ストーンマン拾ったんで魔改造するです!   作:ヤトラ

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ストーンマンってかっこいいよね。
そんな彼(?)を幼女を用いて活躍させたくて書きました。

・訂正:デンサンシティのとあるカフェ→クリームランドのとあるカフェ


【クリームランドの巨壁】

 

 巨大な壁がまた一歩前進する。その一歩は戦闘エリアを大きく揺らしてパネルに罅を入れ、オペレーターのナビを振動で動けなくする。

 

 その壁の実態は、煉瓦の家のように立方体を象ったネットナビだった。その姿に見合った独特の大きな手足が独立して動いており、見上げるような巨大さに拍車をかけている。

 ナビの名前はストーンマン。ネットバトルの対戦相手なのだが、その巨体がゆっくりと、しかし着実に前進を繰り返しながら追い詰めている。

 

「まだだ! プログラムアドバンス、『ゼータキャノン』!」

 

 焦りを抑えオペレーターは『キャノン』のバトルチップを連続でPETに挿入。画面内のナビが今しがた受け取った強力なキャノン砲『ゼータキャノン』を放つ。

 次々と撃たれる砲撃が全てストーンマンに直撃するも怯みすらせず、むしろ独立した巨腕を叩きつけて周囲を大きく揺らして落石を発生させる。

 避けようにも彼がまた一歩進んだことで自陣が更に狭まり、加えて彼に設置された二つ(・・)のストーンキューブが邪魔で身動きが取れず落石が直撃。

 

 幸いにも見た目に反してダメージ量は少なくHPにも余裕がある―――数値だけで見れば。

 

 様々な攻撃を当ててもストーンマンは怯まず、致命傷を与えたとしてもストーンマンのオペレーター(・・・・・・)が送った『リカバリー』系統のチップで回復される。

 

 故にゆっくりと、しかし着実にあの巨体がコチラへと迫ってくる。

 

『もうダメだ、後がねぇ!』

 

 『ゼータキャノン』を撃ち終えたナビの叫びでオペレーターは我に返り、PET画面を見る。

 

 前には硝煙を上げるストーンマン。後は行き止まり。

 

『早くチップを! チップを送信してくれ!』

 

 慌てふためくも身動きできないナビに対し、オペレーターは震えるだけで手が動かない。

 最早勝ち目がないと解り切ってしまい思考を放棄してしまったのだ。

 

 ストーンマンは無言で両腕を振り上げ、空中でガコガコと音を鳴らしながら変形し合体、巨大な四角いハンマーが出来上がる。

 

 そのままストーンマン必殺の一撃『ストーンハンマー』を―――。

 

「降参、降参する! 止めてくれぇぇぇっ!」

 

 ナビの絶叫がオペレーター決死の叫びに重なった直後に振り下ろされた『ストーンハンマー』が急停止。

 そのまま腕を元の形状に戻し、攻撃の意思は無いとばかりに立ち止まる。デリートから逃れたナビとそのオペレーターは安堵のあまり座り込んだ。

 

『対戦ありがとうございました、です』

 

 そんな彼らに声をかけたのは、ディスプレイに表示された少女……ストーンマンのオペレーターだった。

 灰色のロングヘアーを揺らす可愛らしい少女だが、無表情なのが災いして石像のような印象を受ける。

 

『ゴゴゴ……怖ガラセテ悪カッタナ……立テルカ?』

 

『あ、ああ』

 

 カタコトで話しながら巨腕を差し出し、それにしがみついたナビを立たせるストーンマン。

 見上げてしまう程の巨体に加え先の追い詰め方もあって恐怖ばかり浮かんできたが、実際は紳士なナビのようで安堵の溜息を溢す。

 

『ごめんなさいです、これが私達流のネットバトルなのです』

 

「確かに怖ぇ戦い方するなお前ら……まぁ人のバトルスタイルを責めるほど俺等は落ちぶれてねぇよ」

 

『……さっきの降参といい、思いやりのある良いネットバトラーですね』

 

 意外にも感情豊かに聞こえる彼女の言葉に反応したのか、PETに戻ったナビも『ありがとうな』と礼を言ってくる。

 あの巨大なハンマーで押しつぶされる自分のナビを見るのが怖くて降参したのだが……それでもオペレーターは照れくさそうに笑った。

 

『私のリンクを送ります。腕を磨いて挑みたくなったら連絡して欲しいです……ではまた!』

 

『ゴゴゴ……次ハ俺ノぼでぃニ罅ヲ入レテミルンダナ……』

 

 PETに彼女のリンクデータが受信したと同時にディスプレイ画面が途切れ、ストーンマンがプラグアウトする。

 

「あれがストンナ・キロクラム……クリームランドで有名なオペレーターか……」

 

『噂通りだったな』

 

 肩の力を抜いたオペレーターとそのネットナビは、石像のような小さな少女と要塞の如きネットナビを思い返す。

 

 曰く、クリームランドで知らぬ者は居ない天才オペレーター。

 

 曰く、超重量級ネットナビで敵を追い詰める【クリームランドの巨壁】。

 

 不確かだが、クリームランドの王女とそのネットナビが彼女とストーンマンを好敵手(ライバル)と認めているという情報まである。

 

 そんな彼女は大のネットバトル好きで、日々ネットワークを練り歩いては見知らぬ誰かにネットバトルを挑んでいるという。

 自分達もデンサンエリアを散策していたらいきなり遭遇し、噂を耳にしていた事もあって快く挑戦を引き受けた所、あのような恐怖体験をする羽目になってしまった。

 

『おっかねぇ奴らだったなぁ』

 

「けど可愛かったよな」

 

『そうかぁ?』

 

 下手をすれば近所の秋原小学校に通う小学生らよりも年下かもしれない少女を思い浮かべて紅潮するオペレーターを見て心配するナビであった。

 

 

 

 

「ふひひ、『圧倒的巨体がジワジワ迫ってくる恐怖』を叩きつけてやったです! これだからネットバトルは止めらんねぇ!―――です」

 

 クリームランドのとあるカフェで無表情のままテンションを上げている幼女にビビる周囲の客達。

 

『ゴゴゴ……相変ワラズ妙ナおぺれーたーダナ……』

 

 そんな幼女にようやく慣れてきたものの、奇妙なオペレーターに拾われた自分の境遇を可笑しく思うストーンマン。

 

 

―――これは『ロックマンエグゼシリーズ』に転生したにわかプレイヤーが、前世より憧れていた【超重量級的相棒を使役する幼女ロール】を楽しむ物語である!

 

 




○ストンナ・キロクラム
クリームランド在住のオペレーター。銀髪ロングヘアーの幼女(8歳)。
名前の由来はストーン+「t(トン)」と「キログラム」といったグラム単位。
研究者の両親を持ち、8歳で防衛プログラムやバトルチップを作れる才女。
その正体は前世とゲーム知識を持った転生者(元男性)だが、ゲーム知識は大して役に立たない上、その才能は努力の成果である。
無表情で石像のような印象を受けるが、「ふひひ」と笑ったり「~です」口調で喋ったりとリアクションが激しい変人。素直で良い子ではあるのだが。

○ストーンマン
元WWW所属のネットナビ。現在はストンナ・キロクラムのネットナビ。
デリートしかけた状態で放置されていた所をストンナの母のネットナビが見つけ、それをストンナがインストール、修復した。
今では【クリームランドの巨壁】の二つ名を持つ程に有名ネットナビとなっている。昔は「ゴゴゴ」しか言えなかったが、現在は片言ながらも会話が可能。
オペレーターであるストンナの奇抜さに最初は戸惑うも徐々に慣れてきた。

○ストーンハンマー
ストーンマンの必殺技(当作オリジナル技)。両腕を合わせて巨大なハンマーと化して振り下ろす。下手なナビだと一撃でデリートされる。

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