動画サイト「WorldTube」によってネット先進国として返り咲いたクリームランド。その中核であるクリームランド城の一室、通称「ラウンドテーブル」に人が集まっていた。
ネット自警隊「ネットナイツ」創設者にして第1席、クリームランド王女プリンセス・プライド。
第2席、科学者の名家キロクラムの次期当主にしてネットナビ専門家ストンナ・キロクラム。
第3席、豊富な移動手段でクリームランド各地を回るアケート・フィギュス。
第4席、高い行動力と火力で様々なネット事件を解決した公爵家長女バスト・ブレラスト。
第5席、情報処理能力が図抜け通信技術に詳しい参謀クリス・マインマ。
第6席、護身術及び交渉術に秀でたプライド専属SPケンスロット。
第7席、数多の功績により釈放のち拝命した元ネット犯罪者モール・ド・レッド。
第8席、おっとりとした人柄でネットナイツの不仲を正すウール・フワット。
第9席及び第10席は空席となっているが、それぞれの椅子に座り円卓を囲っている。
「全員揃いましたね―――ナイトマン」
『はっ……これよりネットナイツ定例会議を始める』
プリンセス・プライドに続き、隣に置かれたPET台座に映るナイトマンが宣言する。
そして各々は……円卓に広がるアフタヌーンティーセットに手を伸ばし紅茶と茶菓子を楽しみ始めた。部外者であるはずのカラハット……ケンスロット卿の一人娘(8歳)も加わって。
「……発言を許可願います」
「そう堅くならなくていいですよケンスロット卿。どうぞ」
「我々は定例会議をしに来たのですよね? それも重大な発表があるとお聞きしたのですが」
「ここ最近はこんなもんだろ、一々ツッコむ必要ねーんじゃね?」
「しかしだなモール卿」
「カラハットちゃん、このスコーンと苺ジャム美味しいのですよ~」
「ありがとうございましゅ、頂きましゅ」
「しかもなぜウチの娘がいるんですか……」
「ストンナが誘ったんですよケンスロットさん。まぁそれはいいとしてですね」
真面目なので戸惑うケンスロットを、真面目だけど折り合いをつけやすいアケートが話を戻す。その水色の髪は、冬の国を強く生き抜くシャーロの血を引く証なのだ。
カチャリ、とカップをソーサーに置いてプリンセス・プライドが顔を上げる。
「では始めに、近日クリームランドでも続出しているダークチップ被害に関する報告です。ストンナ・キロクラム」
「はいです。クリームランド電脳では、市販バトルチップに偽装したダークチップが混入、誤って使用し暴走したネットナビが後を絶たないです。実に巧妙な偽装であり、ネット商人の多くは知らず購入したと証言してるです」
「クリームランドでは警邏や防衛ウィルスが多く、オモテウラ関係なく闇取引は取り締まりやすいのですが……ネビュラは資金の為にダークチップを広めているわけではないと?」
「そのようですプライド様。ここだけの話……先日SPの同僚が偽装されたダークチップを使用、ネットナビが暴走しました。現在はPET内にて凍結中です」
「おいおいケンスロット卿の同僚が? SP隊のセキュリティチェックはニーナ・キロクラムが作った最新式だろ?」
「お母さんもめっちゃ悔しがってたのです……ネビュラの偽装恐るべし」
「は、発言を許可願います」
「第5席クリス・マインマ、発言を許可します」
「先日、クリームランド電脳金庫の門番ウィルス・クリームデビルがデリート寸前まで追い込まれた事態がありました、よね。下手人はダークチップ依存症に陥ったネットナビ数体、そ、それらはどうやら、ウラインターネットの傭兵ナビだったそうです」
「ソードマンが切り捨てデリートしましたが、あのパワーと狂気はそういうことでしたか」
「鉄砲玉かよ、胸糞わりぃ……」
「クリームデビルの頑丈さが上回って良かったね! ギリギリだったけど……」
「拡大するダークチップ被害に対し、ニホンオフィシャルは新たにアッフリクオフィシャルとも連携。対ネビュラシンジケート支部をさらに拡大した形となったです。炎山さんはネットナイツとも連携、クリームランドにも支部を設立し協力をと申し出てるです」
「積極的ですね〜伊集院さん〜」
「ニホンオフィシャルの腕前や技術力は高く買っています。加えて炎山ほどの腕利きネットバトラーから要請されたとなれば尚更。……私、プリンセス・プライドは、ニホンオフィシャルと連携し対ネビュラシンジケート支部をクリームランドにも敷くべきと提案します。何か意見は?」
プリンセス・プライドの発言に対し無言を貫くも、真摯な眼で彼女を見ていた。それが答えだ。
「では全員一致の可決ということで……入ってください」
恐らくは扉の前で待機していたのだろう。プライドの言葉に従い二人の人物が入室し、ネットナイツの注目を集める。
一人はクリームランド人らしい金髪碧眼の人物だが、女性とも男性とも捉えられる中性的な外観をしている。女性寄りのイケメン男子であるモールと違い骨太で男性寄りに見えるが……。
そしてもう一人はと言えば……。
(いやはや、他人の空似とは言ったものですねぇ)
ストンナ……正確にはキロクラム家と繋がりがある知人。しかしその姿は、ストンナという少女が
「二人は先日に引退した第9席及び第10席に代わり派遣されたネットバトラーです。名乗りを」
「プリンセス・プライドの推薦でネットナイツ第9席として拝命されましたケイロンと申します。カスタード大学助教授を務めておりました―――因みに女性ですよ?」
クリームランドで一番大きな学院の教師。眼鏡をクイっと上げて微笑む彼女は、その見た目と仕草も相まって真面目さと穏やかさを兼ね揃えた人物であると物語らせる。
「ネットナイツ第10席に拝命されました、エクス・ヴォルナットと言います。メガト・キロクラムの推薦で、ハッキングを生業とした科学者です」
青を基調とした
彼の姿はどう見ても……。
(ロックマンゼロに出てくるエックスさんに似ているんですよねぇ)
若干表情筋が回復したとはいえ基本無表情で良かった。未だに頭の中は驚きで満ちているのだから。
その顔はストンナの言う通り、英雄として立ち上がる事になったゼロを、サイバーエルフとなって陰から支える元レプリロイド・エックスにそっくりだった。
彼のトレードマークである青いヘルメットこそ装着してはいないが、そのギザギザした髪型やファミリーネーム「ヴォルナット」を考えると、ロックマンDASHの「青い人」の要素を受け継いでいるのだろう。
父メガト・キロクラムの仕事仲間だと紹介させた時に思わずとった「シェーのポーズ」は、我ながら見事までの「シェー」だったとストンナは振り返っている。ビビったエクス以外は「いつものことか」と通常運転だったが。
これだけなら「ネットナビにもロックマンシリーズのそっくりさんはいるし今更か」と割り切れたのだが……彼のネットナビにも驚くべき要素があった。
「挨拶も終えたようですし二人とも、PETを」
会議というよりお茶会な雰囲気に呑まれリラックスしたケイロンとエクスは各々から歓迎を受け、着席すると同時にPETを専用の端末に差し込む。
テーブル下に設置されたサーバー「円卓の電脳」には、既にネットナイツのネットナビが募っている。
クリームランド最強の重騎士ナイトマン。
ナイトマンと肩を並べる巨壁ストーンマン。
氷の貴公子を自称する気高き戦士ツンドラマン。
火力重視の大柄な水属性ネットナビ・バーストマン。
情報処理能力に秀でた六角形の水晶クリスタルマン。
褐色肌に白い毛皮を纏わすおっとり系お姉さんシープ。
卓越した剣術と防衛能力を有する騎士ソードマン。
破壊力という言葉を体現した異形の重戦車ホッタイド。
新入りが入るという事でナイトマンを中心にして横一列に並んでいた所へ、新たなネットナビが二体プラグインされる。
一体は、アトランピア神話に登場する半人半馬の幻想種「ケンタウロス」そのもの。明るい緑をベースにしたカラーリングで、片腕のバスターはクロスボウとなっている。
もう一体は、ニホンに伝わる
『名乗りを上げよ』
どことなく声が上ずっているが、ナイトマンは形式美として新入り二人に申し出る。
『ケンタウロスウーマンです。よろしくお願いします』
お辞儀していた顔を上げ、ふわりと大人びた微笑を浮かべるケンタウロスウーマン。彼女の視線はナイトマンに向けられており、当ナビは落ち着きなく顔を逸らしている。
『……拙者はファントゥームと申す者。エクス殿の忠実なる
腕を組んで直立する静かな佇まいと威圧感は正にニンジャ。しかし眼は穏やかで、彼は本来暗殺や破壊行動を好まないのだろうとなんとなく理解できる。
「ファントゥーム、ボク達はこれからネットナイツとしてクリームランドの為に共に戦うんだ。ボクばかりに忠誠を誓わなくても……」
『否。エクス殿は記憶もアテもなくネットワークを彷徨い傷ついた拙者を救ってくださったお方。これは運命の出会いなのです』
かつてデリート寸前でストンナに拾われ救われたストーンマンは、ファントゥームのエクスへの忠誠にかなり共感したのか無言で頷く。
祖国の為に立ち上げたネット警邏隊として如何なものかと思うだろうが、主を慕い主に忠誠を誓うネットナビは多いので反応は概ね良好だった。
(何度見ても狙ってやったとしか思えない組み合わせなのです)
何せファントゥームは、ロックマンゼロシリーズに登場するネオ・アルカディア四天王が一角、隠将ファントムのそっくりだったのだから。名前の由来も同じ「幽霊」だし。
メガトやニーチ、そしてストンナ自身も気になって調べたが、彼の記憶データは本気で必要最低限のみ。救いの手を差し伸べたエクスによりファントゥームと名付けられた時より、彼は運命に似た物を感じて忠誠を誓い始めたのだから倍驚いたものだ。
確か作中においてファントムは途中退場したしもしやと思ったが……これ以上の思案は無粋だろう。
「ネットナイツ第10席・エクス及びファントゥームは、対ネビュラシンジケートを想定し、ウラインターネットを中心とした諜報員及びハッカーとして活動してもらいます。よろしいですね?」
「承知しました。祖国と恩師メガトさんの期待に応える為にも誠心誠意励むつもりです」
プリンセス・プライドの問いに頷くエクス。
かつてはクリームランド唯一のオフィシャルネットバトラーとして孤軍奮闘してきたプライドだが、今はこうして頼もしい仲間や友人と共にできる。
「では会議はここまでにして、お茶会を続けましょうか。 そういえば近いうちに開催するホイップトーナメントについてですが……」
その喜びを噛み締めつつ、プリンセス・プライドはネットナビ達を交えながら会話を楽しむのだった。
「ホイップトーナメント楽しみなのです! このストンナとストーンマン、プライド様とナイトマンに勝てるよう特訓するですよ!」
「あ、そのことなのだけどねストンナ……」
「プライドしゃまとストンナしゃんは出禁と聞いてましゅよ?」
「えーっ!?」
「私は王女として優勝者と対峙する役割がありますが……ストンナ、あなたコレまでに何回誘拐されたと思っているんです?」
「えーっと……3回ですね」
「諦めなよストンナ、また誘拐されそうだから」
「(´・ω・`)」
「うわ、ホントに僅かだけど表情変わってる!」
ゴスペル・WWW・極めつけにはコンドルにも拐われた事がある幼女、トーナメント不参戦決定!
この幼女誘拐されすぎ。
〇モール・ド・レッド
クリームランドのネット自警団「ネットナイツ」の第8席。竹を割ったような金髪碧眼の青年。女性にも見えるが男である。
経営者である親の命令でライバル企業に圧力をかけるネット犯罪を続けていたが、徐々に嫌気がさして自首。その精神性と腕前をプライドは評価、更生も兼ねてネットナイツにスカウトされる。
名前の由来はモルドレッドより。それっぽく区切ったら良い名前になったので(笑
〇ホッタイト
ストーンマン級の巨大ネットナビ。ドリルをこれでもかとつけた、破壊力を前面に押し出したパワーファイター。
元ネタはロックマンゼロに登場する大型ボス。ぶっちゃけ土竜繋がりで採用。
〇ケイロン
辞退したネットナイツ第9席の代わりに入ることになった女性。男性にも見えるが女である。
クリームランド一の大学で助教授を務めていたが、ケンタウロスウーマンの出会いが切欠でプライドから勧誘、ネットナイツに加入することになった。
名前の由来はケイ+ケイローンより。
〇ケンタウロスウーマン
ケイロンのネットナビで、クリームランドにしては珍しい機動重視カスタマイズを施されている。大人びた女性。
元ネタは無印ロックマンシリーズのボスロボット。池原先生の漫画ではナイトマンと恋人という設定があり、それを採用。
〇エクス・ヴォルナット
辞退したネットナイツ第10堰の代わりに入ることになった少年。メガト・キロクラムが推奨した暗部担当。
ロックマンゼロシリーズに登場するエックスのそっくりさんに、ロックマンDASH主人公の髪型とファミリーネームを付け足した。
〇ファントゥーム
記憶も当てもなくネットをさまよっていた所を拾ってくれたエクスに運命を感じ、そのまま彼のナビとなった。
元ネタはネオアルカディア四天王が一角。名前の由来は「幽霊」のフランス語で、大体同じ。ある意味で転生。
意外なキャラが登場。あまり本編に関わりない。
次回はダイジェストでトーナメント戦を出しつつ事を進めます。
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!