獪岳と善逸   作:山筋

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那田蜘蛛山 弱虫と兄

 当り前だが、夜の山は暗い。人里離れて、外から目印になるような光すら感じられなければなおさらだ。

 鬼殺隊は基本的に夜戦うにも関わらず、通常提灯のような光源を持たない。これは刀は両手で振るう時、緊急時の即応性に少しでも難を残さないためと、蝋燭であれガス灯であれその辺に放って火事を起こさないためだ。

 そのため隊士は夜目が利く。善逸も例に漏れず、それなりに闇の中を見通せたし、それ以上に信頼できる耳がある。動きがどうので言うなら、昼と同じ程に働ける自信があった。が、それで恐怖がなくなるわけでもない。

 深い森の中は、高い木の枝葉に阻まれて月光もろくに通らなかった。昼ですら木の密度が高くて遠くまで見通せないだろうに、今は闇のせいで十数歩先の光景すらおぼろげだ。

 草木も眠る丑三つ時。何もかもを飲み込むような森の中。明らかに人以外の物音。一つ一つであればどうという事もない。だが、全てが揃えば、迫るものがあった。

 

「うぅ、怖いよぉ。獪岳ぅ、炭治郎ぉ……。この際伊之助でもいいから、誰かいてくれよぉ」

 

 ひたすら情けない声を上げながら、おっかなびっくり進む。

 音でまだ鬼は近くないと分かっているが、それでも恐怖は消えなかった。いくら感覚が優れているからと言って、それに頼りすぎるのは危険であり、ましてや油断なんてもってのほかだと獪岳に言われたばかりだし。

 また、ちょくちょくとやってくる蜘蛛も、彼の精神を削っていた。

 最初は偶然かと思った。これだけ蜘蛛がいるのだから、いくらか人に飛びつこうとする者くらいいるだろうと。だが、散発的ながらも確実に己を狙っていると分かり、これが鬼の手口だと気がついた。それから音を探ってみると、無数の蜘蛛に紛れて、少数が確実におかしな動きをしている。

 恐らく、これから向かう先にいる鬼は、まだこちらを察知していない。蜘蛛は大雑把に「人を襲え」とでも命じられているのだろう。

 先ほどのように糸をくっつけるでもなく、とにかく取り付けば噛もうとしてくる。小蜘蛛に噛まれた程度で人がどうにかなる訳がないから、目的は間違いなく毒。

 まかり間違って噛まれでもしたら……末路は怖くて考える気にもならない。

 

「ほんと俺、なんでこんな所にいるんだろ……」

 

 危険で怖い場所に一人で向かってもいれば、そんな愚痴も吐きたくなる。

 はっきり言って、善逸にとって鬼とは、比較的どうでもいい事柄でしかない。親類縁者が殺された、もしくは鬼にされた恨みがあるわけでなければ、自分がなんとかしなければと使命感を持っているわけでもない。一番近いのは、そう、惰性だろうか。

 なんやかんやと訳の分からないうちに流されて、隊士となった。まだ殺されずにいられるのは、ただ運が良かっただけだ。

 はっきりって、自分は弱いし情けないしで、全く役に立たない。それでも鬼殺隊にかじり付いている。

 脳裏に浮かんだのは、獪岳と桑島慈悟郎の顔だ。

 我妻善逸の人生は、大部分を落胆が締めていた。特に前半生は、期待される事そのものがなかったと言ってもいい。

 まず最初に見切りをつけたのは、親だった。

 記憶にもないほど幼い頃。それこそ両親が何を生業にして生きていたかも知らない。声も顔立ちも、大雑把な体格すら記憶に残っていなかった。だが、あの目だけは――価値ない物と断じるあの瞳だけは、どうしたって忘れられなかった。

 それからは、ただのみなしごとして各地を転々とした。誰一人として、いちいち善逸を痛めつけることはしない。ただし、彼を相手する事もなかった。

 誰にとっても何者でもない誰か。それが、我妻善逸という名前を持った透明人間だ。

 いつしか彼は、女の子に入れ込むようになった。

 可愛いのは好きだ。眺めているだけで幸せになれる。たまに近づいてみる事もあった。大抵は無言で通り過ぎられるか、嫌な顔をされるだけだったが。それでもたまに相手してくれる事はあったし、ちょっと会話してくれるだけでも十分幸せだった。

 そんな頭お花畑が悪人につけ込まれるのは、ある意味必然だったのだろう。特別愛想よくしてくれていた女の子が残したのは、莫大な借金だけだった。

 目がくらむような額面と自分を囲む強面の男達を見て、ああ、本当に自分には価値がないんだなと思った。でも仕方がない。善逸には、誰かに与えられる何かなど一つとして持っていなかったのだから。仕方がない、と諦めるのは簡単だった。まあ、それはそれとして泣き叫んだし暴れて抵抗したが。

 そこを偶然通りかかって助けてくれたのが、自分の師である桑島慈悟郎だった。

 彼は大金をぽんと肩代わりし、訳も分からないまま連れて行かれた。

 修行の地へたどり着いてからは、今までの緩慢で色あせていた人生が嘘のように、苛烈と言うほどに素早く過ぎていった。慈悟郎と、兄弟子である獪岳。二人は色々な意味でとんでもない人間だった。

 はっきり言って、今までとは別の意味で大変だ。じいちゃんは頑固だし、獪岳はすぐ殴る。毎日、日が暮れる頃には疲れ果てた上に全身痣だらけで、最初の頃は痛みで眠るのが難しかったほど。

 どうやったら逃げられるだろうか、でも二人とも怖いしな。そんな事を考えて日々が過ぎるうち、体はどんどん環境に適応していく。夜ぐっすり眠れるようになり、初期は吐いていた飯も、おかわりができるようになる。

 余裕ができて、周囲に気を配ることができるようになって気がついた。

 慈悟郎と獪岳は、間違いなく我妻善逸を見ている。無視するのではなく、ただのその他大勢として認識するのでもなく、彼を通り越して金だけを見るのでもなく。ただの一個人として、善逸を真正面からはっきりと捉えていた。

 嬉しかった。

 訳が分からないほど喜んだ。

 自分が初めて生まれてきた意味を持ったのだと思った。

 人が生きるというのは、人として生きるというのはこういう事なのだ。よく殴られたし怒られたが、同じだけ、いや、それ以上に優しくされた。どちらも不器用で分かりづらいが、確かに大事にされている。そんなことに気付くまで数ヶ月かかるほど、彼は幼かった。

 泣いて、叫んで、笑って、大声を上げて。己の命を、我こそ我妻善逸であるという実感を高らかに叫んだ。今までの辛くて泣きわめくのとは違う産声は、とても気持ちが良かった。今に至るまで、善逸はあれ以上の瞬間を知らない。

 まあ、そこで師範と兄弟子に「ついに壊れた」とかひそひそ話をされたし、やたら優しくされて傷ついたが。やや水を差された気はするものの、それでも一番の思い出には違いない。

 もはや家族となった二人が、善逸は大好きだった。ただ一緒にいるだけで満たされることができる。嫌なことも辛いことも、もちろんいくらでもあった。だが、それら全てを含めて一緒にいたいと思ったのは二人だけだ。

 彼らの期待に応える事は、善逸の喜びでもある。同時に、それは鏡写しでもあった。

 期待を裏切るのは、死ぬより恐ろしい。

 分かっている。自分が戦わない程度で、二人が失望することはないと。それでも家族を裏切ってしまえば、善逸は自分を二度と許せないだろう。

 泣いて、暴れて、惨めったらしく叫んで。時には人にすがりつきすらする。

 家族でいたい、家族が誇れない自分でありたくない。それが善逸の動機。だから人一倍怖がりな自分でも、こうして鬼狩りなんぞしていられる。

 

「でも、みんなで入ったのに、わざわざ一人で放り出すのは違うんじゃないかな……」

 

 こちらをどうするつもりなのか分からない、薄気味悪い蜘蛛から逃げながら、独りごちる。

 獪岳の考えは理解できない事もない。

 一番強く、また攻め気な伊之助を一番厄介な鬼に当て、炭治郎と善逸にそれぞれ時間稼ぎをさせる。その間に最大戦力である獪岳が、一人一人始末していくという腹積もりだ。あと何人いるか分からない救援待ちの隊士と、戦力分散の愚を避けるのを秤に掛けて、前者が良しと判断した。

 ただそれは、善逸にとって本当に最悪である。本当に。本当に本当に。

 

「怖いよー……。なんとか戦わずに時間稼ぐ方法とかないかな」

 

 この期に及んで、まだ覚悟をしきれていなかった。

 そうだから肝心なところで怒られるのだと分かってはいるのだが、分かっただけで勇気を振り絞れるなら苦労はない。

 今のところ、一番禍々しい音に向かって真っ直ぐ、しかしゆっくり進んでいる。このまま行けば程なく着いてしまうだろう。

 なんとか単独で戦わずに済む方法を、と頭を悩ませる。

 周囲をぐるっと回って警戒している体を取ってはどうだろうか。それとも音を聞き失ったという事にするとか。あるいは、迂回しつつ血鬼術支配下にある蜘蛛を引きつけている風を装うか。

 まあ、どれを選んだところで、絶対獪岳にばれるのだろうが。昔から、一度たりとて彼を騙し通せたためしがない。曰く、善逸の嘘はあからさますぎて馬鹿馬鹿しさすら感じる、との事だ。

 鬼と獪岳、どちらから逃げるかという究極の選択だ。後回しにし続けてきたが、そろそろ限界だ。

 と、急にごそりと、近くの茂みから音が鳴った。

 

「ひぃっ!」

 

 思わず悲鳴を上げる。自分の声が思いのほか通って、咄嗟に口を手で覆った。

 そこに何かがいるのは分かっていた。だが、蜘蛛というような大きさではないし、何より動かなかった。そのため無視していたのだ。

 だが。

 そこにいたのは、一言で言って化け物だった。どでかい蜘蛛の体に、人の顔が乗っている。髪の毛はほとんど抜けてまばらに残る程度。なによりその表情は、酷く虚ろなのに、奇妙な恨みがましさを持っていた。

 

「ギャアアアァァァ!」

 

 今度こそ善逸は絶叫し、一目散に逃げ出す。

 まるで妖怪絵巻に出てくるような化け物だった。しかも、音からしてあれは鬼ではない。つまりあの人(人?)は、鬼という化け物とは別種に変化させられただけなのだ。いっそあれが鬼であった方が、いくらか救いがある。

 

「なにあれなにあれなにあれ! もうやだ! 予想以上にやばいじゃん! 獪岳ー! 炭治郎ー! 伊之助ー! 誰でもいいからほんと助けて!」

 

 恐怖と嫌悪感で頭が真っ白になる。訳も分からず一目散に駆けだした。……その化け物の親玉が、真っ直ぐ行った先にいるのを完全に失念して。

 山のように後悔が溢れ出る。そういえば獪岳はこのような事も言っていた。鬼と血鬼術を理解したと思ってはいけない、と。

 それを分かっていなかった訳ではない。鬼を理解しようなどと思ったことこそないし、心構えだけは何が起きてもいいように、と構えていた。実際、起こった事象そのものは対応できないようなものではない。ただ蜘蛛の化け物にされた人間が出てきただけだし、それも動きそのものは鈍いし。

 

「でもこんなのあんまりじゃない!? ちょっと想定してないから! 想定してたのは強さとか対応しづらさとかそっちの方面であって、間違っても怪異絵巻に出てきそうな事態じゃないから!」

 

 周囲の小さな物音が、一気に気になってくる。今までは無害だからと無視できていたが、そこに“何が”潜んでいるかを考えてしまえば、もう無理だった。感じるのは、ただただ命の危機とは別種の恐怖だ。

 これなら、まだただ単に強い方がましだった。それなら少なくとも、背筋が凍るような思いをせずに済んだのだから。

 

「もうやだ帰るほんと帰る! お願いします夢であってください夢であることにしてください! この際鬼でもいいから!」

 

 勢いに任せて走って、唐突に視界が開ける。

 たどり着いた場所は、不自然に広まっていた。地均しされており、間違いなく人が拓いた場所だ。空間はかなり広い。そう、丁度家一軒に広めの庭をつけたらこれくらいになるだろう。それを裏付けるように――裏付けになっているかは分からないが――家が広場の中心あたりに浮いていた。

 いや、違う。よく見れば、家は無数の糸で吊り下げられている。木々へと繋がる糸には、ついでとばかりに幾人かの人まで巻き付け垂れ下がっていた。普通に考えれば餌なのだろうが、彼らの姿はそれを否定している。彼らは体が斑に黒ずみ、頭は禿げ上がり、四肢や胴が蜘蛛のそれへと変じようとしていた。

 嫌でも理解した。ここは工場、もしくは牧場なのだと。人を化け物に変えるための生産拠点。

 

「へひゃっ」

 

 訳の分からない音が喉から漏れる。

 鬼の方向に進路を取っていたのだから、何も考えず走れば当然そこへ行き着く。当り前のことだが、恐慌状態を起こしていた善逸に、考える余裕はない。

 自分からこんな意味不明な恐ろしい空間を作る鬼の元へ来てしまった。背中の寒気が消え、代わりに体表からどばりと汗が噴き出る。逆に体はとてつもなく冷えていった。控えめに言って最悪だ。

 一人でガタガタ震えていると、横に倒された上体で吊られている家の玄関から、ゆっくりと蜘蛛の化け物が尻から糸を垂らして降りてきた。

 姿を見て、咄嗟に口を押さえた。そうしなければ、すぐに悲鳴が漏れていたであろう。

 今までの人面蜘蛛は、体長などせいぜい二尺と少しがいいところだった。だが目の前のそれは、ゆうに八尺を超えている。顔に斑の斑点。吐き気を催す強い刺激臭。なにより、鬼に共通する特徴的な瞳孔。この怖気に溢れたを作り出した鬼に違いない。

 周りに他の蜘蛛はいない。だがそれは、あくまで目に見える範囲にいないという程度の話でしかなかった。周囲から聞こえる無数の、しかもこちらへと向かってきている音が、自分はもう囲まれていると教えている。

 

「まさか、無事にここまでたどり着くとはなあ」

 

 にやにやと、嬲るような声音で囁く鬼。自分が唯一自信を持てる足が、震えてまともに動かない。

 まずい、なんとかしないと、と混乱したままの頭を高速回転させる。

 この時点で、覚悟を決めて素直に戦うなどという選択肢はない。この程度で覚悟が決まるのならとっくにそうしている。

 

「あ……あの、それって、どういう意味……だよ」

 

 選択が正解かどうかなんて全く分からなかったが。選んだのは会話だった。可能な限り引き延ばして、獪岳の到着を待つ。

 歯の根が合わない震える声に気をよくしたのか、鬼は楽しげに応じた。こちらを見る目は、鬼特有の不気味な虹彩を差し引いても、忌避感を強く感じる。歯の根が合わない震える声はさぞかし聞き取りづらかったろうが、鬼は普通に返してきた。

 

「ひひっ。俺の蜘蛛はな、噛んだ相手を奴隷に変えちまうんだ。お前も見ただろう、人の頭をした哀れで愚かな奴隷を」

 

 にたにたした笑みに、思わず胃液をぶちまけそうになる。

 言葉の裏が分かってしまた。あれは見えてしまったのではなく、わざと見せたのだ。哀れでちっぽけな人間が、自分を畏れるのに悦楽を感じている。その中でもとりわけ鬼狩りが怯える姿に、強い充足感がある。という事を隠しもしない顔。

 実際、それは正解だろう。自分はもう、鬼の掌の上だ。どうとでも調理できる。

 善逸の反応を、一つ一つ味わうようにしながら、鬼は続けた。

 

「子蜘蛛でな、かるーく相手を咬んでやるんだ。少しでいい、それだけで十分効く毒だからな。少しずつ、四半刻かけて体と頭を作り替えるのさ。じっくりじっくり、苦痛と絶望を与えながら、人蜘蛛になるんだ。俺はその貌を見るのが好きでなあ」

 

 くふふふふっ、という独特の含み笑い。それを聞きながら、善逸は頭から血の気が引くのを感じた。

 何匹もが意図して纏わり付いてきた。もし細かく払っていなかったら、自分がそうなっていただろう。だがそれ以上に、自分は蜘蛛を素手で叩いていた。もし蜘蛛が手を狙っていたら、そうではなくとも、歯に触れていたら。

 無自覚に危険な橋を渡っていたことに、それ以上に迂闊すぎる自分に、目眩を覚える。

 だが、ちぎれ掛けた縄の上だろうと、渡りきった事には変わりない。運はまだ自分を見放してはいない、と思い込むことにした。そうでないとやってられない。嫌でも耳に届く音を聞いては。

 

「なんでここまで懇切丁寧に教えてやると思う? お前にはもう、逃げ場はないからだよ」

「やめろよ! 言うなよもう気付いてるんだから!」

 

 ぎゃーぎゃー泣きながら、鬼を怒鳴りつけた。それすら心地よいのか、鬼は笑みを一層深める。

 周囲に響く音は、もはや善逸ほどの超聴覚でなくとも分かるほどに大きく、同時に数多くなっていた。一カ所でなければ一方向でもない。全方位から迫ってきている。

 できることなら、今すぐ耳を塞ぎたかった。それをしないのは、自分程度のへぼ剣術でも、ないよりましだと思ったから。それと、耳を塞ぎなどして、まかり間違って蜘蛛の接近に気付かず噛まれたら死んでも死にきれないから。死ぬにしたって、せめて人の姿で死にたい。死ぬのは当然嫌だが、化け物にされて延々使役されるなど同じくらいご免だ。

 がさりと、次々に物陰から鬼の眷属が姿を現す。ただの蜘蛛はいい、呪わしげにこちらを見る人蜘蛛は、直視に耐えなかった。

 善逸は、鬼に近づきすぎない程度に後ずさった。茂みの近くにいるのは、控えめに言って愚かだ。自分からわざわざ被弾面積を増やすことになる。かと言って鬼に寄りすぎても、どんな攻撃がくるか分からない。本体に攻撃手段がない訳がないし、人蜘蛛に直接変える力を持ってないと思うのはもっと迂闊だ。

 気付いたときには、全方位、視界の半分ほどが蜘蛛で埋まっていた。

 

「ちょ、ちょっとこれ多すぎやしない……?」

「いいねえ、お前ら鬼狩りのそういう顔が見たくて用意したんだ。楽しんでくれてるようで何よりだよ、くひひっ」

 

 鬼は完全にこちらを舐めている。だから、まさかこれが全戦力という訳ではないだろう。

 だが、それは逆に言えば、全てを集めなくともこれだけの支配力を持っているという事の裏返しでもある。下手をしなくとも、人を操る鬼より脅威だ。まあ、どっちに負けた方がましかと問われれば、どっちもどっちだと返すが。

 

「あの、ええと……そうだ! こんなに大量の人たち、どこで見つけて人蜘蛛にしたんだよ!」

 

 話が思いのほか早く終わってしまって焦り、どうでもいい問いかけをする。

 八方を警戒しつつ興味を引きそうな話題を捻り出すのは、さすがに難易度が高すぎた。不自然さに、あっさりと目論見を砕かれてしまう。

 

「時間稼ぎか? 無駄なことはやめろ。どのみち朝まで付き合ってやるつもりなどないんだ。諦めて俺の奴隷になれ」

「絶対なりたくないから悪あがきしてるんだろ! ぎゃー! やめろ来るな来るなほんとやめて! 分かった友達になってあげるからとりあえず落ち着こう!?」

「お前みたいな友達はいらん。俺には家族がいる」

 

 もはや何を言ってもなしのつぶてだった。

 仕方なしに、柄に手を添えるが。それがただのはったりだと言うことは、自分が一番よく分かっていた。

 人蜘蛛から人間の音がする。酷く頼りなく、今にも途切れてしまいそうだが、確かに聞こえるのだ。聞いたことのない異音も同時にするものの、少なくともその中に鬼の音色はない。境界線限界の部分で、彼らはまだ人だった。

 鬼なら(怖くも強くもなければ)斬れる。だが、人は斬れない。人蜘蛛を混ぜられると、執れる手段が極端に限られてしまう。

 

(ただでさえ、できることなんて大してないのに!)

 

 己に悪態をつきながら、善逸は跳ねて近場の木に乗った。そこなら安全だなどと口が裂けても言えないが、あの場に止まるよりはましだ。

 人蜘蛛と小蜘蛛が不揃いに襲いかかってくる。血鬼術で使われている小蜘蛛はもちろん、人蜘蛛の方も動きに躊躇は見えなかった。肉体か精神のどちらかは知らないが、完全な鬼の支配下にある。

 救いがあるとすれば、蜘蛛たちは命令通りの動きが規範であり、理路整然としているという点か。忠実であるため隙が無く、自分で考えた動きをしてこない。ほつれは期待できない代わりに、予想外の動きもないだろう。

 広い空き地を全て使い、地も空もなく跳ね回る。善逸の数少ない誇れる点、直線的な動きだけならば、獪岳に劣るものではないのを生かす。

 つまらない追いかけっこ(といっても善逸は常に必死だが)がしばらく続いたが、幸いにも鬼が焦れて攻め急ぐ事はなかった。どころかその場から一歩も動かず、体を揺らし回すだけで善逸の姿を捉え続ける。顔は常ににやけ面だった。こちらを嬲る姿を隠しもしないのは、いつでも仕留められるという余裕の表れだろう。悲しいことに、鬼の評価は的を射ていた。

 

(どうすればいいんだ……!)

 

 足は止めずにほぞを噛む。こんな無茶な動き、どれほども続けられる訳がない。

 はっきりと、執れる手段が絶無だった。

 自分の分は分かっている、と善逸は自嘲する。己には、戦士の才能も剣士の才能も無い。

 使える型は一つだけなのを引いても、獪岳から、よく突撃癖があると指摘されていた。その通りだ。善逸の適性は、真っ直ぐ進んで全力で居合いを浴びせる、それだけだ。できる唯一すら、性格のせいで十全に発揮できない。

 戦士としてはもっと話にならなかった。自分はひたすら怖がりで、目の前の強大な敵に勇気を出す事ができない。弱音を吐いてすぐ逃げ出す。そして今も、隷属させられた哀れな人蜘蛛を、見捨てることができずにいる。

 自分は出来損ないの失敗作だ。ろくに戦えず、鬼一人倒すこともできない。獪岳とは違って。

 きっと彼のような者こそが理想の隊士なのだろう。

 逆立ちしたって届かない、みそっかすの数合わせ。それが我妻善逸。

 

(別に悲観してるわけじゃない)

 

 唱える。もしくは、念じる。

 自分を卑下するのにも貶すのにも、僅かの躊躇すらない。全くの事実だし、むしろ力があるからと言って勇猛果敢である事を求められる方が困る。

 駄目な奴だと自覚しながら、それでも。善逸がすべきは『時間稼ぎ』だ。『討伐』ではない。

 

(なら、せめてそれくらいの期待には応えたいよな)

 

 がたつき始めた足へ気合いを入れ直して、とにかく頭を回す。

 集う蜘蛛の数は、刻一刻と増えている。既に踏み場を探すことこそが難しくなっていた。

 善逸が人蜘蛛への攻撃を躊躇しているのは、既に見抜かれている。隠し通せるとも思っていないので仕方ないが。おかげで、上手い具合に人蜘蛛を広げられてしまった。ただの一歩を踏み出すだけに、極端な精神疲労を求められる。

 酷い綱渡りだが、これを続けていれば獪岳が来るまで持つ。そう思っていたが。

 

「飽きたな」

 

 先に鬼の加虐心が限界を迎えた。

 人蜘蛛が一斉に口を開ける。と、本来舌がある場所のそこには、針つきの触手が付いていた。先端は黒く、何かが滴っている。針の長さはさほどではない。少なくとも、それで急所を突くためではないと簡単に分かった。では何に使うのかと問われれば、それは全くもって考えたくない。

 だが毒より何よりも、人蜘蛛の姿が一層不気味になったことが、何より心に突き刺さった。せっかく活を入れた心が折れそうになる。

 

「ぎゃあああぁぁぁ! なんだよそれ気持ち悪いよ! 俺もそんな風にされるの!? 嫌だー! 夢ならさめてよ早く!」

「……俺が言うのもなんだが、貴様本当に鬼殺隊か?」

 

 ひたすら胡乱げな視線を向けられるが、気にしている余裕はなかった。

 折り悪く、時を同じくして足場がなくなる。一足で端から端まで飛べる脚力も、足場がなければないのと変わらない。

 吐き気を覚えながら、威嚇のために剣を棒きれのように振る。当り前に、足を止める蜘蛛などいなかった。大本の鬼からしてみれば、蜘蛛などいくら潰されても痛くも痒くもない。対して善逸は、もはや人ではないとはいえ、鬼でもない相手を殺す覚悟など全くできていなかった。

 半泣きになりながら、上着で小蜘蛛や舌触手を払う。蜘蛛の一匹一匹は弱いためそれでも十分退けられたが、羽織の生地そのものがさほど頑丈ではない。みるみるうちに襤褸切れへと変化していった。

 限界まで羽織を振り回したが、ついに半ばで避けてしまう。既に羽織だったものは、無数の切れ端になっていた。

 手詰まり。

 鬼の三日月状に歪んだ目と、数十の虚ろな瞳が善逸に集中する。人蜘蛛と同じ数だけある舌触手の針もまた、こちらへと先端を向けていた。

 

「くふっ、これだけの毒を一度に打つのは初めてだなあ。どうなると思う? 一瞬で人蜘蛛になるかな? それとも変化速度に耐えきれず潰れて死ぬか、あるいは毒の濃度に犯されて体が腐り落ちるかもな。分かるだろ、お前の末路の話だよ」

「なんでそうやって人が怖がる事言うの! やめてよ本当に怖いんだよ! もう小便漏らしそうなんだよ! 神様仏様のバカヤロー! 助けて獪岳ぅー!」

「あいよ」

 

 やけくそな絶叫に、軽い返事が返ってくる。思わず間抜けな声を漏らしそうになって――その前に、善逸の周囲だけが吹き飛んだ。まるで彼の周囲だけを稲妻が駆け抜けたようだった。

 雷光が収まった後には土埃が残り、それもやがて収まっていく。後に残ったのは、この世で最も便りにしている兄弟子の姿だ。

 右手に反した刀を、左手には鞘を持って二刀流もどきにしている。これでやっと土埃の正体が分かった。普段の獪岳なら、地面を斬ったところで砂が飛びもしない。切れ内のないもので無理矢理払ったからあれだけ煙ができた。

 

「けほっ」

 

 獪岳は、小さく咳をしながら口周りを扇ぐ。かなり舞っているので、その程度で避けられるものでもなさそうだが。

 

「きっ、貴様何者だ!」

「見りゃ分かんだろ、鬼殺隊だよ」

 

 顔を歪めた鬼を無視する形で、獪岳が振り返る。

 

「最初は全部ぶった切るつもりだったんだが、お前がそうしてない所を見るに、斬っちゃいけないんだな? 見るからに人じゃねえ素っ頓狂な姿してるが」

「え、あ、うん。この人たちは人なんだ、鬼じゃない。そういう音がする。だから手出しできなかった」

「なるほどな。俺じゃ気づけず斬ってたし、始末していいかはそれこそ俺じゃ判断できねえな。お前に任せて正解だったな」

「……って、獪岳! そういえば蜘蛛にされた人たちは!?」

 

 慌てて人蜘蛛を探した。近い距離にいた者は、足が減し曲がったり胴がへこんでいたりと、酷い有様だった。

 追加で押し寄せてこないのは、鬼からの命令が途絶えているからだろうか。どうであれ、かなり洒落にならない有様だ。

 

「こっちも危ないのにそこまで気を遣えっかよ。殺してねえんだからどうとでもなんだろ」

「えぇー」

 

 久しぶりに見た獪岳の雑さに、抗議のつもりで声を上げる。さっくり無視された。知ってたが。

 とりあえず息を整えた。全集中の呼吸・常中は途切れていないが、さすがに焦った状態とそうでない時とでは効率が違う。

 多少落ち着きを取り戻し、気付けば足が震えていた。自分で思っていたよりも遙かに限界が近かったらしい。気分的には、このまま座り込みたい程だった。

 

「善逸」

「ひゃい!?」

 

 多少ぼんやりしていた所に声を掛けられて、上ずってしまう。

 

「頑張ったな」

「あ……。うん!」

 

 獪岳の、自分を認めるたった一言。それに、とてつもなく救われた気がした。

 自分でも安くて現金なものだと思う。それでも、何よりも欲しい言葉が何よりも言って貰いたい相手から出てきた。この感動を無視して目の前に集中できるほど、まだ善逸は成熟していない。

 二人の様子に、鬼が舌打ちをした。が、忌々しそうな顔をすぐ戻し、二人を睨め付ける。

 

「まあいい、鬼狩りが一人増えたところで、こちらの戦力が減ったわけじゃない。いや、むしろ奴隷が増えるだけか」

 

 挑発するような鬼の言葉に、しかし獪岳は何も返さなかった。彼はこういった所で絶対に遊びを作らない。

 反応がない事に苛立ったのか、鬼は再び顔を歪めた。獪岳は鬼と、再び結集した蜘蛛に油断なく意識を飛ばしながら、声をかけてきた。

 

「あと一撃、いけるか?」

「え?」

 

 ともすれば、独り言のような囁き。思わず聞き逃しそうですらあった。

 

「一撃だけ、踏ん張って放てるかって聞いてんだ。できるなら、道は俺が作る」

「やるよ、意地でも!」

 

 善逸は深く息を吸い込みながら、足を叩いた。多少痺れはしたが、代わりに今まで下半身を這うようにしていた振動が止まる。良かった、と小さく笑みを浮かべた。ここで動けないなら、本当に自分はただの屑だ。

 こういうとき、獪岳は答えない。振り返りもしない。ただ、そっと信じて疑わない。

 背中を守れるなどとは、口が裂けても言えないけれども。こうやって任せて貰える事に、涙が出そうになった。

 

「行け! 奴隷を二匹増やすんだ!」

「いつでも飛べるようにしておけ。隙を見逃すな」

 

 獪岳は似非二刀流のまま、蜘蛛の群れを迎え撃った。

 周辺の蜘蛛は集合しきっていたのか、もう軍というよりはひとかたまりのそういう生物にすら見える。まばらに見える人頭は、人が泥に埋まっているようだ。

 峰と鞘が、乱暴に振るわれる。型は使っていなかった。元より雷の呼吸に二刀の型などないのもあるが、それ以上に、いかに刃物ではないと言っても、型で殴れば死んでしまう。基本的に手加減ができるような性質がない。

 動き回る獪岳を、善逸は一歩遅れてついて行った。

 獪岳の戦い方は巧みだ。小蜘蛛は容赦なくなぎ払い、人蜘蛛は身動きができなくなる程度に叩きのめす。両者が折り交ざっている中を上手く使い分けて動く度に、どんどん行動範囲を広げていく。

 鬼もさすがにまずいと思ったのだろう。当然だ。癸と甲では強さの次元が違う。癸が何人集まったところでできない事を、甲は単独で行える。ここでようやく、自分の命に指が触れたと気がついた。

 

「チィッ!」

 

 鬼が口から大量の液体を吐いた。空中で分散し攻撃範囲こそ広いものの、速度は遅い。本来は返しか接近戦で使う術だろうか。

 あからさまに使いどころを間違えた攻撃を行う。善逸でも分かるほど、あからさまな手詰まり。

 獪岳が、浮く家に繋がる糸、それが結ばれた木の一本を両断する。木は周囲の木を巻き込みながら激しい音を立てて倒れ、家も揺れた。鬼が慌てて、自分を支える唯一の糸を足で手繰る。

 

(これが隙? いや、違う)

 

 獪岳ならば、もっと致命的なものを作る。できないなら最初から言わない。それが彼だ。

 木の上に向かった獪岳に、しかし善逸は後を追わなかった。蜘蛛は蹴散らされ、再結集に数秒必要だ。逆に言えば、同じだけの時間、ここで待機できるという事でもある。つま先で大地を確かめ、体を沈めた。ここに決め所が作られる。

 木の幹を足場にして、獪岳が水平に跳ねた。疾風よりもなお早い影が、家の上を通過する。一瞬遅れて、壁面がバラバラに崩れ落ちた。

 体が宙に投げ出され、鬼はやっと自分が無防備に放り出されたと知った。慌てて体勢を立て直すべく、近場に糸を射出しようとする。が、その動きは、呼吸の剣士相手には、致命的に遅い。

 

(ここだ!)

 

 雷の呼吸 壱ノ型・霹靂一閃 神速

 一足一瞬で不可避の一撃を見舞う霹靂一閃、それをさらに先鋭化した技。察知不可能なまでに高めたそれで、善逸は鬼に向かい真っ直ぐ弾丸となった。

 鬼と善逸の体が交差する。抜けた後、影は三つになっていた。善逸と鬼と、そして鬼の頚。

 くるくると宙を舞う頚は、愕然と口を開けている。

 

「なぜ……俺が……こんな奴に……」

 

 その後の、いかなる感情も発露できないまま、鬼は断面から崩れ始めた。

 着地し、呼吸を一つ終えると、どっと疲れが押し寄せてくる。今までの戦いもそうだが、神速の精神的負担はそれほど大きかった。

 神速は文字通り、神のごとき早さになる。視認してからでは、抜刀が追いつかない。鬼に対してそれほど有効だと言うことは、人にとっても反応速度を軽く上回った。目がほとんど役に立たない中、機だけを測って抜き放つしかない。少なくとも今の善逸が使うには、かなり賭けの要素が大きな技だった。

 蜘蛛は統制を失う。小蜘蛛は千々に消えていき、人蜘蛛は力なくその場に倒れ込んだ。

 人蜘蛛が元に戻る様子はない。人を蜘蛛に変えるまでが血鬼術であって、変えた姿を維持していた訳ではないという事なのだろう。さすがに毒まで維持しているとは思いたくないが、当り前に試す気になどなりはしない。

 初めてまともに鬼を討伐して、実感が湧いてきた。だがそれを、獪岳の隣に立てた喜びが凌駕する。

 我妻善逸は、一人では何の価値もない失敗作。これは純然たる事実だ。だが。少なくとも獪岳と共にいれば、僅かなりとも自分に価値がある。役に立てる。まだ鬼殺隊でいる資格がある。

 疲労で尻餅をついた所に、獪岳がやってきた。

 

「俺はこのまま炭治郎の救援に行く。お前はここで待ってろ」

「俺も……」

「やめとけ、もう限界だろ。付いてきても足手まといだし、ここで蜘蛛にされた人を守ってろ。今の鬼殺隊は頭のおかしい薬剤師がいるからな、もしかしたら治せるかも知れねえ」

 

 足手まといというのも本当だろうが、恐らく、善逸を守るためというのもあるのではないかと思った。

 そこまで過保護にされる程ではない、と思うが。反面、確かに限界はあった。これ以上足を酷使するのは今後に関わる。

 すぐ駆け出す姿勢になっていたが、ふと獪岳はこちらを振り向いた。

 

「善逸。お前は自分が思ってるほど駄目じゃねえよ」

 

 それだけ言って、反応も待たずにとっとと闇の中へ潜る。

 しばし、ぽかんとしていた善逸だったが。やがて言葉を理解して、真っ赤になりながら頭を抱えた。なんだか今日の獪岳は、妙に優しい気がする。さっきまでさんざん殴られていた気もするが。

 頬を両手で叩いて、気合いを入れ直した。任せられたことを完遂する。話はそれからだ。

 とは思ったものの。

 顔を上げて、善逸は座ったまま思わず全身を跳ねさせた。いつの間にか人蜘蛛が、それこそ獪岳に殴られてろくに動けない者まで善逸の周囲に集まっていった。ぱっと見、首だけの落ち武者集団である。そんなものがいきなり目の前にあって、驚かない訳がない。

 

「あの、皆さん?」

 

 とりあえず、意思疎通はできるのかと思いながら問いかけてみる。

 

「ぁ……ぅ……」

「ぃ……ぎぃ……」

 

 自意識らしきものは、感じないこともない。が、どのみち声帯までいじられているのか、まともな言葉にならなかった。小さな呻きが、まるで死に際の病人が助けを求めているようだ。

 顔からは感情を読み取れない。それぞれ顔立ちは違うのに、判を圧したような同じ表情。自分がそういう顔をするときどんな事を思っているのかな、と考えたが、どうしたってろくな答えがでてこずやめた。

 暗い森の中。一人きりで、何かを訴える化け物に囲まれる。どんな地獄だこれは。

 

(誰か)

 

 近くの木に背を預けて、膝を抱えて座る。人蜘蛛たちは、相変わらず焦点の合わない目で善逸を追いかけ続けた。

 今すぐ逃げたい。でも、彼らを置いて立ち去る訳にもいかない。この状態はいつまで続くのか。

 

(誰か助けて……!)

 

 可能な限り息を殺しながら、心の中で大きく悲鳴を上げた。

 そんなものは当り前に誰にも届かず。少しでも早く状況が変化してくれと願いながら、人蜘蛛が視界に入らないよう努めながらひたすら静寂に耐え続けた。

 

 

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