「星野アイ。私の好きなアイドルです」 Alternative 作:アンチメシア
「ったく、ライブのクライマックスを盛り上げたのを喜ぶべきか。それとも、滅多に取れない全国生中継の機会を台無しにしてくれたと怒るべきか」
短い茶髪とサングラスをかけたおよそ30中頃の男性、この苺プロダクション社長である斎藤苺はデスクでそう愚痴りながら、複雑な面持ちで液晶TVを見ている。
早朝のテレビのニュースで昨夜のステージでライブがクライマックスに差し掛かろうとしているのと同時に発生した、異常現象である青い雪夜の出来事だ。
その時、世界中で電波障害が起きて全国で放送されていたMステーションが中断され、全チャンネルがこの青い雪夜の情報番組に切り替わってしまい、年に1回か2回しか得ることの出来ない、B小町の名を日本全国に知らしめる大きなチャンスの一つが不意にされてしまった。
その一方で、ライブの外側でそんなことが起きていたとは知る由の無かったステージで歌い踊るB小町と観客たちは、その青い雪夜を演出と勘違いして、かつてない大盛り上がりを見せたのだ。
当時ステージの裏方でそれを見ていた苺は、直後はこんな演出は聞いていないと首を傾げたもののその幻想的な光景が齎す、ステージの見栄えはこれまでやってきたどのライブとも比較にならない景色であったことから、その考えは一旦脳内の脇に置き、こちらを歌いながら横目で見ているメンバーらに気付いた斎藤はすかさずサムズアップを送る形で大丈夫だ、そのままやれ!と支持を送ったところ、演出と判断したメンバーを客席のファン達に向き直り、この偶然の現象を最大限に利用した極上のパフォーマンスを披露し、大サビの締め、客席を指さして「愛してる」と叫ぶと共にクライマックスを迎えると同時に、今までのライブの中で最大級の歓声が上がった。
その光景になんかわからんが、これ以上にない最高の演出になった明日の話題が楽しみと苺が興奮から我を忘れそうなほどに気持ちが盛り上がっていた所に、スタッフたちの騒々しい声に現実に引き戻され、耳を傾けると「電波障害だ!今の青い光のせいで今日の放送が!!」と最初は何を言っているのか分からなかった───いや今にして思えばその時感じた不吉な予感から頭が分かるのを拒否していたのかもしれない───苺だが、次第に頭が現実の状況を取り込んでいく内に何が起きてしまったのかを否応なく理解させられてしまった苺は開いた口が塞がらなくなってしまった。
その後、その日のMステーションの放送は完全に中断し、結果まだ知る人ぞ知るレベルの知名度でしかないB小町の存在を全国に認知させる計画は中途半端な形で頓挫してしまった。
その夜は、社員やB小町のメンバーとも別れ、行きつけの居酒屋で一人ヤケ酒を煽りながら、携帯を通してネットの反応の口コミに目が留まる。
あの偶然の演出とそれを活かしたパフォーマンスに感動した観客たちが、「青夜の奇跡」と称して、B小町の存在を巨大掲示板を中心にネットの至る所で書き込み宣伝してくれていたのだ。
あのライブが決して無駄に終わらなかったことを知った苺は、完全にではないが元気を取り戻し、酒の勘定を払って帰宅し…そして現在に至る。
「まあ、後ろの順番にいたせいでそのまま歌う機会すら得られず、帰らざるを得なくなった連中と比べれば、俺たちはずっとマシか。今回の事は本当に気の毒だったからな」
そう思うと、これ以上愚痴ばかり零していては罰が当たりそうだと判断し、未来に目を向けるべく頭を切り替えることにした。
(とりあえず、当初の思惑通りにはいかなかったが、大きな水たまりに波紋は生じさせることはできたな。この影響が消えないうちにミニライブを…)
そこに。
「“おはよっ☆佐藤”社長~☆」
「だから、俺は“斎藤”だ。クソアイドル」
挨拶の声がする方に目を向けた先には、すらっと細い手足。長い黒髪。自身に溢れた瞳。
12歳には見えない程に大人びたスタイル、それでいて年相応の若々しさを持つ並外れた美少女。
B小町の不動のセンター、アイこと星野アイ。
人の顔と名前を覚えられないのには、もう慣れたがせめて社長の自分の名前ぐらいは憶えて欲しいなと苦笑する。
苺が大手の事務所でプロデューサーとして20代の歳の間を下積みに努めた末に独立して、自分の立ち上げた小さな事務所で初めて組んだ中学生モデルたちのグループが現在のB小町だ。
その時に4人目としてスカウトしたのが、目の前にいる星野アイである。
「昨日のアレ演出じゃなかったんだね。ホントに凄い奇麗だったよね、あの青い夜。私も思わず高揚して、そのまま盛り上がっちゃったもの。まるで、空が星の海みたいで」
「ああ、あとは放送さえ止まってなきゃ大成功だったんだがなぁ」
「あはは☆そこはご愁傷様」
笑いながら、手を合わせてくるが茶化しているのか、本気でやっているのか判断しがたい。
しかし、悪気はないのは分かるくらいは既に付き合いも深くなってはきているし、こうしたアイの仕草を見ていると先ほどまでのモヤモヤしていたのも馬鹿馬鹿しくなって気も晴れてくる。
「まあ、あのライブの内容は口コミで徐々に広がっているし、得るものはあったからいいさ。ニノたちが待ってるぞ。トレーナーもそろそろ来る頃だ。早く行け」
「おっといけないいけない。それじゃ、またあとでね佐藤社長☆」
「斎藤だっての!」
訂正を促すが、既にアイは背を向け、仲間たちの待つレッスンルームのある事務所に隣接する小劇場に向かっていった。
「門限は6時な。何かあって遅れそうな時は連絡を入れろよ」
「ありがとうございます。院長」
さりなを車椅子ごとレンタルした福祉車両に乗せた吾郎は、院長に見送られて運転席へと乗り込んで車両を走らせる。
交通網が首都圏のように発達していない地方では、死活問題に繋がるので都内の国立医大に通っていた間に帰郷した際に困ることのないように普通自動車だけでなく、余裕があったのと故郷の祖父母に少しくらい見栄を張りたかったことから半ば勢いで大型免許まで取ってしまったわけだが、こんな形で役立つとは。
「じゃあ、さりなちゃん行きたいところある?あまり遠くへは行けないから街中周辺くらいまでになるけど……」
「それじゃ、せんせの家は?それならここからそこまで遠くないよね?」
「いいけど、古い一軒家で大したことないよ」
「いいの、せんせが生まれ育った家を私は見たいの。それに、街中だと私が悪目立ちしちゃって、あまり街の人にも気を使われたくないし、そうなるとこっちも周りの人に気を使っちゃってお互い疲れちゃいそうだしさ。だから、せんせと二人っきりでせんせの思い出の場所を巡りたいの。そして、せんせのことを私はもっと知りたい」
「さりなちゃん……」
改めて、彼女は狭い世界を生きることを余儀なくされてきたのだなと思い知る。両親を始め、生きてるだけで周りの足を引っ張ってしまう後ろめたさや同じ目線に立てる友人と巡り合う機会に恵まれず、限られた時間を健気に生きる少女の姿に吾郎は胸を痛める。
ならば、自分の出来ることは───
「そういうことなら、謹んでお引き受けしますよお姫様。だったら、家で過ごした後は俺に付き合ってくれてもいいかな?」
「お、お姫───せんせがそんなことを言えるなんて、今日か明日にはこの間みたいな青い雪夜にでもなるのかな?」
「そいつは悪かったね。ロマンチストじゃないもんで……っとさておき、墓参りに行こうと思ってさ」
「お墓参り?そういえば、せんせの家族の話って聞いたことなかったけど……」
「俺は爺ちゃんと婆ちゃんに育てられてね。母さんは俺を産むと同時に死んじゃってるから。そして、爺ちゃんが一昨年、婆ちゃんも去年の今ぐらいの時期に逝っちまって。今や天涯孤独でね」
「あっ……ごめんなさいせんせ。私……」
「いいんだよ。さりなちゃん、俺のことが知りたいんだろ。それに俺は別に友達がいなかったわけじゃないが、そいつらとは学校を卒業したら基本それまでって程度の付き合いの関係で、今まで自分のことをたくさん話せる程の付き合いの深い親友とかがいなくてさ。こうして、自分のことを伝えられる人がいるってありがたみを始め、俺に大事なことを色々と教えてくれた君に俺が何か返せるものがあるとしたらこれくらいだからさ」
「せんせ…」
「だから、伝えたくなったんだ。俺が君に出会うまで今までどう生きてきたのか、天国の母さん、爺ちゃん、婆ちゃんにも君を紹介したくなってさ。あまり大した人生じゃないけど、俺は君との出会えてよかったと思ってるよ」
運転しながら、そう答えるとバックミラー越しで見るさりなの目には涙が溜まって両手で顔を覆う。
「さ、さりなちゃん!?」
「ち、違うの。これは、ちょっと嬉しくて申し訳なくて……うわぁああ!!いろんな気持ちで溢れちゃってなんて言えばいいかわかんないよ!!!」
「こ、ここで泣かないでくれよ。ほら、もう着くからさ」
感涙で顔を濡らし続けるさりなにそう言うと、急いで目的地の我が家に付くべくアクセルを踏み込んだ。
宮崎県北部に流れる五ヶ瀬川にかかる峡谷である高千穂峡。
その川幅が狭まった部分に流れ落ちる滝である。日本の滝百選の一つに指定されている真名井の滝にある異変が起きていた。
神話の時代に天村雲命が天孫降臨の際に、この地に水がなかったので水種を移したことで天真名井として湧水し、滝となって流れ落ちていると現代に至るまで伝わるこの清涼な水源が淡い輝きを放ち始めている。
遊歩道は勿論、貸しボートで遊覧していた観光客たちがどよめき始め、手持ちの携帯電話やデジタルカメラで写真を撮り始める。
そんな異変を前に思考を停止している現代人の負の面を体現した者たちが殆どの中、一部の少数の直感に恵まれた者たちは悪寒を感じたのか、危険を察知してその場を離れようとする人間たちがいた。
そして、輝きが青い色を帯び始め、非常に幻想的で美しく見えてくるそれは、この前の青い雪夜を彷彿とさせるようだった。
その場を離れ行こうとする者達は感じ取る、この光景は確かに美しいが同時に何か悍ましさを感じてならないことを。
その懸念は現実のものとなる。
輝きの勢いを増し続けたその光は真名井の滝の周辺全体を青々に染め上げ、遂に人々は目を開けていることもできなくなったのと同時に、水は大きくうねり出し、浮いていたボートを転覆させると同時に乗っていた観光客たちを悲鳴を上げる間もなく飲み込み、下へ向けて水の落ちるはずの滝が重力に逆らって逆流し始めた。
遊歩道にいた観光客たちは遂に悲鳴を上げて全力では走って逃げ始めるが、時すでに遅しということを証明するがの如く襲い掛かってきた大量の水に飲み込まれていく。
周囲に存在する物を全て飲み込みつつある暴水は、何らかの意思が働くかのように徐々に無形だった流水が何かを形作っていく。
青く輝いていた棘のような背びれを、爪を、牙を、目を、角を、表皮を大量の水は数十mにも及ぶ巨大な生物を形作っていく。
今まさに形作られ産まれ出でようとするそれは、全身から青い閃光を放つと同時に産声を、咆哮を高千穂峡に響かせた。
「……俺の母さんは爺ちゃんと婆ちゃんに内緒で俺を身ごもって、自宅で俺を産んだ際に流した血が多すぎたみたいでね。気づいた爺ちゃんと婆ちゃんが、血相を変えて救急車を呼んだらしいけど、間に合わなくてそのまま───だからお父さんというものを俺は知らずに育ったよ。
そういった生まれのせいで、婆ちゃんとはともかく爺ちゃんとは気まずくて無難なことしか互いに言葉にできなくて、常に壁があった。」
訪れた雨宮家の墓の前に後ろに車椅子に乗って控えるさりなの分を含めた線香をやって花瓶に新しい花を入れ替えた吾郎はそう語って手を合わせ、やがてそれを終えた吾郎はさりなに向き直り、
「婆ちゃんが必至で繋ぎとめていてくれたおかげで、どうにか破綻は避けられてけど、それでも壁を取り払えず、結局本当の意味で家族になることは最後まで出来なかったよ」
そう零した時にさりなに見せた吾郎の表情はとても寂しそうな顔だった。
今の彼の胸の内にはきっと色々な感情が渦巻いているんだろうというのは人生の大半を病室で過ごしたせいで世間知らずの自覚のある自分にも分かる。
向き合う勇気を持てなかった自分の不甲斐無さ、あの時こうしていればという後悔、仮にも祖父の方が大人なんだからどうしてそちらから歩み寄ってくれなかったのかという不満、等々自分も病院に預けられて以降、会いに来てくれなくなった両親のことで想う所が本当は多々あるが、それを周囲にぶつけてしまったらそこから自分の感情が抑えきれなくなってやがて壊れてしまうんじゃないかと思うと怖くてできなかった。
“自分だけを辛いと思ってはいけない”、そう思ってしまったら誰とも繋がることができなくなって本当の意味で一人ぼっちになってしまう。
アイたちB小町の次に推しているとあるアイドルグループのエースが主演を務めるドラマであったテーマだ。
病院の外の世界をテレビや漫画を通して学ばなければいけなかった自分にとっては、アニメやドラマ、漫画等は心を癒すだけの娯楽ではなく教科書替わりでもあったから、日常の描写が豊富なジャンルは欠かさず見るようにしていた。
そんなある少女漫画の受け売りだけど、こんな私が今の先生にしてあげられることがあるとすればそれは───
「せんせ、私も手を合わせていいかな?」
「ああ、いいよ」
そう答えて、吾郎はさりなの車椅子を動かして墓石の正面に向かわせる。
さりなはその墓石へと向けて手を合わせて黙禱し、
「ゴローせんせのお母さん、ゴローせんせを産んでくれてありがとうございます。お爺ちゃんもお婆ちゃんもせんせを育ててくれてありがとうございます」
「さりなちゃん……」
「せんせが産まれてきてくれなかったら、せんせが無事に育ってお医者さんになってくれてなかったら、今の私はここにいないもの」
何の希望も持てず、生きることに価値を見出せなかったところにB小町を───アイの存在を知って憧れと生き甲斐を持てたが、そこにせんせと出会っていなかったら、今見たくアイドルになりたいという夢と頑張って足掻いて生きたいという希望まで持つことはできなかっただろう。
「だから、せんせと出会わせてくれたことに感謝してる。せんせは私の為に色々としてくれるけど、私がせんせにしてあげられることは限られてるから、せめて天国のせんせのお母さんたちにお礼をしたいなって」
「さりなちゃん───ありがとう」
そう言って、さりなの頭をなでると帰路に付くべく彼女を乗せた車椅子を推して福祉車両の止めてある駐車場へと向かおうとした時、吾郎の携帯電話が鳴り響く、院長からだ。
「あ、院長。用は終わったんで、今からさりなちゃんを連れて病院に戻り───」
『それどころじゃない!町から離れるんだ!!』
いつもの物静かな院長からは考えられないくらい切羽詰まった様子に吾郎は問いかける。
「何が起きたんですか?今、俺たちは墓地にいるんですが……」
『だったら、急いでさりなちゃんを車に乗せてそのまま町を出ろ!!何があったかは詳しいことは車の中でラジオを付けて聞け!!チャンネルはどれでもいいから!!』
「待ってください!院長、一言でもいいからまず何が起きているのか教えてください。いきなり逃げろ、ラジオを付けろと言われても……」
『……すまん。俺としたことが取り乱しすぎた。今、病院は総出で患者を町外に向けて避難させるべく、動ける者を片っ端から動員し、見舞いに来ていた患者の家族にも協力してもらって自力で身動きできない重病患者をまず救急車を始めとした車に乗せている。
だから、病院には戻ってくるな。とにかくお前はさりなちゃんと一緒にまずは町外へ出ろ、その後で落ち着いたら連絡を取って改めて落ち合おう』
「避難って───何から逃げてるんですか?様子からして大火事とかそんなもんじゃないですよね?」
『……怪物だ』
「え?」
『優に50mのある巨大な生物が町を……高千穂を蹂躙している。高千穂が今、焼き尽くされようとしている』
「なぜ、あれがこの星に?」
宇宙空間に待機させてある母船に戻り、地球上のネットワークに繋がっているコンピューターを地球人に気付かせることのなく既に掌握したメフィラスはデータベースから手ごろな人間の姿も戸籍も見繕って、あとは、母船の
モニターに映されている光景は、細身の身体に生える青黒い鱗と青い背びれと頭から背中の尻尾の先端にかけて覆う鋭い棘。
退化しているのかその生物の体形に対して小さめの手から伸びる爪はバランスにかけるきらいがあるが、目に映るものを全てを憎むかのように睨むその双眸に宿る凶暴性を前にすれば、そんなものどうでもよくなる。
口から吐き出す青白い熱線で大地を、森を、山を、そして町を焼き付くして雄たけびを上げるその姿はまさにこの星の最大勢力を占める一神教に語られる黙示録の獣そのものと言えた。
「あの戦争で大量投入され、光の星の裁定者たちをも苦しめた失われた兵器───この星系に飛ばされてきていたというのでしょうか?」
しかし、大きさも姿かたちも自分が知っている者よりも大人しいものだ。
きっとこの星に来るまでに大きく消耗したのだろう。
しかし、あれは時を得るごとに状況に応じて学習し、自己を成長・進化させていく生物兵器だ。
万全の状態なら1週間、このままでも1か月もすれば地球の文明を破壊しつくすことになりかねない。
自分はどう動くべきか、今の状態なら自分一人で軽く捻れるが……出来ることならまだ悪目立ちすることは避けたいし、記憶改変装置を使ってもみ消すにしても、これほどの騒ぎとなっては馬鹿にできない量のエネルギーを費やしてしまうことになり、そうなればエネルギーの再充填と装置や操作した地球人たちの記憶の調整を終えるまで地球に降りる余裕がなくなり、楽しみの一つである自分の精神を揺さぶった星野アイに対する研究をしばらく見送ることになる。
かといって、このまま放置すれば折角の慰安の日々がこの星と共に失われる。
仕方のない、予定は狂ってしまったが重い腰を上げるとするか。
そう思って、メフィラスは地球へと自らを転送しようと感応端末を用いて、母船のメインコンピューターに命令を出そうとするが、その時
「この反応?」
メインコンピューターからのアラートメッセージに応じてモニターが切り替わると、そこには赤く発光する球体が映し出される。
赤い発光体の向かう進路をメインコンピューターが計測して弾きだしたのは、あの兵器が暴れている地点だ。
「まさか、裁定者がこんな辺境の星にまでやってくるとは」
これもまた予想外だ。裁定者の存在は場合によってはあそこで暴れている兵器以上に厄介な存在となる。
しかし、今回は怪我の功名か、裁定者の標的はあの兵器なのは間違いのないだろう。
おかげで自分が出ていかずに済みそうだ。
「これが、この星で言うところの私にとって吉と出るか凶と出るか」
今の言葉が苦手な言葉とならないように願おう。
裁定者があれをどう処理するかで今後の自分の予定を大分修正しなくてはならないのだから。
「この星に誘われた者達の働きを見せてもらいましょうか」
この戦いがこの星の運命の道筋を決定づける最初の要因となることは間違いない。
裁定者───そして
「これがこの星に何を齎しますかね、ベムラー」