幾ら高いHPを持っていようとも、大半のダメージを1に抑えれたとしても、オペレーターが耐久と回復を得意としても。
全く動けないなら、ブレイク属性を持つガッツマンとキングマン(正確には『クイーン』)には敵わないのだ。
『くりーむらんどノ巨壁……形無シダナ』
『お疲れ様なのです、ストーンマン』
鉄球と拳の跡でベッコベコなストーンマンのHPが0になったことでPETへ強制プラグアウト。
それを見送るストンナの顔も、いつものジト目無表情でありながら「うん、知ってた」と言ってるかのような悟り顔っぽくなっていた。気のせいかもしれないけど。
「バトル開始から2分……まぁ持った方やな」
「クリームランドでも1、2位を争う高耐久ネットナビ相手なのよねぇ……流石だわ」
やいとの称賛にポーズを取るガッツマンと髭を抓むキングマンも誇らしげだ。後ろではロックちゃん達が拍手を送っているし。
『これでお役御免なのです。新種のウィルスのデータ採集も終わったですし』
「後でプライドさんに話しておくからね」
『……はいなのです』
やはりというか、プリンセス・プライドやストンナの両親には内緒だったらしい。軽い気持ちで受けたら指名手配ナビだったとはいえ、途中でも断る相談すればよかったのに。
一国の王女とはいえ今や友人となったメイルは容赦なくプライド宛てのメールを作成、ストンナは覚悟を決めたように項垂れた。
―この後めちゃくちゃ三者にお説教され、一週間オヤツ抜きの刑罰を受けるストンナでだった。
『えっと、この先だよね』
ストーンマンをサンドバックにしてどかしたことで、真っすぐ伸びた道を進むロックちゃん達。
強力なウィルスもなくスムーズに進んでいると、開けた場所に佇むネットナビの姿が見えてきた。
大きな鼻に下顎から伸びる短い牙と、どことなくコミカル調の強いイノシシ……いやファンタジー漫画に出るような
サイズはガッツマン程で腕も大きいが、特に大きなのは送風機が埋め込まれた腹部だ。どっしりとした足腰もあって如何にも鈍重そうだ。
「お前がハイパーストーム・Hか!」
『イカにもタコにもワタシはブタさんだ……よくぞ辿り着いたなってマジで早いねタコ殴りかいな』
『まぁ幾ら大きくて硬くても動かないからね……』
『んま~大きくて硬いのが動かないだなんてヒワイですわねロックちゃん』
『……なんのはなし?』
『あぁ〜ピュアハートアイズがワタシの心のHPをガリガリ削るんじゃぁ~』
一体なんなんだこのブタナビは……と若干引いている熱斗達(ロウ・スィを除き18歳以下)であった……流石に「大きくて硬い」は子供には通じないネタだったようね。
「そんなことより、お前がロックマンを女にしたナビカスパーツを作ったのか!?」
『そんなこととは失敬な。折角の美少女を楽しまないだなんて、キサマそれでも男ですか~ん?』
『た、楽しむって何なのか分かんないけど……とにかくこれ以上トンチキは起こさせないぞ!』
『残念だなロックちゃん……ワタシのエロスパワーを甘くみるとは』
そう言ってハイパーストームは片腕を変化。一見するとバトルチップ『ラビリング』の銃口に似ているが……。
いきなりの攻撃姿勢に身構えるロックちゃん達が、彼は不敵に笑うばかりだ。思わず背中に冷たいものが走る。
『まずはキサマからだ……食らえ~い!』
『うおぉぉぉっ!?』
謎の虹色光線が狙いすましたかのようにキングマンを襲う!
「き、キングマン!? 『インビジブル』は発動したはずやで!?」
『ブハハハ! 残念無念、これはバトルチップではない特殊なプログラムなのだわさ』
『なにが特殊なんだプク?』
『今に分かる……』
ハイパーストーム・Hがこれ以上の攻撃を仕掛けないことまあり、煙に包まれたキングマンの身を感じて固まってしまう一同。そして煙が晴れると……。
「『誰だお前!?』」
キングマンだと分かっていても、どこかで見たような謎の美少女と化したことで思わず叫んでしまう! キングマンの面影薄いぞ無理やりすぎだ!
『……』
「察したが敢えて聞くで……大丈夫かキングマン?」
『遠慮はいらん。存分に……かかってこられよ』
『二度あることは三度あるってヤツか……クケッ』
大きさはそのままなことや普段の装いもあり、容姿とは裏腹に威厳たっぷりなのがまた滑稽である。
『い〜やったやったぜぇ〜い! ついにどんなネットナビでも美少女化になる呪いエネルギーが完成したわ〜い!』
『なんて恐ろしいことをするんだ!』
ロールちゃんとメディに可愛がられる美少女化キングマンを見て喜ぶハイパーストーム・H。
まさか魔改造のレベルで美少女化してしまったことに、ロックちゃんだけでなくガッツマン・グライド・バブルマンも抱き合うぐらいに恐怖した。カッコいい系を目指す男に美少女化は堪えるモノなのだ。
『そんじゃ実験も成功したんだし、ドアロック外して戻りますわよ。ロウ所長も連れていらっしゃ〜い』
『逃さないプク、バブルリード!』
息を吹きかけて作る大きな泡が飛ぶも、ハイパーストーム・Hは足裏の送風機を起動しホバー移動。機敏に避ける。
そこへロックちゃんのワイドソードが、ガッツマンのガッツハンマーで生じた衝撃波が、グライドがやいとから転送してもらったバトルチップが炸裂する。
いくら呪いで姿が変わったとはいえ彼らも実力者。しかしチョイナ科学省が特例で作られたネットナビは伊達ではなく、ホバー移動でスイスイと避け続ける。
『フフフ……この手は使いたくなかったのだがな』
やがて意識を取り戻したキングマンちゃん様が繰り出す『ナイト』のチェスに追い込まれる中、ハイパーストーム・Hは突如として立ち止まる。
真剣な空気に呑まれて身構えていると……クルリと振り向きケツ(?)を向けて力み!
『ドクガスボム発射〜!』
ーー大変下品な爆発音
「いやぁぁぁロールーっ!!」
エリアを充満していた茶色い煙が消え去ると、そこには白目を剥いて気絶するネットナビの数々が。
「し、シーシールイージでちゅ!」
「それを言うなら死屍累々や……」
「ネットナビに嗅覚ってあんのか?」
「あるよそれぐらい! ロックマンしっかりしろー!?」
取り敢えずデリートしてはいないが、心のHPはゼロに近かった……。
ジャスミンと協力して素材を集め【電脳臭い消し】を作ってあげたよ!
ーーー
「ご苦労はん、これで入れまっせ」
「よし……行くぞ皆!」
「「「お、おー!」」」
ロウ・スィが太い指で端末のボタンを押すと玄関が開かれ、空元気ではあるが雄叫びを上げて研究所内に突入! ジャスミンとロウ・スィは呑気に手を振って見送ってた。
綺麗に掃除された施設内を走り、ロウ・スィが丁寧に作った客人向け案内板を頼りに先に進んでいく。
全てはロックちゃんとパンダガッツマンとグライド・シタッパーとキングマンちゃん様を元に戻すため……なんで被害者がこんなに増えたんだろう。
そんな彼らの前に立ちはだかる最後の刺客とは?
まて次回!
謎の美少女(元ネタはロックマンDASHのセラ
キングマンちゃん様なのは作中でセラ様と呼ばれてるから。