように僕がそう言うと顔を見合わせ笑う2人。ホントにいい雰囲気だ。
「時間は4時過ぎか。舞香、どうしよっか」
『‥あっ!忘れてた。支度してくるっ!』
慌てて着替えようとしてカメラがついたままなのに気付きカメラをOFFにする舞香。チラッと映ったピンクの布とロリっぽい見た目に反し存外大きい双丘は脳内メモリに保存して、僕はバヤに説明する。
「舞香の家から車で10分ぐらいのところでイルミネーションやってるらしいんだけど、バヤに見せたいんだって」
「この寒いのにわざわざか?なんか悪いな」
あなたに好きになってもらうためだよ、という言葉は飲み込む。僕がバラしてどうする。
「まあ舞香の好意に甘えよー」
僕はあくまで傍観者。この恋を見守るただの脇役。そんなことを考えているとカメラがONになる。さっきまでの服装に白いニット帽と同じ色のコートを着た舞香が映る。
『今から向かうから電話一旦切るね。着いたらまた掛けるよ』
「はいよー。あ、舞香その服めっちゃ似合ってるよ可愛い」
『‥ありがと』
少しだけ頬を赤らめた舞香を最後に、プツッと電話が切れる。今のうちにと充電器を取り出していると、バヤが何とも言えない顔で僕を見ていた。
「なに?バヤ」
「いや、お前ってすごいよな」
「へ?何が?」
「そうやってサラッと褒めることだよ。俺にできん」
そう言われて、自分がさっき舞香の服を褒めたことを思い出す。うん、完全に無意識だったね。
「別に思ったことそのまま言えばいいんじゃない?」
「無理無理、そんなの緊張して言えねぇよ。素直に言えるツマさんすごいよ」
バヤはそう言うが、僕の中では全く逆だった。素直に言えない、緊張してしまうバヤの貴重な褒めだから舞香は嬉しいんだと思う。いや、バヤは何も言ってないから実際のところ分かんないんだけどね。全部全部僕の妄想だ。
妄想ついでにひとつ考える。例えば、バヤが僕みたいにサラッと褒めたら。
"服めっちゃ似合ってるな。可愛い"
‥うん、真っ赤になる舞香しか想像ができん。ずっちーなぁ、この人。
「ん?なんだ、ツマさん」
「べっつにー。バヤの顔面、爆発したらいいのにね」
「急になんだっ!?」
いきなりの僕の暴言に困惑するバヤ。結局、結局だ。
何を言われるか、より、誰に言われるかが大事なのである。それだけだ、畜生め。