注意:氷ウィルスに対して独自解釈があります。
オフィシャルスクエアの一角に、周辺の視線を集める釣鐘のような巨漢ナビが突っ立っている。
その巨漢ナビことナイトマンは周りの事など気にせず、あるナビ達を待ち続けていた。
「ム―――来ましたな」
「ゴゴゴ、待タセタナ」
向こうからやってくるナビもナイトマンに負けず劣らずの巨漢だった。
方や城塞のような大型ネットナビ、方や恵まれたフィジカルを持った大男のネットナビ。
前者はともかく後者は自身の与り知らぬ存在の為に首を傾げたが、まずは彼らを迎え入れる。
「四日ぶりだなストーンマン。もしや其方のネットナビが?」
「ゴゴゴ……がっつまん、トイウ。すとんなガ世話ニナッタおぺれーたーノなびダ」
「ガ、ガッツマンでガッツ。お会いできて光栄でガッツ」
大柄に分類されるガッツマンだが、ストーンマンとナイトマンが並ぶと小さく見える。更に、何故かガッツマンはナイトマン相手に下手に出ているからか、萎縮してより小さく見える。
ナイトマンは思い当たる節があるらしく、右手を差し出してガッツマンと握手を交わす。
「そなたがガッツマンか。ストーンマンの守りを破った剛の者だと聞いている。猶予さえあれば某とも戦って欲しいのだが……」
『ナイトマン、私にもご挨拶をさせて頂戴。お名前を聞かせてくれますか?』
ナイトマンに褒められて照れつつ握手に応じるガッツマンを他所に、PETのディスプレイが表示され、プライドが話しかける。
するとデカオ、ストンナの順にディスプレイが表示される。小国とはいえ王女が相手だからかデカオは緊張している様子。
『は、はい! 大山デカオっていいます!』
『私はプライドと申します。ストンナの面倒を見てくれてありがとうございます』
『い、いえ、なんてことはねぇです! ストンナから良いモン貰いましたし!』
『ストンナ良い子にしてたですよ、プライド様!』
『事が終わったら熱斗にも話を聞きますからね?』
『うぐぐ、です……』
すっかり和気藹々としているネットバトラー達。ネットナビ達も先のネットバトルの話で盛り上がり、とても各地で自然災害が起こっているとは思えぬ光景だ。
しかし、そんな重量級ナビ達に平然と割り込むネットナビとオペレーターが現れる。
『呑気に世間話をしている場合ではない』
「というわけだ。部外者はプラグアウト願うぞガッツマン」
『「炎山にブルース(でガッツ)?」』
オフィシャルのエースこと伊集院炎山とブルースであった。
ブルースはサングラス越しでも解る冷ややかな目でガッツマンを睨んでいるが、睨まれた側は寧ろ「なんだこのやろー」と眼を飛ばす。
睨み合うブルースとガッツマンの間に入ってナイトマンが制し、プライドが発言する。
『炎山、この2人が私の言う助っ人なのです。あまり威圧なさらないでください』
『キロクラムは解るがこの男が?』
『そうなのです、今の状況で最も適した役割なのですよ!』
自慢げに胸を張るストンナに対し、炎山は疑わしい目で彼女とデカオを見るのだった。
友人であるアケートのメールで知った、クリームランドで起こったという大寒波。
そのメールはプリンセス・プライドにも送られたようで、送り主の伯父であるイワン・コオリスキーとコールドマンが環境維持システムにハッキングして抑えているとはいえ、自国の危機と知って居ても経ってもいられなくなってしまう。
原因は突如として各国の電脳に散らばった、環境維持システムを狂わせ、閉じ込めたナビのプラグアウトを塞ぐという特殊な氷ウィルスにある。
この氷ウィルスを発生と同時に調べていたブルースと炎山は、少しでもサンプルが欲しいと破壊力に秀でたネットナビに協力を要請。それに応じたのが、事情聴取を終えたばかりのプリンセス・プライドだ。
さらにプライドは「破壊力に秀でているナビに心当たりがある」ということで更なる助っ人を呼ぶことに。そうしてやってきたのが、ストーンマンとガッツマンということだ。
その話を聞いて、なぜガッツマンが居るのかと首を傾げる炎山とブルース。
逆に話を聞いて、なぜ自分達が呼ばれたのかと納得してニヤリと笑うデカオとガッツマン。
ストンナに至っては「まさかここで役立てるとは!」ととても喜んでいた。
ブルースを先頭にナイトマン・ストーンマン・ガッツマンと続き、デンサンエリアを歩む。
三体の巨漢を背後に歩むオフィシャルのエース……周囲のナビ達が何事かと慄き道を空ける程に半端ない威圧感だった。
ガッツマン以外は気にすることなく、まずはナイトマンがブルースに問いかける。
「してブルースよ、氷ウィルスについて解っている事はあるか?」
「白い氷ウィルスならオレだけでも破壊は出来る。破壊するとウィルスが飛び出るが、大したことではない。だが赤以上の氷ウィルスはブレイク系統のバトルチップを送信しても不可能だった」
「ゴゴゴ……デハ俺達ヲ集メタノハ、ソノ氷うぃるすノ破壊カ?」
「ああ。ナイトマンの鉄球ならと思って協力を要請した所、ストーンマンの『ストーンハンマー』なら或いは……とプリンセス・プライドは考えたようでな……まずは此処からだ」
ストーンマンの問いかけにも答えつつ、特殊な電波が生じている事、この氷ウィルスが各国の環境維持システムを封じている事を説明していると、ブルースが立ち止まった。
そこは各国の電脳エリアへと続いている場所だ。アメロッパやアジーナ、そしてクリームランド……クリームランドの道は前述した二国に比べて気づきにくい場所に開いているが、一先ず置いておこうと王女と幼女は思った。
まるで狙いすましたかのように各国へ続く道が氷ウィルスで塞がれており、赤・黄色・青の三種類が揃っている。
「このように通せん坊していて困っていてな。頼めるか?」
コンコン、と赤い氷ウィルスをノックしたブルースの頼みに頷く三人。
まずはナイトマン。振り回すことで発生する遠心力が加わった鉄球が赤い氷ウィルスに直撃するが、平然と弾かれてしまう。弾かれた衝撃を上手く使って振り回し、今度は振り落とす。遠心力に加え重力まで足された鉄球の一撃は、ゴイィン!と派手な音と振動を与えるが……。
「……ダメですな、手応えがありませぬ」
「ゴゴゴ……次ハ俺ダ」
自慢の『ロイヤルレッキングボール』がまるで通じなかった悔しさを噛み締めながらナイトマンが後退、今度はストーンマンが赤い氷ウィルスの前に立つ。
両腕を変形合体させて出来上がった巨大ハンマーを高く掲げ、振り下ろす。ストンナが考案した強烈な一撃『ストーンハンマー』は、鉄球よりも派手な音と衝撃が氷ウィルスより生じる!
氷ウィルスは音を立てて砕けるが、その量は全体の4分の1にも満たない。しかし。
「手応エ……有リダ!」
『そのまま壊してしまうです、ストーンマン!』
ストンナの掛け声もあってストーンマンは再び『ストーンハンマー』をゆっくりと振り上げ、振り落とす。ブルース達が襲い掛かろうとするウィルスを蹴散らす間にも、それを3度繰り返し……大きな音を立てて氷ウィルスそのものが砕け散った。
「止し!」
「流石はストーンマンでガッツ!」
『確率的には低かったのだが、破壊できたとはな』
『なんだっていい、今はウィルスだウィルス! オレ達こういうウィルス苦手なんだよ!』
砕けた氷から飛び出たハイラビリー達を蹴散らしつつ、ブルースは思わず拳を握り、炎山は本当にネットナビの手で壊せるとは思わず少し驚いている。
ガッツマンとデカオは我が事のように喜ぶものの、ぴょんぴょん跳ねるハイラビリー達に苦戦している。だがナビ数はこちらが有利だし、ブルースが居る時点でデリートは容易いも同然。
最後のハイラビリーをデリートした後、ブルースは砕けた氷の欠片を回収し炎山のPETに転送。もう一つ拾い上げ、それをストーンマンにも手渡す。
「ストーンマン、この氷ウィルスの欠片をストンナに転送し、解析できないか聞いてみてくれ」
「ゴゴゴ……了解ダ。すとんな、転送スルゾ」
『解ったのですよ』
ブルースから受け取った赤い氷の欠片をストンナのPETに転送する。
確かにストンナはクリームランドでウィルスの研究にも携わったが、どちらかと言えば彼女はナビカスタマイズ及び改造を生業としている。案の定、赤い氷の欠片を分析してみたものの、首を傾げたり顎に手を添えたりして考えこみ始めた。
『うーむ……もう少し分析の時間が欲しいので、他の氷ウィルスを破壊しているのですよ』
『構わない。オフィシャルセンターにも転送して解析してみるが、視野を広げておいて損はない』
『なぁ、それなら熱斗の奴にもメールしといていいか?』
『熱斗に?……ああ、祐一朗博士か』
『そうそう。熱斗の父ちゃんなら早く解析できそうだからよ。つーわけだ、呼んでおくぜー』
デカオは早速とばかりに熱斗にメール。直に返事が来るとは思っていないので、ナビ達は次の氷ウィルスへと足を運ぶ。
続いては黄色い氷ウィルス。色ごとに強度が増していくというが、今度は『ストーンハンマー』を用いてもビクともしない。
『ふっふっふ、ここでオレ達の出番よ!』
自信ありげにデカオが言ってガッツマンが黄色い氷ウィルスの前に立つが、ブルースも炎山も疑わしい目で見るばかりだ。プライドも少し心配そうに見ているが、プライドは何故かワクワクしていた。
『グレードHDD、インストール!』
「へんし~ん! でガッツ!」
PETに装着された外付けHDD【グレートHDD】に搭載された【強化プログラム】がガッツマンにインストールされ、彼に外装が取り付けられる。
土木重機のような大型ペンチアーム、キャタピラ付きの装甲ブーツ、右肩に輝く「G」のイニシャル。これらを装着した魔改造ガッツマンが再び参上する。
「ガッツマーン……G!」
「G」のイニシャルを描くマッスルポーズを取強化ガッツマンことガッツマンG。そんなガッツマンを初めて見た者達の反応は様々だった。
目を輝かせるプライド。戦慄するナイトマン。「なんだこれ」と言わんばかりに汗を浮かばせるブルース。そして炎山はと言えば。
『……おいデカオ、ストンナ。このガッツマンは一体?』
『へっへーん! オレとストンナが開発した、PETに装着する小型HDDと、ガッツマン強化プログラム【グレードHDD】だ!』
『ようは装備品なのです! レギュレーションでは使えないですが』
『……なるほど。解った、続けてくれ』
ちゃんと免許持っているですよー、とPET画面越しにストンナが所持している免許の数々を見せつける。確かに公式試合などでは使えないだろうが、公式以外で使用する分には問題ない。
炎山はしばし考える素振りを見せるが、今はそれどころではないと思考を打ち切り、ガッツマンGに黄色い氷を破壊するよう促す。
『いっけぇガッツマンG!』
「ガッツアーム!」
デカオの掛け声を合図に巨大ペンチアーム『ガッツアーム』が黄色い氷ウィルスを掴む。そのまま力を加えればバギバギと音を立てながら罅が入り、1分と立たずに一部が砕け散る。
「ちと硬いでガッツが3分……いや5分あれば粉々でガッツ!」
『よっしゃあ、どんどんやれガッツマンG!』
周囲のナビとオペレーター達が感嘆する中、デカオの掛け声を合図にガッツマンが氷ウィルスを少しずつ破壊していく。
徐々に氷ウィルスが小さくなっていく中、ブルースとストーンマンが黄色い欠片を回収、それをそれぞれのPETへと転送する。
『凄いパワーね……ナイトマン、あのガッツマンGと戦うとしたらアナタは勝てますか?』
「……勝率は五分五分と言った所でしょう。速攻を前提とすれば、ですがな」
プライドとナイトマンはガッツマンGのパワーを目の当たりにして戦慄と期待を抱いていた。
ネットナビの改造に定評のあるストンナがガッツマンを魔改造していたのは聞いていたが、これほどまでのパワーを発揮するとは。
無論、強化前のガッツマンに挑むつもりではある。だが防御力を売りとしているナイトマンと、そんなナイトマンを誉れに思っているプライドにとって、パワー特化のナビ相手にどこまで戦えるかと楽しみになってくる。
炎山は未だガッツマンGをしげしげと眺め、何かを考えているようだが……黄色氷ウィルスが砕け散った事で思考を打ち切る。
再び中から飛び出たウィルスをデリートし、黄色い欠片を回収することに成功。
淡い希望を抱いて彼らを連れてきたが予想外の結果だった。流石のガッツマンGでも青い氷ウィルスは破壊できなかったが、十分な成果といえよう。
その後、ロックマンが合流。またガッツマンGが居た事に驚きつつもブルース達と情報交換を行い、彼もロールを助け出す道中で赤い欠片を入手したことを告げる。
5人はマリンハーバーに集結し(デカオとストンナはデカオ宅に居た)、ストンナとオフィシャル、そして科学省の祐一朗博士の協力の下、赤のワクチンを生成することに成功した。
黄色のワクチンを作るには「しゃくねつデータ」が必要だと祐一朗の説明を受け、一先ずは赤ワクチンを量産、赤い氷ウィルスを可能な限り除去する運びとなった。
これでアジーナに取り残されたというロールを助け出せると意気込んでいた熱斗に、炎山が待ったを掛けた。
「熱斗、その赤い欠片はどこで手に入れた?」
「コトブキスクエアで閉じ込められたナビを助けて、そのお礼に貰ったんだ。拾ったって言ってたぜ」
「拾った? ストーンマンが砕くことで手に入る欠片をか?」
「そう聞いたけど……」
「……コトブキスクエア、か」
熱斗から聞けば、赤い欠片をくれたのは何の変哲もないノーマルナビだという。
赤ですらブレイク系統のバトルチップでも砕けない氷ウィルス。その欠片をどう手に入れたのか。
熱斗から聞いた初日のストンナを聞いて怒るプリンセス・プライドとそれに怯えるストンナ、彼女らを宥めるデカオを他所に、炎山は一人思考に耽るのだった。
〇赤と黄色
闇医者「ワシの出番無くなってね?」
〇氷ウィルス
ブレイク系統のバトルチップでも壊せないんだろうか?
そう思って、ブレイク系統のネットナビの攻撃なら壊せるかな?と思って書いた。
フォルテやセレナードなら最上級の青い氷でも難なく破壊できるでしょう。
〇ガッツマンG
黄色の氷ウィルスまでなら破壊できました。クラッキングみたいなものかな?
丁度良く魔改造ガッツマンを活かすことが出来ました。
〇怒られるストンナ
プライド「まったくストンナったら! 1人で勝手にあっちこっち行って!」
ストンナ「うぴぃ……プライド様ごめんなさいですよぉ……」
熱斗「だ、大丈夫、基本的には良い子だったから! 宿題手伝ってくれたし!」
デカオ「何っ!? 宿題を手伝っただぁ!? 羨ましいぜ熱斗写させろぉ!」
炎山が少し丸くなっています。人出が増えたしフリーズマン編が一気に楽になりそう。
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!