今回はそんな『強化プログラム』についてアレコレ。
「『しゃくねつデータ』を手に入れたぞー!」
「はぇーですよ熱斗さん」
「オフィシャルセンターから出て1時間も経ってませんよね?」
「……こいつの行動力は一体どうなっているんだ」
「熱斗はやるときはやる男だからなぁ」
黄色ワクチン生成に必要なデータを1時間もせずに発見してのけた熱斗に脱帽する3人に対し、彼のマブダチであるデカオは同情するように頷くのだった。
「ありがとう熱斗。これで黄色ワクチンを作るから、少し待っていてくれ」
そんな息子を当たり前のように受け入れて頭を撫でる光祐一朗博士は随分と慣れている様子。
祐一朗博士はロックマンから受け取ったデータを元にワクチンを生成しようとブラインドタッチで作業を進めている。タイピングの速度を考えれば完成まで時間はそう掛からないだろう。
そう判断した炎山は、プライドと熱斗に向き合う。ここまで来た以上、この2人に要請しないという選択肢は逆に非効率だと理解しているが故に。
「すまないが、ここまで来たからには2人にも協力してもらう。オレはコトブキスクエアが怪しいと考え残ったオフィシャルネットバトラーと捜査に踏み切るが、どちらかがオレ達の補佐、残る方は氷ウィルスの除去を頼みたい」
「コトブキスクエアに?」
「前からコトブキスクエアはウラインターネットに繋がっているという噂があったんだが、赤い欠片の入手経路を聞いて信憑性が増した。もしかするとゴスペルの所在が解るかもしれない。赤と黄色のワクチンが揃った今なら行動範囲も一気に広まる……頼む、力を貸してくれ」
頭を下げた炎山を意外に思ったのは熱斗だ。いつもなら市民ネットバトラー程度がと言って突っ撥ねてくるのに、やけに素直に頼んでくるんだなと感心している。
だが世界の危機が迫っている今、プライドをかなぐり捨ててスピード勝負で挑むのが得策だ。それに黙っていられないのは熱斗とロックマン、そしてプライドとナイトマンも同じだった。
「熱斗、炎山の補佐をお願いできますか? 私のナイトマンではスピードが肝心である突入において足を引っ張りかねませんので」
宜しいですか?と視線で尋ねるプライドに対し、炎山は尤もな判断だと無言で頷き了承する。
「……解った! 氷ウィルスは任せるぜ!」
元凶を叩き環境維持システムを復旧するのも大事だが、もし倒しても氷ウィルスが残ってしまう可能性を考慮するとなるべく壊しておく方が安心ではある。
プライドのすべき事も重大だ。三人が力強く頷く中、蚊帳の外だったデカオが待ったをかける。
「ちょっと待てよ、熱斗達が頑張っている中でオレ達は留守番だなんて言わねーよな?」
「デカオさん、私達も市民ネットバトラーとはいえB級なのですから危ないのですよ」
デカオはいつも通り態度がデカいが、ストンナが彼の裾を控えめに引っ張って注意を促す。
そもそもプライドが2人を呼んだのは氷ウィルスの破壊に手を貸して欲しかっただけなのだが、ウィルスの撃退に協力を頼むぐらいは……そう思ってプライドが声を掛けるより先に炎山が前に出る。
「いや、お前たちには別件で話がある」
「別件だぁ?」
「はっきり言おう。お前らが作ったプログラムは利便性が強く、それでいて危険性も高い品物だ」
炎山の言った事に気づいたのはストンナだ。「あちゃー」と額に手を添えて、参ったなーという仕草を見せる。相変わらず彼女の顔は無表情だが。
デカオとしては便利なガッツマン専用装備としか考えていないし、ガッツマンの事を信頼している。だからなんの危険があるのかと首を傾げているが、今度は光祐一朗が説明に加わる。
「炎山君に同意見だ。私としては危険性の方を示唆させてもらうよ」
モニターを見れば『Loading 30%』の文字が浮かんでおり、ワクチン生成までに時間があるから説明に加わったのだろう。
ガッツマンGのパワーを目の当たりにした熱斗とプライド、そしてネットナビ達も炎山と祐一朗の話を聞こうと耳を傾ける。
「君達の強化プログラムはネットナビのフィジカル値こそ必要としているものの、とても強力かつ手軽な強化方法だ。考えそうで意外と出てこないアイディアは素晴らしいが、だからこそ管理が必要になる」
「言っておくのですけど、ガッツマンGの『パワーアーム』の破壊機能はネットナビやセキュリティコードは対象外なのです。 破壊できる対象プログラムはウィルスと置物系バトルチップに絞られてですね……」
「そのプログラム対象を広げられる技術者が居るとしたら? いくらストンナが金持ちとはいえ、子供が電気街で買い集められるようなパーツであれだけの強化プログラムを組めたんだ。それ以上の資金力・技術力・高度なパーツを持った悪党が真似などしたら、セキュリティコードですら破壊できる最悪の強化プログラムが完成されかねない」
穏やかに説明する祐一朗博士に対し、炎山は最悪の事態を想定してキツく言い放つ。
ストンナもデカオも趣味が興じて作った品物故、そこまでの事態に発展するとは考えていなかったらしい。2人は勿論、当ナビであるガッツマン、そしてプログラム作成のアシストをしたストーンマンも顔を青褪める。
プライドも「確かに…」と呟いて思案するが、ガッツタンク及びガッツマンGを返り討ちにした熱斗としては今一ピンとこないらしい。ロックマンは危険性に気づいているが。
コホンと咳き込んで一同の視線を集め、再び炎山はデカオとストンナを見る。
「だがお前達の技術とアイディアが便利であることに変わりない。そこで提案だが、そのHDDをオフィシャルに預けてはくれないか?」
「グレードHDDをか?」
「ああ。プログラムの仕組みを解析しノーマルナビに見合った装備プログラムを作成、オフィシャルの戦力を底上げを狙う。マザーコンピュータ襲撃及び氷ウィルスの騒動でオフィシャルネットナビの大半が失われてな……現存しているネットナビを少しでも強化し戦線を上げたい」
マザーコンピュータ襲撃は熱斗にとっても苦い経験を持っており、顔を顰めてしまう。
その熱斗の反応を見て被害を理解したのか、デカオはPETから外付けHDDを外し……その手に持っている物は重いのだと改めて思い知って唾を飲む。
「そういうことなら私に預けて欲しい。黄色ワクチンが完成次第、量産できるか検討してみるよ。ストンナちゃん、君も協力してくれるかい?」
「勿論なのです! ノーマルナビに合わせたプログラムに調整すればいいんですよね!」
祐一朗の要請にフンスっと息を荒げて了承するストンナ。ニホンが誇る科学者とナビ改造に定評のある科学者のタッグ……熱斗は期待に目を光らせ、プライドは変な化学反応が起こらないか心配で眉を歪める。
デカオにとって、熱斗の父と趣味友達のストンナは信頼できる人物だ。力強く頷いて、ガッツマンカラーの外付けHDDを祐一朗博士に手渡す。
「オレとストンナの友情の証なんだ。壊さねーでくれよ?」
「勿論だよ」
「協力感謝する。ガッツマンはナイトマンの補佐を頼めるか?」
『任されたでガッツ!』
とんとん拍子で決まっていき、グレードHDDが無くなっても役立てると解ってガッツマンは張り切っている。デカオとしてもやる気は出ているが、ラビリー系やラットン系のウィルスが出ないことを祈るばかりだ。
ここへ更なる朗報が届いてくる。
「炎山さん! こちらに居られましたか!」
バタバタと走ってくる青年に全員が振り向き、熱斗・プライド・ストンナはその人物を見てあっと声を上げた。
「あなたは……えっと、リチャードのオペレーターさん!」
「
熱斗の言う通り、飛行機の電脳で共に戦った水属性のオフィシャルナビ・リチャードのオペレーターだった。名前あったんだ……とか口が裂けても言えない三人だった。
ストンナと熱斗から聞いたオフィシャルのお兄さんってコイツか?と見ていたデカオを他所に、炎山が前に出る。
「どうかしたのか?」
「実はガウス元会長から有益な情報が得られまして……こちらを」
「ガウスおじさまが?」
ヨウ太の言葉にいち早く反応したのはストンナだ。ぴょんぴょん跳ねて覗き込もうとする彼女をなんとか抑えながら、炎山は彼のPETから渡されたデータを確認する。
「……『ゴスペルの会員証』?」
「これがあれば、コトブキスクエアからゴスペルのネットワークへ続くルートに入れるそうです」
炎山を除く全員が声を上げる。なんというタイミングで重大なデータを得られた事か。
コトブキスクエアへ突入しようと考案した矢先に手に入ったデータに驚いた炎山は、目を丸くして水野を見やる。
「それが二つも……これをどうやって?」
「飛行機ハイジャックの話は報告書で知ってますよね? マグネットマンと手を組んでいた二体のヒールナビ。彼らが入っていたPETに保管されていた物です」
二体のヒールナビ……社会を憎み終焉を望んだ赤と青の自立ネットナビの事だろう。彼らの断末魔は今でも鮮明に思い出せるが故に、熱斗達は居た堪れない想いに駆られる。
「更にガウス元会長によると、ゴスペルに残されたネットナビはフリーズマンただ一人で、消去法で氷ウィルスは奴の仕業だと推測されています」
「フリーズマン?」
「ゴスペルの最高司令官を名乗っていたそうです。開発プロジェクトを任されていたガウス元会長は奴と何度か会っていますが、少なくとも態度のデカいナビだとおっしゃっていました」
「流石ガウスおじさま、転んでもタダでは起きないのですよ!」
握り拳を作るストンナは嬉しそうだ。捕まってもなお自身を裏切ったゴスペルに一泡吹かせようと、このように有益な情報を齎してくれたのだから。
「兎に角、これでゴスペルまで一直線なんだな? やったじゃねぇか熱斗、炎山!」
「確信するには危険性も伴いますが、有益には違いないかと」
デカオと水野の言葉に、熱斗と炎山は互いに頷き合う。
ガウス元会長が齎した会員証データと、フリーズマンというネットナビの存在。これだけでも得た物は大きく、突入する必要性はぐっと高まって来た。
しかも会員証は二つ……ブルースとロックマンに使ってくれと言わんばかりの用意周到っぷりだ。あの赤と青のヒールナビには悪いが、有効的に使わせてもらおう。
「これでやることは決まったな」
「俺達はコトブキスクエアへ向かって、フリーズマンを倒す!」
コトブキスクエア突入組の炎山と熱斗。
「氷ウィルスは私のナイトマンとデカオのガッツマンに任せてください」
「おうよ!」
氷ウィルス除去組のプリンセス・プライドとデカオ。
「僕とストンナは強化プログラムの解析と開発に着手するよ」
「少しでも皆さんのお力になるよう努力するのですよ!」
そして彼らの成功と帰還を疑っていない、開発班の祐一朗とストンナ。
今ここに、ゴスペル戦線が完成したのだった。
〇コトブキスクエア
赤い欠片が一般ナビから手に入って「怪しい」と思ったのは私だけ?
〇強化プログラムの危険性
ちょっとした改造のつもりがヤベー品物だと思い知らされた←作者のせい
これを作ったのが小学生って信じられます?←作者のせい
〇水野ヨウ太
水属性ノーマルナビ「リチャード」のオペレーター。名前はさっき決めた。
〇ゴスペルの会員証
本来ならウラインターネットを駆け巡りゴスペルの手先から手に入ります。
なんでこんな大事な物、デリートされた後に残るんだろう……。
〇ゴスペル戦線
後のチーム・オブ・ブルースの原型である(ウソ
ストンナは開発班に回る事になりました。
ぶっちゃけフリーズマン編はばっさりカットしてもいいかなって思ってる。
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