偽物の仮面と真実のアイ   作:ななち

11 / 43
違う……違うんだ、黎明卿……
俺はイチャイチャを書きたかった! でもこういう話も良いかなって思って差し込みで書いちまった!
俺が悪いんだよ……マナトとアイがイチャイチャできなかったのは、俺のせいだ!

元ネタが『45510』なので、問題ありそうだったら非公開にする感じになると思います。

2024/11/22
一部のキャラのセリフに修正入れました。


☆11話

 

 

 私の目の前には、三脚にセットされたちゃちなカメラが一台ある。机の上には、アームで固定されたマイクと、通知音をOFFにしてLINEの画面を表示しっぱなしのスマートフォン。後は、「待機中」とか「待機」とか「wktk」とか文字が流れていくノートパソコンが一台。

 喉に少し指を触れて、発声する。

 

 

「あー、あー」

 

 

 調整する。出来る限り可愛く、カメラの向こう側にいる人へ伝わるように。パソコンに「音量小さくない?」という文字が流れた。

 

 

「音量小さい? 社長ーこれどうやって調整……あ、ここのつまみ弄ればいいんだ。どう?」

 

 

 そうしたら、今度は「大きすぎる」とか「大きい」とか「大丈夫」って文字が流れる。うーん、じゃあ仕方ない。

 

 

「ごめんだけど、皆の方でボリューム調整してー」

 

 

 カメラの方に視線を向ける。ミュージックビデオを撮っている時と同じ要領で、カメラに映る私が可愛くなるように調整する。目の開き方、口角、首の角度、姿勢。全部を完璧に計算して、演出する。劇団で学んだことも、ちょっとは活かせてる感じがするかな。

 

 

「皆こんばんわ! アイドル"B小町"のセンター、"アイ"です!」

 

 

 パソコンに「可愛い」「可愛い」「推せる」「最高」っていう文字──コメントが、流れていく。

 私が今何をやっているのか、と言えば……事務所の会議室を貸し切っての、生放送。ライブ配信。

 

 なんで私がこんな事やってるか、っていうと。それは一週間ぐらい前に遡る。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 アイドルグループ"B小町"。私を含めた中学生4人を集めたユニットで、私はその中でセンターとして動いてる。

 最近ではグループの名前自体も売れてきて、ライブやチェキ会、握手会なんかも成功を収めている──世間曰く、"今ホットなアイドルグループ"なんだ。

 

 で、そんな私達は今、事務所に呼びだされて、会議室のソファに四人並んで座ってる。別に何か不祥事をやっちゃったとかではないので、みーんな適当にだべったりしてる感じ。あ、マナトが4人分の手作り茶菓子とお茶を置いていったから、それにも舌鼓を打っている。

 

 

「……緊張感ねぇなぁお前ら」

 

 

 私達の目の前で、佐藤社長が呆れた表情を浮かべながら立っている。その後ろにはホワイトボードがあって、大きく「配信!!」と書かれている。多分、何か思いついたんだろーなー。

 佐藤社長が咳払いをして、差し棒でパシパシとホワイトボードを叩いた。注目と言いたいんだろうけど、そもそも配信としか書かれてないじゃん。

 

 

「軽く説明するぞ。今、配信業──所謂ライバーってやつが流行り始めてるの、知ってるか?」

「あ~学校でなんか話出てたかも~」

 

 

 ニノちゃんが思い出したように言った。へー、そうなんだ。学校のお昼休みとか、大体マナトにLINEスタンプ爆撃してるからなぁ。そういうの疎いんだ。

 

 

「そう。で、だ。俺はこう考えたわけだ──アイドルってのは、ステージの上で踊る、ファンからすれば手の届かない存在だ。チェキ会や握手会とか、そういう特別な機会じゃないと触れる事すらできない」

「うん」

「だが、こういうライブ配信で身近に感じてもらえたらどうだ。推しやすくなるだろうし、布教しやすくもなるだろう。なんせ、見る側はチケットも何もいらねぇんだ」

「……へー」

「……ちょっとは興味持ってくれねぇかなぁ」

 

 

 うん、って言ったのがミネちゃん。興味無さそうに相槌を返したのがナベちゃん。かくいう私も、そんなに興味を引かれてるわけではなかった。

 佐藤社長の視線が、私に向かったのが分かった。こういう所はアイドルになって鍛えられたんだなぁって感じる。それと同時に、なんか嫌な予感がしたのも。

 

 

「"B小町"もこの流れに便乗して、一人ずつライブ生配信を行う! 視聴者と触れ合って、雑談とかして顧客を増やす! 第一回は──アイ! お前だ!」

「社長、それはない」

「アイちゃんがマナトさんの匂わせしないわけないよ~」

「……リスクヘッジ甘くない?」

「一丁前にプロ意識持ちやがってこいつら……!」

 

 

 ミネちゃん、ニノちゃん、ナベちゃんの言葉が佐藤社長を貫いたのが見えた気がした。というか、リスクヘッジって何? 

 いやまぁ、心配されるのは分かる気がする。一回、歌番組に参加した時にやらかしそうになったもん。あの時はニノちゃんにフォローしてもらった。うん、今でもごめんって思ってる。

 

 

「えー……私?」

「ああ、初回は"掴み"が大切だ。センターのお前が出る事に意味がある」

「うーん……」

 

 

 出来るかなぁ。歌番組ではニノちゃんがフォローしてくれたけど、今度はそういう事も出来ないわけでしょ。そうやって私が唸ってると、佐藤社長がクリップで纏められた紙の束を、私の前に置いた。表紙には「配信マニュアル」って書かれてる。さっきよりも嫌な予感がする。

 

 

「これ読め。言っちゃならねぇ言葉とか、配慮しなきゃいけない事項が書いてある」

「えー!? 私が文字読むの苦手って知ってるでしょー!?」

 

 

 うへぇってなりながら、その紙の束を手に取る……20ページぐらいある。しかも文字小さい。うええ。マナトに勧められた小説も1ページで挫折する私が、こんなの読めるわけないよ。

 佐藤社長のサングラスがきらりと光った気がした。なんだろうと思ってると。

 

「ああ、知ってる。だから、俺は一つ方法を提案する」

「提案?」

「──マナト椅子を解禁する」

「やる」

「アイ……」

 

 

 ……しまった、条件反射で返事しちゃった。うわっ、佐藤社長がニヤニヤしてる! 確信犯だこの人! やられた! 

 ミネちゃんの呆れた視線が刺さる。やめて、そんな目で私を見ないで……! 

 

 

「アイ、大丈夫? マナトさんの事喋らない?」

「う……自信無いかも」

 

 踊りとか、歌とか、演技ならいけるけど、喋るのはダメかもしれない。咄嗟にマナトの事喋っちゃいそうな気がする。

 ミネちゃんが考え込み始めた。なんか、申し訳なくなってきた。

 

「マ、から始まる代替用語辞書用意しといた方がいいかもね……漫画とか?」

「マンゴープリン~」

「……マニフェスト」

「あとは……前髪とか、枕とか」

「マグロ丼~」

「……マーケティング」

「ニノ……食べたいの並べてるだけよね。ナベも、もうちょっと使いやすい言葉考えてよ!」

 

 

 皆、マナト対策をし始めた。うう、ごめん。

 ……最悪、同じ事務所だから、で誤魔化せるかもしれないけど……佐藤社長曰く「異性関係は極力出すな」って話だから、出来れば出さない方が良いし……。

 佐藤社長を睨みつける。きっと、今の私の眼はじっとりしてるんだろうな……マナト椅子、楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 ……というわけで、私は今、ライブ配信をやってる。いつものアイドル衣装とかじゃなくて、ホント部屋着みたいなラフな格好で。多分、帽子付けてるのファンの人は見たことないんじゃないかな。

 

 

「えーと、じゃあ雑談したいと思いまーす。社長からはコメントに来た質問とかに答えて、って言われてるから。

 コメントから拾い上げるね。あ、スルーしちゃったらごめんね」

 

 

 目線を少しだけパソコンへずらす。この時に、カメラに不細工に映らないように、その角度も意識して。

 

UltraSoul

 今日何か食べた? 

 

 

「今日、何、食べた? マンゴープリン。美味しかったよー」

 

 

生ハム太郎

 どのブランドの服着てるの? 

 

 

「ユニ●ロ。動きやすいから好きなんだー」

 

 

SengaMan

 好きな本はある? 

 

 

「えーと……無いかも。文字読むの苦手だから」

 

 

アイ推しマン

 遊びに行くなら? 

 

 

「それは秘密ー」

 

 

ハーバー

 日課とかある? 

 

 

「マ……ンガとか読むかな!」

 

 

 やっちゃった。マナトに甘やかしてもらう事って言いそうになった。私、別にそんなにマンガ読んでないよ。

 

 

ハーバー

 どんなマンガ読むの? 

 

 

「えーとねー……最近だと……」

 

 

 どうしようかーって考えてたら、LINE──"B小町"のグループチャットにメッセージが飛んだ。ミネちゃんからだった。まるまるセリフが書いてあった、ありがとう! 

 

 

「────ってマンガかな。ラストシーン好きだったなぁ」

 

 

 切り抜けた。次は別の質問に切り替えなきゃ。更に追及されたら多分どうにもならない。

 

 

まかろん

 嫌いな食べ物は? 

 

 

「うーん……今はないかな。昔は白いご飯が苦手だったんだけどね。

 子供のころ、ガ……卵の殻が入っちゃってて、口の中切っちゃったのがトラウマでさ」

 

 

 コメントを見てたら「そういうのってあるよねー」とか「子供の頃だと忘れられないよなー」とか、同意する人が結構いた。この人達もあったりするのかな、そういうの。

 

 

肉天ぷら

 結婚願望は? 

 

 

「んー……無いかも。

 好きな人がいたら、ずっと側にいたいって考えるかもしれないけど、結婚はどうだろー。分からないなぁ」

 

 

満足できねぇぜ

 好きな男のタイプ! 

 

 

「これ、言っちゃっていい奴なの? えーと、じゃあ………………甘やかしてくれる人かな」

 

 

 LINEにメッセージ。ナベちゃんからだった。「マナトさんの事言いそうになったでしょ」って。うん、そうだよ。堪えたんだから許してほしい。

 コメント欄に「甘やかすから俺の所来ない?」とか「一生大事にする」とか流れてきた。それは本当に大事な人に言ってあげるべきだと思うな。

 

 

SpaceShuttle

 結構ぶっちゃけてくれるんだね。

No name

 恋バナNGだと思ってた。

ラビちゃん

 ライブの時も可愛いけど、こっちも親しみやすくて(・∀・)イイ!! 

 

 

「んー」

 

 

 流れてくるコメントを見て、私は考えた。佐藤社長からは、資料に書かれている禁止用語言わなきゃ何でもいい、って言われたから答えてるだけなんだけど、確かにぶっちゃけてるかもしれない。でも、それは……うん、そうだ。

 

 

「私、皆に嘘はつきたくないからさ。

 こういうのって、結構当たり障りのない解答するじゃん。

 時にはぜーんぜん自分が思ってない事とか。でも私そういうの嫌なんだよね」

 

 

 これは本心だ。歌でも、踊りでも、私は分かりもしない愛を皆に伝えてる。それは、私にとっては嘘の愛。だから、こういう所でぐらい、嘘をつきたくない。

 ……いや、マナトの事で嘘は言ってない。隠してるだけだから。言ってないだけだから! 

 

 

「出来るなら、ぜーんぶ話しちゃいたい。全部を知って、私を好きになってほしい。結構欲張りでしょ、私」

 

 

 コメント欄がざわついてる。まぁ、流石にぶっちゃけすぎたのかな。アイドルなのに、こんな事言っちゃっていいのかーとか、色んな言葉が流れてくる。

 でも、その中で二つのコメントが目についた。

 

 

A.Goro

 最高! これからも頑張って! 

Ryosuke

 欲張り可愛い! 最高! ずっと推してく! 

 

 

「……えへへ」

 

 

 ……それを見て、ちょっと心が軽くなった気がした。それと同時に、社長がそろそろ終わる時間、っていう合図を出してくれる。名残惜しいけど、終わらなきゃ。あらかじめ決めていた〆の言葉を、最大限に可愛く見えるように言う。

 

 

「そろそろ時間も来たから、終わるね!」

 

 

「アナタのアイドル! サインは"B"! "アイ"でした! またねー!」

 

 

 




『45510』は恐らく双子が生まれた後の時系列だと思うんですが、弊小説ではさらに前に配信した事にしてます。斉藤社長に先見の明があったんでしょう、多分。

あと出てくる"B小町"のメンバーは、性格とか判明してないので弊小説ではこう、っていうのでお願いします……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。