ストーンマン拾ったんで魔改造するです!   作:ヤトラ

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※魔改造回+N1グランプリの様子。


【頼まれたのでスカルマン魔改造するです!】

 遂に始まったN1グランプリ二次予選。たかが予選されど予選……多くのネットバトラーとネットナビが世界一への二歩目を踏み出そうと躍起になっている。

 お題は各地を巡ってスタンプを集めるスタンプラリー。いざ往かんと先に走り出したストンナを追いかけるのは、彼女に一目惚れしたチサオだ。

 

「す、ストンナちゃん……!」

 

 そんなチサオは、兄デカオを差し置いて走り出した事を後悔していた。

 カタカタと小さな体を震わせ、つぶらな瞳をこれでもかと見開いて、しかし目の前の光景を信じられずにいた。

 

 目的地が一致していた、同じくN1グランプリの参加ネットバトラーである黒井みゆき。その隣に並んでいるストンナ・キロクラム。

 ニホンが誇りし秘技「ジュージュツ」の構えを取る2人の周りには、4人の男達が倒れ伏している。いずれも腕っぷしを取柄とした大男だ。

 

「―――2人とも強いでちゅ! 凄いでちゅ!」

 

 2人の鮮やかな格闘術に見惚れたチサオは、先程まで敵意を持った大人に囲まれた恐怖を忘れてはしゃぎだす。

 ちなみにチサオの下には股間に頭突きされて倒れた大男がいるのだが、チサオはその上でぴょんぴょん跳ねている。無力な子供を人質にとるような悪人に慈悲はないのだ。

 

「ふう、大の大人が情けないのですよ」

 

 8歳児がした事とはいえ、ストンナの石頭が股間にヒットすれば大男だろうとも倒れるのは必然だ。

 

「……所詮は魂が腐った盆暗ね」

 

 構えを解いた黒井みゆきが、いつもよりも4割増し冷たい目で倒れ伏した男達を見下した。

 

 男達はN1グランプリ一次予選に敗退したネットバトラーだった。

 彼らは予選を通過したネットバトラー達に逆恨みしており、先んじて行動した黒井とストンナに狙いを定め、二次予選から落としてやろうと襲い掛かろうとした。

 結果として、ストンナの容赦ない頭突き攻撃と黒井みゆきの華麗なジュージュツによって撃沈。チサオを人質に取ろうとして余計に怒らせ、大男はボコボコにされた。

 

「オフィシャルも直に来るわ……スカルマン達の様子を見ましょう」

 

「です! 女将さん端末借りるのですよ」

 

 女将さんからの許可を貰った後、うらかわ旅館の端末に改めてPETを繋げる2人。

 

 よかよか村へ訪れ、クエイカーのスタンプの所有者の情報を集める為にスカルマンとストーンマンを【よかよかエリア】へプラグインさせた。その直後に彼らに襲われたのだ。

 この調子だと【よかよかエリア】でも一次予選敗退ナビが邪魔をしていることだろう。オフィシャルも対応はしているが、如何せん数が多くて対処しきれないのが実情だ。

 まぁ返り討ちにしたが。因みにこの2人が異様に喧嘩に強い+容赦ないだけで、一般の女性と幼女なら捕まってただろう。

 

 それはそれとして、PETで持ちナビの様子を見る。

 

『ハァ―――ボーンストーカー!』

 

 切り離した細い両腕を繋ぎ、片側に湾曲した刃が伸びて巨大な鎌のようになったそれを投げ飛ばすスカルマン。

 巨大な円を描いて飛び交うそれは広範囲を薙ぎ払いながらノーマルナビをデリート、戻ってくると空中分解し、再び両腕として接続される。

 

 別のノーマルナビが接続の瞬間を狙いメガキャノンを構えると、突然暗くなり―――。

 

『クエイクストーン!』

 

 空中から落ちてきたストーンマンの腕に潰されペシャンコ、そのままデリートされてしまった。

 ストーンマンは別のノーマルナビから『クロスボム』やら『エレキソード』やらで攻撃されているも屁の河童。ムキになっている彼にスカルマンの不気味な顔が向けられる。

 

 いや、顔だけでなく、胸元に生えた六本の機関銃も向けていた。

 

『喰ラエ新技、アバラガン!』

 

 ズドドドと豪快な音を立てて機関銃が火を吹く。

 重機関銃モードで放たれる弾丸はノーマルナビを蜂の巣に変え、瞬く間にデリートされてしまった。

 

『ゴゴゴ、コッチノ方ガ痛イゾ』

 

『ケヒヒ、すまないな……』

 

 どうやら流れ弾がストーンマンに当たったらしい。少ないが銃痕が見られ、そこから煙が立っている。

 煙を吹く機関銃を冷ましながらストーンマンに謝るスカルマン。ノーマルナビの攻撃が弱かったが故の、ストーンマンなりのジョークであるが。

 

『く、くそ! オペレーターが居ねぇのに矢鱈と強いぞコイツら!』

 

『何が数で押せだ、逆に押されてるじゃねーか!』

 

『これが一次予選を突破したナビの実力……!』

 

 残り4人となった一次予選敗退ナビ達とそのオペレーターはスカルマンとストーンマンの強さに戦慄する。

 しかし今頃は別の仲間がオペレーターを取り押さえているはず。バトルチップの援護がない内にデリートしてやろうと思ったが、時間稼ぎさえすればこちらの勝利だ。

 

 そう思っていた野郎どもだったが。

 

『待たせたわね……スカルマン』

 

『ハァ……早かったな、みゆき』

 

『すとんな、今度ハ何人潰シタンダ?』

 

『……4人ほどです』

 

『コノ石頭メ』

 

 呆気なくスカルマンとストーンマンのオペレーターが登場して唖然とする一同。

 スカルマンとストーンマンは当たり前のように彼女らと談話するが、脱落させあわよくば……と思っていた男達とナビは慌てふためく。

 予選早々に失敗したし、ここは誠意を込めて謝罪して見逃してもらおう……そう目論む男達だが。

 

『じゃあ……手早く片付けましょう』

 

『ヒヒヒ……ストンナが施した改造、みゆきにも味わってもらわないとな』

 

『ちょ、ちょっと待って、待ってください!』

 

『待たない。一度腐った魂は痛い目みないと治らないわ』

 

 みゆきとスカルマンは悪党退治に乗り気だった。

 友人であるストンナにスカルマンを改造依頼し、豊富な技を貰ったから試したくてウズウズしていたのだ。

 それは改造したストンナも同様。自身が改造を施したナビが目の前で活躍してくれると思うとウズウズしているのである。

 

 まぁ彼らは「戦いたくてウズウズしている戦闘狂の女共」と見えて恐怖しかないが。

 

『こうなったら破れかぶれだ、やっちまえ!』

 

『うおー少しでも邪魔されて脱落しちまえばいいんだー!』

 

『逆恨み舐めんなー!』

 

 オペレーターもネットナビもヤケクソ。ウィルス爆弾も投げて中から飛び出た様々なウィルスと足並みを揃えて突撃する。

 

『スカルマン、シャレコーベイバリア。続いて【ソニックウェーブ】、スロットイン』

 

 みゆきの指示に従い、スカルマンは自身の頭を掴んで放る。

 自立した頭はシャレコーベイとなって巨大化、ボディの前を陣取り、ノーマルナビやウィルスの攻撃を防ぐ。

 頭を切り離されたにも関わらず胴体は動き続け、転送されたツルハシを振り上げて『ソニックウェーブ』で攻撃、キャノーダムをデリート。

 

『だったらこうだ! 【ヒートショット】!』

 

 直撃すると後方にまで届く爆炎を放つ炎属性のバトルチップ『ヒートショット』が『シャレコーベイ』及び後方の胴体にヒット。

 胴体にダメージが入ったことで『シャレコーベイ』が解かれ、頭蓋骨のような頭が胴体にくっつく。

 その間にもストーンマンの『クエイクストーン』で応戦し数を減らすも、ウィルスは多くノーマルナビ3体の総攻撃は止まらない。

 

ボーンストーカー・S。次いで【ロングソード】』

 

『シャアッ!』

 

 スカルマンは片腕をぶん回して切り離す。『ブーメラン』のように飛び交う『ボーンストーカー』を避けたノーマルナビに肉薄して、逆の腕から伸びた『ロングソード』で切り裂く。

 傷つくも『ワイドソード』で仕返しとばかりに切りかかりスカルマンにダメージを負わせた―――直後に背後から『ボーンストーカー』に斬られデリートしてしまったが。

 

 戻ってきた片腕を接続した直後、みゆきの指示が飛び交う。

 

『スカルマン、ストーンマンを援護。オニビを投擲モードで』

 

『カハァァッ!』

 

 口を大きく開き、『ブレイクハンマー』を掲げストーンマンに襲い掛かろうとするノーマルナビに『オニビ』を放つ。

 放った『オニビ』は放物線を描いて飛いてノーマルナビに直撃、熱さで慌てた所を『ストーンフィスト』で潰されてデリート。

 

 気づけばウィルスも先の『ボーンストーカー』で一掃されており、残りはノーマルナビのみに。

 

『……諦めよう』

 

『おいおい根性見せろって!』

 

 ぎゃあぎゃあ騒ぐオペレーターだが、ナビは完全に諦めたらしく肩を竦めて大の字になって倒れる。『いっそ潰せー』なんて言っているし。

 余りの諦めっぷりにストーンマンもスカルマンも唖然としている……まぁ普段から表情の変化に乏しいから別段変化は―――。

 

―ぽこんっ

 

『汗のフキダシ……スカルマン、困っているならシャレコーベイで潰して』

 

『ヤレヤレのフキダシ……スカルマンにお任せしとくです』

 

 ストンナが開発せしナビカスプログラム『ヒョーゲンリョク』をスカルマンにもカスタマイズしたらしく、飛び出たフキダシから表現力が伝わってくる。

 

 とりあえずノーマルナビは『シャレコーベイ』でペシャンコにしてデリート。

 完全に敗北し戦意を消失したオペレーターは、向こうでオフィシャルに捕まったのか、許してーだのごめんなさーいだの情けない声が響いている。

 

 そこへ3体のネットナビが現れた。身構えるも敵意がないと解り、自然体に戻る。

 

 2体のネットナビの肩当には「OFFICIAL」のマークが描かれており、オフィシャルのネットナビであることがわかる。この肩当はオフィシャルにしか配布されない特別製だ。

 もう一人は薄紫のノーマルナビだ。誰だろうと首がかしげる中、オフィシャルナビが敬礼する。

 

『オフィシャルネットナビです。妨害したオペレーターはこちらで逮捕いたしました。ネットナビもPETで回収しております』

 

 遅れてすみません、と謝るネットナビに「まぁまぁ」のフキダシを出したスカルマンが落ち着かせる。

 

『そしてオレはN1グランプリのスタンプ所有者だ! いやアンタら強いな!』

 

 先ほどの戦いを見ていた薄紫のナビは嬉しそうに笑い、目の前で妨害されたのを見たしサービスだと、拳サイズのスタンプを取り出した。

 まさかスタンプ所有者がすぐそこに居た上にウィルス戦無しで貰えるとは思わず、みゆきとストンナは互いを見た後、「スタンプください」と素直に要求。

 薄紫のナビは快く了承、スカルマンとストーンマンが提示したデジタルなスタンプ帳に『クエイカーのスタンプ』が記される。

 

『次のヒントはっと……ストンナ選手がラビリングスタンプのある【秋原の学び舎】で、みゆき選手がララパッパスタンプのある【浜辺の車の中】だな!』

 

 頑張れよと応援しようとして……既に相手がプラグアウトしたのに気づき寂しさを覚えた……。

 この後も続々と集まるであろうN1グランプリ参加者の事もあるし、切り替えてその辺をうろつくスタンプ所有ナビであった。

 

 

 

―――

 

「それではみゆきさん、ありがとうございました!」

 

「またねーでちゅー!」

 

「うん……そっちも頑張って」

 

 私が言うよりも先に走り去っていくストンナとチサオ。

 熱斗くん以上に元気のある子供達ね。見ていて飽きなかったわ。

 

 ストンナと私が出会ったのは、彼女がストーンマンを迎え入れる前の事。

 ニホンの骨とう品を珍しそうに眺めていた彼女を見て、私は驚いたことを覚えている。

 

 正確には彼女の【魂】。彼女の魂は2つの魂が混ざり合っている(・・・・・・・・・・・・・)異常なモノだった。

 

 確かに異常ではあったが、決してゼロではない。この世に未練があって成仏できない魂……即ち『悪霊』が人に乗り移ろうとするケースも見たことがある。

 魂が見える私は、そういった怨霊や悪霊を祓う術を体得しており、除霊で人を助けたこともあった。悪霊が憑りついていた骨董品を礼として貰うけどね。

 

 この子も憑りつかれたのかと思って接触、雰囲気が私に似ているのにとても元気なストンナを嫌いになれず、いつしかリンク先を交換する仲になった。

 

 ストンナの魂に変化が起こったのは、クリームランドの王女様ことプリンセス・プライドを連れてきた日。まさか王女様と知り合いだとは思わなかった……。

 その時のストンナの魂は、本来の【彼女自身の魂】で満ちていた。【もう一つの魂】は【彼女自身の魂】に浸食されたようで、お情けでポツンと残っている程度。

 

 例えるなら……そう、ニホンザリガニとアメロッパザリガニみたい。

 

 一つの池があったとしよう。その池はストンナの体を現わしている。

 そこに住んでいた【彼女自身の魂】であるニホンザリガニの群れに、他所から来た【もう一つの魂】であるアメロッパザリガニの群れが入り込んだのだ。

 

 本来なら、外来種特有の繁殖力でニホンザリガニを追いやりアメロッパザリガニで一杯になる。

 しかしその池に住んでいたニホンザリガニは『異常な程に繁殖力が高くて力も強い個体』だった。あの強烈な個性は【彼女自身の魂】のものだ。

 強いニホンザリガニによってアメロッパザリガニが逆に追いやられ、本来の池の生態系に戻った。それがストンナの今の魂だ。

 

 悪霊とも怨霊とも違うあの魂はなんだったのだろうか。

 

 そんな疑問も、ストンナに頼んだスカルマン改造の結果で吹き飛んだのだけど。

 特に『ヒョーゲンリョク』を手に入れたスカルマンは『にっこりマーク』を連打する程に喜んでいた。ふふふ、私以外に感情を伝えられるのが嬉しかったのね。

 

 不思議な少女ストンナ。強靭な魂を持った、小さくも逞しい子。

 

 けど頭突きで大人を倒すのはどうかと思う……。

 

 そう考えながらも、私は次のスタンプを探しに走り出す。折角N1グランプリに参加したのだから頑張らないとね。

 

 

 

 まぁ予選敗退しちゃったけど。後はトードマンに渡すだけだったのに残念ね。

 

 

 

★スカルマン(魔改造)

・オペレーター:黒井みゆき

・属性:無

 

【主な技】

〇『オニビ』(改:

 従来の口から一直線に飛ばすパターンと、ミニボムのように3発投擲するパターンを追加。

 

〇『ボーンストーカー』(改:

 片腕をブーメランのように投げ飛ばすスピード重視と、両腕を繋ぎ合わせ鎌のような刃を伸ばして投げ飛ばすパワー重視の2パターン。

 

〇『シャレコーベイ』(改:

 巨大化した頭を相手に向け落下させる従来のパターンと、最前列を一定時間上下移動して敵の攻撃を防ぐパターンを追加。後者は『シャレコーベイバリア』とも。

 

〇『アバラガン』(新:

 胸元から6本の機関銃を伸ばし射撃モードに入る。隙は大きいが弾丸を集束するマシンガンモード、威力は弱い隙が短いショットガンモードの2パターン。

 因みに有賀ヒトシ先生のスカルマンは8本の機関銃を展開したが、プログラムのリソース的に、攻撃の回転率を優先して6本にしたという。

 

 

【戦闘コンセプト】

 黒井みゆきのナビ改造依頼を受けて真っ先に有賀ヒトシ先生のスカルマンをイメージして魔改造を施した。『アバラガン』のアイディアはそこから生まれた。

 『ボーンストーカー』による追い込み戦法から一新、スピード重視とパワー重視を切り替えて戦うテクニカルファイターと化した。『アバラガン』は強力な技でありながらリロードが短く、状況に応じてモードを切り替えれる。みゆきの口数の少なさ、スカルマンの不気味な雰囲気も相まって、相手を追い詰める姿は正に死神。

 

【オペレート】

 出が早く隙の少ないスピード重視の戦法と出が遅くダメージが大きいパワー重視の戦法を切り替えながら戦う。よく言えば臨機応変・悪く言えば器用貧乏な為、オペレーターの判断力とバトルチップフォルダ次第でスカルマンの戦闘力が大きく変化する。また中距離が主な技構成の為に接近戦に弱め。

 

【性格】

 みゆきが改造依頼ついでにお願いしたプログラムパーツ『ヒョーゲンリョク』を多用して感情表現することが増えた。

 よく使うのは『照れ』と『ニッコリ』。プログラムくんを怯えさせないよう笑顔で接したら怖がられた事を根に持っていたらしい。

 見た目に反して、ちょっとシャイなネットナビのようだ。

 

【経緯】

 N1グランプリの告知と同時にストンナにスカルマンの改造を依頼。報酬の一部としてニホン風情溢れる掛け軸をプレゼントした。

 ストンナ発案の改良技に加え、新技の『アバラガン』をみゆきもスカルマンも大層気に入った。

 

 因みに『アバラガン』を使う際にスカルマンはなぜか

 

『今更……今更遅ぇんだよーっ!』

 

 ……と叫びたくなるという(みゆき曰く「パラレルワールドの貴方から受信された」)

 




有賀先生の描くロックマンシリーズいいよね。

二次予選はこれでカットマンさせてもらいます。
グダる前に次の動物園イベントに進めたいので。

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