ゲートに設置されてた梯子を登り、熱斗達が集めた種子等から抽出した植物油を注ぎ暫く待つ。
嫌な摩擦音が響いていたのが徐々に弱まり、やがて綺麗な機械音を出してゲートが開かれた。
「ゲートが開きました、これで先に進めますね」
「ご苦労様」
ミリオネアは降りてきた運転手にチップを手渡しす……顔に白いパックをつけたままで。
「このオイル、お肌にスーッと馴染むね~」
「スンスン……なんか良い匂いすんな」
「保湿効果もあるしアロマとしても使えるネ」
「潤滑油だけじゃなくお肌にも優しいだなんて凄い油だわ!」
「植物の力って凄いでちゅね~」
「折角や、お袋の土産に一瓶買うたるか」
「あのさ、早いとこ先に……」
皆で集めた素材から抽出した油が万能すぎて皆の注目を集めてしまった。
この空気を前にしては勢いと勇気が売りの光熱斗も強く言い出せない……というか。
「あ、ホントだ良い香り……」
『熱斗くん……』
普段は食べ物の匂いでしか釣られない熱斗も、アロマオイルの香りで癒されていった。
三度も訪れた世界の危機には程遠いはずなのに、どうしてこんなに疲れるんだろう……。
―――この後めちゃくちゃアロマオイルで癒された。
―――
―――
「あれが老師の研究所ネ」
第二ゲートを潜って少し歩くとジャスミンがとある施設を指差す。
背の高い竹林をくり抜くに立つ、近未来を思わす無駄のないデザインをした建物。
科学省ほどではないが立派な建物を見上げた一同が思わず「おー」声を上げると、ジャスミンはどこか自慢げに鼻を鳴らす。
その研究所の正面玄関に、恰幅の良い中年男性が待ち構えていた。
大きなお腹に合わせた紫のチョイナ服を着込んだ彼は、細長く白い顎鬚を摩りながら、どことなく胡散臭い笑みを浮かべて笑い出す。
「ぎょほほほ。ワテが、この研究所の所長やっとるロウ・スィでおまーす」
「ろーす、さん?」
「ロウ・スィや」
「それより老師、お駄賃寄越すネ」
「せやからロウ・スィやて……なんで誰もちゃんと名前で呼んでくれへんのや〜」
盛大に溜息を零しながらもジャスミンにお駄賃を手渡すロウ・スィを見て、熱斗は苦笑いするのだった。なんでだろうね、不思議だね。
「まぁええわ、みゆきの嬢ちゃんから話は聞いとるで。ネットナビの呪いを解いて欲しいんやろ? いや〜……ほんまえらいことになっとるな」
呪いで変身させられたロックちゃん・パンダガッツマン・アヒルグライドをPET越しに見て冷や汗を浮かべる。
被害者が増えてしまった件については、心当たりがあるのか然程驚いていない様子。
「そうだ、お願いしますロウ……スィさん!」
「言い直せて偉い! せやけどワテ、研究所から追い出されてもうてんのや」
「追い出された? もしかして猿みたいなナビと河童みたいなナビと関係あったりすんのか?」
てっきり熱斗達を出迎える為に外で待っていたかと思っていたが、どうやら違うらしい。
デカオが心当たりを口にするとロウ・スィは「それな」と指さす。
「この研究所はあんさんらのネットナビが掛かってもーた呪いの素……呪泉郷っちゅう危険地帯の管理も兼ねとるんや。研究所の電脳を占拠しワテを追い出したネットナビ三体も、そいつを悪用しようと何か企んどるんや」
「げ、呪いの元凶も兼ねとったんかいな……」
「その変な三体組のネットナビってなんなのか知っていたりしないかしら?」
「ええ質問やなデ
「デ……ッ」
ピカリとオデコを輝かせて青筋を浮かべる綾小路やいと。駄洒落のセンスからして、この
笑いを堪えて話を進めるよう促すと、オホンと咳き込んでからロウ・スィは話を進める。
「その三体のネットナビ……バスターロッド・G、メガウォーター・S、そしてハイパーストーム・Hは、ウラインターネット対策としてチョイナ科学省が特例で造った強力なネットナビなんや」
「……ほんとでちゅかぁ?」
チサオが疑惑的な視線を向けるのも無理はない。何せバスターロッドとメガウォーターの時点でネタ臭がとんでもなく強く、とても強キャラとは思えなかったからだ。
恐らくこの正面玄関を占めているのであろう、ハイパーストーム・Hと対峙するだろうが……今からどんなキャラなのか不安になるレベルである。
「まぁあんさんらの思うとる通り、性格にメッチャ難があってなぁ。イタズラしまくった結果オフィシャルに怒られ、そのまま逃げ出して追われる立場になってもうたんや」
「『色々と酷い』」
「そないならオフィシャルに……いやカッパマンが足止めしとる言うとったな」
「それがな、あの伊集院炎山はんが来とるんや。既に研究所内におる」
ロウ・スィの発言に一同が驚く。オフィシャルのエースオブエースがいつの間にチョイナに来ていた事にも、既にこのトンチキイベントに混ざっていた事にもだ。
「なんだ炎山のヤツが来てんのか! 勝ったなガハハ!」
風呂に入ってくる勢いで喜ぶデカオだが、ロウ・スィは浮かない顔のままだ。
「せやけど一向に炎山はんから連絡があらへんのや。ここに来る前も声が震えとったし、なんかあったんちゃう?」
「『あっ』」(察し
首を傾げるジャスミンを除いて察する一同。勝った気でいたデカオですら青褪める程に嫌な予感しかしなかった。
「ほんで今は正面玄関の電脳にハイパーストームがおる。そいつをなんとかせぇへんと中に入れへん、即ちロックちゃんらの呪いを解けへんのや」
「よ、よし! 早いとこデリートしてやろう!」
『熱斗くん言葉使い、言葉使い』
パンダやアロマオイルで癒されたとはいえ流石の熱斗も疲労とストレスがたまっているようだ。
とはいえ、クーモスやサーキラー、そして刺客ネットナビのことを考えると不安でしか無い。
ならば少しでも負担を減らしてやるのが友達というもの。メイルを筆頭に次々と自身のネットナビをプラグインさせるのだった。
そうしてネットナビ達が玄関の電脳に入ると……超重量級の巨壁が聳え立っていた。
『ゴゴゴ……ソンナワケデ』
『次の刺客は我々なのです!』
「『知ってた! ネタ系ナビカスパーツと言えばストンナだからね!』」
細い一本道を防ぐストーンマンとストンナのディスプレイを見て自棄っぱちのように叫ぶ熱斗とロックちゃん。
実は呪いのナビカスパーツを見てストンナのジト目顔が浮かんだ時点で、もしかして、とは思っていたらしい。それはメイル達も同じで、チサオですら納得して頷く程だった。
『まぁまぁ熱斗さんにロックちゃん、これには深ーい事情がありましてね?』
「……どーせ性別を変えられるナビカスパーツの話を持ちかけられて、面白そうだからっつーて安易に引き受けたんだろぉ?」
『デカオさんの言うとーり!』
「堂々としてるストンナちゃんカッコいいでちゅ…」
まさか呪いとは思わなかったですが、とストンナは一応反省の姿勢を示している。
知らなかったとはいえWWWの幹部を魔改造したことといい、この幼女は妙にフットワークが軽い。
なら三バカトリオの刺客になる理由は何かと言えば。
『ゴゴゴ……スマンガココカラ先ハ通サン!』
『……ボインのエッチ画像フォルダ暴かれたんでガスな?』
『がっつまんノ言ウトーリ! ブッチャケろっくチャンカナリ好ミ!』
『キャラ崩壊してないかプク?』
何故ストーンマンの画像フォルダを知っていたのかについては、ガッツマンは固く口を閉ざしていたという。
『あとブタさん曰く、もうちょっとで良いモノが出来るから時間稼いでねハート、とのことですので!』
『ココカラ一歩モ動カナイ!』
そう言い残してストーンマンはストーンボディ状態となって沈黙してしまう。
ストンナのオペレートやカスタマイズも考えると、ひたすら『リカバリー』と『インビジブル』で耐久するつもりか。タダでさえバカ高いHPをナビカスパーツでプラスして。
なるほど、時間稼ぎにはうってつけである。こんな時に防御役として活躍するなよクリームランドの巨壁。
『これは……』
『総力戦でガスな』
『クケッ!』
女体化ロックマン、パンダ化ガッツマン、
『では……いでよ!』
キングマンは早速とばかりに切札である【クイーン】を召喚。ナイトマンとプリンセス・プライドを足して2で割ったようなチェスチップが、鉄球を振り上げ怒っているように見えるのは気の所為ではないだろう。ストンナビビってるし。
この後めちゃくちゃダメージ出した。
トロトロ遅くなってますし返信もしょっちゅうど忘れしますが、いつも感想や誤字報告ありがとうございます。