定期更新しているのはやる気が持続しているからです。無理はしていないです。
炎山とブルースが獣化ネットナビ『フェンリー・ルナエッジ』を、熱斗とロックマンが新たに誕生した電脳獣『ゴスペル』と対峙している頃。
『いでででっ! チキショー限界だ、悪ぃが離脱させてもらうぜ!』
棺から飛び出た大量の誘導弾『ラットン』に囲まれ連続爆破を受けてしまうOFFICIALカットマン。意地と根性で粘り強く戦い続けたが、流石に無理だと判断して逃げ出した。
背を向けて敗走するカットマンを咎めるOFFICIALクイックマンではない。口には出さないが、むしろ良く戦い続けてくれたと感謝ですらしている。
OFFICIALエアーマンは既にこの場にはいない。暴風による広範囲攻撃は流石の自動プログラムでも脅威だと解ったのだろう、早々に集中攻撃を受けて撤退を余儀なくされた。
この場にはOFFICIALクイックマンのみ。背後にはアメロッパスクエアに繋がるワープゲート。そしてアメロッパスクエアにはバグ改造ファラオマンを筆頭とした十数体のバグ改造ナビ。
3体居たバグ改造ファラオマンも残り1体となったが、たった2体をデリートする為にカットマンとエアーマンが重傷を負い撤退、強化プログラムを搭載した何名かのオフィシャルナビ達もデリート寸前まで持っていかれプラグアウトした。アメロッパ国に雇われた腕利きのネットバトラーも軒並みやられてしまった。
「……なら、よりギアを上げるだけのこと」
HPも僅か。逆に疲労は蓄積している。ならば余分な力を抜き、ファラオマンを足止めしつつ雑魚共を瞬く間に斬っていけば良い。
バグを抜かれ出力は衰えど、新たな人格と使命を与えられた身だ。ならばオフィシャルの為、そしてアメロッパだけでなく世界の為に戦い抜くのは当然。
開かれた棺から『ラットン』が飛び出ると同時に、OFFICIALクイックマンは見切って棺の間を擦り抜けようと身構え―――
「『ホーネットチェイサーA』! 行きなさいっ!」
空から飛来したスズメバチ型ウィルスがラットンに衝突し爆発。
OFFICIALクイックマンは新たな敵かと身構えたが、空から降りてきた女性型ネットナビが背を向けて眼前のファラオマンらに立ち塞がった為、それは違うと理解し始める。
「食らえ愚か者ども!『エレキビーム』!」
新たにプラグインしてきたネットナビは、掌から放った雷で棺どころかファラオマン、その背後に居るバグ改造エアーマンですら貫通しダメージを与えた。
その隣にはまた別のネットナビがプラグイン。そのナビは言ってしまえば『手榴弾を擬人化したようなナビ』だった。モヒカンのような安全ピンがキコキコ動く。
「アメロッパCASTLEじゃ無様を晒したガ、REVENGEダゼ! EYEを閉じな、『フラッシュグレネード』!」
右腕のバスターを構え手榴弾のようなものを発射。敵軍の中心へ落ちたかと思えば、ナビ数体は巻き添えに出来る程の閃光と大爆発が起こる。OFFICIALクイックマンは咄嗟に目を閉じたので問題ない。
閃光に飲まれたファラオマンを含むナビ達は大ダメージを負い、目が眩んだのか移動しようとすれば密集していたこともあって互いにぶつかり合ってしまう。
その隙に3体のナビはOFFICIALクイックマンと並び、迎撃の構えを取る。味方だと解って若干肩の力を抜くOFFICIALクイックマンの横にウィンドウが開かれ、彼らのオペレーターが映し出される。
『オフィシャルネットバトラー・ジェニファーよ! この子はホーネット! 援護に来たわ!』
『同じくラウル、サンダーマンだ。部族の誇り、そしてアメロッパの為、共に戦おう!』
『自由と平和を愛するアメロッパのネットバトラー・ジョンソンとグレネードマンだ! オレ達だけじゃねぇぜ!』
各々の武器を掲げるホーネット・サンダーマン・そしてグレネードマンに続き、アメロッパエリアの様々な地点に多くのネットナビ達がプラグインされる。
その数は少なくともバグ改造ナビ軍団の倍。クールなOFFICIALクイックマンですら、その圧巻な光景と心強さに目を丸くする。そんな彼を他所に、ラウルは続ける。
「我らの同胞、ロックマンとブルースがゴスペルと戦っていると聞いて仲間を集めたのだ。世界の危機を前に黙っていていいのかと」
「とーぜん、戦わなきゃ損よね! アメロッパ中の市民ネットバトラーが集まったよ!」
「YES! みんなが自由と平和の為、争いをSTOPさせたいのサ―――ってギャーッ!?」
「「グ、グレネードマーン!」」
格好つけようとしたグレネードマンに棺桶レーザーが直撃。あまりのギャグ展開に思わずホーネットとサンダーマンが己のキャラを忘れて彼の名を叫んだ。
黒焦げになりながらも仕返しとばかりにクロスボムを放つグレネードマンを見て、とうとうOFFICIALクイックマンは笑いを溢してしまう。それは安堵感によるものだ。
「助力感謝する。ファラオマンが仕掛けるトラップに気を付けろ」
「オッケー! 行くよ皆、ゴーゴー!」
「裁きの雷を受けよ!」
ホーネットの号令と共に、アメロッパネット中のナビが一斉射撃を開始。
バグ改造ナビの反撃やファラオトラップの数々に苦戦するも、先程とは打って変わり徐々に押し返していく。
アメロッパ中のネットバトラーが同じ脅威に立ち向かう。長らく続いていた差別問題を解決する一歩を踏み出す瞬間だった。
一方、クリームランド中枢エリア前。
「オレは水属性だが、火力には自信があるんだよぉ! 『アクアバースト』ォ!」
膝撃ちの姿勢を取り、片手で抑えたバスターと頭部から大量の水滴が勢いよく放たれる。
3体のナパームマンの内1体が、次々と降り注ぐ雫や巨大水滴の前に屈した。残る2体は構わず砲撃を続けようとするも、片方は滑るように接近したナビによって足蹴にされ、片方は巨大な水晶玉にぶつかって阻止される。
「フフッ、野蛮な砲撃さえ止めてしまえば大したことない連中だね」
ソードとなった片足を上げ、体がIの字になるようバランスを整えるはツンドラマン。
一見隙だらけだが、敵のど真ん中にも関わらず華麗に躱し『ツンドラストーム』で周辺のバグ改造ナビを凍らせていく。
「Ririri―――(油断は禁物。美しく、華麗に片付けよう)」
心地よい金属音で会話するはクリスタルマン。浮遊する六角柱の周りに2個の円柱状の水晶『クリスキューブ』を置き、自身から放つ光線『シャイニングレイ』で拡散させバグ改造ナビ達に降り注ぐ。
降り注いでいるのは光だけでなく、なんと枕まで混ざっている。ポコポコと可愛い音を立ててバグ改造ナビ達の頭に当たるが、どんだけあるんだって量の枕で埋め尽くされていく。
「それそれ~、防御力がなってない相手ばかりで助かるわ~」
両手を使って次々と出てくる枕こと『モフモフマクラ』を投げまくるのは女性ナビ・シープ。
相手の『ローリングカッター』や『マグミサイル』が当たるも持ち前の防御力で防ぎ『リカバリー』で回復、
そしてツンドラマンらに向かって放たれる敵の攻撃を防ぐのは、当然この2体だ。
「流石は姫様とストンナ殿のご友人、なんと心強いことか!」
「ゴゴゴ……!」
ナイトマンとストーンマンだ。駆けつけたツンドラマンが隙を作ってくれたおかげで、プライドとストンナが送信した『リカバリー』で回復、再び戦線で防壁として立ち塞がっている。
中枢エリア前に駆けつけたネットナビはツンドラマンだけではない。
寸胴ボディの防御型ノーマルナビ「ヘビーナビ」達が隊列を組み、敵の攻撃を受け止めながら『ハイキャノン』といった一斉砲撃でゴスペル軍を打ち倒していく。まさに砲台を並べた城壁の如し。
全ては愛するクリームランドの為、そしてクリームランドの柱であるプリンセス・プライドの為。市民ネットバトラーの資格を持つクリームランド国民がこぞって集まり、中枢エリアを死守していた。
『いけいけ~! 【ネットナイツ】に勝利と栄光を~!』
『こらバスト、皆で話し合ってからって言ったのに!』
『い、良いんじゃないかな、格好良くて。と、とにかく頑張れ皆!』
『そうそう~、プライド様とストンナ、そして健やかなお昼寝のためにも~』
腕をブンブン振るバスト、勝手にチーム名を決めた事に怒るアケート、おどおどしつつもチームに鼓舞を送るクリス、睡眠欲に素直なウール。
そして多くのクリームランドの市民ネットバトラー達が『クリームランドの為に!』『プリンセス・プライドの為に!』と一斉に叫び、一糸乱れぬ動きで前進する。
『プライド様、凄い光景ですね!』
『皆……ありがとう……!』
隣でストンナがぴょんぴょん跳ねながら喜びを露わにし、プリンセス・プライドまでもが目尻に涙を浮かべるほどに感激していた。
彼らの行軍は、セキュリティ技術だけでなく、全国民のネットバトラーレベルが軒並み上がっている事の証明だからだ。王女として国民の成長、そして熱い支持に喜ぶのは当然だった。
『プライド様、アレをやるです!』
『―――ええ、よくってよ!』
最早負ける気がしないと解った2人のテンションは高い。兼ねてより密かに2人で練習していた技を披露しようと、意図を察したナイトマンとストーンマンは先陣を切る友人四人衆【ネットナイツ】に退避を促す。
『『アースクエイク1・2・3!』』
送信するは3種類の『アースクエイク』。これによって発動するプログラムアドバンスの影響か、ストーンマンとナイトマンがナパームマン2体の上空に転送され―――
「「ダブル・ヘビースタンプ!!」」
巨大な分銅のような形状に変化したナイトマンとストーンマンが、バグ改造ナパームマン2体をペシャンコにする!!
超重量級ネットナビが繰り出す超ヘビーなプログラムアドバンスを目の当たりにしたクリームランドのネットナビ達は一斉に歓声を上げ、ストンナとプライドは笑顔でハイタッチを交わすのだった。身長差故にハイタッチになっていないが。
そしてデンサンエリア。ここが一番の佳境であった。
「フガガガガ、でガス!」
『押せ押せガッツタンク! 折角オフィシャルから許可貰って使わせて貰ったんだ、全力出しきれぇ!』
「ガッツタンクに続けぇーっ!」
「ここを突破されたらスクエアが危ないんだ、押せ押せ!」
普段の二倍は大きなガッツマン―――ガッツタンクに取り押さえられているにも関わらず、プラネットマンはそれに匹敵する力を持って押し返そうとする。
だがガッツタンクの背後には様々なナビ達がついている。ある者はガッツタンクの背を押し、ある者はプラネットマンの惑星を破壊し、ある者は襲い掛かるウィルスを蹴散らす。
何せここを突破されたらスクエア、すなわち科学省やオフィシャルセンターのサイトに甚大な被害が出かねないのだ。例え怖くてもプラネットマンを止めるべく、ガッツタンクを軸に抑えなければならない。
『グライド、そっちにバグ改造ナビが向かったわ!』
「了解ですやいと様、直ちに!」
プラネットマンに比べればノーマルなら弱いだろうと侮るなかれ、バグ改造されたコピーはノーマルでも強い。そんなバグ改造ナビを取り逃すまいと、グライドを筆頭とした遊撃隊が駆けつける。
何せ連中は逃げ遅れたプログラムくんですら襲い掛かるのだ。HPのアドレスに侵入する個体まで出てくる事態故、嫌でも市民ネットバトラー及びネットナビ達が自警の為に戦うのだ。
「オフィシャルです、負傷したナビはこちらへ来てください!」
『ロール、アナタもムチャしないでね!』
「大丈夫よメイルちゃん、私のリカバリー機能が役に立つんだから積極的にならないと!」
オフィシャルガードを構えたオフィシャルナビに誘導され、負傷したナビ達がリカバリーチップやロールを始めとした治療班が傷を癒す。
戦えるナビは有数、対して敵はバグ改造に加えて次々と出てくる。特に回復機能を備えたロールは貴重であるため、片手で数えられる人数しかいないオフィシャルは彼女の防衛を最優先で行っている。
何故コトブキ町から帰還したメイル達のみならず、秋原町やマリンハーバーの市民ネットバトラーが戦線を張っているのか―――それはネットと絆の為せる技だった。
『ご覧ください! 多くの市民ネットバトラー達が、バグによって改造されたゴスペルナビ相手に懸命に戦っております! ああ頑張ってガッツタンク戦車舐めるないけいけパンツァー・ゴー!』
「ケロケロ~、参加したいケロ~」
戦線から遠く離れた場所でビデオカメラを持って撮影しているトードマン。
そのトードマンの持つビデオカメラから送られてくる映像を【WorldTube】ケロケロチャンネルで放送、緑川ケロのなりふり構わない実況が観る者の心を掻き立てる。
『巨大なる敵! それに立ち向かうはデンサンエリアを守るべく立ち上がった市民達! そしてその裏では、敵の本拠地に挑むたった二人の少年とそのナビ達……良い! 凄く良い絵だよぉ!
あー僕も参加したい、けど調整中で出せないのが悔しい……Bカメラアングル悪いよ何やってんの!』
「ここ最前線だから怖いんで、ひぃぃ目があった、ボスっぽいヤツと目が合っちゃいました!」
【WorldTube】DNN公式チャンネルでは砂山ノボル氏が熱狂しながらスタッフに借りたネットナビに指示を送り、最前線の様子を撮影している。
だが撮影ナビとしては命がけだ。カメラを持ってウィルスやバグ改造ナビ達に目を付けられないよう立ち回っていたが、ガッツタンクに抑えられているプラネットマンに睨まれてしまった。
この強大な敵の姿と、それに立ち向かうナビ達の雄姿が【WorldTube】を通じ全国に発信。戦える者・戦えない者関係なく、今自分達に出来る事を求めて画面内の戦場へ駆けつける。
中にはデリート寸前にまで持ってかれるナビだっている。だけど何か出来るはずだと信じ、プラグアウト寸前まで立ち向かい、支え合うのだ。
そんな人々のナビ達の願いを目の当たりにして、ガッツタンクとデカオは叫ぶ。
「ロックマーン、ブルースー! ゴスペルなんかに負けるなでガーッツ!」
『無事に帰ってこいよー! 熱斗ー、炎山ーっ!』
渾身の叫びを拳に乗せて、プラネットマンの顔面に突き刺さる。
「ロックマン、ブルース……戦っているのはアナタ達だけじゃないんだから!」
傷ついたナビを癒しながらも、疲弊しつつあるロールは根性を見せつけるかのように叫び。
『信じて待っているから……必ず帰ってきてね、熱斗!』
PETを握る手にもう片方の手を重ね、メイルが祈る。
メイルとデカオ、ガッツマンとロールの願いが届いたと知ったのは20分後―――緑川ケロが読み上げた、ゴスペル壊滅のメールが全国に伝わった時だった。
「聞こえたぜデカオ、メイル……みんなのココロが!」
壁を埋め尽くすサーバー全てが停止し、電磁波の影響が完全になくなった中、熱斗は拳を握る。
電脳獣『ゴスペル』を生み出す際に生じた、サーバー出力200%から成る強烈な電磁波に閉じ込められた熱斗。
現実と電脳の境目に閉じ込められた中、ロックマンの「ココロ・プログラム」によってフルシンクロ状態となり、一時的にロックマンと一つとなった。
その時に微かだが聞こえたのだ。全国のナビ達の声―――そして親友と幼馴染の祈りが。
熱斗とロックマンの妄想かもしれないが、確かにそれは2人を強く後押しし、見事『ゴスペル』を打ち倒した。
胸に熱い想いを抱く熱斗だが、ロックマンがある事を思い出して声を上げる。
『熱斗君、炎山君が!』
「やっべ、大丈夫か!?」
『炎山様、ご無事で!?』
「……なんとか、な」
床に倒れ伏していた炎山がゆっくりと起き上がる。2人はゴスペル誕生前には『フェンリー・ルナエッジ』をデリートしていた。
氷の大地を縦横無尽に駆け抜け次々と攻撃してくるフェンリー・ルナエッジは強敵であったが、僅差でブルースが勝利を収めた。次いでロックマンの援護に行こうとし、先の強大な電磁波にやられて倒れてしまったのだ。
炎山に肩を貸して起こし、2人はデスクに凭れ掛かったまま動かない首領に近づくと。
―ぼよんっ!
「ひ、ひえぇぇぇっ!? 首、首がっ!?」
なんと首が熱斗目掛けて飛んできたではないか。思わずと言わんばかりに熱斗は受け止めるが、それを持ったまま慌てふためく。当然の反応ではあるが……。
『熱斗君落ち着いて! それ機械だよ!』
ロックマンの言葉に「へ?」と間抜けな声を上げて生首を見る。
切断部からは幾本ものコードがバチバチと音を立てて漏電し、目は電源が切れた懐中電灯のように光がない。更に冷静になったことで冷たく硬い感覚が掌から伝わり、それが彼に人工物であることを理解させた。
「これは……ロボット、か?」
首を見る熱斗とは別に、炎山はゴスペルの首領だった者の胴体を見る。
首の切断部には首と同じように漏電しており、電磁波にやられたのか各所から焦げ臭い煙が出ていた。更に突如として壊れたラジオのように雑音が響き渡る。
『ザ、ザザ―――まさ、カ、獣化ナビどこROカ、ゴスペルDEすラ倒ス、なん、テ、ネ、ねね、ネ』
胴体がガクガクと揺れて雑音混ざりの声が響く。
熱斗は驚いて思いっきり後退るが、炎山はしまったと言わんばかりにたたらを踏む。
「あれだけの電磁波の中で遠隔操作できるロボットだと!?」
「この後に及んでまだ逃げるつもりか!?」
『逃GEるトも。勿論、たダでWA帰さナイ―――間モなKU、KOのサイバースーツは自爆すル!』
「な、なんだって!?」
『熱斗君、炎山君、早く逃げて!』
『炎山様!』
ゴスペルの首領の悪あがきに唖然とするも、今から逃げて間に合うか解らず立ち往生する2人。
そんな二人を、最早雑音でしかない首領が嘲笑った……。
「とか格好つけれたら良かったんだけどねー」
「ギャーーーッ!?」
ガポン、と煙混ざりに首領の胴体の背中から這い出てくる一人の少年。
突然の登場に今度は跳び上がって驚く熱斗。
炎山はと言えば―――ふらり、と仰向けに倒れた。主に心労で。
先ほどの自爆云々は茶番だったのか、よいしょ、と間の抜けた声を上げて少年はサイバースーツから這い出る……かと思えば煙を吸ってしまったのか咳き込み始める。
『悪あがきは止してくださいシュン。もう終わったのです』
少年……帯広シュンの手にはPETが握られており、先程倒したはずのフリーズマンの声が。
「げほっ、ごほっ……硬いぞー冷たいぞー流石はフリーズマンだーこの冷酷ひどーめー」
PET、正確にはフリーズマンをジト目で睨み、息を整えたぶーぶーとシュンは不貞腐れる。
「えっとツッコミが追い付かないけど……お前が、ゴスペルの首領なのか?」
「そうだよ。オレの名は帯広シュン。名前も名乗ったし改めまして、初めまして」
呆然と指差す熱斗に朗らかな笑顔を浮かべて挨拶を述べるシュン。
先ほどまでの揶揄いっぷりと狂気が嘘のように穏やかだが、熱斗はその笑顔に全てを諦めたかのような寂しさを感じさせた。
『フリーズマン……フェンリー・ルナエッジはブルースが倒したはずだよね?』
『あれはマスターデータから造られた精度の高い私のコピーだ。本物である私はサイバースーツ内部に納められたPETで操作の補助を担っていた』
「作ったのはいいんだけど、オレだけじゃ人間っぽく動かせなかったからね。フリーズマンに補助をお願いしたんだ」
良く出来てるでしょー、と動かなくなったサイバースーツの腕をぶらぶらと振ってみせつけるシュン。
思わず「はぁ……」と声を出すしかなかった熱斗とロックマンに代わり、立ち上がった炎山は問答無用とばかりにデスクを飛び越え、シュンの胸倉をつかみ上げた。
「い・い・か・げ・んに―――しろっ!」
「あいだいっ!?」
ガツン!と音を立てて炎山の頭突きがシュンの額にぶつかる。
流石の炎山も堪忍袋の緒が切れたらしく、気絶したシュンの胸倉をつかみ上げたまま息を荒げている。
ブルースどころかロックマンと熱斗も、今の炎山を宥める勇気はなかった。
この後に目覚めたゴスペルの首領こと帯広シュンの悲しい過去を知り、頭突きを仕掛けた炎山の心が若干痛んだのは数分後の話である。
今回は急ピッチで書いたので後書き解説は後日。
次回こそゴスペル編完結。ストンナの日記編で纏めて〆たいです。
そしてゴスペル編完結させたら夏休み(ハーメルン)とりたい。
いつも感想や誤字報告ありがとうございます!