ストーンマン拾ったんで魔改造するです!   作:ヤトラ

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かなり詰め込んだので粗が目立つと思います、すみません。


【ストンナが与えた影響】

今回は他視点。

 

【ストーンマン~奇妙なオペレーター~】

 

 奇妙なオペレーターに拾われたものだ、とストーンマンは時折思う。

 

 己の創造主たるDr.ワイリーの命令によりメトロラインを妨害していた所へ光熱斗とロックマンに会敵、デリート寸前まで持っていかれた。

 辛うじてデータが生き延びたものの動けずデリートを待つしかなかったが、ストンナという少女に拾われたことで生き永らえた。

 

 WWWは壊滅、Dr.ワイリーの命令は破損して機能せず、自分をナビとしてPETにインストールしたいとストンナが願い出た。帰る所も元の主も無くした自分には渡りに船だった。

 

 PETにインストールされる前に、ストンナはこんなことを言っていた。

 

「私は、私の好きな事とやりたい事の為に、貴方を利用しているようなものなんです。

 だからストーンマン、貴方もやりたいと思ったことがあれば遠慮なく言うです」

 

 勿論PETから出ていくことも含めて……最後にそう呟いたのを今でも覚えている。どうせ行く当てもないこの身に何を遠慮しているのだろうかと、この時ストーンマンはそう思っていた。

 

 二人を待っていたのは、短い間に繰り広げられる波乱万丈な日々。

 

 小国の王女とそのネットナビに自慢されたり、近所の友達だという多くの子供達に自慢された。

 

 科学者の両親の手伝いと称しアシスト及びウィルスバスティングに駆り出された。

 

 自分の魔改造計画を聞いて愕然とし、計画の為と称して多くのナビにネットバトルを挑んだ。

 

 足にローラーが付いたり、腕が合体してハンマーになったり、パンチが強力になったりした。そのおかげで新たな戦法を編み出し、強大なナビへと進化できた。

 

 なんと楽しい事か。時折怒ったり呆れたりもするが、それらも楽しい日々をより引き立てる潤滑油となっていくのを自覚している。

 なんと軽やかで柔らかな頭脳を持つ少女だろうか。Dr.ワイリーに大きく劣れど、齢8歳にして溢れる才能を持ち、それを余すことなくやりたいことに注ぎ込む。

 

 そんな少女の中心には、自分というネットナビも深く関わっている。

 

 ただ一つの命令を実行するだけだったストーンマンは、ただ一人の少女を通じて多くの出来事を学び成長するストーンマンに生まれ変わった。

 

 クリームランドの人々は彼女(ストンナ)を天才だと言うが、なるほど確かにその通りだと思う。しかし。

 

『ストーンマン~!』

 

 PET画面を覗き込んだオペレーターの泣き顔が画面一杯に表示される。

 

「ゴゴゴ……ドウシタンダすとんな」

 

『ストーンマンに重要な要素、ストーンボディ機能を加えるの忘れてたです! やべーやべー時間と容量が足りないですどうするです!?

 とりあえずプライド様と友人らに、約束の時間に遅れるとメールして欲しいです! 30分……いや40分待ってと!』

 

「ゴゴゴ……了解ダ」

 

 画面が閉じられ、続いて自室のデスクトップPCのリンクが開かれる。

 

「全ク……慌タダシイ奴ダナ……」

 

 慌ただしくて忙しいオペレーターだな、とストーンマンはいつも呆れながら思う。

 

 まずは彼女の指示―――ではなく―――お願いに応えるべく、プリンセス・プライドと友人達に向けたメールを作成しよう。

 

 ストーンマンはストンナと違って的確な作業が得意なのだ、と軽く自己肯定しながら。

 

 

 

【プリンセス・プライド~私の可愛い妹分~】

 

 暖かな日差しが差し込む部屋にピアノの旋律が響く。鍵盤を走る指使いは軽やかで、楽譜を見る目は活力に満ちている。

 ピアノを奏でているのは、クリームランドの王女プリンセス・プライド。かつて目に隈が浮かぶ程に疲弊した彼女は居らず、リラックスした表情でピアノの演奏を楽しむ彼女が其処に居た。

 

 この光景をもう少しだけ見ていたい気持ちを押し殺し、彼女の騎士として進言する。

 

『姫様、そろそろお時間ですぞ』

 

「ごめんなさいナイトマン、つい夢中になっちゃって」

 

 PET画面に映るナイトマンを見るプライドの顔は、言葉に反して楽しそうに笑っていた。

 鍵盤蓋を閉じて立ち上がる。PETは手に取らず卓上に置いたままドレスを脱ぎ始める。

 

「ナイトマン、今日の予定はどうなっているかしら?」

 

 脱いだドレスをクローゼットのハンガーに掛けながらナイトマンに問いかける。

 

 ()は嫌でしかなかった確認作業。どうせ多忙で窮屈な、仕事だらけのスケジュールで埋まっていると解り切っているから―――だけど()は違う。

 

『本日の公務は午前で完了しております。午後の予定は、午後3時に友人達とネットバトルする約束が入っているだけですな』

 

 そう告げるナイトマンの声色も自然と明るい。

 

「ねぇナイトマン……『前までの私』が『今の私』を見たら、『前までの私』はどう思うかしら?」

 

『……クリームランドの未来は明るいのだと知って喜ばれる事でしょう』

 

 プライド自身も意地悪だと思う問いに対して、確固たる根拠があるとばかりにナイトマンは堂々と答えた。

 

「……こんな日々が来るなんて思いもしなかったわ」

 

 お気に入りである狩人風の私服に着替えながら、プライドはポツポツと独り言を溢し続ける。ナイトマンは何も言わなかった。

 

「クリームランドの経済とネット技術は大きく発展している。王女としての仕事量が目に見えて減っていくわ……けど」

 

 きゅっと帽子を被って、プライドは全身鏡に映る自分の顔を見た―――今にも泣きそうな笑顔をしていた。

 

「お友達と遊んだり、好きな事を楽しめるようになる日が来るなんて……夢ですら思わなかった……!」

 

 小さくも力強く解き放ったプライドの言葉にナイトマンは何も言わず……否、言葉に出せなかった。

 

 始まりはキロクラム家の娘と出会った時だ。

 

 キロクラム家の事はプライドが小さい頃から知っている。無表情で怖い印象ばかりだったが、口を開けばなんと愉快な人達なんだろうと面食らったものだ。

 

 そんなキロクラム夫妻の娘―――ストンナ・キロクラムもそんな女の子だった。

 

 5歳とは言え歳が近い事もあってこっそり会いに行けば、自分より小さいのに大人っぽくて頭が良いのに、リアクションが激しくて見ても聞いても愉快な子だった。

 まだカスタマイズされて間もないナイトマンを自慢すれば大層気に入り、些細な事にも笑ったり怒ったり悲しんだりと、彼女の素直さを物語っているように表現豊かだった。

 

 ストンナはクリームランドを大きく変えてくれた。

 

 優れた才能と頭脳を発揮した彼女は、齢6歳にして防衛プログラムの開発に手を掛け、両親の助手としてクリームランドのネットワーク技術に貢献してくれた。

 

 その技術力を活かしたのは、彼女が気まぐれで発案したという世界最大規模の動画投稿サイト【WorldTube】。今世界で「わーつべ」と呼ばれている話題のサイトだ。

 「手軽に動画を投稿し世界中の人に見てもらえるサイト」をコンセプトにしたこのサイトを世界の悪意から守るべく、クリームランド中の企業が開発した様々なプログラムを搭載。

 

 強固なファイアウォール、プライバシー保護の徹底、多種多様かつ膨大な数のプログラムくんを用いたシステム管理能力。

 その鉄壁っぷりたるや「防衛プログラムならクリームランド」と世界中の人々が評価する程だ。

 

 広告代を始めとした莫大なゼニーが、クリームランドのネットバンクに日々詰め込まれていく。

 クリームランドの防衛プログラムを学びたいと、多くの企業や留学生が海外から渡ってくる。

 動画を通じて世界中の趣味や娯楽が、国民達の暮らしを豊かにしていく。プライド自身もピアノ演奏動画にハマってピアノを始めたぐらいである。

 

 クリームランドが豊かになったことで、プライドの生活も豊かになった。

 

「本当に……毎日が楽しくて楽しくて仕方ないわ」

 

『某もです』

 

 国税が潤ったことで王女としての負担が大きく減り、趣味に割ける時間が増えた。

 お忍びで遊びに出かけ、ストンナの交友関係に混ざってネットバトルを楽しむようになった。

 そしてストンナとは相変わらず良き友人であり続けた。

 どんな偉業を為してもストンナはストンナのまま、王女としても友人としてもプライドを慕ってくれる。

 

 そんなストンナは今日から―――好敵手(ライバル)になるかもしれない。

 

 鏡の中のプライドは嬉しそうに、そして力強く笑っていた。期待で胸を膨らましているのを表現しているかのよう―――ストンナの表現力が移ったのだろうか。

 今日は彼女のネットナビ・ストーンマンとネットバトルする日だ。聞けば彼女はこの日の為にストーンマンを改造していたそうだし、相当な強敵になるだろう。

 

 ピリリ、とPETが鳴る。メールの受信音だと理解するよりも先にナイトマンが告げる。

 

『姫様、ストンナ殿からメールですぞ』

 

「彼女はなんて?」

 

『ストーンマンに重要な機能を入れ忘れた為、約束の時間より50分遅れるそうです』

 

 ナイトマンも、ストーンマンという強豪ナビと戦えることを期待していたのであろう。

 

 彼はとてもつまらなさそうに告げて溜息を長く吐き出す―――それと重なるようにプライドもつまらなさそうに溜息を吐いた。

 

 

 

【日暮闇太郎~良き取引相手~】

 

 もしもし、ストンナちゃんでマスか? 今大丈夫……じゃなさそでマスね、出直すでマスか?

 

 ストーンマンも言っているでマスが、無理せずまた今度でも……あぁ解った解ったでマス。

 

 アッシの依頼で作ってくれたバトルチップ一式が今朝届いたでマスよ~。

 本日開店と同時に売り出すでマス、ありがとうでマス!

 

 ……いやいやありがたいでマスよ! 比較的作りやすいスタンダード系チップとはいえ『スプレッドガン』をアルファベット順に5種類も送ってくれたんでマスから!

 

 ……ふっふっふオタクは流行に敏感なんでマス。今【わーつべ】はPA解説動画がランキング入りして熱いでマスから、発動条件に癖がある『メガデスバースト』に必要なバトルチップは特に売れるはずでマス!

 かなり金を掛けて痛手でマスが、高い確率で儲かるはずでマス……期待して報告を待っているでマスよ!

 

 ……出かける予定日? 前も言った通り明後日に……なるほど『例のブツ』に関してでマスな?

 

 それに関しては抜かりなくでマス。オタクもマニアックなモノを欲しがるでマスなぁ……いやいや良い意味で言ったつもりでマス、ストンナちゃんを考えれば納得できる欲しさでマス。

 しかしアッシも商売人にしてレアチップコレクター……頭金を受け取った以上は『例のブツ』を必ずや手に入れるでマス。こちらも期待してるでマスよ。

 

 ……はいはい、では今後も『ヒグレヤ』を宜しくお願いするでマス。では。

 

 さて、ではご開店でマス―――っと!

 

「日暮さん『スプレッドガン』のN売ってますか!?」

 

「オレ同じ奴のQ探してます!」

 

「私にも~!」

 

「もしかして(アスタリスク)あったりしませんか!?」

 

 はいはい押さないでマス、プログラムアドバンス『メガデスバースト』が目当てでマスな?

 本日のヒグレヤは『スプレッドガン』全コード豊富に揃えているマス、焦らなくても沢山あるから並んで待って欲しいでマス。 

 

 

 

 

【大山デカオ~ヘビー級は漢のロマンだ!~】

 

 大山デカオはPET画面に映る動画に目を奪われていた。

 

「すっげぇ~」

 

『すごいでガッツ』

 

 彼のネットナビであるガッツマンも同意見で、食い込むように動画を見ている。

 

 最近世界で話題沸騰の【わーつべ】は、ここ秋原町でも大ヒットしていた。

 勿論デカオもその一人で、暇な時間が長ければネットバトル動画を見るのが日課となっている。

 

 特にデカオとガッツマンがハマっているのが、【わーつべ】発祥の地とされるクリームランドエリアのネットバトル動画だ。

 

 今、クリームランドのネットナビは重量級のカスタマイズが人気らしく、「クリームランドといえば防御重視のカスタマイズ」と云われている。

 その為か、最近のクリームランドエリアでは重量級ネットナビ同士のネットバトルが熱く、パワー一辺倒のカスタマイズナビであるガッツマンを扱うデカオの心を鷲掴みしていた。

 

 今日見ている動画は特に凄かった―――騎士のようなナビと要塞のようなナビの、超ヘビー級ネットバトルが繰り広げられているからだ。

 

 要塞のようなナビ―ストーンマンというらしい―が細目に落石やレーザーといった波状攻撃を仕掛け、騎士のようなナビ―ナイトマンというらしい―が相手の隙を狙って破壊力のある鉄球を放つ。

 どちらも圧倒的な巨体を誇る上、ガードしている間はストーンボディ状態になる鉄壁の防御力を持っている。故にどちらも決め手に欠けるのだが……。

 

 徐々に互いが前進し、やがて至近距離に達し―――決着が見えてきた。

 

 

『『ウオオォォォォォォ!!!』』

 

 

 両者の野太い叫びが轟き、ストーンマンは巨大なハンマーと化した両腕を振り上げ、それに対してナイトマンは鉄球がついたままの腕を振り上げる。

 激しい音と衝撃が画面越しに伝わる。一見するとストーンマンのハンマーがナイトマンを押しているように見えるが―――。

 

―ビシリ!

 

 鉄球が触れている部分に罅が入り、巨大ハンマーは真っ二つに割れた。

 

 そのままナイトマンは咆哮を上げながら右ストレートを繰り出し、ストーンマンの顔面を鉄球が力強く殴りつけ―――ストーンマンが倒れる。

 

「『うおぉぉぉぉぉっ(でガッツ)!』」

 

 画面の歓声に合わせるかのように、デカオとガッツマンは拳を握って叫んだ。

 

「すっげぇなこのネットナビ!」

 

『ガッツマンもそう思うでガッツ!』

 

「だよなぁ!」

 

 興奮冷めぬままデカオとガッツマンは口走る。動画は即座にお気に入りフォルダに保存した。

 

 こういったヘビー級ネットバトルを熱斗にも見るよう勧めているのだが、いつも乗り気でなく見てくれないのが残念極まりない。

 

「しかし……ストンナ・キロクラムかぁ」

 

 デカオは動画内に表示されていたストーンマンのオペレーター……クリームランド出身のストンナ・キロクラムの事を思い描く。

 残念ながらナビマークでしか表示されていないが、このストーンマンのオペレーターは漢の浪漫を解っているヤツと確信している。

 

「いつかコイツともネットバトルしてみてぇなぁ、ガッツマン!」

 

『ロックマンを倒したら次はストーンマンに挑むでガッツ!』

 

 ガッツマンもデカオ同様にやる気十分のようだ。自慢のパワーがどこまで通じるのか。それを試すのも漢というものだと二人して思っている。

 打倒ロックマンに燃える2人だが、彼らもまた秋原町を代表する優れたネットバトラーであることを、彼ら自身はあまり自覚していなかったりする。

 

―後に大山デカオは、ストーンマンのオペレーターが面白おかしい幼女である事を知る事になる……。

 

 

 

 

【???~クリームランドへの妬み~】

 

「くっそ、あのガキども余計な事をしやがって……!」

 

―ピリリリ

 

「……もしもし、アラシですが」

 

『残念な結果に終わったようだな……余計な道草をしている場合ではないというのに』

 

「ちょっとミスっちまっただけさ! 次の仕事はキッチリこなすぜ!」

 

『厳しくいきたいところだが、例の作戦の要は貴様だからな……抜かりは無いな?』

 

「あったぼうよ! 既に目星はついている、失敗は無いぜ!」

 

『次は無いぞ。我々を……【ゴスペル】を甘く見られないようにな!』

 

―ツー、ツー、ツー

 

「口うるせぇ奴だぜ全く……しかし何がクリームランドだ、ちょっと人気になって大儲けしたからって調子に乗りやがって!」

 

 

「必ず誘拐してやる―――ストンナってクソガキをなぁ!」

 

 

 

「ふひぇっくしょい!―――です」

 

「ストンナ、体でも冷やしましたか?」

 

「じゃあこの後お茶でもしよー」

 

「プライド様もご一緒にいかがですか?」

 

「ええ、ご一緒しますわ。 いいわよねナイトマン?」

 

『姫の御心のままに』

 

「うー……誰か噂でもしたんですか?」

 

『ゴゴゴ……オ前ノ場合ハ噂シカナイダロウ』

 

「ストーンマンが辛辣で辛いです」

 

 




○ストーンボディ機能搭載
「40分で支度しな」

○プライド様とストンナ(主人公(
ストンナとプライドの歳の差は明確には決めていません。
ストンナ8歳に対して熱斗達が小学5年生だから……プライド様おいくつ?
―――コラそこ「中身オッサン幼女」は言わない約束でしょ!

○プライド様のプライベート
オリ主の発案したサイトで財政が潤い、プライド様の負担が凄い減った。
ストンナを通じて友達もできた為、社会に恨みを抱える事も無いのでゴスペルに加入することはないが―――。

○日暮さんとストンナ
レアチップオタ友。アルファベットコードを充実したバトルチップを売買している。
PA目的でキャノンやソードをA~Dまで揃えて纏め売りしている。

○スプレッドガン
感想一覧を見て思いついたネタ。バトルチップを造れるストンナに依頼しました。
「メガデスバースト」って響きが好き。きっと子供が好きなネーミング。

○日暮の嗅覚
オタクは動画サイトに敏感である。
日暮さんも自身もレアチップ講座動画とかやってそう。首絞めちゃうけど。

○『例のブツ』
ストンナはあるレアチップが欲しいそうです。
日暮さんに頭金として数十万ゼニー以上渡している。

○デカオとストンナ
デカオ強化フラグ。ヘビー級は浪漫だ!

○???視点
熱斗とロックマンがエアーマンを倒せた後の出来事。
誰も「ゴスペルに加入する」とは言ってない―――言ってたわ、後書きで。

次回は更新が少し遅れます(流石に毎日は無理でした;)
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